タバコと歯周病の関係

  • タバコの蓄積本数が増えると歯周病や口腔癌の発症が増加します。
  • 喫煙は歯茎に炎症があっても出血しにくく、歯周病に気づかず重症化し易い傾向があります。
  • 禁煙で、歯茎は黒色からピンクに回復し、歯周病や口腔癌のリスクも改善します。

タバコが歯周病を悪化させるメカニズム

タバコが歯茎に与える影響

タバコで歯茎はダメージを受け重度歯周病へ

喫煙で歯茎はダメージを受け重度歯周病へ

タバコは1本吸ったからと言ってすぐに人体に悪影響を与えるものではありませんが、1日20本を10年間吸い続けると明らかに何らかの悪影響を与えるものです。

歯科口腔領域においては、喫煙により歯茎の繊維化という変化が起こります。

本来、毛細血管が歯茎の中に沢山入り込み歯周病菌と戦う白血球を供給しています。しかし、歯茎の繊維化が進むと毛細血管は少なくなり、供給される白血球の量も少なくなります。

同時に、タバコの強力な血管収縮作用が十分な量の血液(白血球)を歯周ポケット周囲の炎症部位に供給することを妨げています。

これらの反応は、iQOSなどの電子タバコも同様です。

結果として歯周ポケット内の歯周病菌の活動が活発になり、歯茎全体に炎症が拡大し、歯周組織が破壊されると考えられています。歯茎が腫れて痛みが出る症状は、かなり歯周病が重症化した場合です。

また、歯茎の繊維化は、歯周組織に炎症があるにもかかわらず、歯磨きをしたくらいでは出血が起こりにくくなっています。そのため、重度歯周病になるまで自覚症状が出づらく手遅れになるケースが散見されます。

一方、タバコを吸っていない人は歯周病の初期に出血しやすく、異変に気がつき、直ぐに対処できるため、歯周病を初期で食い止めることが出来ると言えます。

歯周病の治療には禁煙は必須

歯周病の治療には禁煙は必須

タバコを吸い続けると歯周組織は治療に反応しません

仮に、歯周病の初期と診断され治療(歯石取り、ルートプレーニング、PMTCなど)を進めても、禁煙しなければ歯周治療に対し歯周組織はほとんど反応せず、なかなか改善に向かいません。

従って、歯科医院における歯周病治療では禁煙は必須です。

喫煙者と非喫煙者の歯茎の色の比較

喫煙者

喫煙者の口腔内ではニコチン等の物質によりビタミンCが破壊され、メラニンが合成されて歯茎が黒ずんでいます。歯茎の繊維化が進み、肥厚しています。こうなると歯周病が進行しても歯磨きをしたくらいでは出血しません。

歯面はタールの影響で歯に「ヤニ」が沈着して、歯ブラシではなかなか取りにくい状態になります。また、喫煙者の口腔がん発生率は非喫煙者の2.9倍、咽頭癌では32.5倍にも達します。

喫煙者の歯茎

喫煙者の歯茎

喫煙者の歯茎

喫煙者の歯茎

非喫煙者

非喫煙者の歯茎は毛細血管に富み、歯茎の色はピンク色です。

非喫煙者の歯茎

喫煙者の歯茎

非喫煙者の歯茎

喫煙者の歯茎

禁煙で起こる歯茎の変化

歯茎から出血しやすくなる

禁煙後、歯磨きをすると出血が止まらなくなることがあります。これは、禁煙により血流が回復したことを意味しています。つまり、歯茎が回復している良い変化です。しっかりと歯垢(プラーク)を除去すると徐々に出血は治まってきます。

歯茎の色がピンク色に戻る

禁煙することで歯茎が改善し、それとともにメラニン色素の沈着が取れ、歯茎の色もピンク色に戻っていきます。

歯周病が改善

禁煙したらすぐに歯周病が改善する訳ではありません。喫煙本数/ブリクマン指数が高いほど歯周病が改善するまでの期間が長くなります。

ブリクマン指数が400程度の場合、禁煙をしてから歯周病の改善効果が顕著に現れるまでに5年ほどかかります。※もちろん歯周病の治療を歯科医院で行うという前提です。

歯茎が下がる

禁煙すると歯茎が下がったり、簡単に出血したりなど「歯周病が悪化したのでは?」と疑問に思う方がいますが、それは間違いです。むしろ歯周病の改善が進んだことで、歯周病の状態が顕在化したということが出来ます。

