- 1. アルツハイマー型認知症とは
- 2. 主な認知症の種類
- 2.1. アルツハイマー型認知症
- 2.2. 血管性認知症
- 2.3. レビー小体型認知症
- 2.4. 前頭側頭型認知症
- 3. アルツハイマー型認知症の症状と進行
- 3.1. 初期にみられやすい症状
- 3.2. 中期にみられやすい症状
- 3.3. 後期にみられやすい症状
- 4. アルツハイマー型認知症の原因とリスク要因
- 4.1. 加齢
- 4.2. 高血圧・糖尿病など
- 4.3. 喫煙
- 4.4. 運動不足
- 4.5. 社会的孤立や抑うつ
- 4.6. 遺伝的要因
- 5. 歯周病とアルツハイマー型認知症の関係
- 5.1. 歯周病は全身の健康とも関係する
- 5.2. 歯周病菌とアルツハイマー病の研究
- 6. 歯の喪失・噛む機能と認知機能の関係
- 7. 認知症のリスクを減らすためにできること
- 8. 認知症が疑われる場合の相談先
- 9. 認知症が進行しても口腔ケアは大切です
- 10. まとめ|お口の健康を全身の健康につなげる
- 10.1. 関連記事
- 11. 将来の健康のために、お口からできること
- 12. 筆者・院長
- 12.1. 深沢 一
- 12.1.1. メッセージ

アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も多くみられるタイプです。
物忘れなどの記憶障害から始まることが多く、進行すると判断力や理解力、日常生活を送るための能力にも影響が及びます。
近年では、認知症と全身の健康状態との関係について研究が進み、歯周病や歯の喪失、噛む機能の低下と認知機能との関連も注目されています。
この記事では、アルツハイマー型認知症の症状や原因、リスク要因に加え、歯周病や口腔機能との関係について歯科の視点からわかりやすく解説します。
アルツハイマー型認知症とは

アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が徐々に障害され、記憶や判断などの認知機能が低下していく進行性の認知症です。
脳内では、アミロイドβやタウと呼ばれるタンパク質の異常な蓄積などがみられ、神経細胞の機能低下や脱落、脳の萎縮が進んでいきます。
特に記憶に深く関係する「海馬」を含む領域などから変化がみられ、病気が進行するにつれて脳の広い範囲に影響が及びます。
初期には「最近の出来事を忘れる」といった症状が目立ちますが、進行すると判断力や理解力が低下し、日常生活に介助が必要になることがあります。
高齢化が進む日本では、認知症の人の増加が見込まれており、早期発見や治療だけでなく、本人や家族を支える社会的な取り組みも重要になっています。
主な認知症の種類
認知症は一つの病気を指す名称ではありません。さまざまな病気や脳の障害によって認知機能が低下し、日常生活に支障をきたしている状態を指します。
アルツハイマー型認知症
認知症の中で最も多くみられるタイプです。
初期には新しい出来事を覚えにくくなるなどの記憶障害が現れやすく、徐々に判断力や理解力などにも影響が及びます。
血管性認知症
脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって脳の一部が損傷し、認知機能が低下する認知症です。
障害された脳の部位によって症状が異なり、脳血管障害を繰り返すことで段階的に症状が悪化する場合があります。
レビー小体型認知症
脳の神経細胞に「レビー小体」と呼ばれる異常な構造物が現れることと関連する認知症です。
実際には存在しないものが見える「幻視」、認知機能の変動、動作が遅くなる・筋肉がこわばるといったパーキンソン症状などがみられることがあります。
前頭側頭型認知症
主に前頭葉や側頭葉の神経細胞が障害されることで生じます。
記憶障害よりも、性格や行動の変化、社会的なルールに沿った行動が難しくなる、同じ行動を繰り返すなどの症状が目立つ場合があります。
アルツハイマー型認知症の症状と進行
アルツハイマー型認知症の症状や進行速度には個人差があります。
ここでは、一般的にみられる症状を初期・中期・後期に分けて紹介します。

