- 1. 虫歯が神経まで進行したC3とは?
- 1.1. 冷たいものがしみる場合
- 1.2. 温かいものがしみる・何もしなくても痛む場合
- 2. MTAセメントとは?
- 2.1. MTAセメントの特徴
- 2.1.1. 優れた封鎖性
- 2.1.2. 強いアルカリ性を示す
- 2.1.3. 生体親和性に配慮されている
- 2.1.4. 硬組織形成を促すことが期待できる
- 3. MTAセメントを使った神経保存治療の流れ
- 3.1. 1.虫歯を丁寧に除去する
- 3.2. 2.歯髄の状態を確認する
- 3.3. 3.MTAセメントで歯髄を保護する
- 3.4. 4.処置した部分を封鎖する
- 3.5. 5.経過観察と最終修復
- 4. MTAセメントが使用される主な治療
- 4.1. 神経保存治療(直接覆髄・断髄)
- 4.2. 穿孔部の修復
- 4.3. 根管治療
- 4.4. 歯根端切除術(逆根管充填)
- 4.4.1. 歯根嚢胞の露出
- 4.4.2. 病変除去・歯根端切除とMTAによる逆根管充填
- 4.4.3. 術後X線像
- 5. MTAセメントによる神経保存治療のメリット
- 5.1. 歯髄を残せる可能性がある
- 5.2. 歯が本来持つ機能を維持できる
- 5.3. 良好な封鎖が期待できる
- 5.4. 生体組織への適合性に配慮されている
- 6. MTAセメントによる神経保存治療の注意点・デメリット
- 6.1. すべての歯で神経を残せるわけではない
- 6.2. 診査・感染管理が重要
- 6.3. 歯が変色することがある
- 6.4. 自費診療になる場合がある
- 7. MTAセメントを使えば必ず神経を残せる?
- 8. まとめ|深い虫歯でも神経を残せる可能性があります
- 8.1. 関連記事
- 9. 「神経を取るしかない」と言われた方へ
- 10. 【動画】歯茎のニキビのような出来物・フィステル
- 11. 筆者・院長
- 11.1. 深沢 一
- 11.1.1. メッセージ

虫歯が深くなり歯の神経(歯髄)に近づいたり、治療中に神経が露出したりした場合でも、必ずしも神経を取る「抜髄」が必要になるとは限りません。
近年では、MTAセメントなどの生体親和性に配慮した材料を用いた歯髄保存療法が行われており、歯髄の炎症や感染の状態によっては、神経の全部または一部を残せる可能性があります。
歯髄を保存できれば、歯が本来持っている感覚や防御・修復機能を維持できることが期待されます。
この記事では、MTAセメントの特徴や神経保存治療の流れ、適応となるケース、メリット・注意点について解説します。
虫歯が神経まで進行したC3とは?
C3は、一般的に虫歯が象牙質の深い部分から歯髄にまで及んだ状態を示す際に使われる分類です。

虫歯が歯髄に近づくと、
- 冷たいものや甘いものがしみる
- 刺激を取り除いてもしばらく痛みが続く
- 温かいものがしみる
- 何もしなくてもズキズキ痛む
- 夜間に強く痛む
などの症状が現れることがあります。
ただし、症状の強さだけで歯髄を残せるかどうかを判断することはできません。
痛みの経過や歯髄の反応、虫歯の深さ、出血の状態、X線検査などを総合して診断します。
冷たいものがしみる場合
冷たいものに一時的に反応し、刺激がなくなると比較的短時間で症状が治まる場合には、歯髄の炎症が限局している可能性があります。
虫歯を除去した際の歯髄の状態などを確認し、MTAセメントなどを用いた歯髄保存療法を検討できることがあります。
温かいものがしみる・何もしなくても痛む場合
温かいものによる強い痛みや自発痛、夜間痛などがある場合には、歯髄の炎症が進行している可能性があります。
ただし、症状だけで歯髄保存の可否を決めることはできません。
歯髄の状態によっては抜髄が必要になる一方、症例によっては歯髄の一部を除去して健康な部分を残す部分断髄・全部断髄などの歯髄保存療法を検討できる場合もあります。
できるだけ神経を残したい場合には、症状を放置せず早めに歯科医院を受診することが大切です。
MTAセメントとは?
MTAセメントは、**Mineral Trioxide Aggregate(ミネラルトリオキサイドアグリゲート)**と呼ばれる歯科材料です。
歯髄保存療法をはじめ、穿孔部の修復や歯根端切除術における逆根管充填など、さまざまな治療に使用されています。

