目次

親知らずはお口の一番奥にあるため、虫歯になっても自分では気付きにくい歯です。

しかし、注意したいのは親知らずそのものだけではありません。

特に斜めや横向きに生えている親知らずでは、手前にある第二大臼歯(7番)との間に汚れがたまりやすくなり、第二大臼歯まで虫歯や歯周病になることがあります。

第二大臼歯は、食べ物を噛むうえで重要な永久歯です。

親知らずを長期間放置すると、親知らずだけでなく、本来残したい第二大臼歯にまで大きな治療が必要になることがあります。

この記事では、親知らずが虫歯になりやすい理由、第二大臼歯への影響、抜歯を検討するケースについて解説します。

親知らずが斜めに生え、隣接歯に虫歯が進行しています。
親知らずが斜めに生え、隣接歯に虫歯が進行しています。
親知らずとの接触部に虫歯が進行し、手前の歯が黒く変色しています。
親知らずとの接触部に虫歯が進行し、手前の歯が黒く変色しています。

親知らずは、ほかの永久歯と比べて清掃が難しく、虫歯や歯ぐきの炎症が起こりやすい場所です。

歯ブラシが届きにくい

親知らずは歯列の最も奥にあるため、歯ブラシの毛先が十分に届かないことがあります。

特に親知らずと第二大臼歯の間は磨き残しが生じやすく、プラークが蓄積しやすい場所です。

斜め・横向きに生えることがある

顎のスペースが不足していると、親知らずが真っ直ぐ生えず、斜めになったり横向きのまま埋伏したりすることがあります。

このような状態では第二大臼歯との間に清掃しにくい部分ができ、虫歯や歯周病のリスクが高まります。

一部だけ生えていることがある

親知らずの一部だけがお口の中に出ている「半埋伏」の状態では、歯の一部に歯ぐきがかぶっています。

その隙間に細菌や食べかすが入り込むことで、親知らず周囲の歯ぐきに炎症を起こす智歯周囲炎の原因になることがあります。

「痛くなったら歯医者へ行けばいい」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、痛みがない=問題がない、とは限りません。

親知らずは、

  • 自分では見えにくい
  • 歯ブラシが届きにくい
  • 第二大臼歯との接触部を確認しにくい

という特徴があります。

そのため、虫歯や歯周病が進行していても、自覚症状がほとんどないことがあります。

親知らずの位置や生え方によっては、診察に加えてレントゲン検査を行い、目では確認できない部分まで調べることが大切です。

親知らずに問題がある場合、特に守りたいのが手前の第二大臼歯です。

第二大臼歯との間に虫歯ができる

斜めに生えた親知らずと第二大臼歯の間には、歯ブラシやフロスが届きにくい隙間ができることがあります。

そこにプラークが長期間停滞すると、親知らずだけでなく、第二大臼歯にも虫歯が生じる可能性があります。

第二大臼歯の歯周組織にも影響する

親知らずの生え方によっては、第二大臼歯の後方に深い歯周ポケットが形成され、歯周病が進行することがあります。

つまり、注意が必要なのは虫歯だけではありません。

第二大臼歯を支える歯ぐきや顎の骨への影響も確認する必要があります。

進行すると大きな治療が必要になることも

第二大臼歯の虫歯が深く進行すると、

  • 詰め物・被せ物による治療
  • 根管治療(歯の神経の治療)
  • 状態によっては抜歯

などが必要になることがあります。

親知らずを早い段階で確認する目的の一つは、将来も使いたい第二大臼歯を守ることです。

親知らずは、生え方によって管理方法が異なります。

タイプ① 真っ直ぐ生えている

上下の親知らずが正常に生え、噛み合っていて、十分に清掃できている場合は、必ずしも抜歯する必要はありません。

定期的に状態を確認しながら保存できることがあります。

タイプ② 一部だけ生えている

親知らずの一部を覆っている歯肉弁

親知らずの一部に歯ぐきがかぶっている状態です。

パカパカした歯茎(歯肉弁)
パカパカした歯茎(歯肉弁)

