歯周病は中高年に多い病気というイメージがありますが、10代や20代など若い世代でも、歯を支える組織の破壊が進行する歯周炎がみられることがあります。

かつては、若年者に発症し、比較的速く進行するタイプの歯周炎を「若年性歯周炎」や「侵襲性歯周炎」と呼んでいました。

現在の歯周病分類では、従来の「慢性歯周炎」と「侵襲性歯周炎」を原則として別々の疾患に分類するのではなく、「歯周炎」としてまとめ、重症度や治療の複雑性を示すステージと、進行リスクなどを示すグレードによって評価する考え方が用いられています。

若いにもかかわらず歯周組織の破壊が著しい場合には、年齢だけで判断せず、歯周ポケットの深さ、歯槽骨吸収の程度や分布、進行状況、リスク因子などを総合して診断することが重要です。

若年性歯周病(侵襲性歯周炎)とは

若年性歯周病という言葉は、一般に、若い年代でみられる進行性の歯周炎を指して使われることがあります。

従来の分類では「侵襲性歯周炎」と呼ばれ、比較的若い年代で発症し、年齢に比べて歯周組織の破壊が著しいことなどが特徴とされていました。

現在は、こうした症例も「歯周炎」として診断し、その重症度や進行リスクなどをステージ・グレードによって評価します。

従来「限局型侵襲性歯周炎」と分類されていた症例では、特に

  • 第一大臼歯
  • 前歯

を中心として、特徴的な歯槽骨吸収がみられることがあります。

ただし、骨吸収の分布には個人差があり、犬歯などその他の歯に歯周組織の破壊が認められる場合もあります。

また、口腔内のプラークの量だけでは説明しにくい程度の歯周組織破壊がみられる症例もあります。

若い人にみられる歯周炎の症状

若年性歯周病の特徴的な症状

歯ぐきの腫れや出血

歯周組織に炎症が起こると、歯ぐきが赤く腫れたり、歯磨きの際に出血したりすることがあります。

炎症が強い場合には、わずかな刺激でも出血しやすくなることがあります。

ただし、歯周病はある程度進行していても自覚症状が乏しい場合があるため、症状だけで重症度を判断することはできません。

歯が浮いた感じや動揺

歯周炎によって歯を支える歯槽骨などが失われると、歯が浮いたような感覚や、歯の動揺がみられることがあります。

歯の動揺には噛み合わせなど他の要因が関係する場合もあるため、歯周組織の状態とあわせて評価します。

口臭

歯周ポケット内にプラークが蓄積し、歯周組織の炎症が強くなると、口臭の一因となることがあります。

ただし、口臭には舌苔、唾液量、飲食物、全身状態などさまざまな原因があるため、強い口臭だけで歯周病と判断することはできません。

年齢に比べて著しい歯槽骨吸収

若い年代であるにもかかわらず、歯槽骨吸収が広範囲または局所的に著しく認められることがあります。

歯周炎の進行速度には大きな個人差があります。短期間のレントゲン写真の比較など、病状の経過を確認できる資料がある場合には、それらも進行度を判断する重要な情報になります。

歯周炎は、歯肉縁下の細菌を含むバイオフィルムに対する宿主の炎症・免疫反応によって歯周組織が破壊される多因子性の疾患です。

特定の細菌だけで発症や進行が決まるわけではなく、細菌叢、宿主側の反応、遺伝的背景、喫煙など複数の因子が関係すると考えられています。

若年性歯周病の原因

歯周病原細菌

従来、侵襲性歯周炎と呼ばれていた症例では、

  • Aggregatibacter actinomycetemcomitans(A. actinomycetemcomitans)
  • Porphyromonas gingivalis(P. gingivalis)

などの歯周病原細菌との関連が報告されています。

ただし、これらの細菌が存在すれば必ず重度の歯周炎を発症するわけではありません。また、特定の細菌だけが直接歯槽骨を急速に破壊すると単純に説明できるものでもありません。

