目次

「親知らずが横向きに埋まっていると言われた」
「水平埋伏智歯ってどういう意味?」
「痛くなくても抜歯したほうがいいの?」

このような疑問や不安をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

**水平埋伏智歯(すいへいまいふくちし)**とは、親知らずが横向き、または横向きに近い状態で顎の骨の中に埋まっている状態です。

症状がないこともありますが、生え方や位置によっては、親知らずそのものだけでなく、手前にある第二大臼歯の虫歯や歯周病、親知らず周囲の炎症などにつながることがあります。

一方、水平に埋まっているからといって、すべての親知らずを抜歯する必要があるわけではありません。

この記事では、水平埋伏智歯とはどのような状態なのか、起こりやすいトラブル、抜歯を検討するケース、経過観察できるケースについてわかりやすく解説します。

水平埋伏智歯とは、第三大臼歯(親知らず)が正常に萌出せず、横向きまたは横向きに近い状態で顎の骨の中に埋まっている状態をいいます。

水平埋伏智歯とは

親知らずは永久歯の中でも最後に生えてくる歯です。

十分な萌出スペースがなかったり、もともとの歯の位置や向きなどの影響を受けたりすると、まっすぐ生えることができず、斜めや横向きに埋まることがあります。

水平埋伏智歯では、親知らずの歯冠が手前の第二大臼歯側を向いていることが多く、位置によっては両者の間に汚れがたまりやすくなります。

完全に骨の中に埋まっている場合は口の中から見えないため、パノラマレントゲンなどの画像検査で初めてわかることもあります。

抜歯を検討する場合などには、必要に応じて歯科用CTを用いて、親知らずと周囲の骨、隣の歯、下顎管などとの位置関係を詳しく確認します。

水平埋伏智歯になる理由は一つではありません。

親知らずが生えるためのスペースや歯の発育方向など、複数の要因が関係すると考えられています。

親知らずが生えるスペースが足りない

親知らずは歯列の一番奥に生えてきます。

そのため、顎の大きさや歯列の状態によって親知らずが萌出するためのスペースが十分にないと、正常な方向へ生えることができず、斜めや横向きに埋まることがあります。

親知らずの位置や向き

親知らずは顎の骨の中で形成され、成長しながら萌出してきます。

その過程における親知らずの位置や向きによっては、まっすぐ萌出せず、斜めや横向きの状態になることがあります。

親知らずは比較的遅い時期に生えてくる

親知らずは一般的に10代後半以降に萌出してきます。

すでに他の永久歯が並んでいるため、親知らずが生えるためのスペースが十分に確保されていない場合があります。

ただし、親知らずが生える時期や生え方には個人差があります。

親知らずの埋まり方は一人ひとり異なります。

代表的な状態を見てみましょう。

水平に埋まっている

親知らずが横向き、または横向きに近い状態で顎の骨の中に埋まっています。

歯冠が手前の第二大臼歯側を向いていることが多く、位置によっては第二大臼歯との間に汚れがたまり、虫歯や歯周病などの原因になることがあります。

抜歯する場合には、歯ぐきを切開したり、周囲の骨を必要な範囲で削ったり、親知らずを分割して取り出したりすることがあります。

斜めに埋まっている

親知らずが手前の歯に向かって斜めに傾いている状態です。

一部だけ口の中に出ているケースもあり、親知らずと歯ぐきの間に汚れがたまると炎症を起こすことがあります。

一部分だけ生えている

親知らずの歯冠の一部だけが歯ぐきから出ている状態です。

歯ブラシが届きにくく、親知らず周囲に細菌や食べかすがたまりやすいため、智歯周囲炎を起こすことがあります。

部分萌出:斜めに生えた親知らずが招くトラブル|隣の歯の虫歯リスクが上昇
部分萌出:斜めに生えた親知らずが招くトラブル|隣の歯の虫歯リスクが上昇

水平埋伏智歯があるからといって、必ずトラブルが起こるわけではありません。

しかし、親知らずの位置や生え方によっては、将来的に次のような問題が起こる可能性があります。

水平埋伏智歯を放置するリスク

手前の歯が虫歯になることがある

水平または斜めに埋まった親知らずと第二大臼歯の間は、歯ブラシが届きにくくなることがあります。

汚れが長期間残ると、親知らずだけでなく、大切な第二大臼歯に虫歯ができる可能性があります。

特に第二大臼歯の後ろ側は自分では確認しにくいため、虫歯に気づくのが遅れることがあります。

虫歯の進行度によっては、詰め物や被せ物だけでなく、根管治療などが必要になる場合もあります。

智歯周囲炎を繰り返すことがある

親知らずが一部分だけ生えている場合、周囲の歯ぐきとの間に汚れがたまりやすくなります。

そこに細菌が増殖して炎症が起こった状態が**智歯周囲炎(ちししゅういえん)**です。

智歯周囲炎では、

  • 親知らず周囲の歯ぐきが腫れる
  • 奥歯の周辺が痛む
  • 膿や不快な味を感じる
  • 口が開きにくくなる
  • 飲み込むときに痛む
  • 発熱や倦怠感を伴う