初期にみられやすい症状
初期には、加齢による物忘れや軽度認知障害(MCI)との区別が難しいことがあります。
代表的な症状として、
- 最近あった出来事を忘れる
- 同じ質問や話を繰り返す
- 約束や予定を忘れる
- 物を置いた場所が分からなくなる
- 日付や曜日が分からなくなる
- 慣れていた作業に時間がかかる
などがあります。
単なる加齢による物忘れとは異なり、出来事そのものを忘れてしまうことが増えるのも特徴の一つです。
早い段階で医療機関に相談することで、原因を調べ、必要に応じた治療や生活支援につなげることができます。
中期にみられやすい症状
病気が進行すると、日常生活への影響が目立つようになります。
例えば、
- 金銭管理が難しくなる
- 買い物や料理などが難しくなる
- 外出先から自宅へ戻れなくなる
- 時間や場所が分からなくなる
- 妄想などの行動・心理症状がみられる
- 着替えや入浴などに介助が必要になる
といった変化がみられることがあります。
家族や周囲による見守りや介護が必要になる場面も増えてきます。
後期にみられやすい症状
さらに進行すると、認知機能だけでなく身体機能も低下することがあります。
- 会話による意思疎通が難しくなる
- 歩行が難しくなる
- 食事や排泄などに介助が必要になる
- 飲み込む機能が低下する
- 日常生活の多くで介護が必要になる
特に嚥下機能が低下すると、食べ物や唾液などが誤って気管に入り、誤嚥性肺炎を起こすリスクが高まります。
この段階では、お口を清潔に保つ口腔ケアも全身管理の重要な一部になります。
アルツハイマー型認知症の原因とリスク要因
アルツハイマー型認知症は、一つの原因だけで発症する病気ではありません。
加齢や遺伝的要因に加え、生活習慣や全身の健康状態など、さまざまな要因が複雑に関係すると考えられています。

加齢
アルツハイマー型認知症の重要なリスク要因の一つが加齢です。
年齢が高くなるほど発症する可能性は高くなりますが、高齢になれば必ず認知症になるわけではありません。
高血圧・糖尿病など
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満など、心血管系の健康に影響する状態と認知症リスクとの関連が報告されています。
特に中年期から血圧や血糖、体重などを適切に管理することは、脳や全身の健康を維持するうえでも重要です。
喫煙
喫煙も認知症の修正可能なリスク要因の一つとされています。
禁煙は認知症だけでなく、がんや心血管疾患、歯周病など多くの病気のリスク低減につながります。
運動不足
身体活動が少ない生活と認知機能低下との関連も報告されています。
無理のない範囲で継続的に体を動かすことは、全身の健康維持にも役立ちます。
社会的孤立や抑うつ
社会とのつながりが少ない状態や抑うつなども、認知症との関連が研究されています。
人との交流や社会参加を維持することも、健康的な生活を送るうえで大切です。
遺伝的要因
アルツハイマー病の発症には遺伝的要因も関係しています。
代表的なものとしてAPOE ε4がありますが、この遺伝子を持っているからといって必ず発症するわけではありません。
遺伝的要因と加齢、生活環境などが複雑に関係して発症すると考えられています。
歯周病とアルツハイマー型認知症の関係
近年、歯科領域で注目されているのが、歯周病と認知機能低下との関連です。
ただし、ここで重要なのは、現時点で「歯周病がアルツハイマー型認知症を直接引き起こす」「歯周病を治療すれば認知症を予防できる」と断定できる段階ではないということです。
さまざまな研究から関連性が報告され、そのメカニズムについて研究が続けられています。

