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「入れ歯を作りたいけれど、保険でどこまで対応できるの?」「見た目や噛み心地は大丈夫?」——そんな疑問をお持ちではありませんか?
保険適用の入れ歯は、費用を抑えつつ咀嚼や会話などの日常機能を補える優れた選択肢です。しかし、素材や構造に一定の制約があり、審美性や快適性の面で自費治療との違いもあります。

この記事では、保険適用の入れ歯の種類・費用・メリットとデメリットを歯科医の視点からわかりやすく解説。総入れ歯・部分入れ歯それぞれの特徴や、選ぶ際の注意点についても詳しく紹介します。
入れ歯治療を検討中の方が、自分に合った選択ができるようサポートする内容となっています。

入れ歯(義歯)は、歯を失った部分に装着することで、噛む・話すといった基本的な機能を回復する治療法です。その中でも「保険適用の入れ歯」は、国の医療保険制度によって一部費用がカバーされ、経済的な負担を抑えて作製できる選択肢です。
一方で、素材や見た目、快適さに制限があるため、どこまで保険でできるのか、事前にしっかり知っておくことが大切です。

保険適用の入れ歯:上顎は総入れ歯、下顎は部分入れ歯
保険適用の入れ歯:上顎は総入れ歯、下顎は部分入れ歯

🏥 保険適用と自費入れ歯の違い

項目保険適用の入れ歯自費診療の入れ歯
費用比較的安価(数千~1万円台程度)数万~数十万円以上かかる
材質レジン(プラスチック)製が基本金属床・ノンクラスプなど多種多様
審美性金属バネ(クラスプ)が見えることも見た目が自然で目立ちにくい設計が可能
違和感分厚くなりやすく、異物感が出やすい薄く軽量で装着感が自然なものが多い
修理対応比較的早く対応可能素材によっては再製作が必要なことも

📌 保険が適用される条件と対象

保険適用で入れ歯を作るには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 何らかの理由で歯を失っていること(虫歯・歯周病・事故など)
  • 健康保険証を持っており、保険診療の対象であること
  • 義歯による咀嚼・発音機能の補助が必要と診断された場合

なお、美容目的や特別な素材を希望する場合は保険外(自費)になります。

🦷 総入れ歯と部分入れ歯の違い

保険適用の入れ歯は、大きく「総入れ歯」と「部分入れ歯」に分けられます。

🔹 総入れ歯(全部床義歯)

すべての歯を失った場合に使用される入れ歯。上顎・下顎のいずれにも対応可能で、歯茎全体を覆う設計となっています。

🔹 部分入れ歯(部分床義歯)

歯が一部残っている場合に、その残存歯を支えにして作られる入れ歯。金属のバネ(クラスプ)を健康な歯にかけて固定するため、歯が何本か残っていることが条件です。

入れ歯の治療を検討する際、多くの方がまず気になるのが「費用」です。保険診療の入れ歯は、比較的安価に作製できますが、材料や設計に制限があるため、事前の理解が重要です。

🦷 総入れ歯(上顎・下顎)の費用

保険適用の総入れ歯は、すべての歯を失っている方が対象で、片顎あたりおおよそ**5,000〜10,000円程度(3割負担の場合)**で作製できます。

  • 上顎総入れ歯:約5,000〜9,000円
  • 下顎総入れ歯:約同程度(状態により調整費含む)

※初診料・検査料・調整料が別途かかることがあります。

🦷 部分入れ歯の費用

部分入れ歯の費用は、残っている歯の本数や設計の複雑さによって変動します。

  • 小規模な部分入れ歯:3,000〜7,000円程度
  • 大規模(多くの歯を補う)部分入れ歯:8,000〜12,000円程度

※こちらも保険3割負担の例です。金属クラスプの使用は標準仕様となります。

🧪 保険診療で使われる材料と制約

保険診療では、以下のような材料が使用されます:

  • 床(しょう)部分:レジン(プラスチック樹脂)
  • 歯の部分:硬質レジン歯(プラスチックの歯)
  • 固定具(クラスプ):金属製(コバルトクロムなど)

▶ 制約として、**金属床(薄くて強度の高い金属プレート)やノンクラスプ義歯(バネが目立たない設計)などは使用できません。**これらを希望する場合は自費診療になります。

💡 自費と比べてどれだけ安い?

