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「できるだけ自然な方法で治したい」「手術後の痛みや腫れが不安」――そんなお悩みをお持ちの方に注目されているのが、**自己血液を使った再生療法「CGF(Concentrated Growth Factors)」**です。
近年、歯科医療を中心にインプラント治療や歯周病治療のサポートとして広がっているCGFは、体にやさしく、安全性の高い治療法として話題を集めています。
本記事では、CGFの基本情報から歯科での活用例、他分野への応用までわかりやすく解説します。

🔍CGFの正式名称と意味(Concentrated Growth Factors)

CGF(Concentrated Growth Factors:濃縮成長因子)とは、自分自身の血液から作られる再生医療の一種で、傷の治癒を早めたり、骨や歯茎の再生を促す目的で使用されます。血液を専用の遠心分離機にかけて得られるゲル状の物質には、成長因子(グロースファクター)や白血球、血小板などの治癒に役立つ成分が豊富に含まれています

このCGFを用いることで、インプラント手術後の治癒促進、抜歯部位の骨再生、歯周病による歯ぐきのダメージ回復など、幅広い歯科治療で高い効果が期待できます。

💡CGFとPRP・AFG・PRFとの違い

再生療法で使用される血液由来の治療法には、CGFのほかにもPRP(多血小板血漿)AFG(Autologous Fibrinogen Glue)、**PRF(Platelet Rich Fibrin)**などがあります。これらの違いは以下の通りです:

種類特徴主な違い
🩸PRP成長因子が豊富な血漿液状。短時間で吸収されやすい
🧪PRFフィブリン膜状の素材凝固したゲル。持続性がやや高い
💉AFGフィブリン接着剤のような働き粘着性が高く、創部固定に使われる
🧬CGFさらに進化した自己血由来ゲル成長因子濃度が高く、長期間働く特性がある

特にCGFは人工物を一切使わず、安全性が高い点が大きな特徴であり、PRPやPRFよりも再生能力に優れているとされています。

🧬CGFの生成方法と使用される機器(遠心分離機など)

CGFは、採血した血液を専用の遠心分離機(例:Medifuge)で分離することで作られます。遠心操作により、血液は3層に分離され、中間層にできるゼリー状のCGFゲルを取り出して治療に使用します。

このゲルは、フィブリン(血液の固まる成分)を足場にして成長因子がじわじわと放出されるため、術後の治癒が自然に、かつ持続的に促進されます。また、自己血由来のため拒絶反応もなく、感染リスクも最小限に抑えられるのが大きなメリットです。

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血液を採取

採血部位をアルコール消毒し、駆血帯を上腕に巻き静脈を明示してからガラス製の採血管二本分を採血します。

血液を採取
血液を採取

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遠心分離機

対角線になるようにガラス管を遠心分離機に挿入します。一本のガラス管だけを入れると不安定な状態になり正常に回転しません。

遠心分離器はCGFを作り出せる適当なスピードで回転する様に設計されています。約15分で血液成分が分離され、CGFが出来ます。

遠心分離機
遠心分離機

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CGF

ガラス管内の血液が分離され、CGFが作成されます。 上清は血清で、その下のゲルがフィブリンゲル(CGF)です。

最下層が赤血球、白血球、血小板等の血球成分です。

CGF
CGF

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人工骨(Bio-Oss)とCGFを混ぜる

ガラス管から取り出し、赤血球などの部分をハサミで切り取ります。シャーレに入った手前側のCGFは、血液中の凝固因子が自然に刺激されてフィブリンゲルです。このフィブリンゲルは、成長因子や血小板などを多く含むうえ、添加物を一切用いないため、完全自己血液由来のゲル素材といえます。

シャーレに入った奥側の白い粉状のものは人工骨(Bio-Oss)です。CGFと人工骨を混ぜて使うと臨床成績が良いと感じます。

人工骨(Bio-Oss)とCGFを混ぜる
人工骨(Bio-Oss)とCGFを混ぜる

🧱インプラント治療時の骨再生・骨造成(GBR)

インプラントを埋入するには、十分な骨の厚みと高さが必要です。しかし、骨が痩せている・少ない方には、**骨再生を促す「GBR法(骨誘導再生療法)」**が行われます。この際にCGFを使用すると、骨の再生力が高まり、移植した人工骨や自己骨としっかり結合しやすくなります

