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【動画 28秒】進行が早い「根面う蝕」を防ぐセルフケアと定期健診の重要性

根面う蝕・歯根の虫歯

症例解説

皆さんは被せ物をするとその歯は二度と虫歯にならないと思っていませんか? 残念ながらそうはいかないのです。

写真の赤矢印は、下顎6番に出来た根面う蝕です。金属の被せ物が入っていますが、歯根露出し、冠の内部には歯垢(プラーク)が大量に付着しているのが認められます。そしてむし歯が内部まで入り込んでいます。青矢印の歯など複数の歯にも根面う蝕が出来始めています。

下顎6番のレントゲン写真
下顎6番のレントゲン写真

同症例のレントゲン写真

下顎6番のレントゲン写真を撮ってみると歯根内部にまで虫歯が広がっていました。この歯は神経がないため、虫歯が大きくなっても気が付かないのです。保存不可能と診断し、抜歯となりました。

根面う蝕の基礎知識

根面う蝕とは何か?

根面う蝕とは

根面う蝕とは、歯肉が下がることで露出した歯の根の部分(根面)に発生する虫歯のことです。通常の虫歯とは異なり、歯の表面ではなく歯の根元部分がむしばまれるため、その進行に気づきにくいことが特徴です。特に年齢を重ねることで歯肉が下がりやすくなるため、中高年層に多く見られます。根面う蝕は放置すると歯の根が大きく損なわれ、最悪の場合は歯を失うリスクが高まるため、早期発見と予防が重要です。

どうして大人に多いのか?年齢と歯肉退縮の関係

根面う蝕が大人に多い理由として、年齢とともに歯肉が退縮し、歯の根面が露出することが挙げられます。若いころは歯肉によって保護されていた部分が、年齢を重ねるにつれてむき出しになり、そこにプラークがたまりやすくなります。歯肉退縮の原因には、歯周病の進行、不適切なブラッシング習慣、遺伝的要因などがあり、これらが根面う蝕のリスクを高めます。そのため、大人になってからは特に歯茎のケアが重要です。

歯周病との関連性

歯周病は、歯肉退縮を引き起こす大きな要因です。歯周病が進行すると歯肉が減退し、根面が露出します。これにより根面う蝕のリスクが高まります。また、歯周病による炎症が続くと、歯の支持組織が弱まり、さらに虫歯菌が繁殖しやすい環境が整います。歯周病を適切に管理することで、根面う蝕のリスクを減少させることが可能です。

根面う蝕の原因と発生メカニズム

プラークと酸性環境の影響

根面う蝕はプラークが原因となることが多く、その主な要因は口腔内の酸性環境です。プラークは口腔内の細菌によって形成され、虫歯菌が作る酸が歯のエナメル質や象牙質を溶かします。特に根面部分はエナメル質で保護されていないため、酸の影響を受けやすく、虫歯の進行が速いのが特徴です。そのため、プラークをいかに除去するかが、根面う蝕予防の重要なポイントとなります。

食生活や嗜好品(アルコール、喫煙)が与える影響

糖分を多く含む食品や飲料

食生活も根面う蝕の大きな要因です。糖分を多く含む食品や飲料は、虫歯菌の餌となるためプラークの形成を促進させ口腔内の酸性度を上げます。また、アルコールや喫煙は唾液の分泌を抑制し、自然な洗浄効果が減少するため、虫歯菌が繁殖しやすくなります。特に喫煙は血流を悪化させ、歯肉の健康を損なうため、根面う蝕のリスクが大幅に高まります。健康的な食生活と嗜好品の見直しは、根面う蝕予防において重要です。

唾液分泌の低下と根面う蝕の関係

唾液は口腔内のpHバランスを保ち、酸を中和する役割を持っています。しかし、加齢やストレス、特定の薬剤の使用によって唾液の分泌が低下すると、口腔内が酸性に傾き、根面う蝕のリスクが増加します。特に高齢者や持病を持つ人は唾液分泌の低下が顕著であるため、定期的に水分を摂取したり、唾液腺を刺激するガムを噛むなどの対策が推奨されます。

根面う蝕の症状と診断方法

初期症状:痛みなく進行

根面う蝕の初期症状は、痛みがほとんどないことが特徴です。このため、進行に気づかず放置されてしまうケースが少なくありません。初期段階では歯の根面にわずかな変色や白濁が見られることがありますが、痛みがないために自覚しにくいのです。この段階で適切なケアを行えば進行を食い止めることが可能なので、定期的な歯科検診が重要となります。

根面の色の変化や形態の崩れ

根面の色の変化や形態の崩れ

根面う蝕が進行すると、歯の根面が黄色や茶色に変色し、さらには形態が崩れていきます。歯肉付近に小さな穴が開く、あるいは歯の表面が不規則に崩れている場合、それは根面う蝕が進行しているサインです。こうした症状は進行してから初めて気づくことが多いため、早期発見が難しいことが課題です。

