目次

「親知らずを抜いて数日たってから、急にズキズキと強く痛むようになった」

「痛み止めを飲んでも、なかなか効かない」

このような症状がある場合、**ドライソケット(抜歯窩治癒不全・歯槽骨炎)**の可能性があります。

ドライソケットは、抜歯後の傷口を守る**血餅(けっぺい:血のかたまり)**が十分に形成されなかったり、途中で失われたりすることで起こります。

特に下顎の親知らずを抜歯した後に起こりやすく、抜歯直後よりも数日後に痛みが強くなるのが特徴です。

この記事では、ドライソケットの原因や症状、通常の抜歯後の痛みとの違い、治療法、予防のために気をつけたいことをわかりやすく解説します。

歯を抜いた後の穴を「抜歯窩(ばっしか)」といいます。

通常、抜歯窩には血液がたまり、やがて血餅と呼ばれる血のかたまりができます。血餅はいわば傷口を守る「かさぶた」のような役割を果たし、その下で新しい組織が作られて傷が治っていきます。

ところが、血餅が十分にできなかったり、治癒の途中で分解・脱落したりすると、抜歯窩の骨が露出して刺激を受けやすくなります。

この状態がドライソケットです。

ドライソケットは細菌感染そのものというより、血餅が失われることなどによって正常な治癒が妨げられた状態と考えられています。

歯根破折のため抜歯
歯根破折のため抜歯
抜歯窩
抜歯窩

特徴的なのは、抜歯直後ではなく、1~5日ほど経過してから痛みが強くなることです。

通常の抜歯後の痛みは、手術当日から翌日頃をピークに、徐々に軽くなっていくことが一般的です。

一方、ドライソケットでは、

  • 抜歯後しばらくしてから痛みが強くなる
  • ズキズキ、ジンジンとした強い痛みが続く
  • 鎮痛薬を飲んでも十分に痛みが治まらない
  • あごや耳、こめかみ付近まで痛みが響く
  • 口臭や嫌な味を感じる

といった症状がみられることがあります。

特に、**「いったん落ち着いたと思った痛みが、数日後から強くなった」**場合は注意が必要です。

正常な抜歯窩では、赤黒い血餅が傷口を覆っています。

正常な抜歯後の見た目

正常な血餅
正常な血餅

ドライソケットでは血餅が失われているため、

  • 抜歯した穴が大きく開いて見える
  • 血餅が見えない
  • 穴の中が白っぽく見える
  • 骨が露出して見えることがある
  • 食べかすが入り込んでいる
  • 口臭が強くなる