以下は保険と自費の費用比較の一例です(※概算):

種類保険診療(3割負担)自費診療(目安)
総入れ歯約5,000〜10,000円100,000〜400,000円
部分入れ歯約3,000〜12,000円150,000〜500,000円
修理・再製作数千円で対応可能材料により高額になる場合も

保険入れ歯は費用を抑えられることが最大の魅力ですが、審美性・装着感などに限界があるため、どの項目を重視するかで選択肢が変わります。

部分入れ歯は、歯が一部残っている場合に使用される補綴装置で、保険適用でも作製が可能です。失った歯の機能を補うとともに、見た目や噛み合わせを維持する役割も担います。構造は比較的シンプルですが、その分、素材やデザインに制約があり、特に見た目に影響することもあります。

🔩 クラスプとは?(金属バネの役割)

保険の部分入れ歯の最大の特徴は、「クラスプ(金属のバネ)」です。

  • クラスプは残っている歯に引っかけて入れ歯を固定するための重要なパーツです。
  • 一般的にコバルトクロムなどの金属が使用され、耐久性に優れています。
  • ただし、前歯や犬歯にクラスプがかかると、口を開けたときに金属が見えてしまうことがあり、審美的にはやや不利です。

クラスプは保険診療の標準設計であり、見た目よりも「機能性と固定力」を優先した構造です。

🦷 保険適用で作れる部分入れ歯の具体例(上顎・下顎のパターン)

部分入れ歯の形は、欠損している歯の位置と本数に応じて設計が変わります。以下はよくある例です。

上顎の例:

  • 両側奥歯がない場合:U字型や馬蹄形のデザイン
  • 前歯と小臼歯を残して奥歯を補うタイプ:前歯や小臼歯にクラスプがかかる設計
入れ歯装着前
入れ歯装着前
入れ歯装着後
入れ歯装着後

下顎の例:

  • 前歯と小臼歯、第一大臼歯が残っていて奥歯を補う場合:バー(連結部)が舌の下に通る構造
  • 左右非対称な欠損では、片側に大きく広がる設計
入れ歯装着前
入れ歯装着前
入れ歯装着後
入れ歯装着後

どちらも基本的にはレジン床(プラスチックのベース)に人工歯と金属クラスプが付属しており、装着時に違和感が出ることもあります。

🎭 審美面の限界と代替手段(ノンクラスプ義歯など)

保険の部分入れ歯は、「目立たない」ことを重視する方には不向きなケースがあります。その理由は以下の通りです。

  • 金属クラスプが見える → 会話や笑顔で目立つ
  • プラスチックのベースが分厚くなる → 装着時の違和感

こうした審美的な問題を解消したい方には、**自費診療の「ノンクラスプデンチャー」**が検討されます。

🦷 ノンクラスプデンチャーとは?

  • 金属のバネを使わず、歯ぐきになじむピンク色の柔軟素材を使用
  • 装着感が軽く、見た目が自然
  • 対人関係や仕事で人前に出る機会が多い方に人気

ただし、ノンクラスプ義歯は保険適用外となり、費用は数万円〜十数万円かかるのが一般的です。

保険適用の入れ歯は費用面では大きなメリットがありますが、審美性や快適性においては一定の制約があることも事実です。ここでは実際の使用中に起こりやすいデメリットについて詳しく解説します。

👁️ 審美性の問題(金属が目立つ)

保険の部分入れ歯では、**金属製のクラスプ(留め具)**を使用するため、前歯や犬歯にかかると金属が目立ちやすくなります。笑ったときや話しているときに見えてしまうことがあり、見た目が気になる方には不向きと感じる場合があります。

