目次

「歯周ポケットが4mmありますね。」
「歯ぐきが下がって歯周病が進んでいます。」

歯科医院でこのように言われ、不安になったことはありませんか?

歯周ポケットは、歯周病の進行度を判断するための重要な指標です。しかし、歯周ポケットが深いからといって、すぐに歯を失うわけではありません。適切な治療と毎日のセルフケアによって、炎症を改善し、歯を長く残せる可能性があります。

一方で、放置すると歯を支える骨が少しずつ失われ、最終的には歯が抜けてしまうこともあります。さらに近年では、歯周病は糖尿病や心血管疾患、誤嚥性肺炎など全身の健康にも深く関係していることが分かっています。

この記事では、

  • 歯周ポケットとは何か
  • 何mmから注意が必要なのか
  • 深くなる原因
  • 歯科医院で行う治療
  • 自宅でできるセルフケア

について、患者さんにも分かりやすく解説します。


歯周ポケットとは、歯と歯ぐきの間にできる溝(すき間)のことです。

健康な歯ぐきにも歯と歯ぐきの境目には「歯肉溝(しにくこう)」と呼ばれる自然な溝があります。この深さは通常1~2mm程度で、細菌や食べかすが入り込みにくい健康な状態です。

しかし、歯垢(プラーク)が蓄積して歯ぐきに炎症が起こると、歯ぐきが腫れたり、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けたりすることで溝が深くなります。

この状態を「歯周ポケット」と呼びます。

歯周ポケットが深くなるほど細菌が繁殖しやすくなり、さらに炎症が進行するという悪循環に陥ります。

健康な歯肉溝と歯周ポケットの違い

健康な歯肉溝:1〜2mm
健康な歯肉溝:1〜2mm
軽度の歯周病(歯肉炎〜軽度歯周炎):3〜4mm
軽度の歯周病(歯肉炎〜軽度歯周炎):3〜4mm
中等度以上の歯周病:5mm以上
中等度以上の歯周病:5mm以上

歯肉溝と歯周ポケットは似ていますが、意味は大きく異なります。

健康な歯肉溝

  • 深さ1~2mm
  • 歯ぐきに炎症がない
  • 骨の吸収がない
  • 歯をしっかり支えている

歯周ポケット

  • 深さ3mm以上
  • 歯ぐきに炎症がある
  • 骨吸収が始まることがある
  • 歯周病が進行している可能性がある

つまり、歯周ポケットは歯周病のサインと考えることができます。

仮性ポケットと真性ポケット

歯周ポケットには大きく2種類あります。

仮性ポケット

歯肉炎によって歯ぐきが腫れ、ポケットが深く測定される状態です。

まだ骨は溶けておらず、炎症が改善すると元の深さまで回復することがあります。

適切なブラッシングや歯石除去によって改善が期待できます。

仮性ポケット
仮性ポケット

真性ポケット

歯周病が進行し、歯槽骨が吸収されてできるポケットです。

歯ぐきだけでなく骨まで破壊されているため、自然に元へ戻ることはありません。

歯周病治療が必要になります。

真性ポケット(仮性ポケットも同時に生じています)
真性ポケット(仮性ポケットも同時に生じています)

歯周ポケットは深さによって治療方法が変わります。

深さ状態治療
1~2mm健康定期検診
3mm歯肉炎・初期歯周炎ブラッシング改善・クリーニング
4mm軽度歯周炎スケーリング・SRP
5~6mm中等度歯周炎歯周基本治療
7mm以上重度歯周炎歯周外科・再生療法を検討

4mmを超えると歯ブラシだけでは細菌を取り除くことが難しくなります。

そのため歯科医院での専門的な治療が必要になります。

重度歯周病により7mm以上の深い歯周ポケットが形成された状態です

深い歯周ポケットが形成された状態 ― 重度歯周病の口腔内所見
深い歯周ポケットが形成された状態 ― 重度歯周病の口腔内所見

歯を支える歯槽骨が大きく吸収され、歯ぐきとの間に深い隙間が生じています。このような状態では歯石や細菌がポケット内に蓄積しやすく、セルフケアだけで清潔を保つことは困難です。

進行すると、歯の動揺や膿の排出、口臭、噛みにくさなどの症状が現れ、最終的には歯を失うリスクが高まります。改善には、歯周基本治療に加え、症例によっては歯周外科治療や歯周組織再生療法などの専門的な治療が必要となります。

プラーク(歯垢)

