目次

「冷たいものを飲むと歯がしみる」
「歯と歯ぐきの境目がへこんでいる」
「歯ブラシが当たると痛い」

このような症状は、虫歯ではなく**楔状欠損(くさび状欠損)**が関係している可能性があります。

楔状欠損とは、歯と歯ぐきの境目付近の歯質が失われ、くさび状にへこんだ状態です。

初期には症状がないこともありますが、象牙質が露出すると冷たいものや歯ブラシの刺激でしみることがあります。

この記事では、楔状欠損の原因や虫歯との違い、治療法、コンポジットレジンが取れる理由、再発・進行を防ぐためのポイントについて解説します。

次のような症状や習慣がある方は、歯の根元に負担がかかっていないか確認してみましょう。

  • 歯の根元がへこんでいる
  • 冷たい水や食べ物がしみる
  • 歯ブラシが当たると痛い
  • 歯ぐきが下がってきたように見える
  • 歯ブラシの毛先が短期間で開く
  • 歯ぎしり・食いしばりを指摘されたことがある
  • 酸性の飲食物を頻繁に摂取する
  • 日中、気づくと上下の歯を接触させている

これらに当てはまるからといって、必ず楔状欠損があるとは限りません。

知覚過敏や虫歯、歯周病などでも似た症状が現れるため、歯科医院で原因を確認することが大切です。

楔状欠損とは、主に歯頸部(歯と歯ぐきの境目付近)の歯質が失われ、くさび状にへこんだ状態を指します。

虫歯のように細菌によって歯質が破壊されるものとは異なり、歯ブラシなどによる摩耗、酸による歯質の軟化、歯に加わる力など、さまざまな要因が関係すると考えられています。

写真の赤矢印部分には楔状欠損が認められます。

緑矢印部分は、欠損した部分をコンポジットレジン(CR)で修復した部位です。

楔状欠損と虫歯の違い

項目楔状欠損虫歯
主な原因摩耗・酸・歯に加わる力など細菌が関与する脱灰
起こりやすい場所歯と歯ぐきの境目付近歯の溝・歯と歯の間・歯の根元など
見た目くさび状・皿状などのへこみ白濁・褐色・黒色、穴が開くことも
治療原因への対策、知覚過敏処置、修復など虫歯の進行度に応じた治療

