初期舌癌と口内炎の違い

  • 舌の側面に潰瘍や赤、白、赤と白の混在するできものが現れたら要注意。
  • 舌癌の初期症状には痛みはほぼ無く、進行スピードが極めて早いのが特徴。
目次

舌がんの危険信号とは?気づきにくい初期症状を見逃さないために

最近では、有名人が口腔がんを公表し、テレビなどで報道されることも増えてきました。それを見て、不安を感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。口腔がんは進行が早く、気づいたときにはすでに手術が必要な状態になっていることも少なくありません。特に舌がんや歯肉がんは、発音や嚥下など日常生活に直結する機能へ影響を及ぼしやすいのが特徴です。

さらに、治療で放射線を使用する場合には唾液腺がダメージを受けやすく、唾液の分泌が減ることで口の乾きや食事のしづらさといった生活の質の低下にもつながります。

本記事では、口腔がんの中でも特に多く見られる「舌がん」と「歯肉がん」について、初期症状や口内炎との違いなどをわかりやすく解説していきます。

🦷アフタ性口内炎とは?

  • アフタ性口内炎の特徴
     直径2〜10mmの白っぽい楕円形の潰瘍で、周囲が赤くなるのが特徴です。
     最も一般的な口内炎で、多くの場合「口内炎」といえばこのタイプを指します。
  • 写真で見るアフタ性口内炎
     舌にできた典型的なアフタ性口内炎の写真を紹介。見た目の特徴を確認しましょう。
舌にできたアフタ性口内炎
舌にできたアフタ性口内炎

