目次

「前歯がなかなか生えてこない」
「前歯のすき間がなかなか閉じない」
「永久歯が変な方向から生えてきた」

このような場合、原因の一つとして**過剰歯(かじょうし)**が隠れていることがあります。

過剰歯は歯ぐきや顎の骨の中に埋まっていることがあり、見た目だけでは分からず、レントゲン検査で初めて発見されるケースもあります。

過剰歯のレントゲン画像
過剰歯のレントゲン画像

永久歯の萌出や歯並びに影響することもあるため、前歯の生え方が気になる場合は、適切な時期に歯科医院で確認することが大切です。

この記事では、子どもに多い正中過剰歯を中心に、症状や診断方法、放置した場合に考えられる影響、抜歯のタイミングについて解説します。

次のような状態がみられる場合は、過剰歯などが永久歯の萌出に影響していないか確認することがあります。

  • 前歯がなかなか生えてこない
  • 左右の前歯で生える時期に大きな差がある
  • 前歯の中央に大きなすき間がある
  • 永久歯が通常とは異なる方向から生えてきた
  • 学校歯科健診などで歯並びを指摘された

これらの症状があるからといって、必ず過剰歯があるとは限りません。

しかし、歯ぐきの中に埋まっている過剰歯は外から確認できないため、必要に応じてレントゲン検査を行います。

過剰歯とは、通常の歯の本数を超えて形成される歯のことです。

乳歯は通常20本、永久歯は親知らずを除いて28本ですが、それとは別に余分な歯が形成されることがあります。

子どもで特にみられるのが、上顎の左右の中切歯の間にできる**「正中過剰歯」**です。

過剰歯には、口の中に生えてくるものだけでなく、歯ぐきや顎の骨の中に埋まったままの「埋伏過剰歯」もあります。

そのため、見た目では分からず、レントゲン撮影によって偶然発見されることもあります。

過剰歯はさまざまな場所に発生しますが、特に多いのが上顎前歯部です。

上の左右の中切歯の間に生じるものを「正中過剰歯」と呼びます。

一方、小臼歯部などに生じることもあります。

7歳児の完全埋伏逆性過剰歯

7歳児の完全埋伏逆性過剰歯レントゲン画像


7歳児の逆性埋伏過剰歯です。両中切歯間の位置にあるため正中離開が顕著に起きています。

8歳児の完全埋伏逆性過剰歯レントゲン画 像

8歳児の完全埋伏逆性過剰歯レントゲン画像


8歳児の逆性埋伏過剰歯です。中切歯の歯根より高い位置にあるため正中離開は起きていません。

7歳児の完全埋伏した逆性過剰歯

レントゲンでは、左右の中切歯の間に逆向きに埋まった過剰歯が確認できます。

過剰歯の位置によっては、前歯の萌出や歯並びに影響し、正中離開(前歯中央のすき間)の原因となることがあります。

8歳児の完全埋伏した逆性過剰歯

過剰歯が中切歯の歯根よりも高い位置に存在しています。

過剰歯があっても、位置や向きによって永久歯への影響は異なります。そのため、レントゲンで周囲の永久歯との位置関係を確認することが重要です。

過剰歯があっても、すぐに症状が現れるとは限りません。

一方、位置や向きによっては永久歯の萌出や歯並びに影響することがあります。

前歯が生えてこない

正中過剰歯が永久歯の萌出経路にあると、前歯が正常に生えてくるのを妨げることがあります。

特に、左右の前歯のうち片方だけなかなか生えてこない場合は、原因を確認するためにレントゲン検査を行うことがあります。

前歯のすき間が閉じない

永久歯への生え替わりの時期には、上の前歯の中央に一時的なすき間ができることがあります。

しかし、前歯の間に過剰歯が存在すると、すき間が閉じにくくなる場合があります。

歯並びが乱れる

過剰歯によって永久歯の萌出方向が変わると、

  • 歯がねじれて生える
  • 本来とは異なる位置から生える
  • 前歯が並ぶためのスペースが不足する

といった問題につながることがあります。

矯正治療が必要になることがある

過剰歯によって永久歯の萌出が妨げられた場合、過剰歯を抜歯するだけでなく、その後に矯正治療が必要になることがあります。

永久歯が自然に生えてこない場合には、矯正装置を使って適切な位置へ誘導する「萌出牽引」を検討することもあります。

早期に状態を把握しておくことで、永久歯の萌出を確認しながら適切な治療時期を検討できます。

逆性過剰歯は位置の変化に注意

歯冠が鼻側を向いているものを「逆性過剰歯」と呼びます。

逆性過剰歯は自然に口の中へ萌出しにくく、成長に伴って鼻腔側の高い位置にみられることがあります。

位置によっては抜歯の難易度が高くなるため、定期的にレントゲンで経過を確認することが大切です。

子どもの前歯にすき間があるからといって、必ず異常というわけではありません。

生え替わりの時期にみられる正常なすき間

正中離開
正中離開

上顎の永久歯が生えてくる時期には、前歯の中央に一時的なすき間ができることがあります。

この時期は一般に**「みにくいアヒルの子の時代」**と呼ばれています。

その後、側切歯や犬歯の萌出に伴って前歯の位置が変化し、すき間が小さくなることがあります。

そのため、子どもの正中離開のすべてに治療が必要なわけではありません。

みにくいアヒルの子時代の症例

上顎中切歯間に少し隙間を空けて萌出することは正常です。この時期を”みにくいアヒルの子の時代”と呼びます。側切歯が萌出する力で次第に正中離開は閉じてきます。

しかし、正中過剰歯があると正中離開はそのままで閉じることはありません。

子供の正中離開(すきっ歯)