MTAセメントの特徴
優れた封鎖性
MTAセメントは、適切に使用することで処置した部分を封鎖し、外部からの細菌や刺激が侵入するのを抑えることが期待できます。
歯髄保存療法では、細菌による再汚染を防ぐことが治療結果を左右する重要なポイントになります。
強いアルカリ性を示す
MTAセメントは硬化する過程で強いアルカリ性を示します。
この性質により、材料が接する環境で細菌の活動を抑える作用が期待されています。
ただし、MTAセメントだけで感染を治療するものではなく、感染した歯質を適切に除去し、処置部を確実に封鎖することが重要です。
生体親和性に配慮されている
MTAセメントは、歯髄や歯周組織に接する治療で使用される生体材料の一つです。
歯髄保存療法では、露出した歯髄を保護する材料として用いられています。
硬組織形成を促すことが期待できる
MTAセメントを歯髄に適切に使用することで、歯髄の治癒や象牙質様の硬組織形成を促すことが期待されています。
「神経そのものを再生させる材料」というより、歯髄が本来持っている修復能力を生かすための環境を整える材料と考えると分かりやすいでしょう。
MTAセメントを使った神経保存治療の流れ
実際の治療方法は、虫歯の深さや歯髄の状態によって異なります。ここでは、虫歯治療中に歯髄が露出した場合に行われる直接覆髄を例に紹介します。
1.虫歯を丁寧に除去する
局所麻酔を行い、感染した歯質を除去します。
深い虫歯では歯髄に近接しているため、必要に応じて拡大視野や専用器具を使用し、健全な歯質をできるだけ残しながら処置します。
また、治療中に唾液や細菌が入り込まないよう、ラバーダム防湿などによって治療部位を清潔に保つことも重要です。

2.歯髄の状態を確認する
虫歯を除去する過程で歯髄が露出した場合は、露出した範囲や出血の状態などを確認します。
歯髄の炎症が強いと判断される場合には、露出部を覆うだけではなく、炎症が疑われる歯髄の一部を除去する部分断髄などを検討することがあります。
歯髄の保存が困難と判断された場合には、抜髄・根管治療へ移行することもあります。
3.MTAセメントで歯髄を保護する
歯髄を保存できると判断した場合には、露出した歯髄などにMTAセメントを使用して保護します。
露出した歯髄を直接覆う処置を**直接覆髄(ちょくせつふくずい)**といいます。
症例によっては、歯髄の一部を除去してMTAセメントなどで覆う部分断髄が選択される場合もあります。

4.処置した部分を封鎖する
MTAセメントを使用した後は、細菌が再び侵入しないように修復材料で封鎖します。
治療方法や使用する材料によっては、仮封して経過を確認してから最終修復へ進む場合もあります。

5.経過観察と最終修復
治療後は、
- 自発痛がないか
- 冷温刺激に対する反応
- 噛んだときの痛み
- 歯髄の反応
- X線画像の変化
などを確認します。
問題がなければ、虫歯の範囲や残っている歯質の量に応じて、コンポジットレジンや被せ物などで修復します。
歯髄保存療法は治療直後だけで成功・不成功を判断できるものではないため、治療後も定期的な経過観察が大切です。
MTAセメントが使用される主な治療
MTAセメントは神経保存治療だけではなく、さまざまな歯科治療で使用されています。

神経保存治療(直接覆髄・断髄)
深い虫歯の治療中に歯髄が露出した場合などに、歯髄を保護する目的で使用されます。
歯髄の炎症の程度によっては、直接覆髄ではなく部分断髄や全部断髄を行い、残した歯髄をMTAセメントなどで保護することがあります。
穿孔部の修復
根管治療などの際に、歯根や歯髄腔と歯周組織の間に偶発的な交通(穿孔)が生じた場合、その部分を封鎖する材料として使用されることがあります。
穿孔の位置や大きさ、感染の程度などによって予後は異なります。
根管治療
MTAセメントや同様の性質を持つバイオセラミック系材料が、症例に応じて根管治療に使用されることがあります。
使用目的や方法は症例によって異なり、すべての根管治療でMTAセメントが必要になるわけではありません。
歯根端切除術(逆根管充填)
通常の根管治療だけでは根の先の病変が改善しない場合などに、歯根端切除術が行われることがあります。
歯ぐき側から病変部にアプローチし、感染源となっている歯根の先端を切除します。その後、必要に応じて根の先端側から根管を形成し、MTAセメントなどで封鎖する「逆根管充填」を行います。
歯根嚢胞の露出
上顎小臼歯部に切開を行い、根尖部周囲の病変を確認した術中所見です。
病変の状態を確認しながら、必要に応じて病変組織の除去や原因となっている歯根への処置を行います。

