歯科医院で治療の説明を受けた際に、「自費診療という選択肢もあります」と提案された経験はありませんか。

「なぜ費用の高い自費診療をすすめるのだろう」
「保険診療ではだめなのだろうか」

このような疑問を持つ方もいるでしょう。

歯科医院が自費診療について説明するのは、必ずしも高額な治療を選んでもらうことが目的ではありません。保険診療と自費診療では、使用できる材料や治療方法、費用などに違いがあるため、それぞれの特徴を知ったうえで、ご自身の希望に合った治療を選択していただくことが大切です。

この記事では、保険診療と自費診療の違いや、歯科医院が自費診療を選択肢として提案する理由について詳しく解説します。

保険診療は、公的医療保険制度に基づいて行われる診療です。

保険診療とは?

保険診療の特徴

  • 保険適用となる治療方法や材料が定められている
  • 診療報酬の点数が全国共通で定められている
  • 原則として患者さんは医療費の一部を負担する
  • 虫歯や歯周病、歯の欠損など、幅広い歯科疾患の治療に対応している

虫歯治療や歯周病治療、被せ物、入れ歯など、多くの歯科治療は保険診療で受けることができます。

一方、保険診療では適用できる材料や治療方法などに一定の基準があります。そのため、より細かな色調の再現や特定の材料・治療方法を希望する場合には、自費診療が選択肢となることがあります。

保険診療の硬質レジン前装冠の経年変化

写真では、前歯3本に硬質レジン前装冠が装着されています。

硬質レジン前装冠の経年変化
硬質レジン前装冠の経年変化

硬質レジン前装冠では、長期間の使用に伴ってレジン部分に着色や摩耗などが生じることがあります。また、使用状況によってはレジン部分が欠けたり剥離したりする場合もあります。

そのため、年月の経過とともに天然歯との色調の違いなどが目立ってくることがあります。

自費診療とは、公的医療保険が適用されず、治療費を患者さんが全額負担する診療です。

自費診療とは?

自費診療の特徴

  • 保険診療の適用範囲に限定されず材料や治療方法を選択できる
  • 審美性を重視した材料を選べる
  • 症例や希望に応じて治療方法を検討できる
  • 保険適用外の治療を選択できる

代表的な自費診療には、次のようなものがあります。

  • セラミック治療
  • ジルコニアを使用した補綴治療
  • インプラント
  • マウスピース矯正
  • 保険適用外の根管治療
  • ホワイトニング
  • ノンクラスプデンチャー

自費診療では、審美性や装着感、材料の特性など、患者さんが重視する条件に応じて治療方法を検討できることが特徴です。

ただし、「自費診療だから必ず長持ちする」「保険診療より必ず優れている」というわけではありません。治療結果は、歯や歯周組織の状態、治療方法、噛み合わせ、セルフケア、定期的なメインテナンスなど、さまざまな要因に左右されます。

1. 症例に応じて材料の選択肢を広げられる

被せ物や詰め物の治療後には、材料の種類にかかわらず、二次カリエス(治療した歯に再び生じる虫歯)が起こる可能性があります。

二次カリエスの発生には、補綴物の適合状態や接着、口腔衛生状態、食生活、唾液の状態など、さまざまな要因が関係します。

保険診療の金属冠の中に生じた二次カリエス

写真は、金属冠を除去した際に内部に虫歯が認められた症例です。

保険診療の金属冠の中に二次カリエス
保険診療の金属冠の中に二次カリエス

ただし、金属冠だから二次カリエスが起こったとは限りません。被せ物を装着した歯では、材料を問わず、境目の清掃状態や補綴物の適合、経年的な変化などによって二次カリエスが生じることがあります。

