目次

インプラント周囲炎は、インプラントの周囲に炎症が起こり、インプラントを支える骨が徐々に失われていく病気です。

初期には痛みなどの自覚症状がほとんどないこともあり、気づかないうちに進行する場合があります。

  • 歯ぐきから血が出る
  • インプラント周囲の歯ぐきが腫れている
  • 最近、口臭が気になる
  • 歯ぐきから膿が出る
  • 定期的なメンテナンスを受けていない

このような症状や心当たりがある場合は、一度インプラント周囲の状態を確認することが大切です。

インプラント周囲炎が進行した状態

レントゲン写真では、インプラント周囲の骨が吸収している状態を確認できることがあります。

インプラントを支える骨の吸収が進むと、インプラントの安定性にも影響する可能性があります。

健康なインプラント周囲組織

健康な状態では、インプラント周囲の骨が保たれています。

定期的にレントゲン検査や歯周組織の検査を行い、以前の状態と比較することで、骨吸収などの変化を早期に発見しやすくなります。

インプラント周囲炎
インプラント周囲炎

矢印部のインプラント周囲の骨が無くなっています。インプラント周囲炎で骨の破壊が進んでいることを示しています。

インプラントは正常
インプラントは正常

⇒部分の骨は吸収を受けていません。インプラント周囲の骨は正常であることを示しています。

インプラントそのものが虫歯になることはありません。

しかし、インプラント周囲の組織には、天然歯の歯周病と似た炎症が起こることがあります。

インプラント周囲の粘膜だけに炎症がとどまっている状態を「インプラント周囲粘膜炎」、さらに炎症が進み、インプラントを支える骨の吸収を伴う状態を「インプラント周囲炎」と呼びます。

インプラント周囲炎が進行すると骨が徐々に失われ、重症化した場合にはインプラントを保存できなくなることがあります。

早期には痛みがないことも多いため、症状だけで判断せず、定期的な検診を受けることが重要です。

次のような変化がみられる場合は注意が必要です。

□ 歯磨きのときに出血する
□ インプラント周囲の歯ぐきが赤い・腫れている
□ 口臭が気になる
□ 歯ぐきから膿が出る
□ 噛んだときに違和感がある
□ インプラント周囲の歯ぐきが下がってきた
□ 定期的なメンテナンスを受けていない