病変除去・歯根端切除とMTAによる逆根管充填
根尖部周囲の病変を除去し、感染源となる歯根端を切除した後、根管の先端側をMTAセメントで封鎖した術中所見です。
逆根管充填は、根管内と根尖周囲組織との交通を封鎖し、細菌の漏出を抑えることを目的として行います。

術後X線像
外科的処置後のデンタルX線画像です。
骨欠損の状態などによっては、症例に応じて骨補填材を使用することがあります。その後は定期的にX線検査を行い、根尖部周囲の骨の治癒経過を確認します。

MTAセメントによる神経保存治療のメリット
歯髄を残せる可能性がある
最大のメリットは、深い虫歯でも条件が整えば歯髄を保存できる可能性があることです。
歯髄には血管や神経があり、歯に栄養を供給するだけでなく、外部からの刺激を感知したり、象牙質を形成したりする働きがあります。
歯が本来持つ機能を維持できる
歯髄を保存することで、歯の感覚や防御・修復機能を維持できることが期待できます。
また、抜髄を回避できれば、根管治療そのものを行わずに済む可能性があります。
良好な封鎖が期待できる
歯髄保存療法では、処置した歯髄を外部の細菌から守ることが重要です。
MTAセメントは封鎖性に優れた材料の一つであり、適切な修復処置と組み合わせることで良好な治療環境を維持することが期待できます。
生体組織への適合性に配慮されている
MTAセメントは歯髄などの組織に接する治療に使用され、硬組織形成を促すことが期待できる材料です。
そのため、歯髄保存療法における代表的な材料の一つとなっています。
MTAセメントによる神経保存治療の注意点・デメリット
すべての歯で神経を残せるわけではない
MTAセメントを使用すれば必ず歯髄を保存できるわけではありません。
歯髄の壊死や感染の程度、虫歯の範囲、歯の状態などによっては、抜髄や根管治療が必要になります。
また、歯髄保存療法を行った後に症状が現れ、結果的に根管治療が必要になる場合もあります。
診査・感染管理が重要
歯髄保存療法の結果には、適切な診断、虫歯の除去、治療中の感染管理、処置後の封鎖など、さまざまな要素が関係します。
MTAセメントという材料だけで治療結果が決まるわけではありません。
歯が変色することがある
MTAセメントは製品や使用部位によって、治療後に歯の色調へ影響を与える場合があります。
特に前歯など審美性が求められる部位では、材料の種類や使用方法を考慮する必要があります。
自費診療になる場合がある
MTAセメントを使用した歯髄保存療法は、治療内容や使用する材料、医療機関によって自費診療となる場合があります。
治療を受ける際には、適応や治療方法だけでなく、費用についても事前に確認しておくとよいでしょう。
MTAセメントを使えば必ず神経を残せる?
MTAセメントは歯髄保存療法に有用な材料ですが、「MTAを使えば神経を必ず残せる」というものではありません。
重要なのは、
- 歯髄の炎症や感染の状態
- 虫歯の深さや範囲
- 歯髄露出の状態
- 治療中の感染管理
- 適切な材料の使用
- 治療後の確実な封鎖
- 定期的な経過観察
などを総合的に考えることです。
そのため、MTAセメントを使用するかどうかだけでなく、その歯の状態に適した歯髄保存療法を選択できるかどうかが重要になります。
まとめ|深い虫歯でも神経を残せる可能性があります
虫歯が神経の近くまで進行したり、治療中に神経が露出したりしても、すぐに神経を取らなければならないとは限りません。
歯髄の炎症や感染の状態によっては、MTAセメントなどを使用した直接覆髄・部分断髄などの歯髄保存療法によって、神経の全部または一部を残せる可能性があります。
ただし、MTAセメントを使用すれば必ず神経を保存できるわけではありません。治療前の診査・診断に加え、虫歯の適切な除去、感染管理、確実な封鎖、治療後の経過観察が重要です。
「冷たいものがしみる」「深い虫歯があると言われた」「できるだけ神経を取りたくない」という方は、痛みが強くなるまで放置せず、早めに歯科医院で診査を受けることをおすすめします。
関連記事
「神経を取るしかない」と言われた方へ

深い虫歯でも、歯髄の炎症や感染の状態によっては、MTAセメントなどを用いた治療で神経を残せる可能性があります。まずは歯の状態を詳しく診査し、できるだけ神経を保存できる治療法を検討します。
「できるだけ歯を削りたくない」「神経を残したい」「他院で神経を取ると言われた」という方は、一度ご相談ください。
【動画】歯茎のニキビのような出来物・フィステル
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。