特にCGFは、血小板由来の成長因子が豊富で、骨形成を助ける細胞を集め、炎症も抑える効果があります。そのため、術後の腫れや痛みも軽減され、治癒期間の短縮にもつながります。

🦴🛠サイナスリフト(上顎洞底挙上術)への応用

サイナスリフトへの応用
サイナスリフトへの応用

上顎洞底までの骨量が少ない時、骨を増やす治療法です。

パノラマレントゲン写真で、直径5ミリの鉄球を基準にすると、赤丸で示した上顎洞底までの骨の高さが約3ミリしかないことが分ります。

このままではインプラントを埋入することができないので、上顎洞粘膜を持ち上げるサイナスリフトを行い、できた空間に、患者自身の血液から作るCGF(再生因子)と人工骨を混ぜたものを填入。
これにより、自然に骨が再生されるよう誘導します。

 

大臼歯相当分の歯槽骨
大臼歯相当分の歯槽骨

歯肉の側面を切開し、骨面を露出させ1~3cm程の窓を作ります。

窓からアクセスして上顎洞粘膜を注意深くはがしていき、上顎洞底との間にスペースができたところにCGFと人工骨を混ぜたものを填入します。

サイナスリフト(上顎洞底挙上術)
サイナスリフト(上顎洞底挙上術)

左写真の歯肉を切開し、骨面を露出させて横長の窓を形成。そこから上顎洞粘膜を挙上し、CGFと人工骨(Bio-Oss)を填入したところです。

今回は、フィクスチャー(インプラント本体)が固定できると判断したので、同時にインプラントの埋入も行っています。

🦷🔩インプラント埋入

インプラント埋入
インプラント埋入

サイナスリフト後

上顎洞に骨が誘導再生されるまで約6ヶ月間待ち、その後に二次オペを行ってインプラントを埋入します。

レントゲン写真は、埋入されたインプラント本体に上部構造が結合され、治療が完了した時点で撮影したパノラマレントゲン画像です。

🧴抜歯後の止血と治癒促進

歯を抜いた後、出血が長引いたり、治りが遅いといった不安を感じる方も多いのではないでしょうか。CGFを抜歯窩(歯を抜いた穴)に填入することで、自然な止血効果と早期の組織再生が期待できます

CGFゲルは、ゼリー状で患部にぴったりと密着するため、血液の流出を防ぎながら傷口を守る「天然のパック」のような働きをします。これにより、ドライソケットなどの合併症リスクも軽減できます。

🌿歯周組織再生療法への応用(歯槽膿漏・歯周病)

進行した歯周病では、歯を支える骨や歯茎が破壊されてしまいます。このような状態でも、CGFを活用することで失われた組織の再生を目指す治療が可能です。

特に重度の歯槽膿漏では、歯周外科手術時にCGFを併用することで、炎症を抑えながら組織の再生を促進し、歯を抜かずに済む可能性が高まります。また、自身の血液を使用するため、アレルギーや拒絶反応の心配がないのも大きな利点です。

🦷💢歯周病への応用例

 歯周病で歯槽骨が破壊された部位にCGFと人工骨で骨の再生医療を行います。

上顎一番近心に垂直性骨吸収

上顎一番近心に垂直性骨吸収


上顎1番(中切歯)の近心側に深い歯周ポケット(垂直性骨吸収)が認められます。

歯周病のフラップ手術に応用

歯周病のフラップ手術に応用


フラップ手術(歯周外科)実施時に歯肉剥離後、不良肉芽組織を除去し、根面を滑沢した垂直性骨吸収部位にCGF+人工骨の混合を填入したところです。

💉CGFと静脈内鎮静法の併用例

「歯科治療が怖い」「インプラント手術は不安」という患者さんに向けて、CGFと静脈内鎮静法の組み合わせ治療が注目されています。静脈内鎮静法は、うたた寝状態でリラックスしながら手術が受けられる方法で、恐怖心や痛みの感覚を軽減できます。

この状態で治療中にCGFを活用すると、身体へのストレスが最小限に抑えられ、治癒力を最大限に引き出すことが可能になります。高齢の方や全身疾患を持つ方にも、より安全・安心な選択肢となります。

💴再生医療CGFの費用

自費治療

保険適用外です。

項目価格
CGF+人工骨5.5万円(税込み)5万円(税別)

🛠CGFの導入には専用機器が必要?