歯周病の進行には、口腔内細菌と、それに対する宿主の炎症・免疫反応などが複雑に関係しています。

遺伝的・家族的要因

従来の侵襲性歯周炎では、家族内に複数の患者がみられることがあると報告されています。

遺伝的背景が歯周炎への感受性に関係する可能性がありますが、遺伝だけで発症が決まるわけではありません。

家族に若い年代で重度の歯周病を発症した方がいる場合には、自覚症状がなくても歯科医院で歯周組織の状態を確認しておくことが望まれます。

宿主の免疫・炎症反応

歯周病の発症や進行には、細菌だけでなく、それに対する体の炎症・免疫反応も関係しています。

そのため、同程度のプラークが存在していても、歯周組織の破壊の程度には個人差があります。

喫煙などのリスク因子

喫煙は、歯周炎の発症や進行、治療反応に影響する重要なリスク因子の一つです。

一方、睡眠不足、栄養状態、心理的ストレスなどと歯周病との関連についても研究されていますが、それぞれが若年者の重度歯周炎を直接引き起こすと断定することはできません。

日常的な口腔清掃を適切に行うとともに、全身の健康を維持する生活習慣を心がけることが大切です。

若い年代の重度歯周炎では、年齢に比べて著しい歯槽骨吸収がレントゲン検査で確認されることがあります。

従来「限局型侵襲性歯周炎」と呼ばれていた症例では、第一大臼歯や前歯を中心に特徴的な骨吸収が認められることがあります。

若年性歯周病(侵襲性歯周炎)による第一大臼歯の急速な骨吸収
若年性歯周病(侵襲性歯周炎)による第一大臼歯の急速な骨吸収

ただし、骨吸収の部位や程度は症例によって異なるため、レントゲン所見だけで診断するのではなく、

  • 歯周ポケットの深さ
  • アタッチメントロス
  • プロービング時の出血
  • 歯の動揺
  • プラークの付着状況
  • 歯槽骨吸収の程度と分布
  • 年齢やリスク因子

などを総合的に評価します。

また、垂直性骨欠損が認められることがあります。

垂直性骨欠損の形態や深さ、残存する歯周組織、歯の保存可能性などの条件によっては、歯周組織再生療法を検討できる場合があります。

治療方法は、歯周炎の重症度や進行リスク、歯周ポケットや骨欠損の状態、患者さんの全身状態などを評価したうえで決定します。

スケーリング・SRP

歯周病治療の基本は、患者さん自身による適切なプラークコントロールと、歯科医院で行う歯周基本治療です。

スケーリングやSRP(スケーリング・ルートプレーニング)では、歯肉縁上・縁下の歯石やバイオフィルムなど、歯周炎に関係する局所的な因子を除去します。

「感染源を完全に取り除く」というよりも、歯周組織の炎症を改善し、患者さんが清掃しやすい口腔環境を整えることを目的として行います。

抗菌療法

重度または進行性の歯周炎など、一部の症例では、歯周基本治療に加えて抗菌薬の使用を検討することがあります。

ただし、抗菌薬はすべての患者さんに必要な治療ではありません。

病状、年齢、全身状態、治療への反応などを考慮し、必要性を慎重に判断します。

細菌検査についても、すべての症例で必須というわけではなく、診断や治療方針の検討に有用と判断される場合に行うことがあります。

フラップ手術

歯周基本治療を行った後も深い歯周ポケットや骨欠損などが残る場合には、歯周外科治療を検討することがあります。

フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)では歯肉を剥離し、通常の非外科的治療では器具が届きにくい部位を直視下で確認しながら、歯根面の歯石や病的な組織などに対する処置を行います。

上顎3番遠心部に、垂直性の骨吸収(垂直性骨欠損)
上顎3番遠心部に、垂直性の骨吸収(垂直性骨欠損)

「見えない部分まで確実に清掃できる」と断定するのではなく、深い部位へのアクセスを改善し、必要な処置を行いやすくするための治療と考えるとよいでしょう。

歯周組織再生療法

垂直性骨欠損など一定の条件を満たす症例では、歯周組織再生療法を検討することがあります。

フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)
フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)
上顎犬歯(3番)遠心部の垂直性骨欠損部に対してリグロス®(歯周組織再生用材料)を填入
上顎犬歯(3番)遠心部の垂直性骨欠損部に対してリグロス®(歯周組織再生用材料)を填入

