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🦷「親知らずの抜歯って、上と下で痛さが違うの?」
多くの方が歯科医院で一度は抱えるこの疑問。実は、上の親知らずよりも下の親知らずの方が痛みや腫れが強く出ることが多いのです。
この記事では、上と下の抜歯における痛みの違いやその原因を、歯科医師の視点からわかりやすく解説。さらに、実際のケース別の比較や術後の過ごし方、痛みを軽減するコツまで、徹底的に掘り下げて紹介します。
「抜歯が怖い」「できれば後悔したくない」と感じている方は、ぜひ参考にしてください。

親知らずの抜歯で「上と下どちらが痛いのか?」という疑問に対する答えは、「下の親知らずの方が痛みやすい」です。その理由は複数あります。

下の親知らずの方が痛みやすい
下の親知らずの方が痛みやすい

🧠骨の構造の違いが痛みの原因

上顎の骨は柔らかく、親知らずが比較的抜きやすいのに対し、下顎の骨は密度が高く硬いため、抜歯に時間がかかる傾向があります。このため、下顎の親知らずは外科的処置(歯を分割して抜くなど)が必要になることが多く、それが術後の痛みや腫れを引き起こします。

💉下顎は麻酔が効きにくい?

下顎には「下歯槽神経(かしそうしんけい)」が通っており、この神経の周囲に麻酔を効かせる必要があります。上顎よりも神経が深い位置にあるため、麻酔が効くまでに時間がかかったり、効きが甘くなることがあります。結果として、術中の不快感や痛みが強く感じられることがあります。

🗓術後の腫れやすさ・回復期間の違い

下の親知らずの抜歯後は、腫れや痛みが出やすく、回復にも時間がかかる傾向があります。特に、水平埋伏など複雑な生え方の場合は、術後2〜3日ほど強い腫れを伴うこともあります。上顎の場合は、比較的軽度な処置で済むため、痛みも短期間でおさまりやすいです。

親知らずの痛みは「生え方」に大きく左右されます。ここでは実際の症例に基づいて、上と下の親知らず抜歯の違いを比較してみましょう。

🧓まっすぐ生えていた上の親知らず(軽度)

上顎にまっすぐ生えていた親知らずの場合、抜歯は比較的簡単に終わります。歯が骨に深く埋まっておらず、器具で少し動かすだけで抜けることもあります。処置時間も短く、痛みや腫れも最小限で済むケースが多いため、「思っていたより楽だった」と感じる患者さんがほとんどです。

😖横向きに埋まった下の親知らず(難易度高)

一方、下顎に横向きに埋まっている「水平埋伏智歯」の場合は、歯肉を切開し、歯を分割して取り出すなどの外科的処置が必要になります。処置時間が長くなり、術後の痛みや腫れも強くなりやすいです。腫れが3〜5日ほど続くこともあり、食事や会話に支障をきたす場合もあります。

🧾抜歯後の患者の声・体験談から見る「痛みの差」

多くの患者さんが「上の抜歯は大したことなかったが、下は痛かった」「下の親知らずは腫れも強く、口が開けにくくなった」と感じています。SNSやレビューサイトでも、下顎抜歯の方が大変だったという声が多数を占めています。

親知らずの抜歯後の痛みは、「上か下か」だけで決まるものではありません。実は、さまざまな要素が関係しています。以下のような点も、痛みの程度に大きく影響を与えます。

📏生え方(水平埋伏・垂直・斜め)

まっすぐ垂直に生えている親知らずは抜歯が簡単で、痛みも軽く済みます。しかし、歯が斜めに傾いていたり、完全に横向きに埋まっている「水平埋伏智歯」の場合は、骨を削ったり歯を分割する必要があり、術後の腫れや痛みが強く出る傾向があります。

生え方(水平埋伏・垂直・斜め)
生え方(水平埋伏・垂直・斜め)