歯科医院での診断手順と画像診断の活用

根面う蝕のX線画像診断

歯科医院では、根面う蝕の診断に視診や触診が行われるほか、X線画像診断が有効です。視診や触診では、歯肉の状態や歯根の表面の変化を確認し、異常がないかをチェックします。X線を使うことで、見えにくい部分のう蝕の進行具合を正確に把握できるため、早期発見と適切な治療計画の立案に役立ちます。

根面う蝕の予防方法

正しいブラッシング方法と歯ブラシの選択

根面う蝕を予防するためには、正しいブラッシング方法が非常に重要です。歯肉に優しいソフトタイプの歯ブラシを選び、歯肉を傷つけないように優しくブラッシングすることが推奨されます。また、歯と歯肉の境目を重点的に磨くことで、プラークの蓄積を防ぐことができます。歯間ブラシやデンタルフロスの使用も、ブラッシングだけでは届かない部分の清掃に有効です。

フッ素製品の活用:歯磨き粉・洗口液の選択ポイント

フッ素配合の歯磨き粉

フッ素は歯の再石灰化を促進し、虫歯の進行を防ぐ効果があります。フッ素配合の歯磨き粉や洗口液を使うことで、根面う蝕のリスクを低減させることができます。特に根面が露出している人はフッ素濃度が高めの製品を使用すると効果的です。ただし、フッ素濃度の選択には年齢や口腔状態に応じた注意が必要ですので、歯科医師に相談することをおすすめします。

食事と間食の工夫:酸性食品を避ける方法

酸性の強い食品や飲料は歯を溶かしやすく、根面う蝕の原因となります。例えば、炭酸飲料や柑橘類の果汁は摂取後に口腔内が酸性に傾きやすくなるため、頻繁な摂取は避けるべきです。また、間食の回数を減らし、食後には水を飲んで口腔内を中和することが推奨されます。食生活を工夫することで、酸によるダメージを減少させ、根面う蝕のリスクを軽減することができます。

定期的な歯科検診とプロフェッショナルケアの重要性

根面う蝕は初期段階での発見が難しいため、定期的な歯科検診が不可欠です。プロフェッショナルケアでは、歯科医師や歯科衛生士が口腔内の状態を詳しくチェックし、初期のう蝕を発見して適切な処置を行います。また、専門的なクリーニングによってプラークや歯石を徹底的に除去することで、根面う蝕の予防に大きく貢献します。

エアフロー
エアフロー

エアフローによる歯のクリーニング

ミュータンス菌に強く感染している方は、しっかり磨いても虫歯が次から次と出来てしまします。歯科医院の定期健診を活用して歯のクリーニングを行ってください。当院ではエアフローという器械で歯垢が古くなったバイオフィルムの除去や破壊を行っています。

口管強の施設基準

歯周病や虫歯になり易い方は、月に1回の頻度でご来院いただき、歯のクリーニングや歯磨き指導などの治療を継続的に行うことが推奨されています。

当院は、「口管強」として、厚生労働省に認定されているため、毎月のクリーニングも保険適用で受けていただけます。

根面う蝕の治療法

初期の根面う蝕:フッ素塗布やコーティングの役割

初期の根面う蝕では、フッ素を塗布することで歯の再石灰化を促し、う蝕の進行を防ぐことができます。フッ素塗布は比較的簡単な処置であり、歯科医院で定期的に受けることで効果が期待できます。また、歯の表面にコーティングを施すことによって、虫歯菌の侵入を防ぐバリアを作ることができます。これにより、初期段階でのう蝕の進行を食い止めることが可能です。

進行した根面う蝕:レジン修復や被せ物による治療法

根面う蝕にレジン修復

根面う蝕が進行した場合、損なわれた部分を修復する必要があります。一般的にはレジンという樹脂を使った修復が行われますが、う蝕が広範囲に及ぶ場合は被せ物(クラウン)を装着することもあります。これにより、歯の形態や機能を回復し、再発を防ぐことができます。治療後も定期的なケアが必要であり、口腔内の清掃が不十分であれば再発のリスクが高まります。

歯根治療が必要なケース:抜髄や根管治療の流れ

根面う蝕が深く進行し、歯髄にまで達した場合、抜髄や根管治療が必要です。抜髄は、痛みの原因である歯の神経を取り除く処置であり、その後、根管を清掃・消毒し、最終的に詰め物を行います。この治療は歯を保存するために不可欠であり、適切に処置を行うことで歯の機能を維持することが可能です。根管治療後はクラウンを装着することが多く、これにより歯の耐久性を高めます。

歯科医院で提供される治療オプションの比較

根面う蝕の治療にはいくつかの選択肢があります。フッ素塗布、レジン修復、被せ物、さらには根管治療まで、進行度合いに応じた治療法が選ばれます。治療法にはそれぞれ利点と欠点があり、例えば、レジン修復は比較的手軽で費用も抑えられますが、耐久性に限界がある場合があります。一方で、被せ物は費用がかかるものの、長期的な耐久性が高いです。患者一人ひとりの状況に応じて最適な治療法を選ぶことが重要です。

