- 1. 歯周病治療後に歯が長く見えるのはなぜ?
- 2. 正面観
- 2.1. 重度歯周病治療後の口腔内所見
- 3. 右側面観・左側面観
- 3.1. 上顎臼歯部の歯肉退縮と歯根面露出
- 3.2. 上顎臼歯部のT-FIXによる暫間固定
- 4. 上顎咬合面観
- 4.1. 臼歯部の動揺に対するワイヤー併用暫間固定
- 5. 下顎咬合面観
- 5.1. 動揺が認められた前歯部を暫間固定
- 6. 重度歯周病では治療後のプラークコントロールが重要
- 7. SPT(歯周病安定期治療)とは?
- 8. まとめ
- 8.1. 関連記事
- 9. 歯周病治療後の歯ぐきの変化が気になる方へ
- 10. 筆者・院長
- 10.1. 深沢 一
- 10.1.1. メッセージ

重度歯周病の治療後、「歯ぐきが下がった」「歯が以前より長くなったように見える」と感じることがあります。
歯周病によって歯を支える歯槽骨が失われている場合、歯周治療によって歯肉の炎症や腫れが改善すると、歯肉退縮や歯根面の露出が目立つことがあります。
そのため、治療後に歯が長く見えるようになったからといって、それだけで歯周病が悪化したとは限りません。一方で、歯肉退縮には歯周病以外の要因が関係することもあるため、歯周ポケットの深さや出血の有無、歯の動揺、プラークの付着状況などを継続して確認することが重要です。
今回ご紹介する症例では、重度歯周病に対する治療後、歯肉退縮や歯根面の露出が認められています。動揺のある歯には暫間固定を行い、セルフケアと定期的な歯周管理を継続しています。
歯周病治療後に歯が長く見えるのはなぜ?
歯周病が進行すると、歯肉に炎症が起こり、赤みや腫れ、歯周ポケットの形成などがみられることがあります。
歯周基本治療などによって炎症が改善すると、腫れていた歯肉が引き締まり、それまで歯肉に覆われていた歯根面が露出することがあります。

特に、歯周病によって歯槽骨の吸収が進んでいる場合には、治療後に歯肉退縮が目立ち、
- 歯が以前より長く見える
- 歯と歯の間にすき間ができたように見える
- 歯根面が露出する
といった変化がみられることがあります。
このような歯肉退縮は、歯周治療によって炎症や腫脹が改善したことに伴って現れる場合があります。
ただし、歯肉退縮そのものを「歯周病治療が成功した証拠」と判断することはできません。
歯周病の治療効果や現在の状態については、歯肉の見た目だけでなく、歯周ポケットの深さ、プロービング時の出血(BOP)、歯の動揺度、プラークの付着状況、必要に応じてX線検査などを行い、総合的に評価します。
正面観
重度歯周病治療後の口腔内所見

正面観では、全体的に歯肉退縮と歯根面の露出が認められます。
歯周病によって歯槽骨が失われている場合、歯周治療によって歯肉の腫脹が改善すると、それまで目立たなかった歯根面の露出が明瞭になることがあります。
写真上では、歯肉に目立った発赤や腫脹はみられず、歯面へのプラーク付着も比較的少ない状態です。
ただし、**口腔内写真だけで歯周組織に炎症がないことや、歯周病が完全に安定していることを判断することはできません。**定期的に歯周ポケットやBOPなどを確認しながら経過をみる必要があります。
本症例では、下顎前歯部に動揺が認められたため、スーパーボンドを用いた暫間固定を行っています。
暫間固定は、動揺している歯を隣接する歯と連結することで、咀嚼時などに生じる歯の動きを抑え、患者さんの不快感や噛みにくさの軽減を図る目的で行うことがあります。
右側面観・左側面観
上顎臼歯部の歯肉退縮と歯根面露出


側面観では、上顎臼歯部を中心に歯肉退縮と歯根面の露出が認められます。
歯周病によって歯槽骨や歯周組織の支持が失われている部位では、歯周治療によって炎症や腫脹が改善したあとに、歯根面の露出が目立つことがあります。
写真上では、歯肉に著しい発赤や腫脹は目立ちません。
しかし、歯周病の現在の活動性を口腔内写真だけから判断することはできません。
歯周病が安定した状態にあるかどうかは、プラークの付着状況だけでなく、
- 歯周ポケットの深さ
- プロービング時の出血(BOP)
- 排膿の有無
- 歯の動揺
- 歯槽骨の状態
- 経時的な変化
などを確認して評価します。
上顎臼歯部のT-FIXによる暫間固定
本症例では、上顎臼歯部にも動揺が認められたため、T-FIXによる暫間固定を行っています。
暫間固定は、動揺している複数の歯を連結して安定させる方法です。
症例によっては、
- 歯の動揺を抑える
- 咀嚼時の不快感を軽減する
- 複数の歯を連結して機能させる
- 歯周治療中や治療後の咀嚼機能を補助する
といった目的で行われます。
ただし、暫間固定そのものが歯周病の原因を取り除いたり、失われた歯槽骨を回復させたりする治療ではありません。
基本となるのはプラークコントロールや歯周基本治療などによる炎症のコントロールであり、暫間固定は必要に応じて行う補助的な処置です。
また、固定装置の周囲はプラークが残りやすくなることがあるため、適切なセルフケアと定期的な管理が重要になります。
上顎咬合面観
臼歯部の動揺に対するワイヤー併用暫間固定

