- 1. 歯周病は感染症!プラークから始まるバイオフィルムの形成プロセス
- 1.1. 歯周病は歯周病原菌の感染症
- 1.1.1. 歯周病原菌によるバイオフィルムの形成過程
- 2. 歯周病の原因菌を解明!ピラミッドで見る細菌の毒性ランク
- 2.1. 歯周病菌のピラミッド
- 2.2. 歯周病菌の種類
- 2.2.1. Red complex(レッドコンプレックス)
- 2.2.2. Orange complex(オレンジコンプレックス)
- 2.2.3. Biue、Purple、Green、 Yellow complex
- 3. 生活習慣が原因で発症する歯周病
- 4. 生体の抵抗力が弱いために起こる歯周病
- 4.1. VAN DYKE理論
- 4.2. 宿主強化で歯周病予防
- 4.2.1. 感染抑制から宿主強化(炎症抑制)の時代へ
- 4.2.2. 炎症抑制の方法
- 5. 生活習慣を改善して歯周病予防
- 5.1. 糖質・砂糖の過剰摂取を止める
- 5.2. 低炭水化物食の効果
- 6. マグネシウムの摂取不足で歯周病に
- 7. オメガ3系脂肪酸(αリノレン酸)の摂取不足で歯周病に
- 7.1. オメガ3系脂肪酸を多く含む食品
- 7.2. 脂肪酸の分類
- 7.2.1. 飽和脂肪酸
- 7.2.2. 不飽和脂肪酸
- 7.2.2.1. 一価不飽和脂肪酸-オメガ9(オレイン酸)
- 7.2.2.2. 多価不飽和脂肪酸-オメガ6(リノール酸)
- 7.2.2.3. 多価不飽和脂肪酸-オメガ3(リノレン酸)
- 8. ドライマウス(口腔乾燥症)が原因の歯周病
- 9. カルシウムの過剰摂取は歯周病の原因に
- 9.1. カルシウム過剰摂取のリスク
- 9.2. カルシウムの過剰摂取と歯周病の関係
- 9.3. カルシウムの摂取量と骨粗鬆症の関係
- 9.4. 動物性タンパク質の摂取量と骨粗鬆症の関係
- 10. 江戸川区篠崎で歯周病予防・治療をご検討の方へ
- 11. 筆者・院長
歯周病は感染症!プラークから始まるバイオフィルムの形成プロセス
歯周病は歯周病原菌の感染症
歯周病原菌によるバイオフィルムの形成過程
プラーク(歯垢)
歯周病(歯槽膿漏)・歯肉炎も虫歯と同じ感染症です。歯周病を起こす原因菌は様々あります。それらの細菌群を媒介するのがプラーク(歯垢)です。
歯垢(プラーク)の成熟
歯周ポケット内で歯垢(プラーク)が成熟する。
バイオフィルムの形成
歯周組織を破壊できる力を持ったバイオフィルムが10年以上の長い年月をかけて形成されていきます。バイオフィルム内に存在する歯周病菌は、毒性の強いものから弱いものなど約20種類が存在しています。
歯周病の発症
一度歯周病が発症すると、完全に治療するのは難しいため、適切なメンテナンスによって進行を予防し、健康な状態を維持する必要があります。
当歯科ではエアフローという器械を使用し、メンテナンスを実施してています。
歯周病の原因菌を解明!ピラミッドで見る細菌の毒性ランク
歯周病菌のピラミッド
歯周病菌は毒性の高い細菌から低い細菌がいる!
