朝起きると顎がだるい、歯がすり減っている、冷たいものがしみる――こうした症状には、歯ぎしりや食いしばりが関係していることがあります。

歯ぎしり・食いしばりは、睡眠中だけでなく起きている時間帯にもみられます。程度や頻度によっては、歯の摩耗や破折、顎の筋肉や顎関節の不調、修復物への負担などにつながることがあります。

この記事では、歯ぎしり・食いしばりの特徴や関連する要因、起こりうる症状、治療・対処法について歯科医師の視点から解説します。

ブラキシズムとは、歯を食いしばる、噛みしめる、擦り合わせる、あるいは顎の筋肉を緊張させるなどの反復的な顎の筋活動を指します。

現在では、睡眠中にみられる「睡眠時ブラキシズム」と、起きているときにみられる「覚醒時ブラキシズム」に分けて考えられています。

ブラキシズム自体が必ずしも病気というわけではありませんが、程度が強い場合や長期間続く場合には、歯や修復物、顎の筋肉などへの負担となることがあります。

覚醒時ブラキシズム

起きている時間帯にみられる、歯の接触や食いしばり、顎の筋肉の緊張などです。

パソコン作業や仕事、運転などに集中しているときに無意識に起こることがあります。心理的な緊張やストレスなどとの関連も報告されていますが、原因を一つに特定できるものではありません。

睡眠時ブラキシズム

睡眠中にみられる反復的な咀嚼筋活動です。

本人が気付いていないことも多く、家族から歯ぎしりの音を指摘されたり、歯科検診で歯の摩耗を指摘されたりして気付くことがあります。

ただし、睡眠時ブラキシズムでは必ず音が出るわけではありません。

歯ぎしりと食いしばりの違い

グラインディング(歯ぎしり)

上下の歯を接触させながら顎を動かし、歯を擦り合わせるタイプです。

繰り返されると歯の摩耗などにつながることがありますが、摩耗の程度はブラキシズムだけでなく、噛み合わせや歯質、酸による歯の侵食など複数の要因に影響されます。

クレンチング(食いしばり)

上下の歯を強く噛みしめる状態です。

歯ぎしりのような音が出にくいため、本人や周囲が気付きにくいことがあります。程度によっては歯や修復物、顎の筋肉などに負担がかかることがあります。

TCH(歯列接触癖)にも注意

通常、食事や嚥下などをしていない安静時には、上下の歯は持続的には接触していません。

日中、必要のない場面でも上下の歯を接触させる習慣は、TCH(Tooth Contacting Habit:歯列接触癖)と呼ばれます。

TCHが長時間続くと、顎の筋肉の疲労や顎関節周囲の症状などに関与する可能性があります。

TCHについて詳しくはこちら

ブラキシズムは単一の原因によって起こるものではなく、複数の要因が関係すると考えられています。

歯ぎしりの主な原因

ストレスや心理的要因

ストレスや不安、緊張などは、とくに覚醒時ブラキシズムとの関連が指摘されています。

ただし、「ストレスが歯ぎしりの最大の原因」と一律に説明することはできません。睡眠時ブラキシズムについても、睡眠中の覚醒反応や自律神経活動など、さまざまな要因との関連が研究されています。

噛み合わせとの関係

以前は、噛み合わせの異常が歯ぎしりの主要な原因と考えられることがありました。

しかし現在では、噛み合わせだけでブラキシズムの発生を説明することは難しいと考えられています。

一方、ブラキシズムがある方では、その力のかかり方によって特定の歯や修復物への負担が大きくなる場合があるため、歯科医院では噛み合わせを含めて総合的に評価します。

睡眠との関係

睡眠時ブラキシズムは、睡眠中に一時的に脳や自律神経の活動が高まる「微小覚醒」と関連して生じることがあります。

また、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)などの睡眠関連疾患とブラキシズムが併存する場合もあります。

ただし、「呼吸が止まることが直接歯ぎしりを起こす」と単純に説明できるものではありません。いびきや無呼吸、強い日中の眠気などがある場合には、医科での評価が必要になることがあります。

