歯肉炎は、主に歯と歯ぐきの境目に蓄積したプラーク(歯垢)によって歯肉に炎症が起こった状態です。

歯ぐきの腫れや赤み、ブラッシング時の出血などがみられますが、痛みを伴わないことも多く、気付かないうちに炎症が続いている場合があります。

歯肉炎の段階では、通常、歯を支える骨(歯槽骨)の喪失はみられません。しかし、プラークが蓄積した状態が続くと、一部では歯周炎へ進行する可能性があるため、早めに原因を確認し、適切な口腔ケアを行うことが大切です。

今回は、歯ぐきの腫れと出血を主訴に来院された20代女性の歯肉炎症例をご紹介します。

右側面写真(初診時):歯垢・歯石の付着による歯茎の腫れ
右側面写真(初診時):歯垢・歯石の付着による歯茎の腫れ
正面写真(初診時):歯茎全体の腫れと発赤が強くみられた状態
正面写真(初診時):歯茎全体の腫れと発赤が強くみられた状態
左側面写真(初診時):2番の歯肉腫脹が顕著
左側面写真(初診時):2番の歯肉腫脹が顕著

患者様は、歯ぐきの腫れとブラッシング時の出血を主訴に来院されました。

口腔内を確認すると、上顎前歯部を中心にプラークの付着が認められ、歯肉には広い範囲で発赤と腫脹がみられました。

特に左上2番は舌側に位置しているため歯ブラシが届きにくく、周囲にプラークが残りやすい状態でした。この部位では、ほかの部位と比べて歯肉の腫れが目立っていました。

歯が重なっている部分や歯列から外れている部分は、歯ブラシの毛先が届きにくく、プラークが残りやすくなることがあります。

そのため、歯並びに応じた清掃方法を身につけることが重要です。

治療内容|スケーリングと歯磨き指導

歯肉の炎症に関係しているプラークや歯石を除去するため、スケーリングを行いました。

歯石は歯ブラシでは取り除くことができないため、歯科医院で専用の器具を使用して除去します。

あわせて、プラークが残りやすい場所を患者様と確認しながら、歯磨き指導を行いました。

特に前歯部や歯が重なっている部分について、歯ブラシの当て方や磨き方を説明し、毎日のセルフケアの改善を図りました。

プラークが主な原因となっている歯肉炎では、歯科医院でプラークや歯石を除去するだけでなく、その後も適切なセルフケアを継続し、プラークが蓄積しにくい状態を保つことが重要です。

右側面写真(術後1か月後):プラーク除去により炎症が改善した右側歯肉
右側面写真(術後1か月後):プラーク除去により炎症が改善した右側歯肉
正面写真(術後1か月後):腫れが引き、歯茎の輪郭が明瞭になった状態
正面写真(術後1か月後):腫れが引き、歯茎の輪郭が明瞭になった状態
左側面写真(術後1か月後):歯茎の発赤が軽減し、健康的な色調を取り戻した左側
左側面写真(術後1か月後):歯茎の発赤が軽減し、健康的な色調を取り戻した左側

スケーリングを行い、適切なブラッシングを継続した結果、治療1か月後には初診時と比べて歯肉の状態に改善がみられました。

前歯部を中心に認められた発赤や腫脹が軽減し、腫れによって丸みを帯びていた歯肉の輪郭も明瞭になっています。

また、初診時に炎症が目立っていた左上2番周囲でも、発赤や腫れの軽減が確認できました。

歯肉の色には個人差があるため、「ピンク色だから健康」と一律に判断することはできません。歯肉の状態は、色だけでなく、腫れや出血の有無、歯周ポケットなどを含めて総合的に評価することが大切です。