最大の原因は歯垢です。

歯垢には数百種類もの細菌が存在し、歯ぐきに炎症を起こします。

歯垢(プラーク)が大量に付着

歯垢(プラーク)、歯石も見られる
歯垢(プラーク)、歯石も見られる
歯垢(プラーク)の染め出し
歯垢(プラーク)の染め出し

歯石

歯垢が硬くなったものが歯石です。

歯石の表面はザラザラしているため細菌がさらに付着しやすくなります。

歯石は歯ブラシでは除去できません。

歯石が大量に付着

下顎前歯裏の歯石
下顎前歯裏の歯石
下顎前歯表の歯石
下顎前歯表の歯石

喫煙

喫煙は歯周病最大の危険因子の一つです。

血流が悪くなることで歯ぐきの免疫力が低下し、歯周病が急速に進行します。

喫煙患者の歯周病の進行:縁下歯石(黒い歯石)が認められる
喫煙患者の歯周病の進行:縁下歯石(黒い歯石)が認められる

糖尿病

糖尿病では免疫機能が低下するため歯周病が悪化しやすくなります。

反対に歯周病を治療すると血糖値が改善することも知られています。

歯ぎしり・食いしばり

強い噛む力が加わると歯を支える骨へ負担がかかります。

歯周病がある場合には進行を早める原因になります。

不適合な被せ物

被せ物の段差に汚れがたまりやすくなると歯周病の原因になります。

初期には歯ぐきから血が出る程度ですが、進行すると

  • 歯ぐきが腫れる
  • 膿が出る
  • 強い口臭
  • 歯が浮いた感じ
  • 歯が揺れる
  • 噛めなくなる

という症状が現れます。

さらに骨吸収が進行すると、抜歯が必要になることもあります。

全身への影響

歯周病はお口だけの病気ではありません。

近年では、

  • 糖尿病
  • 心筋梗塞
  • 脳梗塞
  • 誤嚥性肺炎
  • 低体重児出産・早産

との関連が報告されています。

歯周病菌が血流に乗って全身へ影響を及ぼすためです。

プロービング検査

目盛りの付いたプローブを歯周ポケットへ挿入し、深さを測定します。

同時に

  • 出血
  • 歯の揺れ
  • 歯ぐきの状態

も確認します。

レントゲン検査

骨吸収の程度を確認します。

歯周病の重症度を判断する重要な検査です。

必要に応じてCT検査

立体的に骨の状態を把握できるため、再生療法などの診断に役立ちます。

スケーリング

歯の表面や歯肉縁上の歯石を除去します。

ルートプレーニング(SRP)

歯周ポケット内部の歯石や細菌を除去し、根面を滑らかにします。

歯周病治療の中心となる処置です。

歯周外科治療

歯周ポケットが深く、スケーリングやルートプレーニングだけでは改善が難しい場合は、歯周外科治療が必要になります。

歯ぐきを開き、深部の歯石や感染組織を直接除去します。

歯周ポケット8mmの症例

この画像は上顎前歯部のデンタルX線写真です。矢印で示されている部分に歯槽骨の吸収が確認できます。

歯槽骨の吸収がある上顎前歯部のデンタルX線写真
歯槽骨の吸収がある上顎前歯部のデンタルX線写真

歯周外科手術(フラップ手術)

上顎前歯部における歯周外科手術(フラップ手術)
上顎前歯部における歯周外科手術(フラップ手術)

歯周組織再生療法

失われた歯周組織の再生を目的として行います。

代表的な治療法には

があります。

適応症例では歯を残せる可能性が高まります。

エアフローは超微粒子パウダーを吹き付け、バイオフィルムを除去するクリーニングです。

特に歯周病治療後のメインテナンスに有効とされています。

歯周ポケット内の細菌を減らし、再発予防にも役立ちます。

正しいブラッシング

歯と歯ぐきの境目を意識して磨きましょう。

力を入れすぎず、毛先をやさしく当てることが大切です。

歯磨きテクニック

  • バス法(歯周ポケット掃除)
    歯ブラシの毛先を歯ぐきに45度で当て、軽く振動させながら磨く。
  • つまようじ法(歯間ポケット掃除)
    歯列に直角にブラシを当て、歯間部を強めに清掃。専用ブラシも推奨。
バス法
つまようじ法

歯間ブラシ

歯周病が進行して隙間がある方には歯間ブラシがおすすめです。

サイズは歯科医院で選んでもらいましょう。

デンタルフロス

歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間の汚れを除去できます。

タフトブラシ

奥歯や歯並びが悪い部分など、磨き残しやすい場所の清掃に適しています。

ジェットウォッシャー

歯周ポケットの汚れを洗い流す補助器具です。

歯ブラシの代わりにはなりませんが、補助清掃器具として有効です。

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定期メインテナンス

歯周病は再発しやすい病気です。

3~4か月ごとの定期検診で

  • 歯石除去
  • 歯周ポケット測定
  • ブラッシング指導

を受けることが歯を守る近道です。

Q. 歯周ポケットは自然に治りますか?
A. 仮性ポケットは改善することがありますが、真性ポケットは歯科治療が必要です。

Q. 歯石を取れば浅くなりますか?
A. 炎症が改善すれば浅くなることがあります。

Q. 4mmは危険ですか?
A. 軽度歯周炎の可能性があるため、早めの治療がおすすめです。

Q. 7mmでも歯は残せますか?
A. 骨の状態によっては歯を保存できるケースもあります。

歯周ポケットは、歯周病の進行度を知る重要な指標です。

健康な歯ぐきでは1~2mmですが、3mm以上になると炎症や歯周病が疑われ、4mm以上では専門的な治療が必要になることが少なくありません。

しかし、歯周ポケットが深いからといって、すぐに抜歯になるわけではありません。適切な検査・歯周基本治療・セルフケア・定期的なメインテナンスを組み合わせることで、進行を抑え、大切な歯を長く維持できる可能性があります。

歯ぐきから出血する、歯がぐらつく、歯周ポケットが深いと言われたなどの症状がある方は、早めに歯科医院で検査を受けることをおすすめします。

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歯周ポケットが深いからといって、すぐに歯を失うわけではありません。

歯周病の進行度や歯槽骨の状態を詳しく調べることで、適切な治療やメインテナンスにつながる場合があります。

歯ぐきの腫れや出血、口臭、歯周ポケットが深いと言われたことがある方は、お気軽にご相談ください。

【動画】4mm,5mm,6mmの歯周ポケットを改善回復するセルフケア法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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