歯ぎしりが引き起こす症状

歯の摩耗や破折

ブラキシズムでは歯に大きな力が加わることがあり、程度や歯の状態によっては、

  • 歯の摩耗
  • 歯の亀裂
  • 詰め物・被せ物の破損や脱離
  • 歯の破折

などに関与することがあります。

小臼歯の歯根破折
小臼歯の歯根破折
大臼歯の歯根破折
大臼歯の歯根破折

ただし、「歯ぎしりの力は通常の咀嚼の○倍」といった数値は測定条件や個人差が大きいため、一律には示せません。

また、根管治療を受けた歯では、残っている歯質の量や修復方法などによって破折リスクが異なります。神経を取ったことだけを理由に「必ず割れやすくなる」と考えるのは適切ではありません。

歯の破折
歯の破折

知覚過敏・歯の根元の欠損

歯ぎしりや食いしばりがある方では、冷たいものがしみるなどの症状を訴えることがあります。

また、歯の根元にできるくさび状の欠損には、ブラッシングによる摩耗、酸による歯質の軟化、歯に加わる力など複数の要因が関係すると考えられています。

くさび状欠損
くさび状欠損

そのため、「歯ぎしりによってくさび状欠損が生じる」と断定するのではなく、原因を総合的に評価することが大切です。

骨隆起(外骨症)

口蓋や下顎の内側などに、硬い骨の膨らみがみられることがあります。これを口蓋隆起や下顎隆起などと呼びます。

骨隆起の成因は完全には明らかになっておらず、遺伝的要因や咬合・咀嚼に伴う力など、複数の要因が関与すると考えられています。

そのため、骨隆起があるだけで「強い歯ぎしりをしている」と判断することはできません。

多くの場合は良性の骨の隆起であり、症状がなければ治療を必要としないこともあります。

上顎中央に“上顎隆起(骨隆起)”が見られる状態。骨が盛り上がってできる良性の変化で、痛みはほとんどありません。
上顎中央に“上顎隆起(骨隆起)”が見られる状態。骨が盛り上がってできる良性の変化で、痛みはほとんどありません。
下顎内側に見られる“下顎隆起(骨隆起・外骨症)”。
下顎内側に見られる“下顎隆起(骨隆起・外骨症)”。

歯周組織への影響

歯周病の主な原因は、歯面に形成される細菌性プラーク(バイオフィルム)です。歯ぎしりや食いしばりそのものが歯周病を発症させるわけではありません。

ただし、すでに歯周組織が弱っている歯に過度な力が加わる場合には、歯の動揺などに影響する可能性があります。

歯周病がある場合は、プラークコントロールや歯周治療を基本としながら、必要に応じて歯に加わる力についても評価します。

歯周病の重症化
歯周病の重症化
全身への影響

顎の筋肉の疲労・頭痛など

食いしばりなどによって咬筋や側頭筋の活動が続くと、顎周囲の疲労感や筋肉痛が生じることがあります。

側頭部の頭痛などと関連する場合もありますが、頭痛や肩こりにはさまざまな原因があります。そのため、これらの症状をすべて歯ぎしりによるものと判断することはできません。

症状が強い場合や長く続く場合は、必要に応じて医科への相談も検討します。

顎関節症との関係

歯ぎしりや食いしばりなどのブラキシズムは、顎関節症に関連する要因の一つとして考えられています。

顎関節症では、

  • 顎が疲れる、だるい
  • 顎やこめかみ周辺が痛む
  • 口を開閉すると音がする
  • 口を開けにくい

などの症状がみられることがあります。

ただし、関節音だけがあり、痛みや開口障害がない場合には、必ずしも治療が必要とは限りません。

次のような症状や変化がある場合は、歯ぎしり・食いしばりが関係している可能性があります。

  • 朝起きたときに顎の筋肉が疲れている
  • 歯がすり減っている
  • 歯にヒビや欠けがみられる
  • 詰め物や被せ物が繰り返し壊れる・外れる
  • 家族から睡眠中の歯ぎしり音を指摘された
  • 日中、無意識に上下の歯を接触させている
  • 顎やこめかみ周辺に疲労感がある

ただし、これらに当てはまるからといってブラキシズムと確定するわけではありません。

歯の摩耗などにはほかの原因もあるため、気になる症状がある場合は歯科医院で確認しましょう。

歯のすり減り
歯のすり減り

治療は、ブラキシズムそのものを完全になくすことだけを目的とするのではなく、歯や修復物、顎の筋肉などへの負担を軽減し、症状や損傷を防ぐことを目的として行います。

歯ぎしりの治療法

ナイトガード(マウスピース)