ただし、インプラント周囲炎は自覚症状が乏しいまま進行する場合があります。

「痛くないから大丈夫」と考えず、定期的にインプラント周囲の状態を確認しましょう。

インプラント周囲炎は、適切な処置を行わずにいると進行する可能性があります。

STEP1 歯ぐきに炎症が起こる

インプラント周囲の歯ぐきに赤みや腫れ、出血などがみられることがあります。

この段階では、骨吸収を伴わない「インプラント周囲粘膜炎」である場合もあります。

STEP2 インプラント周囲の骨が吸収する

炎症が深部に広がると、インプラントを支えている骨の吸収が進むことがあります。

STEP3 インプラント表面が露出する

骨吸収や歯ぐきの退縮が進むと、インプラントの表面が露出することがあります。

STEP4 インプラントの安定性が低下する

骨吸収が大きく進行すると、インプラントを十分に支えられなくなる場合があります。

STEP5 インプラントの保存が困難になる

重度まで進行すると、インプラントを除去せざるを得ないケースもあります。

すべての患者さんが同じ経過をたどるわけではありませんが、できるだけ早い段階で発見・対応することが重要です。

インプラント周囲炎には、さまざまなリスク因子が関係しています。

歯周病の既往がある

過去に歯周病にかかったことがある方は、インプラント周囲炎のリスクが高くなることが知られています。

インプラント治療後も、残っている天然歯を含めてお口全体の歯周病管理を続けることが大切です。

喫煙習慣がある

喫煙はインプラント周囲組織の健康に悪影響を及ぼす可能性があり、インプラント治療後も注意が必要です。

インプラントを長期的に維持するためにも、禁煙をおすすめします。

糖尿病がある

糖尿病、とくに血糖コントロールが不十分な場合には、感染や炎症に対する抵抗力が低下し、インプラント周囲組織にも影響する可能性があります。

医科と連携しながら、適切な血糖管理を行うことが重要です。

プラークコントロールが不十分

インプラント周囲にプラーク(細菌のかたまり)が蓄積すると、炎症を引き起こす原因になります。

毎日のセルフケアと歯科医院での専門的なメンテナンスの両方が重要です。

定期的なメンテナンスを受けていない

インプラント周囲炎は自覚症状が少ないため、定期的な検診を受けていないと発見が遅れる可能性があります。

インプラント治療後は、症状がなくても継続的なメンテナンスを受けましょう。

歯ぎしり・食いしばりがある

強い歯ぎしりや食いしばりは、インプラントや上部構造に大きな力を加えることがあります。

歯ぎしりだけをインプラント周囲炎の直接的な原因と考えることはできませんが、インプラントを長期的に維持するためには、噛み合わせを含めた総合的な管理が重要です。

中等度の症例

骨吸収が進行(フラップ手術・再生療法の併用)

フラップ手術+骨再生療法

骨吸収が始まった段階では、感染組織の除去と骨再生療法を組み合わせて治療を行います。

骨吸収が始まっている中等度のインプラント周囲炎では、外科的な治療が必要です。

上顎臼歯部のインプラント周囲炎

インプラント周囲の歯肉が腫れ発赤しています。

インプラント周囲炎
インプラント周囲炎
STEP
1
治療後

エアフローによる治療によりインプラント周囲の炎症が取れ、腫れや発赤は無くなっています。しかし、歯茎が下がりインプラントのスクリュー部が露出しました。この状態は細菌感染を受けやすく予後不良です。骨再生療法(GBR法など)の追加処置が必要となります。