セラミックやジルコニアなどには、それぞれ異なる材料特性があります。

  • 口腔内で変色や変形が比較的起こりにくい
  • 表面を滑沢に仕上げることができる
  • 審美性に配慮した修復が可能

ただし、セラミックやジルコニアを使用すれば虫歯の再発を防げるわけではありません。

材料だけでなく、適切な診断・治療、セルフケア、定期的なメインテナンスを組み合わせることが、治療した歯を長く維持するために重要です。

2. より自然な見た目を目指せる

前歯など目立つ部分の治療では、機能だけでなく見た目を重視する方もいます。

保険診療でも白い材料を使用できるケースがありますが、適用条件や使用できる材料などが定められています。

保険の前装冠

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一方、自費診療では、オールセラミックやジルコニアなどを選択でき、症例に応じて天然歯との色調や透明感の調和を細かく検討することができます。

特に前歯では、周囲の歯との色調や形態の調和を重視する場合、自費診療が選択肢の一つとなります。

ただし、仕上がりは材料だけで決まるものではなく、歯の状態、支台歯の色、歯ぐきの状態、使用する材料、技工方法などによって異なります。

3. 金属を使用しない治療を選択できる

歯科治療に使用される金属の一部は、口腔内で腐食などによって金属イオンが溶出する可能性があります。

金属アレルギーが疑われる場合には、原因となる金属の特定を含め、必要に応じて皮膚科などと連携して診断することが重要です。

セラミックやジルコニアなど、金属を使用しない材料を選択することで、歯科用金属への曝露を避けることができます。

ただし、皮膚炎や口内炎、舌の違和感などにはさまざまな原因があるため、これらの症状があるからといって歯科用金属アレルギーとは限りません。

4. 保険適用外の治療方法を選択できる

歯科医療には、原則として保険適用とならない治療があります。

代表的なものとして、

  • インプラント
  • マウスピース型矯正装置による矯正治療
  • ホワイトニング
  • 一部の根管治療や補綴治療

などがあります。

こうした治療には、それぞれ異なる目的や特徴があります。

患者さんの口腔内の状態や希望によっては、保険診療以外の治療方法も含めて検討することで、選択肢が広がる場合があります。

5. 使用する材料や治療工程の選択肢を広げられる

保険診療では、診療報酬制度に基づいて適用できる治療方法や材料などが定められています。

自費診療ではこうした保険診療上の制限を受けないため、症例や治療目的に応じて、使用する材料や機器、治療工程などを選択できます。

たとえば、

  • 拡大鏡やマイクロスコープを活用した治療
  • 必要に応じたCTによる診査・診断
  • 口腔内スキャナーや各種印象材を用いた型取り
  • 症例に応じた歯科技工材料や製作方法の選択

などが考えられます。

ただし、CTや拡大視野による治療などは、治療内容や施設によって保険診療でも行われる場合があります。

そのため、「自費診療だから精密、保険診療だから精密ではない」という単純な違いではありません。

自費診療の特徴は、保険診療の適用範囲にとらわれず、治療目的や患者さんの希望に合わせて材料や治療方法の選択肢を広げられることにあります。

歯の色は、加齢による変化や飲食物による着色、歯の内部の色調など、さまざまな要因によって変化します。

歯科医院で行うクリーニングでは、歯石やプラーク、表面に付着した着色などを除去できますが、歯そのものの色調を薬剤によって明るくする処置とは異なります。

ホワイトニングは、過酸化水素や過酸化尿素などを含む薬剤を使用し、歯の色調を明るくすることを目的とした方法です。

1枚目:ホワイトニング前の歯
1枚目:ホワイトニング前の歯
2枚目:ホワイトニング後の歯
2枚目:ホワイトニング後の歯

効果の程度には個人差があり、詰め物や被せ物などの人工物はホワイトニングでは白くなりません。

審美目的のホワイトニングは公的医療保険の適用外となるため、自費診療で行われます。

インプラントは、失った歯を補う治療方法の一つです。

顎の骨にインプラント体を埋入し、その上に人工歯を装着して噛む機能や見た目の回復を目指します。

1枚目:インプラントの埋入手術
1枚目:インプラントの埋入手術
2枚目:埋入直後のパノラマレントゲン
2枚目:埋入直後のパノラマレントゲン

インプラント治療では、症例に応じて、

  • CTによる画像診断
  • インプラントの埋入位置の検討
  • サージカルガイドの使用
  • 骨造成などの追加処置

が行われる場合があります。

インプラント周囲には神経や血管、上顎洞などの重要な解剖学的構造があるため、事前に骨の状態や周囲組織との位置関係を十分に確認したうえで治療計画を立てることが重要です。

