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神経を取った歯に「被せ物(クラウン)」を装着する際、見えない部分で支える“土台”が必要になります。
この土台に使われるのが「メタルコア(金属の支台)」や「ファイバーコア(樹脂+ガラス繊維)」といった素材です。

しかし、患者さんからはこんな声をよく聞きます:

  • 「保険でできるメタルコアって問題ないの?」
  • 「歯ぐきが黒くなるって本当?」
  • 「自費のファイバーコアはどう違うの?」

実は、コアの選び方次第で、歯の見た目や寿命に大きな差が出ることもあります。
本記事では、メタルコアの特徴や種類・メリット・デメリット、ファイバーコアとの違いまで徹底解説
あなたの大切な歯を守るために、“後悔しない支台選び”のヒントをお届けします。

根管治療(神経の処置)を終えた歯は、血液供給が途絶えるため、枯れ木のように脆くなります。そのままでは咀嚼(そしゃく)の力に耐えられず、被せ物(クラウン)を支えることもできません。

そこで必要となるのが、歯の内部を補強する**「支台(コア)」です。その中でも、古くから臨床の主流として使われてきたのがメタルコア(金属製の土台)**です。

🧱 1. メタルコアの役割:歯を内側から支える「最後の砦」

メタルコアは、根管内にポスト(心棒)を差し込むことで、失われた歯冠部(歯の頭の部分)を再構築する構造物です。歯科医学的には、主に以下の3つの役割を担います。

中切歯に白金加金のメタルコアを装着
中切歯に白金加金のメタルコアを装着
大臼歯にセットされたメタルコア
大臼歯にセットされたメタルコア
  • 保持(リテンション)の獲得:残存歯質が少ない場合でも、クラウンを脱落させないための「支柱」となります。
  • 咬合力の伝達・分散:噛む力を歯の根全体に伝え、修復物の安定を図ります。
  • 歯冠形態の修復:適切な形に整えることで、最終的な補綴物(被せ物)の適合精度を高めます。

いわば、建物の耐震補強を兼ねた「基礎工事」のような存在であり、このステップの成否が**「その歯が何年もつか」**を決定づけます。

🔍 2. 治療の流れ:根管治療から最終補綴まで

メタルコアの製作は、精密な適合が求められるため、以下のステップで進められます。

  1. 根管治療の完了:根の内部を無菌化し、根管充填(薬を詰める処置)を終えます。
  2. 支台築造用の形成(ポスト形成):コアを入れるためのスペースを根管内に作ります。
  3. 精密印象(型取り):直接法(口の中で作る)または間接法(型を採って技工所で作る)にて製作します。
  4. 装着・合着:歯科用セメントを用い、根管内に強固に固定します。
  5. 支台歯形成:被せ物が入る形にコアと歯質を削り、整えます。

💴 3. 【素材別】メタルコアの種類と臨床的特徴

メタルコアには、使用される金属の組成によって「自費診療」と「保険診療」で大きな性能差があります。

■ 貴金属系コア(白金加金・金合金など)|自費診療

金(ゴールド)やプラチナ(白金)を主成分とした合金です。

  • 適合性(フィット):金属の展延性が高く、根管壁に非常に精密に適合します。
  • 生体親和性:酸化しにくく、金属アレルギーや歯肉の変色のリスクが極めて低いです。
  • 適度な弾性:天然歯に近いしなりがあるため、歯根を割るリスクを軽減できます。

■ 銀合金コア(銀パラジウム合金など)|保険診療

コストを抑えられる反面、長期的なリスクも考慮する必要があります。

  • 硬すぎる弊害:非常に硬いため、強い力がかかった際に「くさび」の原理で歯根を真っ二つに割ってしまう**「歯根破折」**の原因になりやすいのが最大の欠点です。
  • 酸化と腐食:口腔内で金属が溶け出し、歯ぐきが黒ずむ「メタルタトゥー」を引き起こすことがあります。

