お口の中には、数えきれないほどの細菌が常在していることをご存じでしょうか?
その中でも、**ラクトバチラス菌(乳酸桿菌)**は、虫歯の進行に大きく関わる重要な菌のひとつです。

ラクトバチラス菌は、ミュータンス菌と同じく強い酸を産生する能力を持ち、虫歯を深い部分へと進行させる役割を果たします。
一方で、腸内や膣内などでも善玉菌として働く側面があり、体全体の健康にも影響を与える存在として注目されています。

この記事では、

  • ラクトバチラス菌の特徴
  • 虫歯との関係

について、わかりやすく解説していきます。
ぜひ最後までご覧ください!

🔬ラクトバチラス菌とは?(ミュータンス菌との違い)

ラクトバチラス菌
ラクトバチラス菌
  • ラクトバチラス菌とは?
    • 乳酸菌の一種で、グラム陽性の桿菌。
    • 通常、口腔・腸内・膣内など、ヒトの粘膜面に存在。
    • 糖を分解して乳酸を生成する性質を持つ。
  • 虫歯との関係:
    • 初期の虫歯を作る主犯はミュータンス菌(Mutans Streptococci)。
    • ラクトバチラス菌は虫歯の「進行」を助ける役割が強い。
    • エナメル質が破壊された後、象牙質へ深く浸食を進める。
  • ミュータンス菌との違いまとめ:
比較項目ミュータンス菌ラクトバチラス菌
役割虫歯の発生虫歯の進行
活動場所歯の表面(エナメル質)象牙質・深層部
酸産生能力非常に高い高い(ただし自壊しやすい)

🦠ラクトバチラス菌の特徴と生息部位

🔬ラクトバチラス菌の特徴

  • 自然界に広く分布している
    • お口の中や腸管など、人間の体内にも常在。
  • 強い酸を産生する
    • ミュータンス菌と同様、強い酸を作り出して歯を溶かす働きを持つ。
  • 酸素の有無にかかわらず生存できる
    • 酸素の少ない深い虫歯の中でも活動可能。
    • 深部で酸を作り、虫歯をさらに奥深く拡大させる。

🦷ラクトバチラス菌の生息部位

  • ツルツルした表面には定着できない
    • エナメル質など滑らかな場所には生息できない。
  • 生息できる主な場所
    • ミュータンス菌が作った虫歯のザラザラした部分
    • 奥歯のかみ合わせの溝(細かく複雑な形状のため菌が留まりやすい)。
    • 詰め物や被せ物の隙間(適合不良の部位)。
  • 特徴的なポイント
    • 「引っ掛かり」や「凹凸」のある場所に潜み、虫歯を進行させる拠点となる。

🔬常在菌は約700種類以上存在

  • 口腔内の細菌バランス
    • 人間の口の中には約700種類以上の常在菌が存在。
    • これらは「常在細菌叢(マイクロバイオーム)」としてバランスを保ちながら共存している。
  • 細菌数の規模
    • 口腔内には合計で10兆個以上の細菌が生息。
    • そのうち約70〜80%が、虫歯の原因となる酸を作り出す「酸産生菌」

😈虫歯菌は酸性の環境下でも生きられる!

  • 代表的な酸産生菌
    • ラクトバチラス菌(乳酸桿菌)
    • ミュータンス連鎖球菌
  • ミュータンス菌の特徴
    • 通常は歯垢中のたった1%程度の存在。
    • しかし、歯磨き不足砂糖の多い食生活によって、酸性環境が長時間続くと急増。
  • 酸性環境が生むリスク
    • ラクトバチラス菌やミュータンス菌など酸に強い菌の割合が高まり、虫歯リスクが上昇する。

⚡常在細菌叢から病原性細菌叢へ変化するメカニズム

  • 健康な常在細菌叢の状態
    • 病原性が少なく、口腔内の健康バランスを保つ。
  • 酸性化による変化
    • 酸性環境が続くと、病原性の高い細菌が優勢に。
    • ミュータンス菌やラクトバチラス菌が活性化し、さらに酸性度が増す。
  • 最終的な現象:脱灰=虫歯
    • 酸によって歯の表面(エナメル質)が溶ける現象=脱灰(だっかい)。
    • これが虫歯の始まりとなる。

🦠ラクトバチラス菌は虫歯菌

  • ラクトバチラス菌は虫歯の「進行」に深く関与。
  • ミュータンス菌が初期虫歯を作り、ラクトバチラス菌が内部を侵食して虫歯を悪化させる。

🛡️ラクトバチラス菌を減らす効果的な方法

🪥プラークコントロール

  • ブラッシングで歯垢(プラーク)を除去
    • 毎日の正しいブラッシングが基本。
    • 歯垢とともにラクトバチラス菌も減少できる。
  • 補助的なアイテム・方法:
    • ポイックウォーター(殺菌力の高い水)
    • フッ素入り歯磨き剤
    • 抗菌効果のある洗口液など
  • 歯科クリニックでの専門ケア:
    • PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)
    • エアフロークリーニング
    • 3DSセラピー(専用トレーを用いた除菌療法)

