【動画 42秒】延長ブリッジのデメリット:実際の症例から学ぶリスク

延長ブリッジとは

延長ブリッジの仕組み

7番欠損の延長ブリッジ
7番欠損の延長ブリッジ

片側の支えが無いブリッジ

写真の延長ブリッジは、下顎5番・6番を土台としてポンティック(橋)を7番相当部に延長して作成したものです。

延長ブリッジとは、歯科治療におけるブリッジ治療の形状の一種で、一方にのみ支柱がある特殊な形式です。 通常のブリッジは両隣の歯を支持台として渡す橋のように人工歯を取り付けますが、延長ブリッジは支持台が片方だけという点が特徴です。

延長ブリッジが適応される事例

この症例では、下顎7番が欠損しているため上顎7番が下に降りて来て、噛み合わせがガタガタになってしまうことがあります。それを防ぐために、下顎7番の幅径の1/2~1/3の小さめのポンティックを延長したブリッジを作ったものです。

延長ブリッジは、特に奥歯が一本だけ必要な場合に適しており、入れ歯やインプラントを使用しない選択肢として注目されています。支台歯が健康でしっかりしている場合、延長ブリッジは有効な治療となります。

しかし、すべての症例に適応されるわけではありません。例えば、支台歯が虫歯や歯周病で弱っている場合や、噛み合わせの力が強すぎる場合には、不適応とされます。また、多くの欠損があり支台歯が不足している場合には、インプラントや部分入れ歯が推奨されることがあります。

患者さんにとって最適な治療法を選ぶには、歯科医師による診断が重要です。延長ブリッジが適しているかどうかは、口腔内の状況や生活習慣、予算などを総合的に考慮する必要があります。

延長ブリッジのメリット

延長ブリッジの最大のメリットは、人工歯が隣接する歯にしっかりと固定されるため、装着後は違和感が少なく、コストを抑えて治療を受けることができます。

さらに、取り外し式の入れ歯とは異なり、毎日の手入れが比較的簡単になり、口腔内のケアが楽な点も魅力です。また、延長ブリッジは治療期間が比較的短いため、忙しい方にも適しています。

このような特徴から、延長ブリッジは多くの患者さんにとって魅力的な治療法です。

延長ブリッジのデメリット

延長ブリッジの大きな欠点は、支台歯にかかる負担が非常に大きいことです。噛む力が支台歯のみに集中するため、支台歯が弱かったり、場合によっては歯根が破折する可能性があります。また、支台歯を削る必要があるため、健康な歯を犠牲にするポイントも欠点の一つです。

支台歯が歯髄炎となった症例

Bridge

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⑤⑥7の延長ブリッジ

写真は下顎5番・6番を支台にした延長ブリッジです。5番・6番とも健康な歯を削っています。

⑤⑥7の延長ブリッジ

Demerit

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5番が歯髄炎

5番が歯髄炎になったため神経を取る抜髄を行い根充が完了した状態です。治療はブリッジの冠を5番・6番間で切断し、5番の冠を除去して行っています。

歯髄炎になる原因は、生活歯を削った刺激によるものと、強い咬合圧が加わったことによるものなどが考えられます。

支台歯にフィステルが形成された症例

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⑤⑥7のインレー延長ブリッジ

写真は下顎5番・6番を支台にしたインレー延長ブリッジです。5番・6番とも健康な歯を削っていますが、インレータイプなので削る量は少なく済んでいます。

⑤⑥7のインレー延長ブリッジ

Demerit

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6番にフィステル形成

フィステルが形成されたため、ガッタパーチャーポイントをフィステルから挿入してレントゲン写真を撮ったものです。原因歯は6番と特定できました。

フィステルが出来る原因は延長ブリッジは接着が切れやすいため、6番のインレー内に虫歯菌が侵入して虫歯を作り根尖病巣を作ったか、過大な咬合圧により6番の神経が死んだかことなどが考えられます。

6番にフィステル形成

Demerit

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6番の根管治療

延長ブリッジの5番・6番間で切断して、6番のインレーを外し根管治療が完了したレントゲン写真です。矢印はガッタパーチャーポイントで根管内を密閉するため白く写ります。

