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お子さんの「受け口(反対咬合)」に気づいたとき、
「このまま放っておいていいの?」「将来、手術が必要になるのでは?」と不安になる保護者の方も多いのではないでしょうか。

そんなときに効果的な矯正治療の一つが、**上顎前方牽引装置(MPA)**です。
この装置は、成長期の柔らかい骨を利用して上顎の成長を前方に導く非外科的な矯正方法で、将来的な手術の回避にもつながる重要な治療手段です。

本記事では、上顎前方牽引装置の仕組み・効果・適応年齢・治療の流れ・費用・注意点まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
将来の噛み合わせや見た目を整える第一歩として、ぜひご一読ください。

🔩 装置の構造と各部品の役割(フェイスマスク・ゴム・口腔内装置)

上顎前方牽引装置(MPA)は、上顎の成長を前方に促すために設計された矯正装置で、以下の3つの主要なパーツで構成されています。

上顎前方牽引装置(MPA)
上顎前方牽引装置(MPA)
  • フェイスマスク
     顔の外側に装着する装置で、額と顎にパッドを当てて固定します。口腔内装置とゴムで連結され、前方に引っ張る力を生み出します。
  • ゴム(エラスティック)
     フェイスマスクと口腔内装置をつなぐゴムバンドです。弾力性のある素材でできており、持続的に前方牽引力を加えます。日々交換が必要です。
  • 口腔内装置
     上顎の奥歯に取り付ける固定式の装置で、バンドやフックなどでゴムの牽引力を受け止め、骨に力を伝えます。

これらが一体となって機能することで、上顎の骨に継続的な力をかけ、成長方向をコントロールするのがMPAの仕組みです。

🧬 上顎の骨格成長を促すメカニズム

MPAは、**成長期の子ども(およそ7~12歳)**に対して最も効果を発揮します。その理由は、骨の柔軟性と成長ポテンシャルが高い時期に外部から持続的な力を加えることで、骨格の形を望ましい方向に誘導できるためです。

具体的には:

  • 上顎に前方への力を加える → 骨の成長軌道を前に導く
  • 下顎とのバランスを整える → 反対咬合(受け口)を改善
  • 手術を回避できるケースがある → 骨格的な成長不足を早期に補正可能

この力の方向性とタイミングが適切であれば、見た目の改善だけでなく、咬み合わせや発音、咀嚼機能の向上にもつながります。

🔄 他の矯正装置(チンキャップ・バイオネーター)との違い

MPAと似た目的で使用される矯正装置には、チンキャップバイオネーターなどがあります。それぞれの特徴と違いを見てみましょう。

装置名目的主な対象適応年齢主な違い
上顎前方牽引装置(MPA)上顎の前方成長促進上顎の成長不足による反対咬合小児(7〜12歳)上顎に前方の力を加える
チンキャップ下顎の成長抑制下顎が過度に成長している症例小児(6歳〜)下顎を後方に抑える力
バイオネーター上下顎のバランス調整筋機能に関与する症例成長期全般筋肉・咬合誘導を重視

MPAは上顎の骨の発育を助ける唯一の装置であり、受け口治療において特に有効です。一方、チンキャップやバイオネーターは下顎や筋機能へのアプローチで、目的や作用点が異なります。

🔍 反対咬合(受け口)の原因と分類(骨格性/歯列性)

反対咬合、いわゆる「受け口」は、上の前歯が下の前歯より内側に位置する噛み合わせの異常です。原因は大きく分けて以下の2種類に分類されます。

骨格性の反対咬合
骨格性の反対咬合
  • 骨格性の反対咬合
     上顎の成長が不十分(上顎劣成長)または下顎の過成長(下顎前突)が原因で、骨の土台そのものにズレがある状態です。遺伝的な影響が大きく、MPA(上顎前方牽引装置)での治療が有効です。
  • 歯列性の反対咬合
     顎の骨格に大きな問題はなく、歯だけが内側に倒れているなど、歯の位置のズレによって起こる軽度な受け口です。この場合、ワイヤー矯正やマウスピース矯正で改善が可能です。