📌口内炎の種類はさまざま

  • アフタ性口内炎以外の口内炎
     以下のような種類に大別されます。
     - 潰瘍性口内炎
     - 壊疽性口内炎
     - カタル性口内炎

📸口内炎の見た目

頬粘膜にできた口内炎

頬粘膜にできた口内炎


最後臼歯奥の頬粘膜にできた長径5mmの楕円形の口内炎です。

かさぶた状の白い潰瘍を作り、周りは発赤しています。

下顎の歯茎にできた口内炎

下顎の歯茎にできた口内炎


下顎2番相当部の歯茎にできた長径4mmの楕円形の口内炎です 。

境界部分が赤くなっているのが明瞭にわかります。

下顎の可動粘膜部分にできた口内炎

下顎の可動粘膜部分にできた口内炎


下顎の可動粘膜部分にできた長径3mmの楕円形の口内炎です 。周囲の発赤はほとんど見られません。

上顎口蓋部にできた口内炎

上顎口蓋部にできた口内炎


上顎口蓋部にできた長径5mmの楕円形の口内炎です。境界部がわずかに赤くなっているのが認められます。

📸初期舌癌が疑われる粘膜病変の見た目

舌癌を見た目や触診だけで鑑別診断することはできません。たとえ大学病院の口腔外科専門医であってもです。

確定診断のためには組織を一部取り顕微鏡で細胞の変化を観察する生検が必要です。下記写真は舌癌が疑われる粘膜病変です。

舌の裏に出来たびらん状のできもの

舌の裏に出来たびらん状のできもの


火傷したようにも見えます。もし接触痛がないのであれば口内炎ではありません。

びらん状の出来物の周りを指で触って、しこりがあるようなら歯医者さんをすぐに受診する必要があります。

舌の側面のびらん状の粘膜病変

舌の側面のびらん状の粘膜病変


舌の側面にできた直径2mm程のびらん状の粘膜病変です。

見た目は口内炎のようにも見えますが、境界の赤変は認められません。このような変化でも舌癌の可能性は否定できません。

舌の側面に出来た3cm~4cmの潰瘍

舌の側面に出来た3cm~4cmの潰瘍


赤色と白色の混在が認められ、部分的に陥没している所が認められる。

潰瘍の周りを指で触診し、しこりがあるようなら舌癌の可能性が高まります。

舌の側面に出来たできもの

舌の側面に出来たできもの


舌の側面にできたできもので、全体が白っぽく変化し、部分的に赤く陥没した場所も認められます。

白い部分を擦っても取れない、 触っても痛くない、 周りにしこりがあるなどの症状があれば舌癌の可能性があります。

🔥初期舌癌と口内炎の見た目と症状の違い

🔀口内炎と初期舌癌の比較一覧

口内炎初期舌癌
痛み接触痛があり再発を繰り返します。初期舌癌では痛みはほとんど無く、舌を動かした時の違和感程度。
治癒期間1~2週間程度で自然治癒。歯科医院で処方するオルテクサー口腔用軟膏5g塗布で1週間以内で治癒。自然治癒しない。ケナログ軟膏をつけても治癒しない。
しこり小さなしこりが出来ることがありますが、口内炎の治癒とともに消失します。癌の周囲にしこり(硬結)が出来て堤防状に隆起することがあります。舌にしこりを感じることがありますが、自然治癒しません。
見た目直径2~10mm 程度の白っぽい潰瘍を作り周囲が赤い。赤色、白色、赤と白の混在は要注意。
好発部位舌に出来る場合、好発部位は特定しません。舌の側面に出来ることが殆どです。

📊初期の舌癌画像一覧

舌癌は、舌の側面に出来ることが最も多く、次いで舌の裏側です。下記写真の舌癌は、全部がほぼステージ1の状態ですが、舌癌の進行スピードは極めて早く、約1ヶ月でステージ2となってしまいます。

「様子を見ましょう」は絶対NGです。できる限り早く歯科を受診して下さい。東京歯科大学の写真を転載しています。

初期舌癌-潰瘍型

初期舌癌-潰瘍型


舌の側面に出来た潰瘍型のステージ1の舌癌です。白と赤の混在が認められ部分的に陥没している箇所があります。

舌癌の周囲にしこり(硬結)が出来て堤防状に僅かに隆起しています。

初期舌癌-白板型

初期舌癌-白板型


舌の側面に出来た白板型のステージ1の舌癌です。舌粘膜の見た目は白っぽく変化し白板症との鑑別が必要です。

初期舌癌-肉芽型

初期舌癌-肉芽型


舌粘膜が盛り上がって粒状の肉塊を形成しています。見た目は白と赤の混在です。

初期舌癌-びらん型

初期舌癌-びらん型


舌粘膜の表皮が一部欠損し、下部組織が露出してただれている状態です。見た目は口内炎の様にも見えますがステージ1の舌癌です。

舌がんの早期発見に!毎月1回のセルフチェックを習慣に

👅舌癌のセルフチェック

鏡で舌癌のセルフチェック

鏡で舌癌のセルフチェック


歯磨きの時に1ヶ月に一度でいいので舌全体の見た目を鏡でチェックしてみて下さい。

セルフチェックのやり方は明るいところで鏡を見ながら舌を目一杯突き出します。

特に舌の側面に「赤いもの」「白いもの」「潰瘍状のもの」「白と赤の混在」「口内炎の様なもの」が出来ているかチェックします。

2週間経っても治らない場合には直ぐに歯医者を受診して下さい。

指でつまんで「しこり」のチェック

指でつまんで「しこり」のチェック


舌の側面を中心に指で摘むようにして「しこり」がないかのチェックも行って下さい。

舌癌は舌の中にできている場合があります。つまり、表面には全く変化がなくても「しこり」がある場合には歯科の受診を行ってください。

😬歯肉がんのセルフチェック方法

👄まずは「イー」と口を開けてチェック

  • 鏡の前で「イー」と発音しながら口を大きく開けましょう
  • 歯茎が左右対称か、赤く腫れていないかを確認します
歯肉癌のセルフチェック
歯肉癌のセルフチェック