子供の正中離開(すきっ歯


子供の上顎中切歯間が大きく開いています。この様な状態の時期をみにくいアヒルの子時代と呼びます。

※ 歯垢染め出し液を使った状態です。

同症例のレントゲン写真

同症例のレントゲン写真


レントゲン写真を取ると正中過剰歯は認められません。放置しても自然と閉じてくると思われます。

過剰歯が原因のケース

6歳児の完全埋伏逆性過剰歯レントゲン画像

6歳児の完全埋伏逆性過剰歯レントゲン画像


6歳の子供の上顎前歯がなかなか萌出せず、歯の間に隙間が出来ていることを主訴として来院しました。

レントゲンを撮ると鼻腔に向いて埋伏している正中過剰歯が確認出来ます。過剰歯に接した中切歯の歯根は未完成の状態です。

歯根の完成を待って抜歯する予定となりました。

逆性過剰歯

同症例8歳時のレントゲン画像


8歳の時点で、正中過剰歯に隣接する中切歯の歯根がほぼ完成したので抜歯をすることになりました。

このまま逆性埋伏過剰歯を放置すると鼻の近くまで移動してしまい、抜歯が極めて困難になることがあります。

8歳の時点でも正中離開は少し残っています。

過剰歯が前歯の間に存在すると、自然にすき間が閉じないことがあります。

この場合はレントゲン検査で過剰歯の有無を確認する必要があります。

正常なすき間過剰歯が原因
成長とともに閉じる閉じない
レントゲン異常なし過剰歯を認める
経過観察抜歯を検討

6歳児の完全埋伏した逆性過剰歯

上顎前歯がなかなか萌出せず、前歯のすき間を主訴として来院した症例です。

レントゲン検査を行うと、鼻腔方向を向いた正中過剰歯が確認されました。

隣接する中切歯の歯根はまだ発育途中であったため、永久歯の発育や過剰歯の位置を確認しながら経過観察を行いました。

8歳時のレントゲン画像

その後、中切歯の歯根形成が進んだ段階で、過剰歯の抜歯を行うことになりました。

正中離開も残っているため、抜歯後は永久歯の萌出や歯並びの変化を継続して確認します。

このように、過剰歯は「見つかったらすぐに抜く」のではなく、永久歯の発育状態や過剰歯の位置などを確認しながら治療時期を判断することがあります。

「過剰歯が見つかったら、すぐに抜歯した方がよいのでしょうか?」

保護者の方からよくいただく質問ですが、抜歯のタイミングは一律ではありません。

主に、

  • 過剰歯の位置・向き
  • 永久歯の萌出状況
  • 永久歯の歯根形成
  • 周囲の歯への影響
  • お子さまの年齢や治療への協力度

などを総合的に判断します。

永久歯への影響が大きい場合には早めの処置を検討することがありますが、永久歯の歯根を傷つけるリスクなどを考慮して経過観察する場合もあります。