歯と歯ぐきの隙間に細菌が入り込みやすく、智歯周囲炎を起こすことがあります。

症例によっては歯肉弁への処置を行うことがあります

炎症を繰り返す場合などには、親知らずの位置や周囲の状態を確認したうえで抜歯を検討します。

歯肉弁切除
歯肉弁切除

タイプ③ 斜めに生えている

親知らずが第二大臼歯側へ傾いている状態です。

両者の間に汚れがたまりやすく、虫歯や歯周病、智歯周囲炎などの原因となることがあります。

第二大臼歯への悪影響が認められる場合や、今後トラブルを起こす可能性が高いと判断される場合には、抜歯を検討します。

タイプ④ 横向きに埋まっている

横向きに埋伏している親知らずを「水平埋伏智歯」と呼びます。

水平埋伏智歯だからといって、すべて一律に抜歯するわけではありません。

第二大臼歯への影響、炎症や病変の有無、下顎管との位置関係、年齢や全身状態などを確認し、経過観察または抜歯を判断します。

親知らずに虫歯があっても、必ず抜歯になるわけではありません。

虫歯の大きさだけでなく、親知らずの位置、清掃性、噛み合わせ、治療後の再発リスクなどを考慮して治療方法を決めます。

親知らずの状態主な対応
小さな虫歯CR(コンポジットレジン)充填など
深い虫歯根管治療または抜歯を検討
大きく崩壊した虫歯保存可能性を評価し、困難な場合は抜歯
斜め・横向き周囲への影響を確認して抜歯を検討
問題なく機能している定期的に管理しながら保存

治療が難しい

親知らずはお口の最も奥にあるため、治療器具を入れるスペースを十分に確保できないことがあります。

特に斜めに生えている場合などは、虫歯治療や根管治療が難しくなることがあります。

治療後も清掃しにくい

虫歯を治療できても、親知らずの位置や生え方が変わらなければ、磨きにくさが残ります。

そのため、虫歯や炎症を繰り返す可能性があります。

第二大臼歯を守るため

親知らずの抜歯を検討する重要な理由の一つが、第二大臼歯を守ることです。

親知らずを残すメリットよりも、第二大臼歯への悪影響が大きいと考えられる場合には、抜歯が選択肢となります。

次のような症状がある場合は、親知らずやその周囲に問題が起きている可能性があります。

  • 一番奥に食べ物が詰まりやすい
  • 親知らず周囲の歯ぐきが腫れる
  • 奥歯周辺から嫌な味やにおいがする
  • 冷たいものや甘いものがしみる
  • 奥歯が痛む
  • 口が開けにくい
  • 親知らず周囲から膿が出る
  • 同じ場所の腫れや痛みを繰り返している

症状が一度治まっても、原因そのものが解消されているとは限りません。

腫れや痛みを繰り返す場合は、歯科医院で状態を確認しましょう。

親知らずによる第二大臼歯への影響は、発見された時点の状態によって異なります。

ケース① 親知らずの処置だけで第二大臼歯を守れる

第二大臼歯に大きな問題が生じる前に親知らずを治療・抜歯できれば、第二大臼歯をそのまま保存できる可能性があります。

ケース② 第二大臼歯にも虫歯治療が必要になる

親知らずとの接触部に虫歯が生じている場合、親知らずへの処置に加えて第二大臼歯の虫歯治療が必要になることがあります。

虫歯が歯髄まで達している場合は、根管治療が必要になることもあります。

ケース③ 第二大臼歯の保存が難しくなる

第二大臼歯の虫歯や歯周病が著しく進行すると、保存が難しくなることがあります。

そのため、「親知らずが痛くなってから」ではなく、第二大臼歯に問題が起こる前に状態を確認することが大切です。

親知らずは、すべて抜けばよいわけでも、すべて残せばよいわけでもありません。

抜歯を検討するケース

赤矢印の親知らずは横向きに埋まっており、隣の歯を圧迫
赤矢印の親知らずは横向きに埋まっており、隣の歯を圧迫
親知らずが斜めに埋まっており、隣接歯を押して炎症リスクがあります。
親知らずが斜めに埋まっており、隣接歯を押して炎症リスクがあります。
下顎の親知らずが真横に埋まり、完全に骨内に埋伏しています。
下顎の親知らずが真横に埋まり、完全に骨内に埋伏しています。