上顎咬合面観では、左右の臼歯部にワイヤーを用いた固定が確認できます。
本症例では、歯周病によって歯の支持組織が減少し、臼歯部に動揺が認められたため、ワイヤーとスーパーボンドを用いて複数の歯を連結しています。
このような暫間固定は、動揺している歯を複数歯で連結することによって歯の動きを抑え、咀嚼時の安定性や不快感の改善を図る目的で行うことがあります。
一方、歯に加わる力の影響は、歯周組織の状態や噛み合わせ、固定する歯の本数や位置などによって異なります。
そのため、「固定すれば咬合力が均等に分散され、歯周組織を保護できる」と一律に考えるのではなく、個々の歯の状態や噛み合わせを確認しながら適応を判断することが重要です。
また、固定後も歯周病の管理が不要になるわけではありません。固定装置周囲を含めたプラークコントロールと定期的な歯周検査を継続します。
下顎咬合面観
動揺が認められた前歯部を暫間固定

下顎咬合面観では、前歯部に暫間固定が行われています。
本症例では、下顎前歯部に動揺が認められたため、状態に応じて必要な範囲を固定しています。
暫間固定を行う範囲は、単純に「骨吸収が多い・少ない」だけで決定するものではありません。
歯の動揺度や残存する歯周組織の状態、噛み合わせ、歯列、清掃性などを総合的に評価して判断します。
固定を行った歯についても、歯周ポケットやBOP、動揺度、プラークの付着状況などを定期的に確認し、必要に応じて固定方法や管理方法を見直します。
重度歯周病では治療後のプラークコントロールが重要
歯周病は、治療によって状態が改善したあとも、再発・進行する可能性があります。
特に重度歯周病では、歯槽骨などの支持組織がすでに大きく失われていることがあるため、治療後も継続して歯周組織の状態を管理することが重要です。
毎日のセルフケアでは、
- 歯ブラシによるブラッシング
- 歯間ブラシやデンタルフロスなどによる歯間清掃
- 歯肉退縮によって露出した歯根面の清掃
- 固定装置周囲の丁寧な清掃
などを、口腔内の状態に合わせて行います。
歯肉退縮によって露出した歯根面は、歯冠部を覆うエナメル質とは異なり、主にセメント質や象牙質からなるため、根面う蝕や知覚過敏にも注意が必要です。
歯科医院では、歯周組織の状態やプラークの付着状況などを定期的に確認し、必要なケアを行います。
SPT(歯周病安定期治療)とは?
歯周治療後に病状が安定している場合には、歯周組織の状態を維持するためにSPT(Supportive Periodontal Therapy:歯周病安定期治療)を行うことがあります。
SPTでは、患者さんの状態に応じて、
- 歯周ポケットの確認
- プロービング時の出血(BOP)の確認
- プラークコントロールの評価
- 必要な部位の歯面清掃
- 咬合や歯の動揺の確認
- セルフケア方法の確認・指導
などを行います。
ただし、すべての患者さんに一律にSPTを行うという意味ではありません。
歯周治療後の状態によって、SPTとして継続的な管理を行う場合もあれば、メインテナンスとして定期的な管理を行う場合もあります。
いずれの場合も、歯周病治療が終了したあとも定期的に口腔内の状態を確認し、再発や進行の兆候を早期に発見することが大切です。
まとめ
重度歯周病の治療後には、歯肉の炎症や腫れが改善することに伴って歯肉退縮が目立ち、「歯ぐきが下がった」「歯が長くなった」と感じることがあります。
そのため、治療後に歯根面が見えるようになったことだけを理由に、歯周病が悪化したと判断することはできません。
一方で、歯肉退縮そのものが「歯周病が治った証拠」というわけでもありません。
歯周病の状態は、歯肉の見た目だけでなく、歯周ポケット、BOP、歯の動揺、プラークの付着状況、必要に応じてX線所見などを確認しながら総合的に評価します。
本症例では、歯肉退縮や歯根面の露出が認められるほか、動揺のある歯に対して暫間固定を行い、セルフケアと定期的な歯周管理を継続しています。
重度歯周病では、治療によって炎症をコントロールしたあとも、残っている歯周組織をできるだけ良好な状態に維持することが重要です。
歯ぐきが下がったことだけを過度に心配するのではなく、現在の歯周組織がどのような状態にあるのかを定期的に確認し、適切なセルフケアと歯科医院での管理を続けていきましょう。
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歯周病治療後の歯ぐきの変化が気になる方へ

歯ぐきが下がった、歯が長く見える、歯が揺れるなど、治療後のお口の変化が気になる方はご相談ください。歯周組織の状態を確認し、セルフケアから定期的な歯周管理まで、お口の状態に合わせてサポートします。
「歯ぐきが下がった」「歯がグラグラする」「歯周病を繰り返している」とお悩みの方はご相談ください。
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。