などの変化がみられる場合があります。

ただし、見た目だけで判断することはできません。

特に親知らずは口の奥にあるため、自分で鏡を見ても状態を確認するのは困難です。また、骨が見えていなくてもドライソケットが起きている場合があります。

強い痛みが続く場合は、傷口を触ったり確認しようとしたりせず、歯科医院を受診してください。

ドライソケットには、ひとつだけの明確な原因があるわけではありません。

抜歯の難易度や傷口の状態、喫煙、術後の行動など、複数の要因が関係すると考えられています。

下顎の親知らずの難しい抜歯

特に、横向き・斜め向きに埋まった下顎の親知らずでは、歯肉を切開したり、骨を削ったり、歯を分割したりすることがあります。

手術による侵襲が大きくなるほど、ドライソケットのリスクも高くなる傾向があります。

喫煙

喫煙はドライソケットの代表的なリスク因子のひとつです。

タバコに含まれるニコチンには血管を収縮させる作用があり、傷口への血流や治癒に影響します。

また、タバコを吸うときの「吸う動作」も、形成された血餅に影響する可能性があります。

強いうがい

抜歯後に何度も強くブクブクうがいをすると、形成されたばかりの血餅が不安定になる可能性があります。

出血が気になっても、抜歯当日は必要以上にうがいを繰り返さないことが大切です。

ストローなどの「吸う動作」

ストローで飲み物を吸ったり、抜歯した部分を舌や口で吸ったりする行為も控えましょう。

傷口に余計な刺激を与える原因になります。

難しい抜歯や長時間の手術

抜歯の難易度や手術時間、周囲の組織への侵襲などもドライソケットの発症に関係するとされています。

経口避妊薬などの影響

経口避妊薬を服用している女性では、ドライソケットの発生率が高くなる可能性が報告されています。

服用している薬がある場合は、抜歯前に歯科医師へ伝えておきましょう。

判断するときに重要なのは、痛みの強さだけではなく、痛みの変化です。

通常の経過

抜歯後に痛みや腫れが出ること自体は珍しくありません。

一般的には時間の経過とともに少しずつ症状が軽くなっていきます。

ドライソケットが疑われる経過

一方、

「抜歯後数日たってから、むしろ痛みが強くなってきた」

という場合は、ドライソケットを疑います。

さらに、

  • 痛み止めが効きにくい
  • 夜眠れないほど痛い
  • 耳やこめかみまで痛む
  • 口臭や嫌な味が強くなった

といった症状がある場合は、早めに抜歯を行った歯科医院へ連絡してください。

多くの場合、症状の経過と抜歯窩の状態を確認することで診断します。

必要に応じてレントゲン撮影を行い、

  • 歯根の破片
  • 骨片
  • 異物

などが残っていないかを確認することもあります。

「抜歯後だから痛くて当然」と思い込まず、痛みが日ごとに強くなっている場合は受診することが大切です。

ドライソケットの治療では、露出した骨への刺激を減らし、痛みをコントロールしながら自然な治癒を促すことが中心となります。

症状や抜歯窩の状態によって治療方法は異なります。

1.抜歯窩をやさしく洗浄する

まず、抜歯窩に入り込んだ食べかすや汚れなどを取り除きます。

一般的には生理食塩水などを用いて、傷口を必要以上に刺激しないように洗浄します。

ドライソケットの初期治療として、抜歯窩の洗浄は広く行われています。

2.傷口を保護する

症状に応じて、抜歯窩に鎮痛作用のある薬剤や保護材などを使用し、露出した骨への刺激を減らすことがあります。

治療材料や方法は、傷口の状態に合わせて歯科医師が判断します。

3.必要に応じた縫合

親知らずなどの外科的な抜歯では、傷口を保護したり、抜歯窩に入れた止血材を安定させたりするために縫合を行うことがあります

ただし、縫合すればドライソケットを完全に予防できるわけではありません。抜歯部位や歯肉の状態、使用する止血材などを確認し、必要性を判断します。

スポンゼルなどの保護材を固定するために縫合する場合がある一方、止血材の種類や傷口の状態によっては、縫合を行わずに経過をみることもあります

大切なのは、症例に合わせて傷口を適切に保護し、血餅や治癒環境をできるだけ安定させることです。

4.痛み止めを使用する

痛みに対しては、ロキソプロフェンなどのNSAIDsをはじめとする鎮痛薬を使用することがあります。

ただし、持病や服用中の薬、妊娠の有無などによって使用できる薬が異なります。

自己判断で薬を増量せず、歯科医師・医師・薬剤師の指示に従ってください。

5.必要に応じてレントゲン検査や追加処置を行う

歯根片や骨片などが残っている可能性がある場合は、レントゲン検査を行います。

異物など明確な原因が認められた場合には、それに対する処置が必要になることがあります。

以前は、抜歯窩を再び掻爬して出血させ、新しい血餅を作る処置が行われることもありました。

しかし、単純なドライソケットに対してむやみに掻爬すると、露出した骨への刺激が強くなり、かえって痛みを増す可能性があります。

現在は、まず洗浄や疼痛管理などの保存的な処置を行うことが一般的です。

ただし、残存歯根・骨片・壊死組織など、処置が必要な原因が確認された場合には外科的処置を行うことがあります。

つまり、「再掻爬は絶対にしてはいけない」のではなく、必要性を正確に判断することが重要です。

ドライソケットは通常、細菌感染そのものではありません。

そのため、ドライソケットだから必ず抗生物質を服用するというわけではありません。

腫れ・発熱・膿などがあり、細菌感染が疑われる場合には抗菌薬が必要になることがあります。

抗菌薬が必要かどうかは、症状や全身状態を確認したうえで歯科医師が判断します。

ドライソケットが疑われる場合、自分で抜歯窩の中を処置することはおすすめできません。

特に、

  • シリンジを穴の奥まで入れて洗う
  • 綿棒などで抜歯窩を触る
  • 市販の軟膏を穴の中へ詰める
  • 義歯安定剤や食品などで穴をふさぐ
  • 自分で血餅を取ったり作り直そうとする

