粘液嚢胞

  • 口の中に出来たプチっとした透明の痛くない水ぶくれは、粘液嚢胞の可能性があります。
  • 粘液嚢胞は塗り薬やビタミン剤では治りませし、針などで潰して一旦萎んでも再発します。
  • そのまま放置しても自然治癒しません。
  • 歯科医院で日帰り摘出手術で完治します。

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唇や舌に透明の痛くない水ぶくれの様な腫れが出来た場合、代表的な疾患は粘液嚢胞です。悪性腫瘍の様なものではないので緊急な処置は必要ありません。

粘液嚢胞は放置しても自然治癒しないので、歯科で外科的摘出手術を行えば完治します。ちなみに、口の中に出来る疾患の殆どは歯科か口腔外科で治療します。

ここでは、粘液嚢胞の見た目や症状の特徴、原因や治療法などについて解説します。

粘液嚢胞とは

粘液嚢胞は、粘液貯留嚢胞ともいい下唇の裏の一部に出来ることが多い良性疾患です。一旦潰れてしぼんだりしますが、再び腫れたりを繰り返します。針などでその水泡を刺すと潰れますが、またすぐに元の様に大きくなります。

また、膨らんでいる粘膜が気になり噛んでしまったり、眠っている間に無意識に噛んでしまうと、潰れて無色透明のどろっとした粘液(唾液)が出てしぼみます。しかし、再発を繰り返します。

粘液嚢胞の見た目

大きさは2㎜~5㎜程で半球状に膨らみます。しこりを触るとぷよぷよとした波打つ感じがあります。口内炎は、膨らむことは無いので鑑別出来ます。透明な液体が入った水ぶくれの様な腫れで、薄い膜で覆われています。

粘液嚢胞と似た疾患にヘルペス性口内炎があり、鑑別が必要です。ヘルペスウイルスの感染によって起こり、粘膜が赤く腫れて出血し水泡を形成する病気です。

直径4mm程の粘液嚢胞

直径4mm程の粘液嚢胞


下唇の裏側に出来た直径4mm程の粘液嚢胞です。

プチっとした透明の水ぶくれの様な腫れで痛みはありません。

下唇に直径1cm超の粘液嚢胞

下唇に直径1cm超の粘液嚢胞


直径1cmを超える粘液嚢胞は珍しいですが、ここまで大きくなると生活に不自由が出てきますので摘出手術が妥当でしょう。

粘液嚢胞が出来やすい場所

特に子供の下唇の裏に発生しやすく、次いで上唇、頬粘膜、舌と続きます。

痛み

痛みは全く起こりませんが、歯や舌が触れると気になりストレスになることもあります。痛みが起こらない理由は、水ぶくれの中身が無菌性の唾液なので、大きく腫れても感染が無いため、炎症が起こらないからです。

しかし、粘液嚢胞を何度も噛んでしまうと内出血したり、ばい菌に感染すると腫れたり痛みが出たりすることもあります。

粘液嚢胞の原因

口の中には、大唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)と小唾液腺があります。小唾液腺は唇や舌に沢山分布し、少量の唾液を分泌しています。唇が乾かないのはそのためですね。

唇や舌を誤って噛んで小唾液腺の排泄管を傷つけると唾液の流出口が詰まってしまい、淡い青赤色の水ぶくれを作ることがあります。これが粘液嚢胞が出来る原因です。

従って、ストレスによって大きくなるものでもなく、感染症でもないので、うつるようなことはありません。

粘液嚢胞を放置すれば自然治癒する?

粘液嚢胞は、悪性腫瘍などに変化する可能性が無い良性疾患なので、生活に支障が無いなら、そのまま放置しても大丈夫です。そのため、外科的切除は急を要するものではありません。

粘液嚢胞の原因が小唾液腺の排泄管が詰まることなので、市販薬のチョコラBBの様なビタミン剤を飲んだり、塗り薬を塗っても効果はありません。

放置しても自然治癒しないので、腫れたりしぼんだりを繰り返し、生活に不自由を感じる様なら歯科医院において粘液嚢胞の全摘出手術が必要です。

粘液嚢胞の全摘出手術:再発を防ぐ確実な治療法

粘液嚢胞の治療法は、粘液嚢胞を一塊として切除し全摘出手術を行えば再発はほぼありません。凍結法やレーザーを使う方法もありますが、再発しやすいのでお薦め出来ません。

粘液嚢胞全摘出手術の流れ

日帰り手術時間は約30分

STEP

初診時

写真は、小学校高学年の子供の下唇に出来た直径5mm程の粘液嚢胞です。自覚症状はなく、萎んだりを繰り返していました。なかなか治らない為、摘出手術をすることになりました。