👨‍⚕️担当医の技術・設備

抜歯は歯科医師の経験と技術力によっても結果が変わります。設備が整っている医院では、事前に正確な診断ができ、より安全かつスムーズな処置が可能です。経験豊富な口腔外科医が対応することで、処置時間が短縮され、術後の痛みも軽減されやすくなります。

担当医の技術・設備
担当医の技術・設備

🧬個人差(痛みの感じ方・体質)

痛みの感じ方には個人差があります。同じ処置をしても「ほとんど痛くなかった」と感じる人もいれば、「我慢できないほど痛かった」という人もいます。また、体質によっては腫れやすかったり、治癒に時間がかかるケースもあります。免疫力や日常の生活習慣も影響します。

💉歯科麻酔に伴う痛みとは?

💊局所麻酔(浸潤麻酔)の痛み

  • 浸潤麻酔は歯科治療で最もよく使われる麻酔方法です。
  • 針を刺す痛みがありますが、事前に表面麻酔を塗布することで痛みを軽減できます。
  • **針のない麻酔器(シリジェット)**などの機器を併用することで、より快適な麻酔が可能です。

🦷下顎孔伝達麻酔の痛みと使用ケース

  • 伝達麻酔は下顎神経全体に麻酔効果を及ぼす方法で、効果が高いのが特徴です。
  • ただし、下の親知らずの抜歯ではリスクがあるため通常は使用しません。神経損傷の危険性があるためです。
  • 浸潤麻酔が効きにくい場合や、神経との距離が十分ある場合に限り、例外的に行うことがあります。
  • 実際の施術では、伝達麻酔は痛みが少ないと言われています。

下の親知らずの抜歯は、上と比べて難易度が高いケースが多く、歯科医師にとっても慎重な判断が求められます。その主な理由を解説します。

🔬神経(下歯槽神経)との距離

下の親知らずのすぐ近くには「下歯槽神経(かしそうしんけい)」が走っており、抜歯時にこの神経を傷つけてしまうと、術後に唇や顎のしびれが残るリスクがあります。そのため、歯の根と神経の位置関係を正確に把握した上で、慎重に抜歯する必要があります。

神経(下歯槽神経)との距離が近い
神経(下歯槽神経)との距離が近い

🦴骨が硬くて分割抜歯が必要

下顎の骨は密度が高く硬いため、歯を一気に引き抜くことが難しい場合があります。とくに、横向きに埋まっている親知らずの場合は、歯をいくつかのパーツに分けて取り出す「分割抜歯」が行われます。この手技には技術力が必要で、処置時間が長くなる傾向があり、結果として痛みや腫れが強く出ることがあります。

骨が硬くて分割抜歯が必要
骨が硬くて分割抜歯が必要

🦷通常の抜歯後の痛みの経過

  • 親知らずを抜いた後、痛みのピークは通常2〜3日後に現れます。
  • その後は徐々に軽減し、1週間ほどで落ち着くことが多いです。
  • 適切なケアを行えば、強い痛みが長引くことはほとんどありません。

⚠️ドライソケットに注意

  • 特に下顎の親知らずを抜いた後に強い痛みが続く場合、**ドライソケット(抜歯窩乾燥症)**の可能性があります。
  • ドライソケットは、血餅(けっぺい=血のかさぶた)が失われることで骨が露出し、ズキズキとした痛みが数日〜1週間以上続きます。
  • 一般的な痛みと違い、市販の鎮痛薬では効きにくいため、早めに歯科を受診しましょう。

親知らずの抜歯後は、適切なケアをすることで痛みや腫れを最小限に抑え、早期回復につなげることができます。以下の3つのポイントを押さえましょう。

抜歯後の痛み対策と生活の注意点
抜歯後の痛み対策と生活の注意点

💊鎮痛剤・抗生物質の正しい使い方

抜歯後は、痛み止め(ロキソニンなど)や抗生物質(ペニシリン系・セフェム系など)が処方されるのが一般的です。指示通りのタイミングで服用することが重要で、痛みが出てから飲むのではなく、予防的に服用することで効果を最大化できます。勝手な中断や飲み忘れは、痛みの悪化や感染のリスクを高めます。