プラークの蓄積が主な原因となっている歯肉炎では、原因となるプラークや歯石を除去し、適切なセルフケアを行うことで、炎症の改善が期待できます。

ただし、改善までの期間には、炎症の程度や口腔内の状態、セルフケアの状況などによって個人差があります。

右側面写真(術後3か月後):歯肉縁付近にプラークが再沈着
右側面写真(術後3か月後):歯肉縁付近にプラークが再沈着
正面写真(術後3か月後):下顎前歯のプラークコントロール不良が顕著
正面写真(術後3か月後):下顎前歯のプラークコントロール不良が顕著
左側面写真(術後3か月後):歯茎の発赤腫脹が再発
左側面写真(術後3か月後):歯茎の発赤腫脹が再発

治療3か月後には、前歯部を中心に再びプラークの付着が認められました。

特に下顎前歯部では歯肉縁付近にプラークが付着し、歯肉に発赤や軽度の腫れがみられました。

一度歯肉の炎症が改善しても、プラークが再び蓄積すれば、歯肉炎が再燃することがあります。

そのため、歯肉炎は治療によって炎症が改善した後も、良好な状態を維持するためのセルフケアと定期的な歯科受診が大切です。

毎日の丁寧な歯磨き

歯肉炎の予防では、プラークをできるだけ蓄積させないことが基本です。

特にプラークが残りやすい歯と歯ぐきの境目を意識し、歯ブラシの毛先を適切に当てて磨きましょう。

力を入れて磨けばよいわけではありません。磨き残しやすい場所を把握し、毛先を届かせることが重要です。

デンタルフロスや歯間ブラシを活用する

歯と歯の間など、歯ブラシだけでは清掃しにくい場所には、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助清掃用具が役立ちます。

ただし、歯間ブラシにはサイズがあり、歯や歯ぐきの状態によって適した清掃器具は異なります。

自分に合った器具や使い方が分からない場合は、歯科医師や歯科衛生士に相談しましょう。

歯並びに合わせて磨き方を工夫する

歯が重なっている部分や、歯列から内側・外側に位置している歯は、通常の磨き方では毛先が十分に届かない場合があります。

このような場所では、歯ブラシの角度を変えたり、必要に応じてタフトブラシなどを使用したりすることで、プラークを除去しやすくなります。

定期的に歯科医院で状態を確認する

毎日丁寧に歯磨きをしていても、すべてのプラークを完全に除去し続けることは容易ではありません。

また、歯石は歯ブラシでは除去できません。

歯科医院では、歯肉の状態やプラーク・歯石の付着状況を確認し、必要に応じてクリーニングや歯磨き指導などを行います。

定期的に口腔内を確認することで、自分では気付きにくい歯肉の炎症を早期に発見することにもつながります。

今回の症例では、歯ぐきの腫れとブラッシング時の出血がみられ、上顎前歯部を中心にプラークの付着と歯肉の発赤・腫脹が認められました。

スケーリングと歯磨き指導を行い、セルフケアを継続したことで、治療1か月後には歯肉の炎症に改善がみられました。

一方、治療3か月後には再びプラークの付着が増え、一部の歯肉に発赤や腫れが認められました。

この症例からも分かるように、歯肉炎は一度改善しても、プラークが再び蓄積すると炎症が再燃することがあります。

歯肉炎の予防や良好な状態の維持には、毎日の適切なセルフケアに加えて、必要に応じた歯科医院での専門的なケアや定期的なチェックが重要です。

歯ぐきから血が出る、赤く腫れているといった症状が続く場合には、歯肉炎だけでなく歯周炎などが関係していることもあります。

症状だけで判断せず、歯科医院で歯肉や歯周組織の状態を確認してもらいましょう。

関連記事

歯周病
歯肉炎を自宅で治す
歯ぐきが腫れる・血が出る…それ、歯肉炎かも?今すぐできる対処法
予防歯科
歯磨きで血が出る原因とは?歯周病のサイン・対処法・治療法
歯磨きで血が出る原因とは?歯周病のサイン・対処法・治療法
歯周病治療
歯周病

歯肉炎は、早めのケアで改善が期待できます。歯ぐきの変化に気づいたら、まずはお口の状態を確認しましょう。

「歯磨きすると血が出る」「歯ぐきが赤く腫れている」「口臭が気になる」といった症状がある方は、お早めにご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!