インプラント治療は、一部の例外を除いて公的医療保険の適用外となるため、一般的には自費診療として行われます。

歯髄が壊死した歯では、歯の内部で生じる変化などによって、時間の経過とともに歯冠の色が暗くなることがあります。

変色した歯に対しては、歯の状態や変色の原因などを確認したうえで、ウォーキングブリーチなどの漂白処置や、ラミネートベニア、クラウンなどを検討することがあります。

オールセラミッククラウンは、金属を使用せずセラミックで製作する被せ物です。

1枚目:歯髄壊死による前歯の変色
1枚目:歯髄壊死による前歯の変色
2枚目:オールセラミックによる自然な色調の回復
2枚目:オールセラミックによる自然な色調の回復

色調や透明感を調整しやすいため、前歯など審美性を重視する部位では選択肢の一つとなります。また、金属を使用しないため、金属部分が歯ぐき付近から見えることはありません。

ただし、すべての変色歯にクラウンが適しているわけではありません。

残っている歯質の量や歯の状態、変色の程度などを確認し、できるだけ歯質を保存できる治療方法を含めて検討することが重要です。

自費診療は公的医療保険が適用されないため、一般的に保険診療より患者さんの費用負担が大きくなります。

一方で、保険診療の適用範囲に限定されず、希望や症例に応じて材料や治療方法を選択できるという特徴があります。

たとえば、

  • より自然な見た目を目指したい
  • 金属を使用しない材料を選びたい
  • 保険適用外の治療方法を検討したい
  • 材料や治療方法について幅広い選択肢から検討したい

といった希望がある場合には、自費診療が選択肢となることがあります。

ただし、自費診療だから必ず長持ちするわけではなく、再治療が不要になるわけでもありません。

治療後の経過は、治療する歯の状態や噛み合わせ、口腔衛生状態、生活習慣、メインテナンスなどにも左右されます。

費用だけでなく、それぞれの治療方法のメリット・デメリットを理解したうえで選択することが大切です。

自費診療をすすめられても、その場で決める必要はありません

自費診療を提案されると、「断りにくい」と感じる方もいるかもしれません。

歯科医院では、保険診療と自費診療の両方が選択可能な場合、それぞれについて説明を受けたうえで検討することができます。

歯科医師には、

  • どのような治療方法があるのか
  • それぞれにどのようなメリット・デメリットがあるのか
  • 費用はいくらかかるのか
  • 治療期間や通院回数はどの程度か
  • どのようなリスクや注意点があるのか

などを確認するとよいでしょう。

説明を聞いたうえで、希望や予算、治療に求めることを考慮し、納得できる治療方法を選択することが大切です。

歯科医院で自費診療が提案されるのは、保険診療では選択できない材料や治療方法を含め、患者さんの希望に応じた選択肢を提示するためです。

自費診療では、

  • 審美性を重視した材料
  • 金属を使用しない材料
  • 保険適用外の治療方法
  • 症例や希望に応じた材料・治療工程

などを選択できる場合があります。

一方で、「自費診療なら必ず長持ちする」「虫歯が再発しない」「保険診療より優れている」というわけではありません。

保険診療にも自費診療にも、それぞれ適応やメリット・デメリットがあります。

大切なのは「保険だから良い」「自費だから良い」と一律に判断するのではなく、ご自身の歯の状態や希望、費用などを踏まえ、それぞれの違いについて十分な説明を受けて選択することです。

自費診療をすすめられて迷っている場合には、「なぜこの治療が自分に適しているのか」「保険診療を選んだ場合はどうなるのか」まで歯科医師に確認し、納得したうえで治療を決めましょう。

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治療方法や材料、費用にはそれぞれ違いがあります。メリット・デメリットを比較し、ご希望やお口の状態に合った治療を一緒に考えます。

「長持ちする治療を受けたい」「銀歯を白くしたい」「再治療をできるだけ避けたい」とお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

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日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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