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「歯周病が進んで歯ぐきや骨が溶けてしまった…もう歯を抜くしかないの?」
そんな不安を感じている方に知っていただきたいのが、エムドゲインを用いた歯周組織再生療法です。歯を支える骨や歯根膜などの組織を再生し、自分の歯を残す可能性を広げる画期的な治療法として注目されています。
本記事では、エムドゲインの仕組み・適応症・費用・他の治療法との違いまで、わかりやすく丁寧に解説します。「できるだけ自分の歯で生きたい」と願うあなたに、最適な情報をお届けします。

🧬エムドゲインの成分と作用機序(エナメルマトリックスデリバティブ)

エムドゲインは、歯の発生初期に重要な役割を果たす「エナメルマトリックスデリバティブ(EMD)」というタンパク質を主成分とした再生材料です。この成分はブタの歯胚から抽出され、生体親和性が高く、アレルギーのリスクも低いとされています。歯周病によって失われた歯根膜や歯槽骨の再生を促進することで、自然に近い歯周組織の修復が期待できます。

エムドゲインゲルの填入
エムドゲインゲルの填入

🧪エムドゲイン開発の歴史と信頼性

エムドゲインはスウェーデンのビオラ社により開発され、1990年代にヨーロッパで医療認可を取得。その後、世界中の歯科医療現場で導入されてきました。国内でも厚生労働省に承認されており、多くの歯周病専門医が使用する信頼性の高い再生材料として広く普及しています。数多くの臨床研究により、その有効性と安全性が確認されています。

🧭世界各国での臨床使用状況

エムドゲインは現在、50か国以上で歯周再生治療に使用されており、世界中で100万人以上の患者に適用された実績があります。特に欧米や日本などの先進国では、歯周病の高度な治療として標準的な選択肢のひとつとされています。また、歯科大学や専門学会のガイドラインにも掲載されるほど、科学的根拠に基づいた治療法として評価されています。

🧬エムドゲインの原理|再生しない歯周組織を蘇らせる仕組み

❌【1】通常の歯周病治療では組織は再生しない

  • 歯周病で破壊された歯槽骨や歯根膜は、スケーリングやルートプレーニングなどの基本治療だけでは再生しません
  • 治療後、歯肉の上皮細胞が先に侵入してしまい、再生に必要なスペースを塞いでしまいます。

💉【2】エムドゲインの役割とは?

  • 基本治療後に、歯根面を丁寧に清掃し、エムドゲインゲルを歯周ポケット内に注入します。
  • これにより、上皮の侵入を防ぎながら、歯周組織が再生する環境を整えることができます。

🔬【3】再生のスピードと対象組織

  • エムドゲインを使用すると、歯槽骨・歯根膜・セメント質1ヶ月に約1mmの速度で再生します。
  • 特に、歯を支える重要な「歯根膜」が再生する点は、他の治療法にはない特長です。

🧪【4】再生のカギは「エナメルマトリックスデリバティブ」

  • エムドゲインの主成分は、子どもの歯が生えるときに分泌されるタンパク質の一種。
  • この成分が歯の発生メカニズムを再現し、細胞の成長や分化を促進します。

🚀【5】自然治癒を超える「再生誘導型治療」

  • 従来の治療は炎症を抑えるだけでしたが、エムドゲインは組織そのものを“再生”させる治療法です。
  • 歯がぐらつく、骨が溶けているといった症状にも、歯を残すチャンスが広がります

🧬エムドゲインが再生を促す組織(歯根膜・セメント質・歯槽骨)

エムドゲインがターゲットとするのは、歯の周囲にある以下の3つの組織です。

  • 歯根膜(しこんまく):歯と骨をつなぐクッションのような組織。歯を衝撃から守る役割を担います。
  • セメント質:歯根の表面を覆う硬い組織で、歯根膜と接着しています。
  • 歯槽骨(しそうこつ):歯を支える顎の骨。歯周病によって最もダメージを受ける部位です。

これらを同時に再生させることにより、歯を支える本来の構造を回復させることができます。

🧠他の再生療法(リグロスやCGF)との比較

歯周組織再生にはエムドゲインの他に「リグロス」や「CGF(自己血由来フィブリン)」などの治療法もあります。

再生材料主な成分特徴
🦷 エムドゲインエナメルマトリックスタンパク自然な歯の発生を模倣した再生誘導
💉 リグロス成長因子(bFGF)保険適用あり・再生能力は高いが適応に制限あり
🧪 CGF患者自身の血液成分拒絶反応なし・他法との併用が多い

エムドゲインは再生の質の高さ生理的な組織形成に強みがあり、歯周病の中〜重度症例に対する信頼性の高い選択肢です。

🦷どんな症例に適しているか(軽度〜重度歯周病)