800種類以上存在すると言われている口腔内細菌ですが、その殆どは歯周病と関連性の無い常在菌です。
口腔内細菌の中で歯周病の原因菌となるものを毒性の強い順から低い順へとピラミッド状の3段階に分類します。(Socranskyの分類)
最上位に位置するものがRed complex(レッドコンプレックス)、次の階層がOrange complex(オレンジコンプレックス)、 最下層がBiue、Purple、Green、 Yellow complexの三層に分類されています。
歯周病菌が感染する年齢
低リスクの歯周病菌は小学生頃に感染し、中リスクは中学生から高校生、高リスクは大学生頃に感染します。
歯周病菌の種類
Red complex(レッドコンプレックス)
高リスクの歯周病菌
ピラミッドの頂点に君臨する最も毒性が高く破壊的な歯周病原因菌は、Red complex(レッドコンプレックス)と呼ばれる次の3菌種です。
•P.g菌-Porphyromonas gingivalis (ポルフィロモナス・ジンジバリス)
•T.d菌-Treponema denticola(トレポネーマ・デンティコーラ)
•T.f菌-Tannerella forsythia(タンネレラ・ファーサイシア)
上記3菌種に加えて侵襲性歯周炎の発症に関係が深いA.a菌-Aggregatibacter actinomycetemcomitans(アグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス-Green complexに分類)も高リスクの歯周病原因菌の中に分類されることもあります。
Orange complex(オレンジコンプレックス)
中リスクの歯周病菌
中リスクの歯周病原因菌はOrange complex(オレンジコンプレックス)と呼ばれ全部で10種類ほどあり、その代表的なものが次の6つです。
•P.i菌-P. intermedia(プレボテラ・インターメディア)
•P.n菌- P. nigrescens
•C.r菌- C. rectus
•F.n菌- F. nucleatum
•E.n菌- E. nodatum
•P.m菌- P. micros
Biue、Purple、Green、 Yellow complex
低リスクの歯周病菌
•Biue complex(ブルー コンプレックス)- Actinomyces 属
•Purple complex(パープル コンプレックス)- V. parvula A. odontolyticus
•Green complex(グリーン コンプレックス)- Capnocytophaga species、 A. actinomycetemcomitans、 E. corrodens
•yellow complex(イエロー コンプレックス)-Streptococcus 属
生活習慣が原因で発症する歯周病
喫煙が原因の歯周病
タバコに含まれる有害物質(ニコチンやタールなど)が原因で歯肉の繊維化が起こり、毛細血管から歯周ポケット内への白血球の供給が不十分となります。
歯周組織の細菌に対する抵抗力(免疫力)が減少し、歯周病になり安く悪化しやすくなります。
歯肉の線維化で毛細血管の発達が弱まり、歯周病が重症化しても出血しないため手遅れになることがあります。
歯ぎしり・くいしばりが原因の歯周病
「歯軋り」や「くいしばり」「かみしめ」を総称して”ブラキシズム”と言います。
ブラキシズムはストレスが原因とも考えられていますが、咬合性外傷を起こす代表的なものです。ブラキシズム以外にも歯を複数本喪失し、入れ歯などを入れずに長期間噛んでいると、特定の歯に過剰な力がかかることがあります。
この様な過大な力によって歯根を支えている歯槽骨が破壊される現象が咬合性外傷です。
「歯軋り」や「くいしばり」を読む
常時、上下の歯を接触させているTCH(歯牙接触癖)でも咬合性外傷は起こるものと考えられます。
TCH(歯牙接触癖)を読む
この様な環境下で重症化リスクの高い歯周病菌が感染し、プラークコントロールが不良であると歯周病を発症させます。
生体の抵抗力が弱いために起こる歯周病
VAN DYKE理論
2012年 AAP(米国歯周病学会) Dr. Thomas Van Dyke教授が提唱した理論。
■ 歯周病は単なる歯周病原因菌による感染症(bacterial infection)であるという考え方から、炎症(inflammation)を引き起こす宿主に問題があるというもの。