😣 装着感・異物感が強い

保険の入れ歯は主にレジン(プラスチック)床で作られるため、強度を保つために厚みが必要です。これにより、装着時に異物感を感じやすく、慣れるまでに時間がかかることがあります。とくに上顎に大きな入れ歯を装着する場合、発音や飲み込みに違和感を覚える方もいます。

🍡 入れ歯が外れやすい食べ物(餅やガム)

餅やガムなどの粘着性の高い食べ物を噛むと、入れ歯が吸い付いて外れてしまうことがあります。また、維持力が不十分な場合、会話中や食事中にズレることもあり、不安を感じる原因になります。

🦷 咀嚼力は天然歯の1/3ほど

保険入れ歯の噛む力(咀嚼力)は、天然歯の約1/3程度といわれています。総入れ歯になるほどこの傾向は強まり、硬い食べ物や繊維質のある食材が噛みにくくなることも。結果として、食事の楽しみが減ってしまうと感じる方もいらっしゃいます。

⚠️ 維持歯への負担と寿命への影響

部分入れ歯は、残っている歯(維持歯)にクラスプをかけて支える構造です。これにより、横揺れなどの負担が集中しやすく、歯槽骨が吸収されて歯がグラグラになる可能性も。維持歯の寿命が短くなるリスクがあるため、定期的なチェックが重要です。

🔁 定期的な調整が必要(歯茎の痩せによるガタつき)

入れ歯を使っていると、時間の経過とともに歯茎(顎堤)が痩せていくことがあります。すると、入れ歯が合わなくなり、浮いたりガタついたりしてしまいます。調整や作り直しが必要になることもあり、定期的な通院が欠かせません

🧼 お手入れに手間がかかる(外して清掃が必要)

入れ歯は毎日外して洗浄しなければならず、清掃を怠ると口臭や感染症の原因になります。特に食後は入れ歯に食べかすが残りやすく、外して洗う手間が必要です。旅行や外出時にケアがしにくいと感じる方もいます。


このように、保険適用の入れ歯には費用を抑えられる利点がある一方で、見た目や快適性、耐久性の面では限界があることを理解しておくことが大切です。

保険適用の入れ歯は、見た目や素材に制約はあるものの、日常生活に必要な基本機能を十分にカバーできる治療法です。以下では、保険入れ歯の主なメリットを具体的にご紹介します。

💰 費用を抑えられる

最大のメリットは、経済的な負担が軽いことです。

  • 初めて入れ歯を作る場合も、数千円〜1万円台(3割負担の場合)で対応可能。
  • 保険診療なので、誰でも全国一律の費用で治療を受けられます

自費診療に比べて数万円〜数十万円も安価に抑えられるため、まずは入れ歯を体験してみたい方や、費用重視の方には最適です。

🔧 修理・再製作が短期間で可能

保険の入れ歯は、修理・再製作が容易というメリットもあります。

  • 入れ歯が破損した場合でも、多くが院内や歯科技工所で短期間に対応可能
  • 歯茎の変化などで合わなくなった際にも、比較的早く調整や作り直しができます

これは、標準化された材料と設計による保険義歯ならではの強みです。

🦷 最小限の歯削除で作成可能

保険の部分入れ歯は、自分の歯をほとんど削らずに作製できる点も安心材料です。

  • 入れ歯を安定させるために、「レスト」と呼ばれる小さな支え部分を削る必要はありますが、それ以外は歯を大きく削ることなく対応できます。

将来的にブリッジやインプラントなどへの移行もしやすいため、「まずは入れ歯で様子を見たい」という方にもおすすめです。

💬 機能性は十分(咀嚼・発音の回復)

保険の入れ歯でも、咀嚼(噛むこと)や発音といった日常機能はしっかり補えます

  • 特に失った歯が多い場合、入れ歯を装着することで食べやすさ・話しやすさが大幅に改善されます。
  • 咀嚼効率は天然歯には及ばないものの、柔らかいものや日常の食事はほぼ問題なく摂取可能です。