といった行為は避けてください。

傷口をさらに傷つけたり、異物を残したりする原因になります。

すぐに受診できない場合は、処方された鎮痛薬を指示どおり使用し、傷口をできるだけ刺激せず、早めに歯科医院へ連絡してください。

ドライソケットを完全に防ぐことはできませんが、抜歯後の血餅を守ることでリスクを減らせる可能性があります。

強いうがいをしない

抜歯当日は、何度も強くブクブクうがいをしないようにしましょう。

口の中に血液がたまった場合も、強く吐き出さず、歯科医院から指示された方法で対応してください。

傷口を舌や指で触らない

気になっても、舌・指・綿棒などで抜歯した穴を触らないでください。

抜歯部を歯ブラシで直接こすらない

他の歯は清潔に保つ必要がありますが、抜歯した部分は歯科医師の指示があるまで直接強く磨かないようにします。

喫煙を控える

喫煙はドライソケットのリスクを高めることが知られています。

少なくとも傷口が安定するまでは禁煙することをおすすめします。

飲酒・激しい運動・長風呂を控える

抜歯当日は、飲酒・激しい運動・サウナ・長時間の入浴など、血流を急激に増やす行為は避けましょう。

再出血の原因になることがあります。

食事は反対側で

抜歯後は柔らかく刺激の少ないものを選び、できるだけ抜歯した側とは反対側で噛みます。

熱すぎる食べ物、辛いもの、硬いものなどは傷口への刺激になるため控えましょう。

ストローを使わない

抜歯直後は、ストローなど強く吸い込む動作を避けましょう。

抜歯後に腫れや痛みがある場合は、歯科医院から指示があれば、頬の外側から短時間ずつ冷やすことで症状が楽になることがあります。

ただし、氷や保冷剤を直接皮膚に当てて長時間冷やし続けることは避けてください。

また、傷口を温める目的で熱いタオルを当てる必要もありません。

抜歯後の冷却方法については、手術内容によって異なるため、担当医の指示に従いましょう。

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次のような場合は、「もう少し様子を見よう」と我慢せず、抜歯した歯科医院へ連絡してください。

  • 抜歯後2~5日頃から痛みが強くなった
  • 鎮痛薬を飲んでも強く痛む
  • 夜眠れないほど痛い
  • 耳やこめかみまで痛みが広がる
  • 強い口臭や嫌な味がある
  • 痛みが1週間以上続いている

また、

  • 顔の腫れが急激に強くなる
  • 発熱がある
  • 膿が出る
  • 口が開きにくくなってきた
  • 飲み込みにくい
  • 息苦しい

などの症状がある場合は、ドライソケット以外の感染症なども考えられるため、特に早めの診察が必要です。

まずは抜歯を行った歯科医院へ連絡するのが基本です。

一般歯科でも対応できますが、難しい親知らずの抜歯後や、症状が強い場合、原因がはっきりしない場合などは、歯科口腔外科での診察が適していることがあります。

「抜歯した医院とは別の歯科医院でも診てもらえるの?」と心配される方もいますが、強い痛みがある場合は、対応可能な歯科医院・歯科口腔外科へ相談してください。

ドライソケットは、抜歯後の傷口を保護する血餅が失われることなどによって起こる治癒不全です。

特に注意したいのが、

「抜歯直後よりも、2~5日ほど経ってから痛みが強くなる」

という経過です。

通常の抜歯後の痛みは徐々に軽くなります。反対に、日を追うごとに痛みが強くなったり、鎮痛薬が効きにくいほどの激痛が続いたりする場合は、ドライソケットの可能性があります。

自分で穴の中を洗浄したり、薬や軟膏を詰めたりせず、早めに歯科医院を受診してください。

また、抜歯後は、

強いうがいをしない・傷口を触らない・喫煙を控える・激しい運動や飲酒を避ける

といった基本的な注意事項を守ることが、傷口を順調に治すために大切です。

また、ドライソケットは見た目だけでは判断できないことがあります。抜歯後の痛みが徐々に軽くならず、数日たってから強くなる場合は、我慢せず早めに歯科医院へ相談しましょう。

適切な処置を受けることで、痛みの軽減と傷口の治癒につながります。

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抜歯後の痛みが日ごとに強くなる、痛み止めが効きにくい、耳やあごまで痛みが響く場合は、ドライソケットの可能性があります。

我慢したり自分で傷口を触ったりせず、早めに歯科医院へご相談ください。傷口の状態を確認し、症状に応じた適切な処置を行います。

【動画】親知らず抜歯後ドライソケットに!

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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