⚠️4. 歯科医師が懸念する「歯根破折」のリスク

ここで、メタルコア特有の重大なリスクについて触れておかなければなりません。

赤矢印部に縦方向の透過像が確認され、歯根破折が強く疑われる所見です。メタルコアにより応力が集中し破折が生じた典型例です。
赤矢印部に縦方向の透過像が確認され、歯根破折が強く疑われる所見です。メタルコアにより応力が集中し破折が生じた典型例です。

【臨床的視点:応力集中による破折】

メタルコアは天然歯に比べて弾性係数(硬さ)が非常に高いため、噛んだ時の力が根の先端や特定部位に集中します。

近年では、歯と同じくらいのしなりを持つ**「ファイバーコア」**の方が、歯を割るリスクが低いというデータが定着しており、当院でも歯の生存率を高めるためにファイバーコアを第一選択にすることが増えています。

🛠 5. メタルコアの再治療(除去)における難易度

もしメタルコアを入れた歯の根に再度膿が溜まった場合、その除去は非常に困難を極めます。

  • 除去の障壁:専用のバーで削り取る際、摩擦熱が発生したり、誤って根管壁を傷つけたり(パーフォレーション)する危険があります。
  • マイクロスコープの重要性:肉眼では困難な除去作業も、歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)と超音波チップを使用することで、歯へのダメージを最小限に抑えながら除去することが可能になっています。

📌 6. まとめ:あなたにとって最適な選択とは?

比較項目メタルコア(保険)メタルコア(貴金属)ファイバーコア(自費)
歯の守りやすさ△(破折リスクあり)〇(適度な弾性)◎(最も割れにくい)
審美性×(歯肉変色あり)△(金属色が透ける)◎(天然歯に近い)
アレルギー有り得る非常に少ない無し
コスト保険適用(安価)自費(高め)自費(中程度)

歯科医師からのアドバイス

  • **「とにかく費用を抑えたい」**場合:保険のメタルコア。ただし、数年後の歯根破折リスクは理解しておく必要があります。
  • **「奥歯で強く食いしばる、かつ信頼性が欲しい」**場合:貴金属コア。適合性と強度のバランスに優れます。
  • **「歯を長持ちさせたい、見た目もこだわりたい」**場合:ファイバーコア。現在の歯科医療において、最も歯に優しい選択肢です。

患者様の歯の状態(残っている歯質の量)や、噛み合わせの強さによってベストな選択は異なります。レントゲン診査をもとに、将来を見据えたプランをご提案いたしますので、ぜひ一度ご相談ください。

メタルコアは歯の状態や審美性、耐久性のバランスを見ながら選択される支台構造です。ここでは、実際の治療症例を通じて、メタルコアの使用例をご紹介します。

🦷 前歯に白金加金コア+メタルボンドを装着したケース

上顎1番に白金加金のメタルコアを装着
上顎1番に白金加金のメタルコアを装着

白金加金の土台が歯根に装着された状態です。この状態で歯型を採り、クラウン(メタルボンドやジルコニア)などが装着されます。

メタルボンドを装着
メタルボンドを装着

白金加金のメタルコアの上にメタルボンドをセットした写真です。

患者:40代女性/主訴:前歯の差し歯がぐらつく
検査の結果、既存の土台が劣化し、根管治療のやり直しが必要と診断されました。

治療内容:

  • 古い銀合金のメタルコア(保険)を除去し、白金加金の貴金属メタルコアで支台再構築
  • クラウンには**メタルボンド(内面に金属、外側にセラミック)**を選択

ポイント:

  • ⚙ 精密な適合でクラウンの安定性が向上
  • 👁 前歯部の審美性を重視し、自然な仕上がりに
  • ⛑ 金属アレルギーリスクを考慮し、貴金属を使用

治療後は見た目も美しく、咬合バランスも良好に。5年以上の経過観察でも安定した状態が維持されています。

🔄 複数歯でファイバーコアと併用した症例

複数歯でファイバーコアと併用
複数歯でファイバーコアと併用

患者:30代男性/主訴:全体的に被せ物を新しくしたい

前歯4本にセラミック治療を希望された患者さま。X線の結果により、歯根の状態に応じて支台を使い分ける方針を立てました。

治療内容:

  • 左右中切歯(前歯中央):白金加金メタルコアを使用
  • 側切歯(その隣の歯):ファイバーコアを使用し、審美性重視

ポイント:

  • 💡 歯根が短く強度を優先したい歯にはメタルコアを選択
  • 💎 歯ぐきの黒ずみを避けたい部位にはファイバーコアを使用
  • 🔄 コア材を適材適所で使い分けることで、機能と見た目を両立

治療後は自然な見た目と違和感のない噛み合わせに仕上がり、患者さまにも大変満足いただきました。


複数の歯を治療する場合、全てを同じ素材で統一する必要はなく、歯ごとの状態に応じた柔軟な判断が重要です。
歯科医師と相談しながら、自分に合った支台選びをしていきましょう。

メタルコアには、ニッケル・パラジウム・銀などの金属が含まれていることが多く、これらが体や見た目に悪影響を及ぼすことがあります。

特に注意が必要なのが次の2点です:

  • 💢 金属アレルギーの発症リスク
  • 👄 歯ぐきが黒く変色する「メタルタトゥー」

🌈 銀イオンによる歯ぐきの黒ずみの仕組み

「メタルタトゥー」とは、銀合金などの金属成分が歯ぐきに沈着する現象です。特に保険診療で使われる銀合金のメタルコアに多く見られます。

メタルタトゥー

保険のメタルコアが原因のメタルタトゥー
保険のメタルコアが原因のメタルタトゥー
メタルコアが原因のメタルタトゥー
メタルコアが原因のメタルタトゥー(ファイバーコアにやり替え)

仕組み:

  1. 💧 唾液に含まれる水分や酸により、金属から銀イオンが溶け出す
  2. 🧲 銀イオンが歯ぐきや粘膜に長期間沈着
  3. 🖤 黒や青みがかった色に変色し、見た目が悪化

この黒ずみはタトゥーのように色素が皮膚に沈着しているため、自然には消えません

影響:

  • 前歯や笑ったときに見える部分では審美的なトラブルになる
  • 美容意識が高い方や女性にとっては大きなストレス

✨ 除去と色改善の方法(歯肉移植・レーザー治療)

メタルタトゥーが発生した場合でも、見た目を改善するための方法があります。

① メタルコアの除去

  • 🛠 原因となる銀合金メタルコアをファイバーコアなど非金属製のものに交換
  • ✨ これによりこれ以上の銀イオン沈着を防止できる

② 歯ぐきの黒ずみを取る方法

方法特徴・効果
🩹 歯肉移植術黒ずんだ歯ぐき部分に健康な歯肉を移植することで色を回復
💡 レーザー治療メラニン色素や金属沈着部を除去し、ピンク色の歯ぐきを再生
🧴 薬剤によるピーリングフェノール・アルコール法などで、浅い変色部を溶かして除去

治療時の注意点:

  • 原因の金属除去と併用しないと再発する可能性あり
  • 黒ずみの深さや範囲により治療法を使い分ける必要がある
🏥 江戸川区篠崎で「土台治療」に悩む方へ

江戸川区篠崎エリアで、神経を取った歯の“土台(コア)治療”に不安がある方へ──
当院では、見た目や歯の寿命に関わる「メタルコア」や「ファイバーコア」について、患者さま一人ひとりに最適なご提案を行っています。

✅ 保険内で済ませたい方も
✅ 見た目やアレルギーが気になる方も
✅ 将来の再治療まで考えておきたい方も

**土台は“見えないけれど重要な治療”**です。
江戸川区篠崎で、信頼できる歯科医院をお探しの方は、ぜひ一度ご相談ください。

【動画】歯茎の出来物、フィステル、口内炎、口腔癌の見分け方

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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