つまり、歯周病は単なる感染症ではない為、これまでの感染症対策だけの治療は誤りである。
■ 歯周病は歯周組織の細胞環境に問題がある。
つまり、細胞環境にはマグネシウムとオメガ3系脂肪酸不足が原因。
Dr. Thomas Van Dyke教授略歴
ボストン大学歯周病科教授からSocranskyやHaffajeeらのバイオフィルム研究で世界的にも有名なForsyth(フォーサイス)研究所へ。
宿主強化で歯周病予防
感染抑制から宿主強化(炎症抑制)の時代へ
従来の歯周治療の基本は「感染抑制」のみにフォーカスされていました。「感染抑制」の基本はプラークコントロールとバイオフィルムの破壊であり、それらのことを中心に研究・治療が行われて来ました。
「全身疾患(全身の病気)や体質、ストレス、生活習慣などの口腔以外の因子に原因があり、歯周病が発生しうる」ということに着眼しない限り治療効果は限定的であり、口腔に限局した治療だけでは根本的治療にならないといえます。
炎症抑制の方法
- 高濃度ビタミンC点滴療法(酸化ストレスの減少)、マイヤーズカクテル点滴療法(抗糖化作用)
- 生活習慣の改善
- 腸内細菌環境の改善
- 栄養サプリメント療法
生活習慣を改善して歯周病予防
糖質・砂糖の過剰摂取を止める
炭水化物(糖質)を過剰摂取すると
炭水化物(糖質)や砂糖の過剰摂取により、脂肪細胞から炎症性物質が分泌され免疫力の低下が起こります。
また、グルコーススパイクにより血管内皮細胞の障害で、動脈硬化及び糖尿病を引き起こすことなど、歯周病の発症や増悪に関係します。
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糖質コントロールの注意事項
- 食事の食べる順番(野菜から食べて最後に炭水化物)
- 低GI値の炭水化物を食べる。(GI値が60以上の炭水化物は避ける)
- 急激な糖質コントロールは網膜の血管の損傷を起こしやすく眼底出血の危険があります。同時に、腎症の発症リスクも伴います。血糖値の高い糖尿病の患者さんは要注意です。
低炭水化物食の効果
ビタミン C 消費量低下
- 尿細管にてビタミン Cの再吸収→歯周病予防。
- ビタミンC不足はアミノ酸合成阻害、コラーゲン合成不全→歯周組織破壊。
インシュリン消費を減らす
- インシュリン分泌量の低下→ナトリウムの再吸収の低下により血圧の低下 。
脳の活性化
- 脳はケトン体を代謝出来るハイブリットエンジンなので糖を必ずしも必要としない。どうしても必要な場合はアミノ酸から糖を合成出来る。
脂肪細胞から分泌する悪玉サイトカインの減少
- 歯周病の予防
プラークの減少
- 歯周病の予防
マグネシウムの摂取不足で歯周病に
マグネシウムの効用
- マグネシウムは、天然のカルシウム拮抗剤(降圧剤)としての役割を果たします。カルシウムとナトリウムの過剰な細胞内への流入と蓄積を防ぎます。(カルシウムは血管を収縮させます。)
- マグネシウム不足はインシュリン抵抗性を引き起こします。(2型糖尿病予防に効果大)
- 中性脂肪の改善に役立つ。
- 不整脈を抑えて急性心筋梗塞を予防。
- 歯周病・口内炎の改善。
- 骨粗しょう症の予防と改善。
- 尿路結石の予防(シュウ酸カルシウムの結晶化を防ぐ)。
- 神経の興奮を鎮め、ストレスを解消する。
- 偏頭痛の予防と治療。
- 血液サラサラ効果。
- 筋肉の痙攣を抑える(こむら返り)。
- 慢性疲労の改善。
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オメガ3系脂肪酸(αリノレン酸)の摂取不足で歯周病に
オメガ3系脂肪酸(αリノレン酸)の効用
アメリカで20歳以上の9,180人の成人を調べた研究では、オメガ3系脂肪酸の摂取量が高いグループほど歯周病になりにくい結果が得られています。
オメガ3系脂肪酸を多く含む食品は、亜麻仁油、えごま油、青みの魚(さば、さんま、いわし、マグロなど)などです。
オメガ3系脂肪酸(αリノレン酸)の効用
- 血圧低下。
- がんの予防。
- 血栓の予防。
- 歯周病の予防と改善。
- 中性脂肪の減少。
- アレルギーの予防。
- 抗炎症作用。
- 抗うつ作用。
- 認知症の予防。
オメガ3系脂肪酸を多く含む食品
EPA
魚油食品、肝油、ニシン、サバ、サケ、イワシ、ナンキョクオキアミ。