🧊冷やすタイミングと方法

術後24時間は、腫れや炎症を抑えるために外側から冷やすと効果的です。氷嚢や保冷ジェルをハンカチなどで包み、10分冷却→10分休憩を繰り返します。ただし、冷やしすぎや長時間の連続使用は逆効果になることもあるため、適度に行うのがコツです。翌日以降は温めた方が治癒が進みやすくなります。

🥣食事の工夫(避けるべき食品・おすすめレシピ)

抜歯当日は食事を控えるか、おかゆ・スープ・プリンなどやわらかくて刺激の少ない食べ物にしましょう。避けたいのは、唐辛子や炭酸、アルコール、硬い食材、ストローでの飲み物などです。温かい味噌汁や具なしうどん、豆腐などが無難で、栄養バランスを考慮しながら、無理なく摂取することが大切です。

⚠️抜歯前のストレスや体調不良に注意

  • 抜歯前にストレスや寝不足、疲労が蓄積していると免疫力が低下し、傷口からの細菌感染リスクが高まります
  • 感染が起きると、血餅が溶けてドライソケットになる恐れがあり、強い痛みや治癒遅延の原因となります。
  • 抜歯に臨む数日前からは、睡眠・栄養・リラックスを意識して体調を整えることが大切です。

📅抜歯後のスケジュールはゆとりを持って

  • 抜歯後はできるだけ予定を詰め込まず、安静に過ごすことが回復を早めるポイントです。
  • 術後1〜2日は無理をせず、体力温存と炎症予防を意識しましょう。

🏥抜歯後の消毒は必ず受ける

  • 抜歯翌日の消毒は非常に重要です。感染の有無や痛みの程度をチェックし、必要があれば処置や薬の見直しが行われます。
  • 自覚症状が軽くても、必ず来院して診てもらいましょう

🪥抜歯後の歯磨き・うがいの注意点

  • 抜歯当日は強いうがいや歯磨きを避ける必要がありますが、翌日以降は清潔を保つことが感染予防につながります
  • 指導された方法でやさしく歯磨きを行うことで、治癒が早まり、痛みの軽減にもつながります

親知らずの抜歯に関して、患者さんからよく寄せられる質問にお答えします。不安や疑問を解消して、安心して治療に臨みましょう。

❓抜歯後どれくらい痛みが続くの?

一般的には、術後1〜3日が痛みや腫れのピークとされています。特に下の親知らずを抜いた場合は腫れが強く出やすく、痛み止めを服用して過ごすことが多いです。4日目以降には徐々に回復に向かい、1週間前後で落ち着くことがほとんどです。ただし、腫れや痛みが1週間以上続く場合はドライソケットなどの合併症の可能性もあるため、歯科医院への再診をおすすめします。

❓仕事や学校への復帰はいつ?

抜歯の難易度にもよりますが、簡単なケースであれば翌日から復帰可能です。下の親知らずや埋伏歯など外科的処置が必要な場合は、2〜3日は安静にするのが理想的です。できれば抜歯前後に休暇をとっておくと安心です。人前で話す仕事や、力仕事がある方は特に注意が必要です。

❓保険は使える?費用の目安は?