🔴歯茎の腫れがある場合の見分け方

  • 歯周病が原因であれば、丁寧な歯磨きを行うことで
     1週間〜10日以内に腫れは徐々に引いていきます
  • 歯肉がんの場合、見た目が歯周病の腫れと非常に似ており、自己判断が難しいことがあります

🚨受診のタイミングに注意

  • 🔎 腫れが1週間以上続く場合は要注意!
  • 🏥 直ちに歯科医院で診察を受けましょう
  • 早期発見・早期治療が、機能の温存にもつながります

❓ Q:半年前から口内炎の症状があるのに突然ステージ4を宣告された芸能人の堀ちえみさん。リンパ節郭清術と舌の60%を切除する11時間にわたる手術。舌ガンは気づきにくい病気なのでしょうか?

🅰️はい、初期の舌がんは一見「治りにくい口内炎」に見えることが多く、以下の理由で気づきにくい傾向があります:

🔍【初期症状が口内炎に似ている】

  • 白っぽい潰瘍や赤いしこりなど、見た目がよくある口内炎と似ています
  • 痛みが軽度、または全くないこともあり、見過ごされやすいです

📅【2週間以上治らないのがポイント】

  • 通常の口内炎は1〜2週間で自然に治ります
  • それ以上続く場合は、口腔がんの可能性を疑う必要があります

🏥 早期発見のためにできること

  • 2週間以上治らない口内炎やしこりがあれば、すぐに歯科または口腔外科へ
  • セルフチェック:鏡で舌の側面・裏側をよく観察しましょう
  • 定期健診:歯科での定期的な口腔内チェックが早期発見につながります

🗣️ 歯科医師からのひと言

「口内炎かな?」と思っても、1週間を過ぎても変化がなければ放置せず、早めに専門医に相談することが大切です。堀ちえみさんのようなケースから学び、ご自身の健康を守る行動がとても大事です。

❓ Q:舌の側面がヒリヒリして少し赤くなっていますが、しこりでは有りません。舌がんの検査は特別に口腔外科などで受けないと発見できないものでしょうか?

🅰️【舌の赤みやヒリヒリ=舌がんとは限りません】

  • 赤みやヒリヒリは「舌炎」や「刺激物による炎症」「ストレス性の口内炎」など良性のトラブルでもよく見られる症状です
  • ただし、2週間以上続く場合や、範囲が広がる・痛みが強くなるなどの変化があれば、念のため受診をおすすめします

🏥舌がんの検査はどこで受けられる?

✅ 一般の歯科医院でできること
  • 視診・触診で異常の有無を確認できます
  • 必要があれば、専門機関(口腔外科・大学病院など)へ紹介してもらえます
🦷 口腔外科でできること
  • 詳細な検査(組織の一部を取る「生検」など)を行い、がんかどうかを正確に判断
  • CTやMRIで広がりや転移の有無もチェックできます(必要時)

🔍早期発見のためのポイント

  • 2週間以上症状が続いたら受診
  • 舌の側面や裏側は、舌がんの好発部位なので要注意
  • 赤みが消えない・しみる・ザラつき・出血などもチェックしましょう

🗣️ 歯科医からのアドバイス

「舌がんは珍しい病気ではありませんが、早期に見つけられれば治療の選択肢が広がります。気になる症状がある場合は、まずかかりつけの歯科で相談してくださいね。」

舌がん・歯肉がんの早期発見に|江戸川区歯科医師会の口腔がん検診認定医が対応します

当院には江戸川区歯科医師会口腔がん検診認定医が在籍しており、口腔がん検診を実施しています。 また、虫歯や歯周病のメンテナンスで来られる患者様には口腔癌検診も合わせ行っております。舌癌や歯肉癌など口腔癌を早期発見するためにご活用ください。江戸川区篠崎周辺で、口腔がん検診をご希望の方は当院までお気軽にご相談下さい。

【動画】舌癌や歯肉癌の初期症状を口内炎などと比較

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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