親知らず抜歯の是非とは

  • 親知らずを抜いて後悔する場合は抜歯後の疼痛や腫れ、穴がなかなか塞がらないなど。
  • 親知らずを抜いた方が良い場合や抜くメリット。
  • 親知らずを抜かないデメリット(智歯周囲炎、矯正後の後戻り、口臭、虫歯など)。
  • 親知らずを抜かない方がメリットがある場合とは。

親知らずを抜いて後悔した時の対処法

親知らず抜歯で後悔する場合

1

親知らずを抜かなきゃよかったと後悔する場合

  • 抜歯後の疼痛と腫れ及び抜歯後の3日後くらいから起こる激痛・ドライソケット。
  • 抜歯後に出来る穴のために発生する口臭。

2

親知らずの抜歯で稀に起こるトラブル

  • 下顎神経の損傷による神経麻痺と下歯槽動脈の損傷による出血。
  • 上の親知らずの上顎洞への迷入や交通。

親知らず抜歯で後悔した時の対処法

ドライソケット(抜歯後の痛みと腫れ)

特に下顎親知らずの抜歯では歯茎を切開し、骨を砕いて抜歯するとことがあります。そのような場合、1週間程、歯茎が腫れたり強い痛みが起こったりします。

特に問題となるのは、下の親知らずを抜くと血餅がたまらず骨が露出してしまうことがあります。これをドライソケットと言い、激痛が起こりなかなか収まりません。

ドライソケットを起こりにくくする抜歯法やドライソケットが起こった時の対処法などの詳細は別ページをご覧下さい。

ドライソケット(抜歯後の痛みと腫れ)