特定の人に多い根面う蝕のリスク

高齢者と根面う蝕:唾液量低下や歯周病の影響

高齢者において根面う蝕が多い理由の一つは、唾液分泌量の低下です。唾液は口腔内の自浄作用を担っており、これが低下するとプラークが溜まりやすくなります。また、高齢者は歯周病の罹患率も高く、歯肉退縮が進行しやすいため、根面が露出し、う蝕のリスクが上昇します。これを防ぐためには、日常の口腔ケアに加えて、歯科医院での定期的なチェックとケアが必要です。

矯正治療後や口腔ケア不良者のリスク

矯正治療を受けた後は、歯の位置が変わることで根面が露出するリスクが高まります。また、矯正装置によってブラッシングが難しくなり、プラークが溜まりやすくなるため、根面う蝕のリスクが増加します。矯正中は特に注意が必要であり、歯科医師の指導のもとで適切なケアを行うことが求められます。

持病を持つ患者や服薬中の方が気を付ける点

糖尿病や高血圧の薬を服用

持病を持つ患者や服薬中の方は、唾液の分泌が抑制されることが多く、根面う蝕のリスクが高くなります。特に、糖尿病や高血圧の薬を服用している場合、唾液の分泌が減少することがあり、口腔内の酸性度が高まりやすくなります。こうした場合は、定期的に水分を補給し、歯科医師と連携して予防ケアを徹底することが大切です。

根面う蝕に関連する最新の研究と治療法

歯科界で注目される新しい材料と技術

近年、歯科業界では根面う蝕の治療に新しい材料と技術が導入されています。例えば、抗菌性を持つ新しいレジン材料や、再石灰化を促進するナノテクノロジーを用いた製品が登場しています。これにより、治療効果が向上し、再発のリスクを減少させることが期待されています。最新の治療法に関しては、歯科医師と相談しながら選択することが重要です。

再石灰化療法の進歩と可能性

再石灰化療法は、初期段階の根面う蝕を治療するための方法として注目されています。フッ素やカルシウム、リンを使って歯の再石灰化を促進し、う蝕の進行を防ぐことができます。特に、再石灰化をサポートする新しい製品や技術が開発されており、これにより患者の歯を自然な状態で保存する可能性が高まっています。

根面う蝕を防ぐ日常の心構え

健康な歯肉を守るための生活習慣

根面う蝕を防ぐためには、健康な歯肉を保つことが重要です。バランスの取れた食事を心がけ、ビタミンCやカルシウムなど、歯肉や歯の健康に必要な栄養素を積極的に摂取することが推奨されます。また、ストレスを減らし、十分な睡眠を取ることで、全身の健康が口腔内の健康にも寄与します。

歯磨き以外でできる予防法

キシリトールガムを噛む

歯磨き以外にも、根面う蝕を防ぐための予防法はいくつかあります。例えば、キシリトールガムを噛むことで唾液の分泌を促進し、口腔内のpHを中和することができます。また、フッ素入りの洗口液を使用することで、虫歯予防効果を高めることができます。こうした日常の小さな習慣が、根面う蝕の予防に大きな効果をもたらします。

家庭で取り入れたいセルフケアグッズの紹介

根面う蝕を防ぐためのセルフケアグッズとして、電動歯ブラシや歯間ブラシ、フロス、フッ素入りの歯磨き粉などが効果的です。特に電動歯ブラシは、手動では届きにくい部分もしっかりと清掃できるため、根面の清潔を保つのに役立ちます。また、フッ素入りの洗口液も、歯の再石灰化を助けるために有効です。こうしたグッズを取り入れることで、より効果的に根面う蝕を予防することができます。

根面う蝕は自然治癒するのか?

根面う蝕は自然治癒することはほとんどありません。特に根面はエナメル質が薄く、虫歯が進行しやすいため、適切な治療が必要です。初期段階であれば再石灰化を促進することで進行を食い止めることは可能ですが、一度損傷した部分は自然に修復されないため、専門的な治療が重要です。

他の虫歯との違いは?

根面う蝕は歯の根元に発生する虫歯であり、通常の虫歯とは異なる進行パターンを持ちます。一般的な虫歯はエナメル質から始まりますが、根面う蝕は象牙質が直接影響を受けやすいため、進行が早いのが特徴です。また、痛みが少ないため、発見が遅れることが多く、早期の診断と治療が特に求められます。

歯周病はそろそろ治療すべきか?

歯周病は根面う蝕のリスクを高めるため、早期に治療を行うことが推奨されます。歯周病が進行すると歯肉退縮が進み、根面が露出してしまうため、虫歯菌が根面に付着しやすくなります。歯周病を適切に治療することで、根面う蝕の発生リスクを大幅に軽減することができます。

当院では、天然歯の保存にこだわります。まずは虫歯を自然治癒させることを目標とし、極力抜かない・削らない・痛みの少ない低侵襲な虫歯治療が基本です。このように虫歯や歯周病を未然に防ぐ予防歯科に力を入れ、患者様ご自身の歯が一生持つように予防主体の歯科健診や定期的な歯のクリーニングを推奨しております。予防歯科は歯の寿命だけでなく病気の予防とも関係しています。江戸川区篠崎にて、根面う蝕・歯根の虫歯の治療や徹底した予防をご希望の方は当院までお気軽にご相談下さい。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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