治療後
治療後
STEP
2
レントゲン写真

同症例のレントゲン写真です。⇒部のインプラント周囲の骨の吸収が相当進んでいます。

治療後のレントゲン写真
治療後のレントゲン写真
STEP
3

治療方法は、炎症や骨吸収の程度、インプラントの位置、骨欠損の形態、清掃状態などによって異なります。

軽度の場合

骨吸収を伴わず、インプラント周囲の粘膜に炎症がとどまっている段階では、プラークやバイオフィルムの除去とセルフケアの改善を中心に行います。

エアフローなどによるクリーニング

インプラント周囲に付着したバイオフィルムを除去し、清掃しやすい環境を整えます。

エアフローによるクリーニング
エアフローによるクリーニング

ブラッシングの改善

歯ブラシだけでなく、患者さんのお口の状態に適した歯間ブラシやフロスなどを使用します。

骨吸収を伴う場合

インプラント周囲炎によって骨吸収が生じている場合には、非外科的な処置だけでは十分な改善が得られないことがあります。

状態に応じて外科的治療を検討します。

中等度のインプラント周囲炎で骨の吸収
中等度のインプラント周囲炎で骨の吸収

フラップ手術

歯ぐきを開いてインプラント表面を確認し、感染した組織やバイオフィルムなどを除去します。

インプラント表面の清掃・除染

インプラント表面に付着した細菌や汚染物をできる限り除去します。

再生療法

骨欠損の形態など一定の条件を満たす場合には、骨補填材やメンブレンなどを用いた再生療法を検討することがあります。

すべての症例で骨が元通りになるわけではなく、適応を慎重に判断する必要があります。

重度の場合

骨吸収が著しく進み、インプラントの保存が難しい場合には、インプラントの除去を検討します。

除去後に再びインプラント治療を希望される場合は、骨の状態を評価し、必要に応じて骨造成を行ったうえで再治療を検討します。

インプラント周囲炎は、抗菌薬を服用するだけで治療できる病気ではありません。

治療の基本は、原因となるプラークやバイオフィルム、感染組織などを適切に除去し、清掃環境を改善することです。

抗菌薬は感染の状態などに応じて補助的に使用する場合がありますが、必要性については歯科医師が個別に判断します。

インプラントを長く使用するためには、治療後の継続的な管理が重要です。

毎日のセルフケア

インプラント周囲にもプラークは付着します。

歯科医院で指導を受けながら、ご自身に適した歯ブラシや清掃方法を身につけましょう。

歯間ブラシ・フロス

インプラントの形態によっては、歯ブラシだけでは十分に清掃できない部分があります。

歯間ブラシやフロスなどを組み合わせて使用します。

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禁煙

喫煙はインプラント周囲組織に悪影響を及ぼす可能性があります。

インプラントを長期的に維持するためにも禁煙が望まれます。

噛み合わせのチェック

歯ぎしりや食いしばりが強い方では、インプラントや上部構造に過剰な力がかかる場合があります。

必要に応じて噛み合わせの確認やナイトガードなどを検討します。

定期的なメンテナンス

インプラント周囲炎は、患者さん自身では気づきにくいことがあります。

歯科医院では、歯ぐきの状態、出血、プラークの付着、インプラントの動揺、噛み合わせ、骨の状態などを確認します。

定期的なメンテナンスによって、小さな変化を早期に発見することが大切です。

バイオフィルムの除去

インプラント周囲の状態を確認しながら、エアフローなどを使用してバイオフィルムの除去を行います。

レントゲンによる骨の確認

レントゲン検査によってインプラント周囲の骨の状態を確認します。

さらに詳しい評価が必要な場合には、CT検査を行うことがあります。

進行度に応じた治療

インプラント周囲粘膜炎から骨吸収を伴うインプラント周囲炎まで、状態を診査したうえで必要な治療をご提案します。

骨再生療法(GBRなど)

骨欠損の状態や適応条件によっては、GBRなどの再生療法を検討します。

継続的なメンテナンス

インプラント治療は、人工歯を装着して終わりではありません。

治療後も定期的に状態を確認し、インプラントと残っている天然歯を継続して管理します。

インプラント周囲炎になったからといって、直ちにインプラントを失うわけではありません。

早い段階で発見し、適切な治療とメンテナンスを行うことで、炎症の改善や進行抑制を目指せる場合があります。

一方、骨吸収が大きく進行すると治療が難しくなるため、早期発見が重要です。

歯ぐきからの出血や腫れ、膿などの変化を見逃さず、症状がなくても定期的なメンテナンスを続けましょう。

インプラントは「入れて終わり」ではなく、その後も守り続けることが長期的な安定につながります。

インプラント周囲炎は自然に治りますか?

プラークやバイオフィルムが原因となって炎症が続いている場合、自然に改善することを期待して放置するのはおすすめできません。

早期に歯科医院で状態を確認し、必要な処置を受けることが大切です。

痛みがなくても受診した方がよいですか?

はい。

インプラント周囲炎は、自覚症状が乏しいまま進行することがあります。

痛みの有無だけで判断せず、定期的にインプラント周囲の歯ぐきや骨の状態を確認することが重要です。

歯周病だった人でもインプラント治療はできますか?

歯周病の既往があっても、インプラント治療を検討できる場合があります。

ただし、歯周病がある場合には治療によって炎症を安定させ、お口の清掃状態を整えてからインプラント治療を行うことが重要です。

治療後も継続的な歯周病管理とメンテナンスが必要です。

インプラントは何年くらい持ちますか?

インプラントの寿命には、口腔内の状態、歯周病の既往、喫煙、全身状態、セルフケア、定期メンテナンスなど多くの要因が関係するため、一概に「何年持つ」とは言えません。

適切なセルフケアと定期的なメンテナンスを続け、インプラント周囲の健康を維持することが長期使用につながります。

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インプラント周囲炎は、痛みがないまま進行することがあります。

「最近、歯ぐきから血が出る」「インプラント周囲が腫れている」「しばらくメンテナンスを受けていない」という方は、早めにインプラント周囲の状態を確認しましょう。

大切なインプラントを長く使用するためには、早期発見と継続的なメンテナンスが重要です。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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