CGF治療を行うには、**高性能な遠心分離機(例:Medifugeなど)**が必要不可欠です。これは、採取した血液から適切な速度と時間で成長因子を抽出し、安全かつ効果的なCGFゲルを作成するためです。

また、衛生管理が徹底された処置室や、無菌状態を保つための機器・環境も求められます。そのため、CGFを導入している歯科医院は、設備投資に積極的かつ医療の質にこだわりを持つ医院であることが多く、患者さんにとっても安心できるポイントの一つといえるでしょう。

🧑‍⚕️再生医療認定施設としての条件

CGF治療は、「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療法)」により、厚生労働省への届出が必要な医療行為に該当します。そのため、CGFを実施する歯科医院は、次のような基準を満たす必要があります:

  • 再生医療等提供計画の届出(第三種再生医療)
  • 医師・歯科医師による研修修了
  • 適切な医療機器・滅菌体制の整備
  • 患者への説明義務と同意取得

これらをクリアしている医院は、法的にも安全性が認められた施設であり、患者さんにとっても信頼性の高い治療を受けることができます。

⏱治癒のスピードが速い

CGF(Concentrated Growth Factors)を用いた治療では、患部の回復が通常よりも早まることが報告されています。これは、CGFに含まれる濃縮された成長因子や白血球の働きにより、組織の修復や再生が活発になるためです。

たとえば、インプラントや抜歯後の回復期間が短くなったり、歯周病治療後の腫れや痛みが少なく済んだという声も多く、患者さんの身体的・心理的な負担を軽減できます。

🩸自己血液を使うから安心・安全

CGFは、患者自身の血液から作られるため、拒絶反応や感染のリスクが極めて低いのが特徴です。市販の薬剤や人工素材を使用しないため、「体に余計なものを入れたくない」「自然な治療を望む」という方にとっても、非常に安心感のある選択肢といえます。

特にアレルギー体質の方や免疫力が低下している方でも安心して使用できるため、幅広い患者さんに適した治療法です。

💊薬剤を使用しない治療法として注目

近年、ナチュラル志向の高まりとともに、薬剤に頼らず体の自然治癒力を活かす医療が注目されています。CGFはその代表格といえ、抗生物質や人工材料を使わずに炎症を抑え、治癒を促進することが可能です。

これにより、術後の投薬が最小限で済む場合もあり、薬の副作用が心配な方や妊娠中の方にもメリットが大きい治療法といえるでしょう。

📋すべての患者が適応とは限らない

CGF治療は、安全性が高く効果的な再生療法ですが、すべての患者さんに必ずしも適応するわけではありません。たとえば以下のようなケースでは、注意が必要です。

  • ⛔ 血液疾患をお持ちの方(血小板減少症など)
  • ⛔ 重度の貧血がある方
  • ⛔ 採血や遠心分離が困難な方
  • ⛔ 極端な高齢・衰弱状態で自己治癒力が低い場合

CGFは「自己血液を使う」ことが前提となるため、体の状態によっては他の治療法を検討することもあります。治療前には歯科医師との十分なカウンセリングが不可欠です。

🩺全身疾患・薬剤服用の有無による影響

糖尿病や高血圧などの全身疾患をお持ちの方や、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方は、CGF治療を受ける前に慎重な判断が必要です。

たとえば、

  • 抗凝固薬の影響で止血が困難になる
  • 成長因子の効果が十分に発揮されにくくなる
  • 感染リスクが高まる場合がある

などの懸念があります。

このような方でも、主治医と連携しながら対応が可能な場合もあるため、あきらめる必要はありません。歯科と内科の連携のもとで、安全に治療を進めるための対策を立てることが大切です

🏗Medifuge(メディフュージ)とは?

CGFを生成するうえで欠かせない機器が、イタリア製の「Medifuge(メディフュージ)」という専用遠心分離機です。この機器は、採取した患者自身の血液を段階的に遠心分離し、自己成分だけで高濃度のCGFゲルを作成することが可能です。

Medifugeは医療用として高い安全性が保証されており、以下のような特徴があります:

  • ✅ 自動で速度・時間を調整するプログラム機能
  • ✅ 滅菌・消毒対応の構造設計
  • ✅ CGF・AFG・PRF など多様なフィブリンゲルに対応

再生医療を実践する多くの歯科医院・口腔外科・美容クリニックで採用されている信頼性の高い装置です。

🧫ConvaTec製品(デュオアクティブCGFなど)

創傷治癒や止血、感染予防をサポートする製品としては、**コンバテック社(ConvaTec)**の「デュオアクティブ® CGF」も注目されています。

この製品は、CGF治療後の創部に貼付するハイドロコロイドドレッシングで、以下のような特長があります:

  • 🩹 滲出液を吸収しながら適度な湿潤環境を保持
  • 🌡 創部への刺激を軽減し、痛みを抑える
  • 🛡 感染リスクを低減し、治癒をサポート

医療現場では、CGFと併用することでよりスムーズな治癒と快適な術後管理が期待されます。

🏭研究・教育用のCGF遠心分離機(島津理化など)

歯科大学や再生医療の研究機関では、島津理化などの研究用遠心分離装置が使われています。教育用CGF機器は、医療用よりも詳細な調整機能やデータ出力ができ、以下のような目的で活用されています:

  • 🔬 再生医療の基礎研究(細胞培養、成分分析など)
  • 📊 教育実習でのCGF抽出トレーニング
  • 🧪 新たなフィブリンゲル製剤の開発検証

これにより、CGFの医療応用が科学的に裏付けられ、安全で効果的な治療法として進化し続けているのです。

🧖美容医療(肌再生・しわ改善)

CGFは、美容医療の分野でも大きな注目を集めています。特に、肌の再生やアンチエイジング治療においては、次のような目的で使用されています。

  • ✨ 肌のターンオーバー促進
  • ✨ しわやたるみの改善
  • ✨ ニキビ跡・毛穴の引き締め
  • ✨ くすみの解消・肌の透明感アップ

これは、自己血液から得られた成長因子を肌へ直接注入することで、細胞の再生を自然に促す効果が期待されるためです。ボトックスやヒアルロン酸のように異物を入れずに、自分の力で若返る治療法として人気が高まっています。

💪整形外科(靭帯損傷・骨折後の再生促進)

整形外科の分野では、CGFは組織修復を早める手段として活用されています。とくに次のようなケースで用いられます:

  • 🦴 骨折後の治癒促進
  • 🦵 靭帯や腱の損傷回復(スポーツ外傷など)
  • 🦶 関節の術後回復(人工関節置換後など)

スポーツ選手が早期復帰を目的にPRP療法を受けることがありますが、CGFはそれをさらに進化させた再生療法とも言えます。自己由来で副作用も少ないため、リハビリ中の選択肢としても注目されています。

👃耳鼻科領域での粘膜治癒

耳鼻咽喉科の分野でも、粘膜や軟部組織の回復を早める目的でCGFが使用されています。たとえば、

  • 👃 鼻中隔矯正術や副鼻腔手術後の粘膜再生
  • 🗣 扁桃摘出後の創傷治癒の促進
  • 👂 鼓膜再生治療(研究段階)

などが代表的な応用例です。

これにより、術後の痛みや出血を軽減し、回復期間を短縮することが可能となります。今後は、さらに多くの診療科での活用が広がっていくと予想されます。

🚀歯科治療に革命をもたらす再生療法

CGF(Concentrated Growth Factors)は、自然治癒力を最大限に引き出す次世代の再生医療として、歯科界でも大きな注目を集めています。
インプラントや抜歯後の治癒促進、歯周病による歯ぐきや骨の再生、さらには術後の腫れや痛みの軽減まで――
これまで難しかった症例にも対応できる可能性が広がっています。

「切る・削る・痛い」治療から「再生・癒す・守る」治療へ
CGFはまさに、これからの歯科医療に革命をもたらす新しい選択肢といえるでしょう。

📣患者さんへのメッセージと受診のすすめ

「骨が足りないと言われてインプラントをあきらめた」
「抜歯後の痛みや腫れが心配」
「できるだけ薬に頼らず、体にやさしい治療がしたい」

こうしたお悩みをお持ちの方にこそ、CGF治療はおすすめです。
自分自身の血液を使う、安心で自然な治療法で、これまでにない治癒体験が得られるかもしれません。

江戸川区篠崎エリアでCGFに対応した歯科医院をお探しの方は、ぜひ当院へお気軽にご相談ください。
初診カウンセリング無料、患者さま一人ひとりに合わせた最適な治療法をご提案します。

再生医療の最前線CGFとは?江戸川区篠崎で受けられる先端歯科治療

江戸川区篠崎の当院では、自己血液を使った再生療法「CGF」を導入しています。インプラント治療や歯周病による骨や歯ぐきの再生に活用され、術後の腫れや痛みを抑え、自然な回復を促します。体に優しく安全性の高い治療をご希望の方は、ぜひご相談ください。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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