見た目だけでは判断が難しいケースもあります。

「歯の根元が削れている=楔状欠損」と自己判断せず、歯科医院で診断を受けることが重要です。

一度失われた歯質が自然に元の形へ戻ることはありません。

ただし、すべての楔状欠損が急速に進行するわけではなく、治療が必要かどうかは欠損の大きさ、進行の有無、知覚過敏などの症状によって異なります。

進行すると、次のような問題が起こる可能性があります。

知覚過敏

象牙質が露出すると、冷たいものや歯ブラシなどの刺激によって一時的な痛みを感じることがあります。

欠損が大きくなる

原因となる習慣や環境が続くことで、歯質の喪失が進む場合があります。

見た目が気になる

歯の根元のへこみや象牙質の色が目立つようになることがあります。

歯の強度に影響することがある

欠損が非常に大きくなると、歯の強度に影響する可能性があります。

そのため、「痛くないから大丈夫」と判断するのではなく、進行しているかどうかを定期的に確認することが大切です。

楔状欠損を含む虫歯以外の歯質欠損は、ひとつの原因ではなく、複数の要因が重なって生じることがあります。

原因① 強すぎる歯磨き

歯ブラシを強く押し当てたり、研磨性のある歯磨剤を使用して強い横磨きを長期間続けたりすると、歯の根元の摩耗に関与する可能性があります。

特に歯ぐきが下がって歯根面が露出している部分は、エナメル質より摩耗しやすいため注意が必要です。

歯ブラシの毛先が短期間で大きく開く場合は、ブラッシング圧が強すぎないか確認してみましょう。

原因② 歯ぎしり・食いしばりなど歯に加わる力

歯ぎしりや食いしばりなどによって歯に繰り返し力が加わることも、歯頸部の欠損との関連が議論されています。

歯に加わった力によって歯頸部に応力が集中し、歯質の喪失に関与するという考え方を**アブフラクション(Abfraction)**と呼びます。

ただし、アブフラクションだけで楔状欠損が生じると断定できるものではなく、摩耗や酸蝕など複数の要因を含めて評価することが重要です。

原因③ 酸による歯質への影響

酸性の飲食物などに頻繁にさらされると、歯の表面が軟化し、摩耗しやすくなることがあります。

代表的なものには、

  • 炭酸飲料
  • スポーツドリンク
  • 柑橘類
  • 果汁飲料
  • ワイン
  • 酢を多く含む食品

などがあります。

重要なのは「酸性食品を食べてはいけない」ということではなく、摂取する頻度や時間、摂取後の口腔環境です。

原因④ TCH(歯列接触癖)

安静時には、上下の歯は通常わずかに離れています。

しかし、仕事や家事などに集中しているときに、無意識に上下の歯を接触させ続けることがあります。

この習慣を**TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)**と呼びます。

TCHは、

  • パソコン作業
  • スマートフォンの操作
  • 運転
  • 細かい作業
  • 緊張しているとき

などにみられることがあります。

歯や顎に加わる負担を減らすという観点から、必要に応じて生活習慣を見直します。

歯ブラシがすぐに開く

→ ブラッシング圧が強い可能性

朝起きると顎が疲れている

→ 睡眠中の歯ぎしり・食いしばりの可能性

酸性飲料を頻繁に飲む

→ 酸による歯質への影響の可能性

日中、気づくと上下の歯が接触している

→ TCHの可能性

複数当てはまる場合には、いくつかの要因が重なっている可能性があります。

原因をひとつに決めつけず、歯の状態や生活習慣を総合的に確認することが大切です。

楔状欠損は犬歯や小臼歯に多く見られます。

左右に多数の楔状欠損が認められる症例

複数歯に同時に発症し、一部はレジン修復が行われています。

側の楔状欠損

上顎右側3番から6番までと下顎4番と5番に楔状欠損が出来ています。緑色矢印の歯にはコンポジットレジンが充填されています。上顎5番はコンポジットレジンが取れかかっています。

左側の楔状欠損
側の楔状欠損

上顎左側の2番から5番と下顎3番、4番に楔状欠損が出来ています。

レジン脱離症例

過度な咬合力によってレジンが脱離しています。

コンポジットレジンの脱離症例
コンポジットレジンの脱離症例
レジンが脱離した楔状欠損(写真の赤矢印)。写真の緑矢印は楔状欠損がコンポジットレジン充填されています。
レジンが脱離した楔状欠損(写真の赤矢印)。写真の緑矢印は楔状欠損がコンポジットレジン充填されています。

進行症例

象牙質が大きく露出し、知覚過敏を伴っています。

進行した楔状欠損
進行した楔状欠損

楔状欠損は、すべてのケースですぐに削って詰めるわけではありません。

症状、欠損の大きさ、進行の有無、見た目、清掃のしやすさなどを確認して治療方法を選択します。

軽度の場合

経過観察

症状がなく、欠損も小さく、進行が認められない場合には、原因への対策を行いながら経過を観察することがあります。

知覚過敏への処置

しみる症状がある場合には、知覚過敏抑制剤などを使用して症状の軽減を図ります。

フッ化物を利用する場合もあります。

修復が必要な場合

コンポジットレジン充填

欠損が大きい場合や、知覚過敏が続く場合、見た目や清掃性に問題がある場合などには、コンポジットレジン(CR)で欠損部を修復することがあります。

歯の色に近い材料を使用するため、比較的自然な見た目に仕上げることができます。

欠損が非常に大きい場合

歯質の喪失が著しく、コンポジットレジンだけでは十分な修復が難しい場合には、残っている歯質や噛み合わせなどを評価し、ほかの修復・補綴方法を検討することがあります。

治療方法は歯の状態によって異なります。

コンポジットレジン充填
コンポジットレジン充填

楔状欠損によって失われた部分は、コンポジットレジンで修復できる場合があります。

メリット

  • 歯の色に近く目立ちにくい
  • 歯を削る量を抑えられる場合が多い
  • 1回の治療で終了できるケースがある
  • 症例によっては保険診療で対応できる

注意点

  • 長期間の使用で変色や摩耗が生じることがある
  • 修復物と歯の境目に着色がみられることがある
  • 欠けたり脱離したりすることがある
  • 状態によって再修復が必要になることがある