「快適な生活を取り戻す」という観点では、保険入れ歯も十分に価値のある選択肢といえるでしょう。


このように、保険適用の入れ歯は「まずは手軽に治療を始めたい」「費用を抑えたい」「短期間で作りたい」といった方にとって、現実的かつ有効な選択肢です。

入れ歯には「保険診療」と「自費診療」がありますが、どちらを選ぶべきか迷う方も多いでしょう。ここでは、保険適用の入れ歯が特におすすめできる方のタイプを3つに分けてご紹介します。

💰 経済的負担を抑えたい人

  • 「できるだけ費用を安く抑えたい」
  • 「治療費が高いと通いづらい」
    そんな方には、保険入れ歯が非常に向いています。

保険適用なら3割負担で数千〜1万円台程度と、他の補綴治療(ブリッジやインプラント)と比べても非常に経済的。とくに年金生活の方や医療費がかさみがちな高齢者にとっては、重要な選択肢となります。

⏳ 一時的な入れ歯が必要な人

  • インプラントを検討しているが、骨造成などで治療期間が長引く
  • 抜歯後すぐに歯を補いたい

といったケースでは、「つなぎ」として保険の入れ歯を使うのが効果的です。

短期間で作製できる保険入れ歯は、見た目や快適性よりも「とりあえず歯がない状態を避けたい」というニーズにぴったり。仮義歯としても活用されています。

⚖️ 自費義歯との比較で迷っている人

  • 「ノンクラスプデンチャーや金属床と何が違うの?」
  • 「見た目は気になるけど、まずは保険から始めてみたい」

という方も、まず保険入れ歯を試してみることで、自分に合うか判断できるためおすすめです。

「とりあえず保険で作ってみて、どうしても違和感がある場合に自費に切り替える」というステップも、多くの患者さんが取っている合理的な方法です。


自分にとって何が優先なのか(費用・見た目・快適性など)を明確にすることで、納得のいく選択がしやすくなります。
迷っている場合は、まず歯科医院で丁寧なカウンセリングを受けることをおすすめします。

保険で作れる入れ歯については、初めての方にとって不安や疑問も多いものです。ここでは、よく寄せられる質問とその答えをQ&A形式でご紹介します。

❓ 保険適用の入れ歯でも見た目を良くできる?

答え:ある程度まで可能ですが、限界もあります。

保険の入れ歯は、金属製のクラスプ(留め具)を使用するのが基本のため、前歯にかかると見た目に目立つことがあります
自然な見た目を重視する場合は、自費診療のノンクラスプデンチャーや金属床義歯などが選択肢になります。

❓ 入れ歯が痛い・合わないときはどうする?

答え:すぐに歯科医院へご相談ください。調整で改善できることがほとんどです。

入れ歯を使い始めたばかりの頃は、歯茎に違和感や痛みが出ることがあります。これは入れ歯が粘膜に合っていないサインであり、微調整を繰り返すことで快適に使用できるようになります
無理に我慢せず、数回の通院で対応できるケースが多いので、遠慮なく相談を。

❓ どのくらいの頻度で調整が必要?

答え:個人差はありますが、半年〜1年に1回のチェックをおすすめします。

長く使っていると歯茎が痩せて入れ歯が合わなくなったり、クラスプがゆるんできたりすることがあります。
そのため、定期的な調整や再製作の判断を歯科医が行えるよう、最低でも年1回の検診を習慣にしましょう

❓ 金属アレルギーでも保険で作れる?

答え:基本的には金属を使用しますが、症状に応じた対応も可能です。

保険の部分入れ歯では、**クラスプや補強部分に金属(主にコバルトクロム合金)**を使用します。
金属アレルギーがある方は、アレルゲンテストや素材変更の検討が必要です。
保険適用外にはなりますが、金属を使わないノンクラスプ義歯やシリコン義歯などを選択できる場合もあります。

江戸川区篠崎で保険適用の部分入れ歯をご希望の方へ

入れ歯、できるだけ安く作りたい方へ!
江戸川区篠崎の当院では、保険適用で作れる入れ歯にも対応しています。
「まずは費用を抑えて試したい」「仮の入れ歯として使いたい」そんな方に最適です。
総入れ歯・部分入れ歯どちらも保険対応OK!

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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