エムドゲインは、歯周病によって骨が失われた部位に対して特に有効な再生治療です。適応となるのは、次のような症例です。

歯槽骨が垂直的に吸収されている
歯槽骨が垂直的に吸収されている
  • 中等度〜重度の**歯周ポケット(5mm以上)**がある
  • 歯槽骨が垂直的に吸収されている
  • 歯根が1本の単根歯である(多根歯は適応外の場合あり)
  • ブリッジや被せ物の土台となる歯を長持ちさせたい

逆に、水平的な骨吸収が中心のケースや、喫煙習慣がある方、糖尿病のコントロール不良な方は適応が限定されることもあります。

⏳治療ステップ:検査から手術後ケアまで

エムドゲイン治療の一般的な流れは以下の通りです。

  1. 検査・診断
    • レントゲンや歯周ポケット検査で再生可能な部位を確認
  2. 初期治療
    • プラーク除去やスケーリングなどで口腔内環境を整える
  3. 再生手術(フラップ手術)
    • 歯ぐきを切開して患部を露出
    • 歯根表面を清掃し、エムドゲインを塗布
    • 歯ぐきを縫合して終了(所要時間:約60分)
  4. 術後管理
    • 定期的な経過観察とメンテナンス

再生が安定するには半年から1年ほどかかるため、長期的なフォローアップが大切です。

🧼術後の注意点とセルフケア

術後は以下のような点に注意する必要があります。

  • 🦷 手術部位はブラッシング禁止(数週間)
    → 代わりに抗菌うがい薬でケア
  • 🍚 やわらかい食事を心がける(1週間程度)
  • 🚭 喫煙はNG(再生効果が著しく低下します)
  • 🦷 定期的なクリーニングと歯科検診が必須

再生組織は非常に繊細なため、術後のセルフケアとプロによる管理が成功の鍵です。

📍症例ごとの治療期間と成果

治療の効果が安定するまでには約6ヶ月〜1年の期間を要します。以下は症例別の一例です:

症例歯周ポケットの改善骨の再生量治療期間
軽度歯周病6mm → 3mm骨再生 1〜2mm約6ヶ月
中等度7mm → 3mm骨再生 2〜3mm約9ヶ月
重度8mm超 → 4mm骨再生 3mm以上約12ヶ月以上

再生の進行には個人差がありますが、定期的な通院とメンテナンスを継続することで、より良い結果につながります

💉エムドゲイン法(歯周組織再生療法)の術式

STEP

🦷歯周基本治療を終えた時点での口腔内の状態

こちらは、スケーリングやルートプレーニングといった歯周基本治療が完了した段階での歯ぐきの様子です。プラークコントロールは良好で、見た目は健康的に見えるかもしれません。

しかし、歯ぐきの内部では歯槽骨がクサビ状に溶けたままの状態で残っており、これは従来の治療では改善されません。

従来法でも上皮性付着が得られれば歯周ポケットが浅くなり、進行を食い止めることはできますが、骨の再生は期待できないのが実情です。

また、プラークコントロールが不十分になると、再び歯周ポケットが深くなり、歯周病が再発・悪化するリスクもあります。再生治療の選択肢を検討することが重要です。

歯周基本治療終了時の口腔内写真

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🦷フラップ手術(歯周外科手術)について

局所麻酔を行ったうえで、歯ぐきを切開・剥離し、治療部位をしっかりと見える状態にして処置を行います。
これが「フラップ手術(歯周外科手術)」と呼ばれる方法です。

歯根の表面に残っている汚れを徹底的に除去します。
歯周基本治療だけでは取りきれなかった歯石や炎症を起こした肉芽組織などを、目で確認しながらしっかり清掃します。

🦴 ※写真の矢印部分には、深い垂直性の骨欠損(骨の大きな溶け)が認められます。
このようなケースでは、再生療法の適応を慎重に判断していく必要があります。

フラップ手術(歯周外科手術)

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💉エムドゲインゲルの注入について

歯根表面をクエン酸などでエッチング処理(表面の汚れや不純物を除去し、再生を促しやすくする処置)した後、エムドゲインゲルを骨の欠損部に注入します
写真は、エムドゲインゲルによって欠損部がしっかりと満たされた状態を示しています。

エムドゲインは流動性が高いため、注入部位から流れ出してしまうリスクがあります。そのため、再生効果を安定させる目的で、人工骨材を併用するケースもあります

なお、エムドゲインを用いた歯槽骨再生療法は自由診療(保険適用外)ですが、類似の作用を持つ「リグロス」という薬剤は、一定の条件を満たすことで保険診療として提供可能です。

エムドゲインによる再生は個人差がありますが、およそ数ヶ月で新しい歯槽骨や歯根膜の形成が進みます。しっかりとした術後管理と定期的な検診が、治療の成功に繋がります。

エムドゲインゲルの注入

STEP


🪡歯肉の縫合について

手術後は、切開・剥離した歯ぐきを元の位置に戻し、丁寧に縫合します

縫合にはいくつかの方法があり、代表的なものとして以下のような手技があります:

  • 単純縫合
  • 8の字縫合
  • マットレス縫合
  • 懸垂縫合
  • 連続ロック縫合 など

今回の症例では、単純縫合マットレス縫合の組み合わせによって、組織の安定と治癒の促進を図りました。術後の傷口がしっかり閉じるよう、歯肉の位置や張力に配慮した縫合法を選択しています。

歯肉縫合

STEP

🩹歯周パックの使用について

フラップ手術(歯周外科手術)の後、傷の治りを早めるために「歯周パック(コーパック)」を術部の周囲に貼付します。これは、術後の歯ぐきを保護し、外部からの刺激を和らげるための保護材です。

歯周パックは外れやすいため、術後の食事はなるべくやわらかいものを選び、噛む位置にも注意してください。

通常は、1週間後の抜糸の際に歯周パックも一緒に除去します。それまでの間は、パックが外れないように丁寧なセルフケアを心がけましょう。

歯周パック

💰自由診療での価格相場

エムドゲインを用いた歯周組織再生療法は、原則として自由診療となります。費用は歯科医院によって異なりますが、1歯あたり約5万〜15万円が一般的な相場です。

この価格には以下の内容が含まれることが多いです:

  • 再生材料(エムドゲイン)費用
  • 外科処置(フラップ手術)費用
  • 術後の経過観察とメンテナンス費用

費用は高額に感じられますが、歯を残す可能性を高める投資と考えると、多くの患者に選ばれている理由がわかります。

🧾保険適用の条件と注意点

エムドゲイン自体は保険適用外ですが、同じ「歯周組織再生療法」として、リグロスという再生材料は2016年から保険適用が認められています。

そのため、次のような注意点があります:

  • エムドゲイン=自由診療
  • リグロス=条件付きで保険適用
  • 保険適用になるかどうかは、病状・適応部位・診療報酬制度などにより変わります

※「保険で再生療法ができると思って来院したが、適応外だった」というケースもあるため、事前に歯科医院へ確認が必要です。

💡「リグロス」とのコストパフォーマンス比較

比較項目エムドゲインリグロス
🧬主成分エナメル基質タンパクbFGF(線維芽細胞増殖因子)
💰費用自由診療(5〜15万円)保険適用(自己負担1〜3万円前後)
🦷再生対象歯根膜・セメント質・歯槽骨主に歯槽骨
🧪科学的実績欧米含め臨床実績豊富日本国内中心に実績増加中

再生の範囲や質を重視するならエムドゲイン費用を抑えたいならリグロスという選び方がポイントです。

❓痛みはありますか?

エムドゲイン治療は局所麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。術後は多少の腫れや違和感を感じる場合もありますが、強い痛みを伴うことは稀です。

術後の痛みや不快感に対しては、必要に応じて鎮痛薬が処方されます。通常、2〜3日程度で落ち着くケースがほとんどです。

❓再発のリスクは?

エムドゲイン治療により、歯周組織は再生されますが、再発リスクをゼロにすることはできません。再生された組織を維持するには、術後のメンテナンスが不可欠です。

以下を継続することで、再発リスクを大幅に下げることができます:

  • 定期的な歯科検診とプロケア(3〜6ヶ月ごと)
  • 正しい歯磨きと歯間ケア
  • 禁煙(喫煙は最大のリスク因子)

治療後が本当のスタートと考えて、長期的な管理を意識しましょう。

❓年齢制限や禁忌事項は?

エムドゲインには明確な年齢制限はありませんが、成長期の子ども(未成年)や高齢者の場合は症例によって判断が必要です。

以下に該当する方は、事前に十分な診査が必要です:

  • 糖尿病など全身疾患がコントロール不良な方
  • がんによる放射線治療を受けている方。
  • ステロイド剤の治療を受けている方。
  • 喫煙習慣のある方(再生効果が低下)
  • 妊娠中や授乳中の方(医師の判断が必要)
  • 多根歯など複雑な歯根形態のケース

まずは専門医によるカウンセリングを受け、自分に適した治療かどうかを確認することが大切です。

歯周病が進行して歯ぐきや骨が失われてしまっても、エムドゲイン治療なら、再生の可能性があります。抜歯しかないと思っていた歯を、もう一度しっかり支えられるようになる――そんな未来を目指せる治療法です。

ただし、再生療法には正確な診断と高度な技術が必要です。信頼できる歯科医院でのカウンセリングを受け、自分の状態に合った治療法を見つけましょう。

🦷**「もうダメかも」と思う前に、まずは専門医に相談してみませんか?**
あなたの大切な歯と笑顔を、エムドゲインが守ってくれるかもしれません。

🦷江戸川区篠崎で歯周病の再生治療をご検討中の方へ

「エムドゲイン」のような歯周組織再生療法にご興味のある方、当院では**保険適用可能な再生治療「リグロス」**を採用しています。費用を抑えつつ、専門医による確かな技術で、歯ぐきや骨の再生を目指すことが可能です。

「できるだけ歯を抜きたくない」「将来のために歯を残したい」――そんなお悩みをお持ちの方は、江戸川区篠崎の当院へお気軽にご相談ください。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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