親知らずの抜歯はほとんどのケースで健康保険が適用されます。自己負担額は1本あたりおよそ2,000〜7,000円前後ですが、レントゲンやCT撮影、診察料などを含めると合計で1万円前後になることが一般的です。症例によっては紹介状が必要になり、大学病院での対応になることもあります。

❓親知らずの左右同時抜歯は可能?リスクと選択肢を解説

🏠日帰りの親知らず抜歯では左右同時は一般的に行わない

  • 通常の歯科医院での日帰り抜歯では、左右同時に親知らずを抜くことはほとんどありません
  • 理由は、術後に左右両側の痛みや腫れが起こるため、食事や会話が大きく制限されてしまうからです。
  • また、1本の抜歯に1時間以上かかるような難易度の高い症例では、同時に処置すると口を長時間開けることが難しくなり、患者の負担が大きくなります。

🏥入院下であれば上下左右の4本同時抜歯も可能

  • 大学病院などの口腔外科で入院対応が可能な場合には、上下左右4本を一度に抜歯することがあります
  • 術後の痛みや腫れは出ますが、数日間医療スタッフの管理下で過ごせるため、術後合併症にもすぐ対応できるメリットがあります。
  • 忙しい方や何度も通院できない方には、入院して一気に抜く選択肢も検討の価値ありです。

❓親知らずの抜歯は大学病院?それとも町の歯医者?

🦷上の親知らずは町の歯科医院でも抜歯可能

上の親知らずを抜歯
上の親知らずを抜歯
  • 上顎の親知らずは骨が比較的柔らかく、まっすぐ生えているケースが多いため、町の歯科医院での抜歯が可能なことがほとんどです。
  • 仮に埋伏していても、骨の深さが浅く、神経や副鼻腔との距離が安全であれば町の歯医者で対応できます
  • 多くのケースで局所麻酔+短時間の処置で終了し、日帰りでの治療が可能です。

😷下の親知らずは難易度によって判断が分かれる

下の親知らずを抜歯
下の親知らずを抜歯
  • 下顎の親知らず、特に横向きに埋まっている(水平埋伏智歯)場合は難易度が高くなります。
  • 骨の中に歯冠部が深く埋まっている角度や位置によって、対応できる施設が変わります
  • 当院では、抜歯難易度を5段階で評価し、ランク5までのケースには対応しています。
  • 難易度が非常に高く、下歯槽神経との距離が近い、骨を大きく削る必要があるなどのケースでは、大学病院の口腔外科へ紹介する方針です。

親知らずの抜歯は、誰にとっても少なからず不安がつきまとうものです。しかし、正しい情報と準備があれば、痛みやリスクを最小限に抑え、安心して治療を受けることができます。

⚖️痛みの程度には「個人差+条件差」がある

「上と下どっちが痛い?」という問いには一般的な傾向はあるものの、痛みの強さや回復の早さは個人差が大きいです。さらに、歯の生え方・神経との位置関係・医師の処置内容などの条件差も影響します。「下の方が痛い」というのはあくまで傾向に過ぎないと理解しましょう。

🧑‍⚕️信頼できる歯科医院での診断がカギ

不安を減らす最大のポイントは、「経験豊富な歯科医師に診てもらう」ことです。レントゲン撮影による事前診断や、口腔外科に精通した医師の判断によって、安全かつスムーズな抜歯が可能になります。医師の説明が丁寧で、アフターケアもしっかりしている医院を選びましょう。

🌿術後ケアで回復を早めるポイント

術後は、医師の指示に従って鎮痛剤・抗生物質を正しく服用し、患部を冷やす・刺激を避けた食事を取るなどのケアが大切です。また、うがいや歯磨きもタイミングを見極めながら慎重に行いましょう。自己判断せず、異常があればすぐに相談することも、後悔しないための重要なポイントです。

親知らずの抜歯で「上と下どちらが痛いのか不安…」という方へ

江戸川区篠崎駅すぐの当院では、パノラマレントゲンによる精密診断経験豊富な歯科医師による丁寧な処置で、痛みや腫れの少ない抜歯を心がけています。
特に下の親知らずは痛みやすいとされていますが、事前のリスク評価と術後ケアで、不安なく治療を受けていただけます。
「親知らず 抜歯 上と下どっちが痛い?」と迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。

【動画】親知らずの抜歯 上と下どっちが痛い

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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