コンポジットレジンによる修復後も、定期的に状態を確認することが大切です。

「以前詰めてもらったレジンが取れてしまった」というご相談をいただくことがあります。

コンポジットレジンが脱離する原因はひとつではありません。

  • 接着する歯質の状態
  • 欠損の形や大きさ
  • 修復物に加わる力
  • 経年的な材料の劣化
  • 歯磨きなどによる摩耗
  • 口腔内の環境

など、さまざまな要因が関係します。

そのため、単に「取れた部分を再び埋める」だけではなく、なぜ脱離したのかを確認することが重要です。

適切な力で歯を磨く

歯ブラシを強く押しつける必要はありません。

毛先を歯面に軽く当て、適切な力で丁寧に磨きましょう。

歯ブラシの硬さや歯磨剤についても、歯や歯ぐきの状態に合わせて選ぶことが大切です。

酸性飲食物の摂り方を見直す

酸性飲料などを長時間かけて頻繁に摂取する習慣がある場合は、飲み方や頻度を見直します。

歯ぎしり・食いしばりへの対応

歯ぎしり・食いしばりがあり、歯や顎への負担が大きいと判断される場合には、症状や口腔内の状態に応じて対応を検討します。

必要に応じてナイトガードを使用することもあります。

TCHを意識する

日中、無意識に上下の歯を接触させている場合には、「唇は閉じても、上下の歯は離す」ことを意識します。

定期的にチェックする

楔状欠損が進行しているかどうかは、自分では判断しにくいことがあります。

定期検診で欠損の状態や知覚過敏、修復物の劣化などを確認しましょう。

Q. 楔状欠損は自然に治りますか?

一度失われた歯質が自然に元の形へ再生することはありません。

ただし、すべての楔状欠損に修復治療が必要というわけではありません。症状や進行の有無を確認し、必要に応じて原因への対策や治療を行います。

Q. 楔状欠損は必ず治療したほうがよいですか?

必ずしもそうではありません。

小さく、症状がなく、進行していない場合には、原因への対策を行いながら経過観察することもあります。

一方、知覚過敏が強い場合や欠損が大きい場合、清掃性や見た目に問題がある場合などには治療を検討します。

Q. 保険で治療できますか?

楔状欠損に対するコンポジットレジン修復や、一定の条件を満たした場合のナイトガードなどは、保険診療の対象となることがあります。

治療内容や適用条件は歯の状態によって異なりますので、診察時にご確認ください。

Q. コンポジットレジンは何年持ちますか?

使用できる期間には個人差があり、「何年持つ」と一律に決めることはできません。

欠損の大きさや接着する歯質、噛み合わせ、口腔内環境、日常的な習慣などによって異なります。

Q. 楔状欠損と虫歯はどう違いますか?

虫歯は、口腔内細菌がつくる酸などによって歯質が脱灰されて進行する疾患です。

一方、楔状欠損は虫歯とは異なる歯質の欠損で、摩耗、酸による影響、歯に加わる力など複数の要因が関係すると考えられています。

歯の根元にできる虫歯もあるため、見た目だけで判断することはできません。

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楔状欠損の場合も、単に削れた部分を埋めるだけではなく、ブラッシング、酸による影響、歯ぎしり・食いしばりなど、歯質の喪失に関係している要因を確認することが大切です。

歯の根元のへこみや、しみる症状が気になる方は、早めに歯科医院で状態を確認しましょう。

【動画】ステイン着色汚れをクリーニングするエアフロー

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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