アデノイド肥大とは、鼻の奥にあるリンパ組織「アデノイド(咽頭扁桃)」が大きくなり、鼻からの呼吸を妨げている状態です。

子どもに多くみられ、鼻づまり、口呼吸、いびき、中耳炎、睡眠時無呼吸などに関係することがあります。

歯科で特に注目したいのは、鼻呼吸がしにくい状態が長く続くことで口呼吸が習慣化し、舌の位置や口唇の使い方、歯並び、顎顔面の成長に影響する可能性があることです。

「いつも口が開いている」「寝ているときにいびきをかく」「前歯が出てきた」といった変化がみられる場合は、呼吸の状態も含めて確認することが大切です。

お子さまに次のような様子がみられる場合は、アデノイド肥大をはじめとする鼻やのどの問題が関係している可能性があります。

  • いつも口が開いている
  • 鼻づまりが続いている
  • 寝ているときにいびきをかく
  • 睡眠中に呼吸が止まるように見える
  • 朝起きると口が乾いている
  • 中耳炎を繰り返す
  • 前歯が出てきた
  • 上顎や歯列が狭い
  • 日中眠そうにしている
  • 集中しにくい様子がある

複数の症状が続いている場合は、耳鼻咽喉科で鼻やのどの状態を確認するとともに、歯科で歯並びや顎の成長、口呼吸の影響をチェックすることをおすすめします。

鼻呼吸を妨げるアデノイド(咽頭扁桃)の肥大、鼻ポリープ(鼻茸)の模式図
アデノイド(咽頭扁桃)の肥大、鼻ポリープ(鼻茸)の模式図

アデノイドは鼻の奥、鼻腔とのどの境目付近にあるリンパ組織で、正式には「咽頭扁桃」と呼ばれます。

細菌やウイルスなどから体を守る免疫機能の一部を担っており、特に小児期に発達します。

アデノイドが大きくなること自体は成長過程でみられる変化ですが、肥大によって鼻の奥の気道が狭くなると、鼻呼吸がしづらくなることがあります。

このように、アデノイドの肥大によって鼻呼吸や睡眠などに問題が生じている状態を「アデノイド肥大」と呼びます。

鼻づまり・口呼吸

アデノイドが肥大すると、鼻の奥の空気の通り道が狭くなり、鼻呼吸がしづらくなることがあります。

その結果、口で呼吸する時間が増え、いわゆる**「お口ポカン」**が習慣化する場合があります。

口呼吸が続くと口腔内が乾燥しやすくなり、唾液による自浄作用が低下するため、虫歯や歯肉炎、口臭などのリスクにも注意が必要です。

いびき・睡眠時無呼吸

アデノイド肥大は、子どものいびきや睡眠時無呼吸に関係する代表的な要因の一つです。

特にアデノイドや口蓋扁桃が大きい場合、睡眠中に気道が狭くなり、呼吸が妨げられることがあります。

睡眠の質が低下すると、

  • 朝なかなか起きられない
  • 日中眠そうにしている
  • 集中しにくい
  • 落ち着きがない

などの変化がみられる場合があります。

強いいびきや睡眠中の無呼吸がみられる場合は、早めに耳鼻咽喉科などの専門医へ相談しましょう。

中耳炎を繰り返す

アデノイドの近くには、中耳と鼻の奥をつなぐ「耳管」の開口部があります。

アデノイドが肥大すると耳管の換気機能に影響し、滲出性中耳炎などを起こしやすくなることがあります。

滲出性中耳炎では強い痛みがないこともあり、聞こえにくさに気づきにくい場合があります。

「テレビの音を以前より大きくする」「呼びかけても反応しにくい」といった変化がある場合は注意が必要です。

アデノイド肥大そのものが直接歯を動かすわけではありません。

しかし、アデノイド肥大などによって鼻呼吸がしづらくなり、口呼吸や低位舌などが長期間続くと、歯列や顎顔面の成長に影響する可能性があります。

通常、安静時の舌は上顎に触れているのが理想的です。

一方、口呼吸が続くと、空気の通り道を確保するために舌が低い位置になりやすく、上顎に舌からの適切な力が加わりにくくなる場合があります。

その結果、

  • 上顎の歯列が狭くなる
  • V字型の歯列になる
  • 出っ歯(上顎前突)
  • 開咬
  • 交叉咬合
  • その他の噛み合わせの乱れ

などがみられることがあります。

ただし、歯並びや顎の成長には、遺伝的な骨格、口腔習癖、舌や口唇の機能など複数の要因が関係します。

「口呼吸だから必ず歯並びが悪くなる」「アデノイド肥大だけが原因」というわけではありません。

アデノイド顔貌とは、慢性的な鼻呼吸障害や口呼吸などに関連してみられることがある、特徴的な顎顔面形態を表す言葉です。

一般的には、

  • 口が開いていることが多い
  • 面長に見える
  • 上顎の歯列が狭い
  • 前歯が突出して見える
  • 下顎が後方に位置して見える
  • 口唇を閉じにくい