したがって、「○歳になったら必ず抜歯する」と一律に決めることはできません。

レントゲンで永久歯と過剰歯の位置関係を確認しながら、適切なタイミングを判断することが重要です。

過剰歯は歯ぐきや顎の骨の中に埋まっていることが多いため、画像検査が重要です。

パノラマレントゲン

上下の歯や顎全体を撮影し、過剰歯の有無や永久歯の発育状態などを確認します。

デンタルレントゲン

特定の歯を詳しく撮影する小さなレントゲンです。

前歯部の過剰歯や周囲の永久歯との位置関係を詳しく確認する際に使用します。

CT検査

通常のレントゲンだけでは過剰歯の正確な位置関係を判断しにくい場合などに、CT検査を検討することがあります。

CTでは三次元的に確認できるため、

  • 過剰歯の位置・向き
  • 永久歯との位置関係
  • 鼻腔など周囲組織との位置関係
  • 抜歯方法の検討

などに役立ちます。

すべての過剰歯にCT検査が必要というわけではなく、必要性を判断したうえで行います。

歯ぐきや顎の骨の中に埋まっている過剰歯を抜歯する場合は、外科的な処置が必要になることがあります。

基本的な手術の流れ

  1. 局所麻酔を行う
  2. 歯ぐきを切開する
  3. 必要に応じて周囲の骨を削る
  4. 過剰歯を摘出する
  5. 歯ぐきを元に戻して縫合する

過剰歯の位置や深さによって、手術方法は異なります。

手術時間

手術時間は過剰歯の位置や向き、埋まっている深さなどによって異なります。

完全に骨の中へ埋伏している場合には、摘出までに時間を要することがあります。

そのため、事前の画像検査によって過剰歯の位置を把握し、治療方法を検討します。

術後の腫れや痛み

抜歯後には、一時的に腫れや痛みが出ることがあります。

症状の程度には個人差があり、過剰歯の位置や手術範囲によっても異なります。

正中過剰歯の存在を確認:将来の歯並びを守るための抜歯が必要なケース
正中過剰歯の存在を確認:将来の歯並びを守るための抜歯が必要なケース
正中過剰歯の抜歯:頬側から骨を開削して行う埋伏歯の摘出
正中過剰歯の抜歯:頬側から骨を開削して行う埋伏歯の摘出

赤矢印が示す部位には、前歯の中央に本来ない“正中過剰歯”が確認されます。過剰歯は永久歯の萌出を妨げたり、歯並びの乱れ・正中離開の原因となるため、多くの場合は早期の抜歯が必要です。歯列矯正の成功にも関わるため、適切なタイミングでの診断と抜歯が重要となります。

正中部に埋伏している過剰歯を摘出するため、このケースでは頬側から骨を開削し、抜歯したところです。過剰歯が深く埋まっている場合は、このように骨を慎重に削って露出させ、周囲組織を傷つけないように摘出を進めます。永久歯の正常萌出や前歯の正中位置を整えるために重要な処置です。