などの症状が現れることがあります。

炎症が強くなると周囲の組織へ広がることもあるため、強い腫れや発熱、飲み込みにくさ、口が開きにくいなどの症状がある場合は、早めの受診が必要です。

第二大臼歯の歯周組織に影響することがある

水平埋伏智歯の位置によっては、親知らずと第二大臼歯の間に深い歯周ポケットが形成され、第二大臼歯の周囲に歯周病が生じることがあります。

進行すると、第二大臼歯を支える歯槽骨にも影響する可能性があります。

親知らずそのものに症状がなくても、手前の第二大臼歯を守るために抜歯を検討するケースがあります。

第二大臼歯の歯根に影響することがある

埋伏した親知らずと第二大臼歯が接している場合、まれに第二大臼歯の歯根に外部吸収が生じることがあります。

どの程度影響しているかは肉眼では判断できないため、画像検査による確認が重要です。

嚢胞などが見つかることがある

顎の骨の中に埋まった親知らずの周囲に、嚢胞性の病変が生じることがあります。

頻度が高いものではありませんが、完全に埋まっていて症状がない親知らずでも、画像検査によって偶然発見される場合があります。

口臭につながることがある

親知らずが一部分だけ生えている場合、その周囲は清掃が難しくなります。

食べかすやプラークがたまり、炎症を起こすことで、口臭の一因になることがあります。

ただし、口臭には舌苔、歯周病、虫歯、唾液量の低下などさまざまな原因があるため、親知らずだけが原因とは限りません。

「横向きの親知らずが手前の歯を押して、前歯までガタガタになるのでは?」と心配される方もいます。

しかし、親知らずだけを歯並びの乱れや矯正治療後の後戻りの原因とする十分な根拠はありません。

歯並びは、加齢による変化、噛み合わせ、歯周組織、舌や唇から受ける力など、さまざまな要因の影響を受けます。

そのため、「歯並びが悪くなるのを防ぐ」という理由だけで、すべての親知らずを抜歯するとは限りません。

矯正治療を行う場合も、親知らずの位置や清掃性、今後起こりうるトラブルなどを含めて、抜歯の必要性を個別に判断します。

水平埋伏智歯だからといって、必ず抜歯が必要とは限りません。

抜歯によって得られるメリットと、手術に伴う負担やリスクを考慮して判断することが重要です。

抜歯を検討することが多いケース

次のような場合には、抜歯が選択肢となります。

  • 智歯周囲炎を繰り返している
  • 親知らずや第二大臼歯に虫歯がある
  • 第二大臼歯の歯周組織に悪影響がある
  • 第二大臼歯の歯根への影響が認められる
  • 親知らず周囲に嚢胞などの病変が認められる
  • 今後トラブルが起こる可能性が高いと判断される

ただし、実際に抜歯するかどうかは、年齢や全身状態、親知らずの位置、周囲の組織との関係などを含めて総合的に判断します。

完全に骨の中へ埋まっている親知らずの場合、必ずしも積極的な抜歯が必要とは限りません。

完全埋没した親知らずは必ず抜歯が必要?

症状や病変がない場合

完全に骨の中に埋まっており、周囲に炎症や嚢胞などの異常が認められない場合には、経過観察が選択されることがあります。

第二大臼歯への悪影響がない場合

親知らずが手前の第二大臼歯に悪影響を及ぼしておらず、将来的なリスクも低いと判断されれば、無理に抜歯せず経過をみることがあります。

抜歯そのもののリスクが高い場合

下顎の親知らずの近くには、下歯槽神経などが走る下顎管があります。

親知らずの歯根と下顎管が非常に近い場合には、抜歯後に下唇やあご周辺などの知覚異常が生じるリスクを考慮する必要があります。

そのため、抜歯によるメリットよりもリスクが大きいと判断される場合には、経過観察が選択されることがあります。

水平埋伏智歯の状態は、まずパノラマレントゲンなどで確認します。

下顎の親知らずを抜歯する際、歯根と下顎管との位置関係をより詳しく確認する必要がある場合には、歯科用CTによる三次元的な画像診断を行うことがあります。

CTでは、

  • 親知らずの向きや深さ
  • 歯根の形
  • 周囲の骨の状態
  • 第二大臼歯との位置関係
  • 下顎管との位置関係

などを立体的に確認できます。

すべての親知らずでCT撮影が必要になるわけではなく、レントゲン所見や治療内容に応じて判断します。

現在症状がない水平埋伏智歯を経過観察する場合でも、状態が将来にわたって変わらないとは限りません。

そのため、定期検診などの機会に、親知らずや手前の第二大臼歯の状態を確認しておくことが大切です。

必要に応じて画像検査を行い、

  • 虫歯ができていないか
  • 歯周病が進行していないか
  • 第二大臼歯に影響していないか
  • 親知らず周囲に病変がないか

などを確認します。

画像検査の種類や撮影時期は、親知らずの状態や症状などに応じて歯科医師が判断します。

水平埋伏智歯とは、親知らずが横向き、または横向きに近い状態で顎の骨の中に埋まっている状態です。

症状がなくても、生え方や位置によっては、智歯周囲炎、虫歯、第二大臼歯の歯周病や歯根への影響、嚢胞などの原因になることがあります。

一方、完全に骨の中へ埋まっていて周囲への悪影響がなく、抜歯によるメリットが少ない場合には、経過観察が選択されることもあります。

大切なのは、「横向きだから抜く」「痛くないから放置する」と自己判断せず、親知らずの位置や周囲の状態を確認して判断することです。

親知らずが横向きに埋まっていると言われた方や、腫れや痛みを繰り返している方は、一度歯科医院で状態を確認してもらいましょう。

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親知らずの生え方や隣の歯への影響、神経との位置関係などを詳しく確認し、抜歯が必要か、経過観察が可能かを状態に合わせて判断します。

水平埋伏智歯について不安がある方も、まずはご相談ください。

【動画】横向きに埋没した親知らずを抜かないと?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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