当院では、症例の状態や適応を確認したうえで、保険診療で使用できる歯周組織再生剤「リグロス®」を使用することがあります。

リグロス®の有効成分はトラフェルミン(遺伝子組換えヒトbFGF:塩基性線維芽細胞増殖因子)で、歯周組織の再生を促す目的で使用されます。

適応となる症例では、歯周外科治療と組み合わせることで、歯周組織の改善が期待できます。

ただし、すべての骨欠損に使用できるわけではなく、欠損の形態、歯周病の状態、プラークコントロール、喫煙などさまざまな条件によって治療結果は異なります。

また、「歯槽骨・歯根膜・セメント質が必ず再生する」「歯の動揺が改善する」といった結果を保証する治療ではありません。

重度の歯周炎では、治療によって状態が改善した後も、再び歯周組織の炎症や破壊が進行しないよう継続的に管理することが重要です。

特に若い年代ですでに大きな歯周組織の破壊が認められる場合には、その後も長期にわたって経過を確認する必要があります。

セルフケア

歯周病の安定した状態を維持するためには、毎日のプラークコントロールが重要です。

歯ブラシに加え、口腔内の状態に応じて

  • デンタルフロス
  • 歯間ブラシ
  • その他の補助清掃用具

などを使用します。

適切な器具や使用方法は歯並びや歯周組織の状態によって異なるため、歯科医師や歯科衛生士の指導を受けることをおすすめします。

定期的な歯科メインテナンス

治療後は、歯周組織の状態に応じて定期的なメインテナンスやSPT(歯周病安定期治療)を行います。

来院間隔を一律に「3〜4か月」とするのではなく、

  • 歯周病の重症度
  • 残存する歯周ポケット
  • プラークコントロールの状態
  • 喫煙などのリスク因子
  • 治療後の経過

などを考慮して、患者さんごとに決定します。

必要に応じて歯周ポケット検査やレントゲン検査などを行い、病状の変化を確認します。

生活習慣の見直し

喫煙している場合には、禁煙が歯周病管理において重要です。

また、全身の健康を維持するために、適切な睡眠やバランスのとれた食生活などを心がけることも大切です。

ただし、「十分な睡眠やストレス管理をすれば歯周病の再発を予防できる」と単純に考えるのではなく、毎日のプラークコントロールと歯科医院での継続的な管理を基本とします。

歯周病は中高年だけの病気ではありません。10代や20代などの若い年代でも、歯を支える組織の破壊が著しく進行する歯周炎がみられることがあります。

以前は、このような病態の一部を「若年性歯周炎」や「侵襲性歯周炎」と呼んでいましたが、現在は基本的に「歯周炎」として診断し、重症度や進行リスクなどをステージ・グレードによって評価します。

歯周病は、初期からある程度進行するまで目立った自覚症状が現れないこともあります。

若い年代であっても、

  • 歯ぐきから出血する
  • 歯ぐきの腫れを繰り返す
  • 歯が動くように感じる
  • 家族に若い年代で重度の歯周病になった方がいる

といった場合には、一度歯科医院で歯周組織の検査を受けることをおすすめします。

早い段階で状態を把握し、必要な治療と継続的な管理を行うことが、歯周組織をできるだけ長く維持するために重要です。

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「まだ若いから歯周病にはならない」と思っていませんか?

若年性歯周病(侵襲性歯周炎)は、10代から20代で発症することがある進行の早い歯周病です。歯ぐきの腫れや出血があるにもかかわらず痛みが少ないため、気付かないうちに歯を支える骨が大きく失われているケースもあります。

特に、歯磨き時の出血、歯ぐきの腫れ、口臭、歯のグラつきがある方や、ご家族に若くして歯を失った方がいる場合は注意が必要です。

江戸川区篠崎で歯周病治療をご検討の方は、早めの検査をおすすめします。レントゲン検査や歯周ポケット検査により、見た目では分からない骨吸収の有無を確認し、症状に応じた歯周治療や再生療法をご提案いたします。

大切な歯を将来まで守るために、気になる症状があればお早めにご相談ください。早期発見・早期治療が歯を残すための重要なポイントです。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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