エムドゲイン法で歯周組織を再生:歯周病治療の新たな選択肢
歯周組織(歯槽骨・歯根膜・セメント質)の再生
エムドゲイン法は、歯周病・歯槽膿漏により喪失した歯周組織(歯槽骨・歯根膜・セメント質)を再生する治療法です。
歯周病の基本治療はスケーリング・ルートプレーニングです。歯周ポケットが深い場合には、歯周外科(フラップ手術)が行われる場合もあります。
しかし、これらの処置を行っても歯周組織は再生されません。フラップ手術(歯周外科手術)に併用して特殊な薬剤「エムドゲインゲル」を歯茎に入れる方法があります。
エムドゲイン法のメカニズム
歯周病で破壊された歯根を支える歯槽骨や歯根膜は、歯周基本治療を行っても再生されません。
歯周病の基本治療(スケーリング・ルートプレーニングなどの歯石取り)では、約1週間で歯肉の上皮細胞が骨の破壊された所に入り込み歯周組織(歯槽骨、歯根膜)ができるスペース埋めてしまいます。
そのため、歯槽骨や歯根膜が再生することはありません。
そこで、歯周ポケット深部の歯根に付着した歯石や不良肉芽組織を清掃(スケーリング、ルートプレーニング)した後、エムドゲインゲルという薬剤を注入します。
エムドゲインゲルが填入された歯周組織(歯槽骨、歯根膜,セメント質)が1ヶ月に約1mmづつの速さで再生します。
エムドゲインゲルの主成分「エナメルマトリックスデリバティブ」は、子どもの頃、歯が生えてくる時に重要なタンパク質の一種です。
エムドゲイン法の適応症
歯周病で破壊された垂直性骨吸収部位
レントゲン写真は、歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング)が終了したところです。
矢印部分に垂直性骨吸収が認められます。エムドゲイン法の適初期治療終了時のレントゲン写真。垂直性骨欠損が5番の近心に認められます。応症は、レントゲン写真の様に歯槽骨の一部分が垂直的に破壊された場合です。
歯槽骨全体が水平的に吸収した場合には適用出来ません。
通常、歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング)や歯周外科治療(フラップ手術)を行っても歯周病によって破壊された歯槽骨は元に戻りません。そのため、深い歯周ポケットが出来たままになってしまうことがあります。
エムドゲイン法(歯周組織再生療法)の術式
STEP
歯周基本治療終了時の口腔内写真
歯周基本治療(スケーリング・ルートプレーニング)を終了した時点の歯茎の状態です。
プラークコントロールは良好で、このまま経過観察というのが従来の治療法ですが、一見健康そうに見える歯茎の中の歯槽骨はクサビ状に溶けたままです。
従来法でも、歯槽骨は再生されませんが上皮性付着が出来れば歯周ポケットが浅くなり歯周病の進行は止まります。
しかし、プラークコントロールが不良になると歯周ポケットが深くなるリスクをはらんでいます。
STEP
フラップ手術(歯周外科手術)
① 局所麻酔下で歯茎を切開剥離し、術野を明示するフラップ手術(歯周外科手)を行います。
② 歯根面の徹底清掃。歯周基本治療では完全に除去しきれなかった肉芽組織や歯石を徹底的に除去します。
※ 矢印部分に深い垂直性骨欠損が認められます。
STEP
エムドゲインゲルの注入
歯根面をエッチング処理(クエン酸など)した後、 エムドゲインゲル溶液を填入します。口腔内写真はエムドゲインゲルで満たされた骨欠損部の状態です。
エムドゲインは、流動性があるため填入部位から流れ出し自然喪失してしまうリスクがあります。そこで、人工骨を併用することも考えられます。
エムドゲインによる歯槽骨再生治療は保険適用外ですが、同様の作用機序を持つリグロスという薬剤が保険適用になりました。
エムドゲイン法の治療は個人差がありますが、大体、数ヶ月で新しい歯槽骨と歯根膜が再生します。
STEP
歯肉縫合
切開剥離した歯肉を元に戻し縫合します。
縫合には、単純縫合、8の字縫合、マットレス縫合、懸垂縫合、連続ロック縫合などいくつか方法があります。今回は単純縫合とマットレス縫合で行いました。
STEP
歯周パック
創傷治癒を早めるために歯周パック(コーパック)をフラップオペレーションした歯の周囲に貼付します。歯周パックは外れやすいので食事は注意してください。
1週間後の抜糸するときに歯周パックも除去します。
エムドゲイン法の副作用
① 副作用
世界中の約40カ国100万人以上の治療実績がありますが、副作用の報告はありません。
② 禁忌・禁止
糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化の進んだ方。がんによる放射線治療を受けている方。ステロイド剤の治療を受けている方。妊婦や授乳中の方などの安全性は確立していません。
エムドゲイン法とリグロス法はどっちがいいの?
エムドゲインは豚の歯胚から抽出されたエナメルマトリックスデリバティブというエナメル基質タンパク質が主成分ですが、リグロスは人間の成長因子「bFGF}が使用されています。
リグロスは2001年から臨床応用され、十分な実績と高い信頼性が認められています。エムドゲインはそれよりもさらに古くから使用されています。
両者の臨床成績はほぼ同等か症例によってはリグロスの方が僅かに高いと思われ、費用の関係から保険適用されたリグロスが第1選択となるでしょう。
エムドゲイン法の費用
エムドゲイン法の費用は保険適用外です。
現在、エムドゲイン法の治療は行っておりません。代わりに保険適用のリグロス法を行っています。
江戸川区篠崎で歯周病で抜かない治療をご検討の方へ
ふかさわ歯科クリニック篠崎では、患者様の大切な歯を1本でも延命するため、軽度歯周病から重度歯周病に至るまで様々な対策を行い、歯周病予防をはじめ、早期発見・早期治療で症状の改善・維持を行い、抜歯回避に努めております。
重度歯周病でもあきらめる必要はありません。江戸川区篠崎で歯周組織再生治療の歯を抜かない治療をご希望の方は、ぜひ一度当院までお気軽にご相談下さい。
【動画】歯周病の手遅れの症状
筆者・院長
深沢 一
Hajime FULASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。