親知らず抜歯後の穴からの口臭

下顎の横向きの親知らずを抜歯すると穴がなかなか塞がらず、食べカスが入ってしまうことがあります。穴が完全にふさがるまでに長いケースだと半年から1年ほどかかります。

穴の中の食べカスを放置したままにすると炎症が起こったり口臭の原因ともなります。抜歯後に出来た穴の清掃法については詳細ページをご覧下さい。

親知らず抜歯後の穴からの口臭
親知らず抜歯後の穴からの口臭

親知らずを抜くメリット

メリット

智歯周囲炎の予防

親知らずが埋まったままで正常に生えないと歯茎の下や前の歯との間に食べカスが詰まり智歯周囲炎を引き起こします。

智歯周囲炎になると痛みや腫れを何度も繰り返します。ひどくなると頭痛を起こす方もいます。

智歯周囲炎の治療

智歯周囲炎の治療には親知らずを覆っている歯茎を切除し、炎症のある部位を綺麗に洗浄し、抗生物質の投与をするなどを行います。

しかし、親知らずの生え方(横向き)によっては、十分な効果は得られず、抜歯をすることが最良の方法となります。

下顎の智歯周囲炎

メリット

矯正治療後の歯の後戻りを防ぐ

親知らずが横向きに生えると萌出力で前の歯を押します。その力は順次前歯まで伝わり、歯並びはガタガタになってしまいます。

矯正治療後、綺麗に並んだ歯並びの後戻りを防ぐために、前もって親知らずを抜歯しておきます。

真横に埋没した親知らずは前の歯を押す
真横に埋没した親知らずは前の歯を押す

メリット

親知らずと隣の歯の虫歯予防

親知らずを抜歯しても食事をすることに関しては支障がありません。しかし、第2大臼歯は、上下の噛み合わせを確立するために非常に重要な歯です。

従って、親知らずがあることで第2大臼歯が虫歯になり治療が必要になることは避けなければなりません。そのような理由で親知らずを抜歯しておくメリットが存在します。

親知らずが横を向いて生えると手前の第二大臼歯との間に食べカスが詰まりやすくなります。頑張って歯磨きをしても食べカスが取れず虫歯が発生します。

特に出来やすいのが第二大臼歯の歯根の部分です。歯茎の中の深い部分の虫歯のため正確な治療は困難を伴います。

また、親知らずに虫歯が出来て神経まで到達し、痛みが起こっても、治療器具が届きにくいため根管治療は、はぼ不可能です。

痛み止めで一時的に症状は改善しますが、薬の効果が切れるとまた痛み出します。

この様なことを繰り返すと細菌が歯の神経の先端から顎骨へと波及し骨に炎症が広がり、入院が必要になることもあります。

親知らずと隣接する歯(第二大臼歯)が虫歯になる
親知らずと隣接する歯(第二大臼歯)が虫歯になる

メリット

口臭予防

親知らずは奥にあるため歯磨きが難しいです。そのため、歯垢(プラーク)が残りやすく、それを餌とする細菌が繁殖し、口臭の原因となります。

特に、横向きに埋まった親知らずは、歯茎の中に食べカスが残り、細菌が増殖する環境を作ります。

口臭は細菌が作り出すガスが原因です。親知らずを抜歯しておくことで口臭を予防出来ます。

親知らずが原因で口臭が発生
親知らずが原因で口臭が発生

親知らずを抜歯するデメリット

親知らずを抜かない人の割合

上の親知らずと下の親知らずを比べた場合、上の親知らずの方が比較的真直ぐに正常に生える人(約8割)が多いです。

一方、下の親知らずは歯茎の中に埋まったままで全く萌出しない人の割合は4人に1人です。斜めに萌出して僅かに歯冠部分だけが歯茎の外に出ているケースを含めると抜歯をした方が良い場合は、7割から8割あると言えます。つまり、下の親知らずが正常に生えている人の割合は2割から3割程度です。

ただし、ここで問題になるのは、上の親知らずは正常に生えているのに下の親知らずが埋まったままになっている為、上の親知らずが下の歯茎部分に伸び出して当たり、炎症が起こる場合があることです。この様な場合、正常な上の親知らずであっても抜歯することがあります。

以上の様な理由で、4本の親知らずすべてを抜歯しなくても良いケースは全体の2割以下という印象です。

親知らずを抜かないための条件

条件1

親知らずが真直ぐ生えている

上のレントゲン写真は、左右上下顎の親知らずがすべて真直ぐに萌出しています。上下の親知らずが嚙み合わせに貢献しています。この様な親知らずは抜く必要はありません。

条件2

歯磨きがしっかり出来る

親知らずが真直ぐ生えて歯磨きがきちっと出来るのであれば、虫歯や歯周病は発症しずらくなります。当然、抜歯の必要はないと言えます。

ただし、親知らずが正常に生えていても、多くの患者さんで親知らずの奥の裏側まで歯ブラシの毛先が届かないため虫歯や歯周病の発生が見られることが多いです。

こういった場合には、必ずしも抜歯の必要はありませんが、歯磨きの仕方の徹底した練習や歯科医院での定期的な清掃が必要となります。

親知らずが虫歯になると

親知らずは最も奥にあるため、虫歯になると治療が困難です。例えば、神経を取る抜髄などは神経を取る器具・ファイルが挿入出来ないため、ほとんどの場合不可能です。

※ 親知らずの虫歯が発生した位置にもよりますが、虫歯を削ってレジンやインレーを詰めるくらいならやれないこともありません。

親知らずを移植のドナー歯に出来るメリット

親知らずを抜歯しないで残すメリットは、移植のドナー歯に出来ることです。上のレントゲン写真の様に、歯を喪失した向かって左下の第一大臼歯の骨にドリルで穴を掘り、移植床(黒い部分)を作ります。移植床は、ドナーとなる親知らずの歯根形態に合わせて掘ります。

ドナーとなる親知らずを上顎の歯としたのは、親知らずを傷つけることなく抜歯が出来ると判断したからです。

※ このケースでは左右下顎の親知らずは共に、歯冠部を削らなければ抜歯することが出来ないのでドナー歯の対象とはなりません。

親知らずを歯髄細胞バンクに預けるメリット

歯髄細胞バンク

歯髄細胞バンクとは

近年、再生医療の進歩は、目覚しいものがあります。歯髄細胞バンクでは上の親知らずの歯髄細胞から幹細胞を取り出し増殖し保管します。また、 iPS 細胞を作り出すことも可能で、将来病気になったときの再生医療に使用することが出来ます。

歯髄細胞は、もともと「神経」です。歯髄細胞を利用した再生医療は、主に脳梗塞や脊髄損傷などの神経再生や血管障害、糖尿病、虫歯治療など様々な実用化研究が進んでいます。

歯髄細胞の中には、良質な幹細胞が多数含まれていますが、年齢と共にその数は急激に減少します。そのため、10代~20代の若い時期に保存することをお薦めします。

江戸川区篠崎で親知らずの抜歯についてお悩みの方は、ぜひふかさわ歯科クリニック篠崎までご相談下さい。当院では、事前の検査・診断で出来るだけ手術時間を短縮し、リスクや痛みを抑えた親知らずの抜歯を心がけております。また、親知らずの移植や歯髄バンクなどの有効活用も考慮した適切なアドバイスを行っています。ぜひお気軽にご相談ください。

【動画】親知らずを抜かなきゃよかったと後悔

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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