MPAは主に骨格性の反対咬合に用いられます。とくに「上顎が育たずに下顎が目立って見える」タイプの子どもに適応されます。

📊 小児〜成人までの適応年齢と効果の違い

上顎前方牽引装置の治療効果は、年齢によって大きく異なります。以下に年齢層別の適応と効果をまとめます。

年齢層効果の期待度特徴と治療の考え方
7〜12歳(成長期)⭐⭐⭐⭐⭐骨の成長を積極的に誘導できる。MPAが最も効果を発揮する時期。外科手術を回避できる可能性大。
13〜18歳(思春期)⭐⭐〜⭐⭐⭐骨の成長が緩やかになるため、効果は限定的。早期から治療を開始すれば一定の成果も。
19歳以上(成人)⭐〜⭐⭐骨格は完成しているため、骨の移動は困難。主に歯列の調整が目的となり、必要に応じて外科矯正を併用

特に成長期の小児では、MPAによって骨の成長方向をコントロールできるため、見た目や機能の大幅な改善が期待できます。

⏳ 成長期と非成長期での治療選択のポイント

MPA治療は、成長期と非成長期で選択肢や方針が異なります。

✅ 成長期(7~12歳)の場合:

  • 骨が柔らかく、上顎の成長を前方向に導くことが可能
  • 顎のズレを早期に補正することで、将来的な外科手術を回避できるケースが多い。
  • 成長に合わせて矯正計画を柔軟に調整できる。

⚠️ 非成長期(13歳以降〜成人)の場合:

  • 骨の成長がほぼ停止しており、骨格的な補正は難しい
  • 歯の位置だけを動かす矯正になるため、改善に限界がある。
  • 重度の骨格性反対咬合では、外科的処置(顎矯正手術)との併用が必要になることも。

🏥 初診から装置装着までのプロセス(診断・型取り・装着指導)

上顎前方牽引装置(MPA)の治療は、以下のステップで進みます。初診から装着までの流れを理解しておくことで、安心して治療を受けられます。

  1. 初診・カウンセリング
     歯並びやかみ合わせ、受け口の症状について問診・視診を行い、必要に応じてレントゲン、写真撮影を実施します。
  2. 精密診断と治療計画の立案
     顎の骨格、上下の咬み合わせ、成長の進行状況などを総合的に分析。治療方針や装置の適応を医師と保護者が相談して決定します。
  3. 型取り・装置製作
     上下の歯列をアルジネート等で型取りし、口腔内装置を個別に製作します。同時にフェイスマスクの準備も行われます。
  4. 装着と使用指導
     完成した装置を実際に装着し、使用方法・ゴムのかけ方・装着時間などを詳しく説明。自宅での管理や清掃方法も指導されます。

📆 治療期間の平均(6ヶ月〜2年)と進行の流れ

MPAの使用期間は個人差がありますが、一般的には以下のようなスケジュールが目安になります。

年齢層平均使用期間備考
小児(7~12歳)約6ヶ月〜1年半成長を活かして早期改善が期待できる
思春期以降(13歳〜)約1〜2年成長が止まりつつあるため、経過観察を長く要する場合も

治療の進行イメージ:

  • 🔹 0〜3ヶ月:装置の使用習慣をつける期間。軽い違和感が出やすいが、慣れる。
  • 🔹 3〜12ヶ月:顎骨の成長促進が進み、噛み合わせの変化が見られ始める。
  • 🔹 12ヶ月以降:改善が定着するまで使用を継続。必要に応じて補助的な矯正治療を追加。

定期的な通院(おおむね月1回)では、装置の状態確認や調整を行い、進行度合いに応じた方針修正が行われます。

🔧 装着時間の目安と継続の重要性(12〜14時間/日)

MPA治療で最も重要なのが毎日の装着時間の管理です。推奨される装着時間は以下の通りです。

  • 1日あたり12〜14時間の装着が理想
    • 主に就寝時+家庭でのリラックスタイムに使用
    • 学校や外出時には外してOKだが、装着時間が足りないと効果が大きく低下

💡 継続が治療成功のカギ!
装着時間を守らないと、骨への力が継続せず、期待される成長誘導が起きません。以下のような工夫が推奨されます:

  • 就寝前ルーティンに組み込む
  • 家族で装着時間を記録する
  • 痛みや違和感がある場合はすぐに相談する

💎 非外科的な骨格矯正が可能|成長を味方にする治療

上顎前方牽引装置(MPA)の最大のメリットは、外科手術に頼らず骨格の改善を目指せる点です。とくに**成長期の小児(7〜12歳)**においては、自然な骨の成長を前方に誘導することで、顎のバランスや咬み合わせの改善が期待できます。

主なメリットは以下の通りです:

  • 🦴 上顎骨の前方成長を促進し、下顎とのズレを調整
  • 👄 噛み合わせや顔貌のバランスが自然に改善される
  • 💉 手術を回避できる可能性が高まり、身体的・心理的負担が少ない
  • 🧒 成長を活用するため治療の効果が持続しやすい

このように、MPAは「骨格性の受け口」に対して、早期に介入することで将来的な選択肢を大きく広げる装置です。

💡 治療の成功には「装着時間の遵守」と「協力」が鍵

MPA治療を成功に導くうえで最も重要なのが、装置の使用ルールを守ることです。いくら優れた装置でも、患者本人の協力がなければ、治療効果は得られません。

特に大切なポイント:

  • 🕒 1日12〜14時間の装着を継続すること
  • 🗓️ 通院時のチェックと装置の調整を怠らないこと
  • 👨‍👩‍👧 保護者のサポートと声かけも成功の要素

✔ 「痛いから今日はやめておこう」
✔ 「面倒だからつけたくない」
こうした日々の小さなズレが、治療効果に大きく影響します

家庭での管理体制を整え、医師との連携をしっかりとることで、装置の力を最大限に活かすことができます。

⚠️ 不快感・見た目・装置の破損などの注意点

MPAには多くのメリットがある一方で、使用中に感じやすいデメリットや注意点もあります。治療前にしっかりと理解しておくことで、トラブルを最小限に抑えることが可能です。

主なデメリット・注意点:

  • 😣 初期の不快感や痛み
     装着初期は頬や顎に圧力がかかり、違和感や軽い痛みを感じることがあります。ただし、多くは数日で慣れます。
  • 🙈 見た目が気になる
     フェイスマスクは顔の外に装着するため、外出時に使用しづらいと感じる子どももいます。就寝中など家庭内中心の使用でも効果を出すことは可能です。
  • 🛠️ 装置の破損や変形
     落としたり強く扱うとパーツが破損することがあります。破損したまま使用すると治療効果が低下するため、異常を感じたらすぐ通院しましょう。
  • 🦷 口腔内の清掃が不十分だと虫歯リスクが高まる
     装置の使用によって歯磨きしづらくなることがあるため、フッ素や補助器具の使用が推奨されます。

🪥 毎日の清掃手順と使用上のポイント

上顎前方牽引装置(MPA)は毎日使用するものだからこそ、衛生管理が非常に重要です。装置を清潔に保つことで、皮膚トラブルや口腔内の感染リスクを予防できます。

上顎前方牽引装置(MPA)の衛生管理
上顎前方牽引装置(MPA)の衛生管理

🧴 基本の清掃方法:

  1. フェイスマスクの清掃
     ・使用後は毎日、柔らかい布やブラシで汗や皮脂を拭き取る
     ・中性洗剤を薄めて表面を軽く洗浄し、ぬるま湯でしっかり流す
     ・完全に乾かしてから収納または再使用
  2. 口腔内装置の清掃
     ・取り外しが可能な場合は、歯ブラシで磨く
     ・口腔内を毎食後に丁寧にブラッシングし、フロスや洗口液も併用
     ・虫歯や歯周病の予防にフッ素配合の歯磨き粉を推奨

📝 ポイント:

  • 熱湯やアルコールでの洗浄は変形の原因になるためNG
  • 清掃後は風通しのよい場所で自然乾燥
  • 汚れが落ちにくい場合は歯科医院で専用クリーナーの相談を

🍽️ 食事中の取り扱いと注意すべき食品

MPAは、食事中に取り外す必要がある装置です。誤った使用は装置の破損やトラブルの原因になります。

🥢 装置を外すタイミング:

  • 食事中(必須)
  • 歯磨き時
  • 激しい運動をする際

🍬 避けるべき食品:

  • ナッツ・せんべい・氷などの硬いもの → 装置や歯に過剰な力がかかる
  • キャラメル・ガムなど粘着質のもの → パーツの脱落・変形リスク
  • 着色の強い飲食物(カレー・コーヒー・濃いソース類)→ ゴムの変色の原因

🍎 おすすめ対策:

  • 食事前に装置を清潔なケースに保管
  • 食後はしっかりと口腔ケアを済ませてから装着

🛠 装置が壊れた・違和感があるときの対応方法

MPAは精密な構造を持つ医療器具のため、違和感や破損が起きた場合には即対応が必要です。

🔧 よくあるトラブルと対処法:

トラブル内容応急対応歯科での処置
ゴムが切れた・緩んだ予備ゴムと交換(医師から支給)ゴムの張力を再調整
フックやフレームが曲がった使用を中止し来院部品交換または再設計
顔に圧痛や皮膚炎が出た装置を外して洗浄し、保湿パッドの位置調整・交換

💬 相談の目安:

  • 2〜3日続く痛みや口内炎
  • 毎日の装着が困難な不快感
  • 明らかなゆがみや破損

📞 対処ポイント:

  • 自己修理は絶対にしないこと(悪化の原因になります)
  • 装置に異常を感じたら、すぐ歯科医院へ連絡

上顎前方牽引装置(MPA)は、年齢や症状に応じてさまざまな形で効果を発揮します。ここでは、成長期の小児症例成人女性の複合治療例の2ケースを紹介し、治療経過と結果を具体的にご覧いただきます。

👦 小児症例(7歳男児)|受け口改善の経過と結果

患者情報:

  • 年齢:7歳
  • 主訴:前歯の噛み合わせが反対(受け口)で、見た目と将来の歯並びが心配
  • 診断:骨格性下顎前突(上顎の成長不足)
  • 治療方針:上顎前方牽引装置による骨格誘導治療

🩺 治療ステップ:

  1. 初診時検査
     レントゲン分析で上顎の劣成長を確認し、成長期の矯正治療が適応と判断。
  2. 装置装着
     口腔内装置+フェイスマスクを装着し、1日12〜14時間の使用を指導。
  3. 経過観察(毎月1回)
     上顎骨の前方成長を評価しながらゴムの張力を微調整。

📈 治療経過と結果:

  • 治療期間:約1年4ヶ月
  • 装置装着5ヶ月目で噛み合わせの改善が明らかに
  • 1年後には見た目・機能ともに大きな改善
  • 最終的に外科手術なしで骨格バランスが整う

📸 ビフォーアフターの変化:

項目治療前治療後
噛み合わせ下の前歯が上の歯より前正常な切端咬合
横顔の印象顎が出て見えるバランスの取れた輪郭
成長誘導上顎の成長不足正常な前方成長を確保

👩 成人症例(25歳女性)|歯列矯正+装置併用の例

患者情報:

  • 年齢:25歳
  • 主訴:受け口による外見と発音へのコンプレックス
  • 診断:軽度の骨格性下顎前突と歯列不正
  • 治療方針:上顎前方牽引装置+ワイヤー矯正の併用

🩺 治療ステップ:

  1. 骨格的診断
     セファロ分析により、上顎の位置異常を確認。ただし手術を希望しないため、装置を使用しての微調整を選択。
  2. プロトラクター装着+歯列矯正
     歯の移動と顎位の改善を同時進行。1日12時間以上の装着指導。
  3. 追加矯正と仕上げ
     歯列の仕上げと咬合安定のため、後半はワイヤー矯正をメインに。

📈 治療経過と結果:

  • 治療期間:約2年
  • 装置使用によって上顎位置が前方にわずかに改善
  • 歯列矯正により見た目と噛み合わせが安定
  • 外科手術なしでも機能的・審美的に十分な改善

📸 ビフォーアフターの変化:

項目治療前治療後
発音サ行・タ行に違和感正常な明瞭度に回復
上顎の位置やや後退水平的に改善
自己評価見た目に強い不満コンプレックスが軽減し笑顔に自信

上顎前方牽引装置(MPA)による治療は、症状や治療方針によって費用の差が大きいのが特徴です。ここでは、自費診療と保険診療の違いや、費用を抑えるための制度についてわかりやすく紹介します。

💳 自費治療の費用相場(30〜50万円)

MPAによる矯正治療は、基本的に自由診療(自費)扱いとなることが多く、費用は以下のような範囲で設定されます。

💸 一般的な費用相場(全国平均):

内容費用目安
初診・精密検査料1〜3万円
装置の製作・装着15〜25万円
定期調整・通院費月5,000〜10,000円前後
トータル費用約30〜50万円

※装置の種類(フェイスマスク型/プロトラクター型)、使用期間、通院頻度により変動します。

📝 多くの医院では、分割払いやデンタルローンなどの支払いサポートもあります。費用を理由に治療をあきらめる前に、まずは相談しましょう。

🏥 健康保険が使える条件と対象

MPAによる治療で健康保険が適用されるケースも一部存在します。以下の条件を満たす場合に限り、公的保険で治療が可能になります。

保険適用の主な条件:

  1. **骨格性の反対咬合(顎変形症)**と診断されたケース
  2. 顎口腔機能診断施設として認定されている医療機関で治療を受けること
  3. **成長期の患者(通常は15歳未満)**であること

📌 対象例:

  • 遺伝的に明らかな顎のズレ(上顎の劣成長など)
  • 外科矯正が将来的に必要と判断される症例
  • 口蓋裂や先天性疾患に伴う矯正治療

👛 保険診療の場合:
3割負担で治療が可能となり、費用は数万円〜10万円前後に抑えられます。

⚠️ 成人や審美目的の矯正には保険は適用されません。

🧾 医療費控除や補助制度で費用負担を軽減する方法

保険が使えない場合でも、公的制度を活用すれば費用を一部軽減することが可能です。

🧾 医療費控除(確定申告で税金還付)

  • 対象: 年間10万円以上の医療費(本人および扶養家族分)
  • 控除額の目安: 所得により異なるが、数万円の還付になることも
  • 必要書類:
    • 治療費の領収書
    • 医師の治療方針がわかる説明書(美容目的でないことの証明)
    • 交通費(通院分も対象)

💡 例:年間40万円の矯正治療費を支払った場合、所得税率によっては6〜10万円の還付が受けられるケースも。

💠 自治体の補助制度(小児対象)

一部の自治体では、条件を満たせば小児矯正に対する補助金制度を設けているところがあります。

  • 支給額:1〜10万円前後(地域によって異なる)
  • 条件:所得制限や年齢制限あり
  • 確認方法:お住まいの自治体の公式サイトまたは窓口

上顎前方牽引装置(MPA)の使用に関しては、多くの患者さんや保護者の方が不安や疑問を抱えています。ここでは、特に寄せられることの多い3つの質問について詳しく解説します。

🩹 装着中の痛みはありますか?

はい、初期段階では軽い痛みや違和感を感じることがあります
特に以下のような症状が一時的に見られます:

  • フェイスマスクが顔に触れる部分に圧迫感や赤み
  • ゴムによる引っ張られるような感覚
  • 上顎の奥歯にかかる軽い痛みや動揺感

💡 これらは装置に慣れていない初期(1週間以内)に多く見られ、ほとんどの方は数日〜1週間で慣れます。

📝 対処方法:

  • ゴムの張力が強すぎる場合は、医師に相談して調整
  • パッド部分に保護シートを貼って肌への負担を軽減
  • どうしても痛みが強い場合は、装着時間を一時的に短縮して調整することも可能

痛みが2週間以上続く場合や、皮膚に水ぶくれ・炎症が出た場合は早めに通院しましょう。

📉 治療が失敗するケースは?