睡眠時ブラキシズムによる歯や修復物への負担が懸念される場合には、就寝時にナイトガード(スプリント)を使用することがあります。

ナイトガードには、歯の摩耗や修復物の破損などから歯を保護する役割が期待できます。

ただし、ナイトガードを装着すれば睡眠時ブラキシズムそのものが治るとは限りません。また、顎関節症に対する効果も症状や病態によって異なります。

歯科医院で口腔内や噛み合わせを確認したうえで、適応を判断することが重要です。

TCHへの対応

日中に上下の歯を接触させる癖がある場合には、「必要のないときは歯を離す」ことに気付くための行動療法的な指導が行われることがあります。

通常、安静時には上下の歯は接触せず、わずかな空隙があります。

空隙の大きさには個人差があるため、「必ず約2mm離す」と決める必要はありません。

「唇は軽く閉じ、上下の歯は接触させない」状態を意識することがポイントです。

ボツリヌストキシン治療

ボツリヌストキシンを咬筋などに注射し、筋活動を一時的に抑える方法が用いられることがあります。

咬筋肥大や強い筋活動などに対して検討される場合がありますが、すべての歯ぎしり・食いしばりに適応となる治療ではありません。

効果は永続的ではなく、咀嚼力の低下や筋肉の変化などにも配慮する必要があるため、適応を慎重に判断します。

睡眠障害が疑われる場合

大きないびき、睡眠中の無呼吸、日中の強い眠気などがある場合には、閉塞性睡眠時無呼吸などが隠れていないか確認することも重要です。

睡眠関連疾患が疑われる場合には、歯科だけで判断せず、必要に応じて睡眠医療を扱う医療機関などと連携します。

乳幼児から学童期にかけて、睡眠中の歯ぎしりがみられることは珍しくありません。

子どもの歯ぎしりは心配?

成長とともに変化する場合もあり、歯ぎしりの音がするだけで直ちに治療が必要とは限りません。

ただし、

  • 歯の摩耗や破折が著しい
  • 顎や歯に痛みがある
  • 睡眠の質に問題がある
  • 強いいびきや無呼吸が疑われる
  • 日中の眠気などがある

といった場合には、歯科医院や必要に応じて医療機関への相談をおすすめします。

「子どもの歯ぎしりは発達のために必要」「ほとんどの場合は問題ない」と一律に判断せず、症状や歯の状態を確認することが大切です。

子供の歯ぎしり
子供の歯ぎしり

歯ぎしり・食いしばりは、睡眠中や起きている時間帯にみられる顎の筋活動です。

それ自体が必ずしも病気というわけではありませんが、程度によっては歯の摩耗や破折、修復物の破損、顎の筋肉の疲労などに関係することがあります。

また、ブラキシズムはストレスや噛み合わせなど一つの原因だけで説明できるものではなく、睡眠や心理的要因などさまざまな要素が関係すると考えられています。

朝起きたときに顎が疲れている、歯のすり減りやヒビが気になる、詰め物・被せ物が繰り返し壊れるなどの症状がある場合には、歯科医院で歯や顎の状態を確認してもらいましょう。

症状や口腔内の状態に応じて、ナイトガードによる歯の保護、日中の歯の接触習慣への対応、睡眠関連疾患の確認など、適切な対策を検討することが大切です。

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朝起きると顎がだるい、歯がしみる、肩こりや頭痛が続く――その症状は歯ぎしりや食いしばりが原因かもしれません。

歯ぎしりは睡眠中に無意識に行われることが多く、自覚がないまま歯の摩耗やヒビ、知覚過敏、顎関節症などを引き起こすことがあります。さらに、神経を取った歯では歯根破折のリスクが高まり、最悪の場合は抜歯が必要になることもあります。

江戸川区篠崎で歯ぎしりや食いしばりが気になる方は、早めの診断と対策が大切です。歯のすり減りや噛み合わせの状態を確認し、一人ひとりに合わせたナイトガード(マウスピース)の作製や噛み合わせのチェックを行います。

「朝起きると顎が疲れている」「家族から歯ぎしりを指摘された」「歯にヒビが入ったことがある」という方は、お気軽にご相談ください。大切な歯を長く守るために、早期発見・早期対応をおすすめします。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

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メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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