完全埋伏した正中過剰歯の抜歯手術:手術の流れと注意点

子供の過剰歯の日帰り抜歯手術
子供の過剰歯の日帰り抜歯手術

完全埋伏した正中過剰歯の抜歯手術

写真は内側の歯茎を切開剥離した状態です。過剰歯の抜歯は日帰り手術が一般的です。

手術時間

骨に完全埋伏した正中過剰歯抜歯の手術時間は約1時間を想定しています。

 矮小歯の形をした過剰歯
 矮小歯の形をした過剰歯

正中埋伏過剰歯抜歯後の画像

歯冠部は犬歯の様な形をしています。まだ十分に歯根は形成されていません。過剰歯は正常の歯の形に近いものから委縮して小さくなったものまで様々な形があります。

過剰歯は比較的よく知られた歯の形成異常の一つです。

報告によって頻度には差がありますが、永久歯列では数%程度に認められるとされ、男性に多い傾向が報告されています。

また、発生部位としては上顎前歯部が多く、正中部に生じる過剰歯は小児歯科でも重要な確認項目の一つです。

過剰歯が形成される詳しい原因は、現在のところ完全には解明されていません。

歯が形成される過程での変化や遺伝的な要因など、複数の要因が関係していると考えられています。

家族内でみられることもありますが、家族に過剰歯があるからといって、必ず子どもにも発生するわけではありません。

過剰歯は自然になくなりますか?

形成された過剰歯そのものが自然に消失することは通常ありません。

ただし、すべての過剰歯に抜歯が必要とは限らず、位置や周囲への影響によっては経過観察する場合もあります。

過剰歯があれば必ず抜歯しますか?

必ずしも抜歯するとは限りません。

永久歯の萌出や歯並びへの影響、過剰歯の位置・向きなどを確認し、抜歯によるメリットとリスクを考慮して判断します。

兄弟にも過剰歯ができることはありますか?

過剰歯には遺伝的要因の関与も指摘されており、家族内でみられることがあります。

ただし、必ず兄弟にも発生するわけではありません。

大人になってから見つかることはありますか?

あります。

骨の中に埋まったまま症状がなければ、成人になってから別の目的で撮影したレントゲンやCTで偶然発見されることがあります。

過剰歯は歯ぐきや顎の骨の中に埋まっていることがあり、見た目だけでは分からないケースがあります。

特に、

  • 前歯がなかなか生えてこない
  • 左右で前歯の生える時期が大きく違う
  • 前歯のすき間がなかなか閉じない
  • 永久歯が通常とは異なる位置から生えてきた

といった場合は、過剰歯などが永久歯の萌出に影響していないか確認することがあります。

過剰歯が見つかっても、すぐに抜歯するとは限りません。

永久歯の発育状態や過剰歯の位置・向きを確認し、経過観察をするのか、どの時期に抜歯するのかを個々の状態に合わせて判断することが大切です。

お子さまの前歯の生え方や歯並びが気になる場合は、歯科医院で一度ご相談ください。

関連記事

小児矯正
すきっ歯は自然に治る?子ども・大人の原因と治療法
すきっ歯は自然に治る?子ども・大人の原因と治療法New!!
小児歯科
乳歯が抜ける時期と順番|5〜12歳の生え変わり完全ガイド
乳歯が抜ける時期と順番|5〜12歳の生え変わり完全ガイド
歯科口腔外科
上唇小帯とは?すきっ歯や矯正治療との関係、切除が必要になるケース
上唇小帯とは?子どものすきっ歯との関係・切除が必要なケースと治療時期

前歯の生え方が遅い、左右で生える時期が違う、前歯のすき間がなかなか閉じない――。その原因として、歯ぐきの中に「過剰歯」が隠れていることがあります。
過剰歯は見た目だけでは分からないこともあるため、レントゲン検査で位置や永久歯への影響を確認することが大切です。気になる症状がある場合は、早めにご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!