粘液嚢胞は若者に多く発症し、好発年齢は10代~30代です。特に子供に多く発症すると言われています。

自然治癒することも稀にありますが、通常は全摘出手術を行います。

下唇に出来た直径5mm程の粘液嚢胞
下唇に出来た直径5mm程の粘液嚢胞

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全摘出手術当日

全摘出手術当日まで2週間ほどあったので、その間に粘液嚢胞は潰れ小さくなっています。


※ 粘液嚢胞は潰れた時ではなくて大きく膨らんだ時に受診して下さい。その方が確定診断しやすいためです。

潰れて小さくなった粘液嚢胞
潰れて小さくなった粘液嚢胞

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浸潤麻酔下で粘膜切開

粘液嚢胞の周囲に表面麻酔をした後、浸潤麻酔をかけ、粘液嚢胞の隅に糸をかけます。これは、沢山の小さな小唾液腺を一塊として摘出するために有効です。

次に、水ぶくれ(水泡)部分の周囲をメスで広く切開します。

※ 通常の歯科治療が行えない小さな子供の場合、全身麻酔下での摘出手術が行われることもあります。

浸潤麻酔下で粘膜切開
浸潤麻酔下で粘膜切開

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レモン形に粘液嚢胞周囲を切開

 粘液嚢胞を糸で引っ張り上げながら小唾液腺を傷つけないように慎重にメスを進めます。

レモン形に切ることで、縫合する時に粘膜の伸展が少なく綺麗に仕上がります。

粘液嚢胞よりもやや大きめに切開線を入れます。対象となる小唾液腺をすべて摘出しないと手術後の再発リスクがあるからです。

レモン形に粘液嚢胞周囲を切開
レモン形に粘液嚢胞周囲を切開

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外科用歯肉ハサミで深部の小唾液腺を切除

小唾液腺を結合組織から剥がす様に外科用歯肉ハサミで切離していきます。

ブドウの房の様に直径3mm程の小唾液腺が次から次と出てきます。

外科用歯肉ハサミで深部の小唾液腺を切除
外科用歯肉ハサミで深部の小唾液腺を切除

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ブドウの房状になった小唾液腺

糸で引っ張り上げながら周りの小唾液腺も含め、切除します。

小唾液腺はブドウの房や地中のジャガイモの様に多数が密集しています。

粘液嚢胞の原因となった小唾液腺に付随する周りの小唾液腺も一塊として摘出することで再発防止になります。

ブドウの房状になった小唾液腺
ブドウの房状になった小唾液腺

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縫合

縫合して手術は終了です。手術時間は約30分でした。術後の痛みはほとんど無く、感染症のリスクも低いと思われますが、念のため、抗生物質と痛み止めを処方します。

唇が突っ張る感じになり、ご飯が少し食べづらくなるかもしれません。

約1週間後に抜糸をします。

これで再発のリスクはほぼありません。

縫合
縫合

粘液嚢胞摘出手術の費用

保険診療

保険適用です。

項目
保険点数
粘液嚢胞全摘出術
1220点
※ 粘液嚢胞摘出術の保険点数は1220点なので、一部負担金が3割とすれば4,030円となります。さらに、初診料、再診料、処方箋料、各種管理料などがかかる場合があります。薬は投薬内容により費用が異なりますが、薬局に支払う必要があります。

民間保険で手術給付金は?

保険会社の契約内容により異なるかもしれませんが、手術給付金は出る会社が多いようです。一度問い合わせをしてみる価値はあります。

ガマ腫

ガマ腫の原因

粘液嚢胞が同じ理由で舌下に発生するのがガマ腫と呼ばれるものです。これは、顎下腺あるいは舌下線という大唾液腺の導管が詰まり起こる大きな嚢胞です。

ガマ腫の出来る部位と形状

舌下の片側に出来るタイプが最も多く、柔らかい半球状で痛みはありませんが、大きくなるにつれて反対側にまで及び、舌の動きを阻害します。そのため発音や嚥下障害を引き起こすこともあります。

治療法

一般的に治療は、膨らんだ部分を切除する方法で行われますが、再発を繰り返すときは、摘出手術が必要ですが、全身麻酔下での処置となります。

当院では歯科口腔外科分野の処置を、適切な検査・診断の元に実施しております。できる限り痛みやリスクを抑えた施術を心がけ、術後のケアまでしっかり実施致します。江戸川区篠崎にて、粘液嚢胞の治療をご希望の方は、ふかさわ歯科クリニック篠崎までお気軽にご相談ください。

【動画】粘液嚢胞の症状や原因と摘出手術の手順と費用

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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