歯周病は全身の健康とも関係する
歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨などに炎症が起こる病気です。
進行すると歯を支える骨が失われ、最終的には歯を失う原因になります。
また、歯周病による慢性的な炎症は口の中だけにとどまらず、糖尿病をはじめとする全身疾患との関連が知られています。
そのため、歯周病を予防・治療することは、歯を守るだけでなく全身の健康管理という観点からも重要です。
歯周病菌とアルツハイマー病の研究
歯周病の代表的な原因菌の一つである**Porphyromonas gingivalis(P. gingivalis/Pg菌)**とアルツハイマー病との関連について研究が行われています。
Pg菌やこの細菌が産生する物質、歯周病による慢性的な炎症が、神経炎症などに関与する可能性が研究されています。
動物実験などではアルツハイマー病に関連する変化との関係を示した報告もあります。
ただし、こうした研究結果だけで、Pg菌が人のアルツハイマー型認知症の直接的な原因であると結論づけることはできません。
歯周病とアルツハイマー病の因果関係や、歯周病治療によって発症リスクをどの程度低減できるのかについては、今後さらに研究が必要です。
歯の喪失・噛む機能と認知機能の関係
歯周病だけでなく、歯の喪失や噛む機能の低下と認知機能との関連も研究されています。
歯を多く失っている人や咀嚼機能が低下している人では、認知機能低下のリスクが高い傾向を示した研究があります。
ただし、歯の喪失そのものが認知症の直接的な原因になると証明されているわけではありません。
歯を失う背景には、年齢、歯周病、生活習慣、栄養状態、社会経済的要因など、認知症とも関係するさまざまな要素があります。
そのため、
自分の歯をできるだけ維持すること
失った歯を適切に補うこと
しっかり噛める状態を保つこと
は、食事や栄養、会話、社会参加などを含めた健康的な生活を維持するという観点から重要です。
認知症のリスクを減らすためにできること
認知症を完全に予防する方法は確立されていません。
一方で、生活習慣や健康状態を改善することで、認知症の発症リスクを低減したり、発症を遅らせたりできる可能性があると考えられています。
日常生活では、
- 適度な身体活動を続ける
- バランスのよい食生活を心がける
- 禁煙する
- 過度な飲酒を避ける
- 高血圧や糖尿病などを適切に管理する
- 人との交流や社会参加を続ける
- 聴力や視力の低下を放置しない
- 歯周病を予防・治療する
- 自分の歯や噛む機能を維持する
など、全身を総合的に健康に保つことが大切です。
「これをすれば認知症にならない」という方法ではなく、改善できるリスク要因を一つずつ減らしていくことが重要です。
認知症が疑われる場合の相談先
「年齢のせいだから」と考えていた物忘れが、認知症の初期症状である場合もあります。
例えば、
- 同じ質問を何度も繰り返す
- 予定や約束を頻繁に忘れる
- お金の管理が難しくなった
- 慣れた場所で道に迷う
- 料理や買い物など、以前できていたことが難しくなった
といった変化が続く場合には、医療機関などへの相談を検討しましょう。
相談先としては、
- かかりつけ医
- もの忘れ外来
- 脳神経内科
- 精神科
- 認知症疾患医療センター
- 地域包括支援センター
などがあります。
早めに相談することで、認知症以外の病気が隠れていないかを確認するとともに、必要に応じて治療や生活支援、介護サービスなどにつなげることができます。
認知症が進行しても口腔ケアは大切です
認知症が進行すると、自分で十分に歯磨きをすることが難しくなる場合があります。
その結果、
歯周病・むし歯・口臭・歯の喪失・噛む機能や飲み込む機能の低下
などが起こりやすくなります。
特に高齢者では、口腔内を清潔に保ち、噛む・飲み込む機能を確認することが重要です。
本人による歯磨きが難しくなってきた場合には、家族や介護者による口腔ケアに加えて、歯科医師・歯科衛生士による専門的な管理を取り入れることも検討しましょう。
まとめ|お口の健康を全身の健康につなげる
アルツハイマー型認知症は、加齢や遺伝的要因、生活習慣など複数の要因が関係して発症すると考えられています。
近年では、歯周病や歯の喪失、噛む機能の低下と認知機能との関連についても研究が進められています。
ただし、現時点では歯周病がアルツハイマー型認知症の直接的な原因である、あるいは歯周病治療によって認知症を予防できると断定することはできません。
それでも、歯周病を予防・治療し、自分の歯をできるだけ残して、しっかり噛める状態を維持することは、生涯を通じた健康管理の大切な一部です。
毎日のセルフケアと定期的な歯科検診を続け、お口の健康を守っていきましょう。
関連記事
将来の健康のために、お口からできること

歯周病や歯の喪失、噛む機能の低下は、認知機能との関連が研究されています。認知症を直接予防できるとは限りませんが、歯周病を早期に発見・治療し、しっかり噛めるお口を維持することは、全身の健康を守るうえでも大切です。定期的な歯科検診とクリーニングで、お口の健康を長く維持していきましょう。
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。