📋プラークコントロールレコードの活用

  • プラークコントロールレコードとは?
    • 歯垢の付着状態を記録・可視化する方法。
    • 自分のブラッシングの癖や磨き残しを把握し、効率的なケアに役立つ。
  • メリット:
    • どの部位に磨き残しが多いか明確になり、セルフケアの質が向上。
プラークコントロールレコード
プラークコントロールレコード

🛠️シーラントによる予防

  • 6歳臼歯の深い溝をシーラントで封鎖
    • 6歳前後に生える永久歯は、溝が深く、ラクトバチラス菌が生息しやすい。
  • シーラントとは?
    • レジン(プラスチック)で溝を埋め、菌の棲みかをなくす治療。
    • 汚れや菌が溜まるのを防ぎ、虫歯予防に効果的。
シーラント
シーラント

🦷虫歯の治療と不良補綴物のやり替え

  • 虫歯は早期治療を徹底!
    • 放置するとラクトバチラス菌の温床になり、虫歯がさらに進行。
  • 不良な詰め物・被せ物の再治療:
    • すき間やズレがある補綴物(ほてつぶつ)は、菌の温床になりやすい。
    • 歯とピッタリ合った修復物にやり替えて、菌の侵入を防ぐ。
  • イメージ例:
    • 写真では、詰め物(コンポジットレジン)の隙間から虫歯が再発している様子が確認できます。
詰め物(コンポジットレジン)の隙間から虫歯が再発
詰め物(コンポジットレジン)の隙間から虫歯が再発
詰め物(コンポジットレジン)の詰め替え
詰め物(コンポジットレジン)の詰め替え

🤰妊娠中の着床率とラクトバチラス菌

  • 子宮内フローラの重要性:
    • 近年、「子宮内にも細菌叢(フローラ)が存在する」と判明。
    • 健康な子宮内フローラにはラクトバチラス菌が豊富に存在するのが理想とされる。
  • ラクトバチラス菌と着床率の関係:
    • ラクトバチラス菌が優勢な環境では、子宮内膜の炎症リスクが低減
    • これにより、受精卵の着床率が向上すると報告されている。
  • 逆に、ラクトバチラス菌が少ない場合:
    • 異常な子宮内フローラ(例:ガードネレラ菌優勢)になると、着床障害・流産リスクが上昇

👶ラクトバチラス菌と赤ちゃんの健康への影響

  • 出生時の「初期フローラ」:
    • 出産時、産道を通過する際に母親の膣内細菌が赤ちゃんに伝わる。
    • ラクトバチラス菌が豊富な母体では、赤ちゃんも良好な腸内細菌叢を獲得できる。
  • 赤ちゃんの健康リスクと関連:
    • 初期フローラが乱れていると、将来的にアレルギー疾患・肥満・自己免疫疾患のリスクが高まるという研究も。
  • 母体のラクトバチラス菌管理が鍵:
    • 妊娠中から膣内・腸内フローラを整えることが、赤ちゃんの生涯健康にもつながる。

🧬最新研究:不妊治療分野での注目

生殖医療におけるフローラ検査の普及:

  • 体外受精(IVF)前に**子宮内細菌検査(子宮内フローラ検査)**を行うケースが増加。
  • ラクトバチラス菌が優勢かどうかが、治療成功率に直結することが明らかに。

ラクトバチラス菌補充療法の研究:

  • 子宮内ラクトバチラス菌が不足している女性に対し、乳酸菌製剤を投与してフローラ改善を図る治療法が注目されている。

エビデンス例:

  • ある研究では、子宮内ラクトバチラス菌の割合を80%以上に維持できた患者群で、着床率・妊娠率が有意に向上したという報告あり。

今後の展望:

  • さらに精密なフローラ診断や、パーソナライズド補菌療法の開発が進められている。
虫歯の進行に深く関わる「ラクトバチラス菌」をご存じですか?

江戸川区篠崎にある当院では、ラクトバチラス菌をはじめとする虫歯リスク菌の検査・管理に力を入れています。

ラクトバチラス菌は、虫歯の深い部分を進行させる原因となる細菌です。
初期虫歯の早期発見はもちろん、菌のバランスを整えることで、虫歯になりにくい口腔環境をつくることができます。

当院では、精密な口腔ケアプログラムを通じて、患者さま一人ひとりに最適な虫歯予防プランをご提案しています。
**「最近、虫歯ができやすいかも…」**と感じている方も、まずはお気軽にご相談ください。
江戸川区篠崎エリアで、お口の健康を守るサポートを全力で行っています!

【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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