6番の根管治療

支台歯が歯根破折した症例

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④⑤6の延長ブリッジ

延長ブリッジが噛むと痛いとのことで来院した症例です。レントゲン写真を撮ると5番に歯根膜腔の拡大(矢印)が認められます。

④⑤6の延長ブリッジ

Demerit

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5番の根管治療

5番が歯髄炎となっているため金属冠の咬合面に穴を開けて根管治療を行ない根充が完了した時点のレントゲン写真です。

5番の根管治療

Demerit

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5番が歯根破折

延長ブリッジがグラグラすると再来院した時のレントゲン写真です。5番に歯根破折(矢印)が起きています。延長ブリッジの4番・5番間で切断して5番を抜歯しました。

5番が歯根破折

支台歯に二次カリエスが発生した症例

Demerit

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6番の二次カリエス

⑤⑥7の延長ブリッジです。7番ポンティック直下は歯垢が溜まり易く、適切なプラークコントロールが出来なかったために起きた6番の二次カリエスです。

二次カリエスが大きくなり歯髄炎から歯根嚢胞を作るところまで問題が大きくなっています。

延長ブリッジの5番・6番間で切断して、6番の抜歯を余儀なくされた症例です。

延長ブリッジはメンテナンスが必要です。人工歯と支台歯の周囲に汚れが集中しやすく、虫歯や歯周病のリスクがあります。そのため、日々の歯磨きや定期的な歯科検診が重要です。

6番の二次カリエス

延長ブリッジを推奨しない理由

延長ブリッジは、歯の欠損を補う有効な治療法ですが、以下の理由から適用を避けるべき場合があります。


1. 支台歯への過剰な負担

延長ブリッジは片方だけの支台で人工歯を支える構造です。そのため、噛む力がすべて支台歯に集中しやすく、長期的には支台歯が弱ったり、最悪の場合は折れてしまうリスクがあります。特に奥歯のように噛む力が強い部分では、負荷が大きいため注意が必要です。


2. 支台歯を削る必要がある

延長ブリッジの装着には、健康な支台歯を削る処置が行われます。これにより歯の構造が弱くなる可能性があり、削られた歯が将来的に虫歯や歯周病になりやすくなります。健康な歯を守りたい場合には、他の治療法を選択したほうが良い場合があります。


3. 長期的な安定性が欠ける

延長ブリッジは構造上、従来のブリッジやインプラントと比べて長期的な耐久性の課題があります。


4. プラークがにつきやすい

人工歯と支台歯の間にはわずかな隙間ができることがあり、ここにプラークが集中しやすい傾向があります。これにより、虫歯や歯周病のリスクが増加し、口腔全体の健康状態に悪影響を及ぼすことがあります。


5. 他の選択肢と比較した際の欠点

インプラントや部分入れ歯と比較すると、延長ブリッジは噛む力や寿命の面で劣る場合があります。 インプラントは隣接する歯を削る必要がなく、独立して機能するため、長期的な安定性が高いとされます。また、取り外し可能な入れ歯は清掃が簡単で、プラークを防ぐ点で優れています。

保険適用となる延長ブリッジ

延長ブリッジは咬合圧との関係で複雑な計算式を元に保険適用の有無が決定されます。例えば、7番欠損では⑤⑥7の延長ブリッジは保険適用ですが、6番欠損では④⑤6の延長ブリッジは保険適用外です。4番欠損では4⑤⑥、②③4は保険適用です。5番欠損では5⑥⑦、③④5は保険適用です。

江戸川区篠崎で延長ブリッジのトラブルでお悩みの方へ

当院では、天然歯の保存にこだわります。極力抜かない・削らない・痛みの少ない低侵襲な治療が基本です。

延長ブリッジは片側の支えが無いブリッジで保険適用になる場合がありますが、プラークコントロール不良や土台の歯に大きな負荷を与えるためトラブルが多発します。東京都江戸川区篠崎で延長ブリッジに不具合が生じてお悩みの方はぜひ、お気軽に当院までご相談下さい。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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