DHA
魚油食品、タラ、ニシン、サバ、サケ、イワシ、ナンキョクオキアミ。
亜麻仁油・えごま油
αリノレン酸などの不飽和脂肪酸。
脂肪酸の分類
飽和脂肪酸
- バター、ラード、ショートニング、マーガリン、ココナッツオイル
※ショートニングやマーガリンの中には動脈硬化を引き起こすトランス脂肪酸が多く含まれている為、摂取を控える必要があります。
不飽和脂肪酸
一価不飽和脂肪酸-オメガ9(オレイン酸)
- オリーブオイル、キャノラー油、ひまわり油、ピーナッツ油、パーム油、紅花油
多価不飽和脂肪酸-オメガ6(リノール酸)
- コーン油、大豆油、ごま油、くるみ油、アーモンド油、紅花油
多価不飽和脂肪酸-オメガ3(リノレン酸)
- 亜麻仁油、イワシ、サンマの油(DHA・EPA)シソ油、エゴマ油
ドライマウス(口腔乾燥症)が原因の歯周病
ドライマウス(口腔乾燥症)の原因
ドライマウス(口腔乾燥症)の原因は、唾液腺障害の可否で大別されます。
唾液腺障害で起こるドライマウスにシェーグレン症候群や糖尿病、唾液腺は正常でも起こるドライマススに薬剤の副作用やストレス(神経性)などがあります。
薬剤以外にも「味の素」のグルタミン酸ナトリウム(MSG)でも起こりえます。
唾液の分泌が減少すると唾液に含まれる抗菌物質や自浄作用が低下するため、歯周病の発症リスクが高まります。
ドライマウスの対策・改善法
- 断薬や減薬を考える。不必要な薬の投与が横行している現実。
- 味の素の使用を中止。
- 水分の補給。
- ナトリウム・カリウムのミネラルバランスを整える。 ナトリウム(食塩)を減らし、カリウムの多い食材(昆布、ワカメ、ひじき、パセリ、こんにゃく等)などをバランスよくとる。→細胞内液と細胞外液の適切な関係を保つ。
- リラックスした日常生活→自律神経が安定。交感神経優位な生活はドライマウスを招く。
- 還元型コエンザイムQ10。還元型CoQ10の抗酸化作用が口腔内の健康の維持・増進に寄与することが期待されます。
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カルシウムの過剰摂取は歯周病の原因に
カルシウム過剰摂取のリスク
カルシウムを多く摂ったところで、ホルモンをだまして骨を作らせることはできません。建設作業員に余分なレンガを運ばせたところで、ビルが設計されたものより大きくならないのと同じです。
ほとんどの人にとって重要なのはカルシウムを多く摂る事ではなく、骨からカルシウムが失われるのを防ぐことです。
過剰なカルシウムは不要な場所に沈着します。これを異所性石灰化と言います。
「命の食事(Food for Life)」Neal Barnard,MD著
カルシウムの過剰摂取と歯周病の関係
- 口腔内が石灰化しやすい。⇒歯石の沈着で歯周病になり易い。
- 顎骨の脆弱化及び骨吸収の促進。⇒カルシウムは意識して摂取しないことが重要です。
カルシウムの摂取量と骨粗鬆症の関係
カルシウムの摂取量が多いスウェーデン、ニュージーランド、アメリカでは、骨粗しょう症により大腿骨頸部骨折が起きやすいことがわかります。一方で、カルシウムの摂取量が少ない香港では骨折が少なくなっています。
骨粗しょう症の患者さんは歯周病になりやすく、歯周病の患者さんは骨粗しょう症が増悪しやすいという相関関係があります。
動物性タンパク質の摂取量と骨粗鬆症の関係
動物性タンパク質の摂取量が多いノルウェイ、スウェーデン、デンマークでは、骨粗しょう症により骨折が起きやすいことがわかります。一方で、動物性タンパク質の摂取量が少ない南アフリカ現地人、パプアニューギニア、シンガポールでは骨折が少なくなっています。
江戸川区篠崎で歯周病予防・治療をご検討の方へ
ふかさわ歯科クリニック篠崎では、患者様の大切な歯を1本でも延命するため、軽度歯周病から重度歯周病に至るまで様々な対策を行い、歯周病予防をはじめ、早期発見・早期治療で症状の改善・維持を行い、抜歯回避に努めております。
歯周病の原因を理解して歯周病予防に努めてください。江戸川区篠崎で歯周病予防・歯周病治療をご希望の方は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談下さい。
筆者・院長
深沢 一
Hajime FULASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。