上顎前方牽引装置は、正しく使えば高い効果が期待できる装置ですが、以下のような理由で治療効果が得られない場合もあります。

🧾 よくある失敗原因:

原因内容
装着時間の不足推奨時間(12〜14時間/日)を守れないと、骨に十分な力が加わらず効果が出にくい
成長タイミングを逃した成長期を過ぎたあとに開始すると、骨格のコントロールが難しくなる
装置の破損やゆがみを放置ゴムやパーツの劣化・ズレが矯正力に影響
通院を中断した定期的な調整が行われず、効果が不安定になる可能性が高い

👨‍⚕️ 治療を成功に導くには:

  • 医師の指示通りに装着時間を守る
  • 痛みや異常を感じたらすぐに相談
  • 月1回の通院を欠かさず継続

🔚 いつ装置を外せますか?

装置の使用終了は、**「治療の目的が達成されたと医師が判断したとき」**に行われます。
一般的には以下のような基準で決定されます:

📌 装置を外す主なタイミング:

  1. 噛み合わせの改善が安定した場合
     反対咬合が解消され、咬合が安定してきたことを確認。
  2. 上顎の前方成長が十分に得られた場合
     セファログラムなどの分析で骨格バランスが整ったと診断されたとき。
  3. 成長が終わり、MPAの役割が終了した場合
     成長のピークが過ぎ、装置による骨誘導の効果が見込めなくなったと判断されたとき。

📅 装着期間の目安:

  • 小児の場合:約6か月〜1年半
  • 思春期以降の場合:1〜2年

🔄 保定期間(リテーナー)の重要性:
治療後は後戻りを防ぐために、リテーナー(保定装置)の装着が推奨されることがあります。

上顎前方牽引装置(MPA)は、成長期の子どもの反対咬合(受け口)を非外科的に改善できる貴重な矯正装置です。適切な時期に適切な方法で使用することで、顎の骨格バランスを整え、将来的な健康と見た目の両面において大きなメリットをもたらします。

🧭 早期発見・早期治療が成功の鍵

MPAの効果を最大限に活かすには、7〜12歳ごろの骨が柔らかく成長が活発な時期に治療を開始することが重要です。

  • 骨の成長を前向きに誘導できる
  • 将来的な外科矯正や抜歯のリスクを回避できる
  • 顎の発育と顔貌バランスを自然に整えられる

🕰「様子を見よう」は機会損失になりかねません。少しでも心配がある場合は、早めの受診・診断が将来の大きな差につながります。

👨‍⚕️ 歯科医師との連携と患者の協力が成果を左右する

MPA治療は、装置の力だけで完結するものではありません。治療を成功に導くためには、患者と医療者の二人三脚の姿勢が欠かせません。

  • 歯科医師の指示通りに装着時間(12〜14時間/日)を守る
  • 清掃・管理・通院を習慣化し、日々の継続を意識する
  • 痛みや違和感があればすぐ相談し、自己判断で中断しない

家族のサポートも非常に重要です。お子さんのモチベーションを保つために、小さな成果にも一緒に喜んであげましょう。

🏁 信頼できる専門医のもとでの治療が安心の第一歩

MPAは高度な診断力と調整スキルが求められる装置です。だからこそ、小児矯正に精通した矯正専門医での治療開始が大切です。

  • 顎の成長を正確に見極める「成長予測診断」
  • 医療機関による「顎口腔機能診断」の有無
  • 治療中のフォロー体制(定期調整・装置交換対応など)

💬「どこで治療を始めるか」が、将来の噛み合わせと顔貌形成に直結します。治療の質と信頼性を最優先に、慎重に選ぶことが重要です。


📌 まとめると…

✅ MPAは成長期の反対咬合に最適な非外科的治療法
✅ 正しい時期の使用と毎日の継続が効果を左右する
✅ 患者・家族・医師が連携し、信頼できる環境で治療を行うことが成功のカギ

「将来、手術が必要だったかもしれない」その選択を、今日の一歩で変えることができます。
迷ったら、まずは専門医に相談してみましょう。


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当院では、成長期のお子さまに最適な「上顎前方牽引装置(MPA)」による矯正治療を行っています。
この装置は、骨格の成長を利用して上顎の発育を促し、将来的な手術を回避できる可能性のある非外科的な治療法です。

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【動画】アデノイド顔貌

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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