歯周病の治療で知覚過敏が発生

禁煙後の歯周治療で歯茎が引き締まり下がって、歯根露出すると知覚過敏が発生することがあります。

ブリクマン指数・BI指数

ブリクマン指数・BI指数とは

ブリクマン指数(BI指数)とは、一日当たりの平均喫煙量(本数)×喫煙した年数で算出される喫煙指数のことです。

ブリクマン指数上昇で口腔癌と歯周病のリスク増大

ブリクマン指数上昇で口腔癌と歯周病のリスク増大

口腔癌・咽頭癌

ブリクマン指数600以上で口腔癌の発生率は約3倍、ブリクマン指数1200以上で喉頭癌の危険性が増大し、咽頭癌の発生率は32.5倍にもなります。

歯周病

喫煙は歯周病の最大のリスク因子です。ブリクマン指数・BI指数の上昇とともに歯周病の進行促進、重症化、再発のしやすさなど様々な弊害が生じます。

口腔乾燥による口臭やヤニ臭

タバコの成分のタールによるヤニ臭やニコチンによる唾液分泌低下で口腔が乾燥し、口腔内細菌を洗い流す自浄作用が低下し、口臭が発生します。

ヤニの着色

タールが歯面に付くことで、歯磨きでは落としにくいヤニの着色が起こります。

禁煙のメリット

歯周病の改善や癌のリスク低下

禁煙をすれば、歯肉の血流は数日~数週間で改善します。歯肉の黒ずみも時間はかかりますが徐々に本来のピンク色に戻ります。

禁煙は歯周病治療の最も有効な対策の一つです。重度歯周病になった方でも治療効果は徐々に上がってきます。

ヘビースモーカーだった方でも禁煙すると癌など様々な疾患の発症リスクは確実に減少し、健康な人生を送れることでしょう。


禁煙で起こる体の様々な変化

20分後 手の体温が正常にまで上昇

STEP
1

8時間後 血液中の酸素が正常値に戻る

STEP
2

24時間後 心臓発作のリスクが減り始める

STEP
3

48~72時間後 ニコチンが完全に抜ける

STEP
4

数日から数週間後 歯肉の血液が正常値に戻る

STEP
5

2週間~3週間後 肺機能が30%アップし歩行が楽になる

STEP
6

1年後 血栓症や心臓発作のリスクが半減する

STEP
7

5年後 肺癌のリスクが半減する

STEP
8

10年後 口腔ガン、咽頭ガンのリスクが減少する

STEP
9

タバコが止められない理由

日本循環器学会  : あなたにもできる禁煙ガイド 第2版 : 12, 2006.

ニコチンの血中濃度低下で離脱症状

脳の神経細胞は細長い繊維状の形で、それぞれの神経細胞が結合する部分で神経伝達物質を放出することによって神経回路が形成されます。

タバコ吸うと数秒で肺から吸収されたニコチンは血流にのって脳に届きます。ニコチンがα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に結合する事で快感をつかさどるドーパミンの大量分泌が起こります。

しかし、ニコチンの血中濃度は約30分で低下し、ドーパミンの枯渇状態が起こります。そのため不快感・イライラ感(離脱状態)を覚えるようになります。 そこでまた、たばこを吸いたくなるというサイクルが作られます。

タバコを吸う習慣が長くなると、通常の神経伝達物質の放出能力が低下しています。タバコをやめることを決意し、ニコチンの供給がなくなると、神経回路は正常に働かず禁断症状が起こるため、なかなかタバコをやめられないというのが理由です。

離脱症状の期間

離脱症状のピークは、タバコを止めてから3日目くらいに来ます。それを乗り越えれば徐々に減少し、1週間くらい経つとかなり楽になります。

しかし、たばこを吸いたいという気持ちはなかなか収まらず、1ヶ月くらい続くと考えたら良いです。 個人差はあるものの、タバコのことを完全に忘れる生活に入れるようになるには最低3ヶ月が必要です。

禁煙のコツ

離脱症状期間中の気持ちの持ち方として「昨日、一日我頑張ってできたのだから、もう一日、頑張ろう」「もし、ここで一本吸ったら今までの辛い努力が無駄になってしまう」と考えると、長続きします。

ニコチン依存症は保険適用

ニコチン依存症は病気なので健康保険

ニコチン依存症は病気です。病気なので保険適応となります。最近では若年者への適用拡大も行われました。

禁煙外来の処方薬

治療法はニコチンガムやニコチンパッチを使用する方法、または禁煙内服薬・バレニクリン(商品名:チャンピックス)を服用する方法などがあります。

後者は心疾患や脳梗塞の既往があるケースに使いますが、効果が現れるのに約1週間かかります。 また喫煙習慣により心理的依存を起こすためカウンセリングも併用されます。

近隣の禁煙外来クリニックを探す

禁煙の専門家(禁煙外来)の全国のリストが掲載されています。日本禁煙学会ホームページ

ふかさわ歯科クリニック篠崎では、患者様の大切な歯を1本でも延命するため、軽度歯周病から重度歯周病に至るまで様々な対策を行い、歯周病予防をはじめ、早期発見・早期治療で症状の改善・維持を行い、抜歯回避に努めております。

喫煙は歯周病を悪化させる最大の原因となります。禁煙するのは言うまでもありませんが、歯科での歯周病治療とメインテナンスが必須となります。江戸川区篠崎で歯周病予防・歯周病治療をご希望の方は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談下さい。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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