などの特徴が挙げられます。

ただし、顔つきだけを見てアデノイド肥大と診断することはできません。

顔貌や歯並びには遺伝的な骨格なども大きく関係するため、鼻づまりや口呼吸、いびきなどを伴う場合は、耳鼻咽喉科と歯科の両面から評価することが重要です。

アデノイドは免疫組織の一つであるため、小児期に発達し、その後、成長とともに徐々に縮小していくのが一般的です。

そのため、子どものアデノイドがある程度大きいこと自体は珍しいことではありません。

重要なのは、「大きいかどうか」だけではなく、呼吸や睡眠、耳などに症状が出ているかどうかです。

鼻づまりや口呼吸、強いいびき、睡眠中の無呼吸、中耳炎などが続いている場合は、アデノイドによる気道への影響について耳鼻咽喉科で確認することをおすすめします。

歯科ではアデノイド肥大そのものを確定診断するのではなく、口呼吸や顎顔面の成長、歯並びなどから鼻呼吸障害を疑うサインを見つけることができます。

お口ポカン

診療中や待合室など、安静にしているときでも口が開いている場合は、鼻呼吸がしづらい可能性があります。

お口ポカンによる前歯の突出(アデノイド顔貌の初期サイン)
お口ポカンによる前歯の突出(アデノイド顔貌の初期サイン)

ただし、お口ポカンには鼻づまりだけでなく、口唇の筋力や舌の位置、習慣など複数の原因があります。

上顎・歯列が狭い

口呼吸や低位舌が続いているお子さまでは、上顎の歯列が狭くなっていることがあります。

V字型の歯列や交叉咬合などがみられる場合には、顎の成長や呼吸状態を含めて評価します。

出っ歯・開咬

口呼吸に加えて、舌突出癖や口唇を閉じにくい状態が続くと、前歯の位置や噛み合わせに影響する場合があります。

歯並びだけを見るのではなく、舌や唇の使い方も確認することが大切です。

セファロレントゲンで気道を評価

矯正歯科で使用する側面頭部X線規格写真(セファロレントゲン)では、顎の大きさや位置、成長方向などとともに、鼻咽腔や気道の状態を評価する参考情報を得ることができます。

ほぼ正常なアデノイド
ほぼ正常なアデノイド

歯医者では矯正治療の診断に使うセファロレントゲン写真でアデノイド肥大も診断出来ます。

写真は8歳児のレントゲンですが、アデノイドの肥大が僅かに認められるものの気道は十分に広く口呼吸は起こっていません。

耳鼻咽喉科では鼻からファイバースコープを入れて検査する場合もあります。

アデノイド肥大
アデノイド肥大

アデノイド肥大が顕著に起こった症例で、鼻腔がかなり狭くなっています。そのため口呼吸となり、唇の突出感が強く表れています。

気道が十分に確保されている例

写真は8歳児のセファロレントゲンです。アデノイドの存在は確認できますが、鼻咽腔の気道は十分に確保されています。

アデノイド肥大が疑われる例

アデノイドが大きく、鼻咽腔の気道が狭くみえる症例です。

ただし、セファロレントゲンだけでアデノイド肥大を確定診断することはできません。

アデノイド肥大や鼻閉の詳しい診断は耳鼻咽喉科で行い、必要に応じて鼻咽腔内視鏡(ファイバースコープ)などによる検査が行われます。

次のような症状が続いている場合は、耳鼻咽喉科への相談をおすすめします。

  • 強いいびきが続く
  • 睡眠中に呼吸が止まるように見える
  • 鼻づまりが長期間続いている
  • 口呼吸が改善しない
  • 中耳炎を繰り返す
  • 聞こえにくそうにしている
  • 日中の強い眠気がある
  • 集中力や行動面の変化が気になる