次のような場合には、抜歯を検討することがあります。

  • 親知らずに大きな虫歯がある
  • 第二大臼歯に虫歯や歯周病を生じさせている
  • 智歯周囲炎を繰り返している
  • 清掃が難しく、トラブルを繰り返している
  • 嚢胞などの病変が認められる
  • 親知らずを保存するメリットが少ない

保存できるケース

一方、次のような親知らずは、定期的に状態を確認しながら保存できることがあります。

  • 正常な位置に生えている
  • 上下で噛み合っている
  • 十分に清掃できている
  • 虫歯や歯周病がない
  • 第二大臼歯へ悪影響を与えていない

抜歯が必要かどうかは、親知らずの生え方だけで決めるのではなく、診察やレントゲン検査などをもとに総合的に判断します。

親知らずの虫歯は削って治せますか?

親知らずに生じた虫歯

親知らずの虫歯
親知らずの虫歯

小さな虫歯で、治療器具が届き、治療後も十分に清掃できる状態であれば、CR(コンポジットレジン)などで治療できることがあります。

一方、虫歯が大きい場合や斜めに生えていて清掃が難しい場合などは、再発リスクも考慮して抜歯を検討することがあります。

痛くなければ放置しても大丈夫ですか?

痛みがないからといって、問題がないとは限りません。

親知らずや第二大臼歯の虫歯、歯周病などが、自覚症状なく進行している場合があります。

特に斜め・横向きの親知らずがある場合は、歯科医院で定期的に状態を確認することが大切です。

親知らずは必ず抜かなければなりませんか?

必ずしも抜歯する必要はありません。

正常に生えて噛み合わせに参加しており、十分に清掃でき、虫歯や歯周病などの問題がなければ保存できることがあります。

将来的に移植歯として利用できる可能性があるなど、親知らずを残すメリットがある場合もあります。

CT検査は必要ですか?

すべての親知らずでCT検査が必要なわけではありません。

通常は診察やパノラマX線検査などで状態を確認します。

下顎の親知らずと下歯槽神経が近いと考えられる場合や、歯根の形態・埋伏状態をより詳しく確認する必要がある場合には、CT検査を行うことがあります。

親知らずの診察というと、「抜歯するかどうかを決めるため」と考える方が多いかもしれません。

しかし、重要なのは親知らずそのものだけでなく、手前の第二大臼歯を守ることです。

親知らずが斜め・横向きに生えていたり、一部だけ歯ぐきから出ていたりすると、自覚症状がなくても第二大臼歯との間で虫歯や歯周病が進行することがあります。

一方で、正常に生えて清掃できている親知らずまで、必ず抜く必要があるわけではありません。

親知らずを残すか抜歯するかは、

  • 親知らずの位置や向き
  • 虫歯・歯周病の有無
  • 第二大臼歯への影響
  • 清掃できる状態か
  • 神経との位置関係
  • 将来的なトラブルの可能性

などを確認して判断します。

「痛くないから大丈夫」と自己判断せず、一度レントゲンなどで親知らずと第二大臼歯の状態を確認しておくことが、大切な奥歯を守ることにつながります。

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親知らずは、痛みがなくても手前の第二大臼歯に虫歯や歯周病を引き起こしていることがあります。
「まだ痛くないから大丈夫」と放置せず、大切な奥歯に影響が出る前に、親知らずの位置や状態を確認しましょう。

【動画】横向きに埋没した親知らずを抜かないと?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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