特に睡眠中に呼吸が何度も止まる、息苦しそうにするなどの症状がある場合は、早めの受診が重要です。

アデノイド肥大の治療は、大きさだけで決めるのではなく、鼻づまりや睡眠障害、中耳炎などの症状や日常生活への影響を考慮して判断されます。

経過観察

症状が軽く、睡眠や日常生活への影響が少ない場合は、成長とともにアデノイドが縮小するのを待ちながら経過をみることがあります。

鼻炎などに対する治療

アレルギー性鼻炎などを併発している場合には、耳鼻咽喉科で点鼻薬や抗アレルギー薬などによる治療が行われることがあります。

鼻の炎症や鼻づまりを改善することで、鼻呼吸がしやすくなる場合があります。

アデノイド切除術

アデノイド肥大によって睡眠時無呼吸や強いいびき、鼻閉、中耳炎などが生じている場合には、耳鼻咽喉科で手術が検討されることがあります。

口蓋扁桃の肥大を伴っている場合には、状態に応じて口蓋扁桃に対する手術とあわせて検討されることもあります。

手術が必要かどうかは、症状や年齢、検査結果などを総合的に判断します。

鼻呼吸ができる状態であっても、長期間の口呼吸によって「お口ポカン」や低位舌、舌突出癖などが習慣として残る場合があります。

そのような場合、歯科では**口腔筋機能療法(MFT)**を行うことがあります。

MFTでは、

  • 舌を適切な位置に保つ
  • 唇を自然に閉じる
  • 正しい飲み込み方を身につける
  • 口周りの筋肉を適切に使う

といったトレーニングを行います。

ただし、鼻の通り道に問題が残っている状態で、無理に口を閉じたり鼻呼吸をさせたりすることは適切ではありません。

鼻づまりやアデノイド肥大が疑われる場合は、まず耳鼻咽喉科で鼻呼吸が可能な状態かどうかを確認することが大切です。

アデノイド肥大や口呼吸などに関連して、

  • 上顎の歯列が狭い
  • 交叉咬合がある
  • 出っ歯が目立つ
  • 開咬がある
  • 顎の成長バランスに問題がある

などの状態がみられる場合には、小児矯正を検討することがあります。

成長期の矯正治療では、単に歯をきれいに並べるだけではなく、顎の成長、舌の位置、口唇の機能、呼吸状態などを総合的に確認することが重要です。

また、鼻閉がある場合は、矯正治療だけで解決しようとせず、耳鼻咽喉科と連携しながら原因に応じた対応を行います。

保護者の方は、普段の生活や睡眠中のお子さまの様子を確認してみてください。

  • 普段から口が開いていないか
  • 寝ているときに口が開いていないか
  • いびきをかいていないか
  • 睡眠中に呼吸が止まるように見えないか
  • 苦しそうに寝ていないか
  • 朝、口が乾いていないか
  • 日中に眠そうではないか
  • 食事中に口を開けたまま噛んでいないか
  • 前歯が以前より出てきていないか
  • 鼻づまりが長く続いていないか

スマートフォンで睡眠中のいびきや呼吸の様子を短時間撮影しておくと、受診時に症状を伝える参考になることもあります。

気になる症状が続く場合は、自己判断せずに医療機関へ相談しましょう。

アデノイド肥大による問題は、鼻やのどだけに限りません。

鼻呼吸が妨げられて口呼吸が長期間続くと、睡眠だけでなく、舌や口唇の機能、歯並びや顎顔面の成長にも影響する可能性があります。

そのため、

耳鼻咽喉科
鼻づまり・アデノイド・扁桃・中耳・睡眠時の呼吸などを評価

歯科・矯正歯科
歯並び・噛み合わせ・顎の成長・舌や口唇の機能などを評価

というように、それぞれの専門分野から確認することが大切です。

アデノイド肥大は、子どもの鼻づまりや口呼吸、いびき、中耳炎、睡眠時無呼吸などに関係することがあります。

また、鼻呼吸がしづらい状態が長期間続き、口呼吸や低位舌が習慣化すると、歯並びや噛み合わせ、顎顔面の成長に影響する可能性があります。

特に、

「いつも口が開いている」
「いびきが続いている」
「寝ているときに呼吸が止まる」
「前歯が出てきた」
「上顎の歯列が狭い」

といったサインがある場合は、一度確認しておくことをおすすめします。

アデノイド肥大の診断や治療は耳鼻咽喉科が中心となりますが、歯科では歯並び、顎の成長、舌や口唇の機能などから口呼吸の影響を評価できます。

呼吸・睡眠・歯並びをそれぞれ別の問題として考えるのではなく、お子さまの成長全体をみながら適切な時期に対応することが大切です。

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【動画】アデノイド顔貌

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

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  • ヨガ

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日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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