- 1. 症例概要
- 2. なぜ歯周病治療後に歯ぐきが下がって見えるのか?
- 2.1. 炎症や腫れが改善して歯肉が引き締まる
- 2.2. 歯周病による歯槽骨の吸収も関係する
- 3. メタルボンドの根元が黒く見える原因
- 3.1. 1.クラウン辺縁や金属部分が露出している
- 3.2. 2.歯肉を通して暗く見える
- 3.3. 3.金属粒子による歯肉の着色
- 3.4. 4.支台歯が暗く見えている
- 4. 歯肉退縮によって起こる審美的な問題
- 4.1. ブラックマージン
- 4.2. ブラックトライアングル
- 5. メタルボンド周囲の黒ずみ・歯肉退縮に対する治療方法
- 5.1. クラウンを再製作する
- 5.2. 歯周形成外科を検討する
- 5.3. ダイレクトボンディングなどで隙間を目立ちにくくする
- 6. 歯周病の再発を防ぐことが大切
- 7. まとめ
- 7.1. 関連記事
- 8. 前歯の根元の黒ずみ・歯ぐき下がりが気になる方へ
- 9. 【動画】ホワイトスポットをアイコンで治す
- 10. 【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法
- 11. 筆者・院長
- 11.1. 深沢 一
- 11.1.1. メッセージ

前歯の差し歯として使用されるメタルボンドクラウンは、金属製のフレームに陶材(セラミック)を焼き付けた補綴物です。金属による強度と、セラミックによる審美性を兼ね備えていることから、長年にわたり使用されてきました。
しかし、装着後に歯周病が進行したり、歯周病治療によって歯肉の炎症や腫れが改善したりすると、以前より歯ぐきが下がって見えることがあります。その結果、クラウンと歯ぐきの境目や歯根面などが露出し、前歯の見た目が気になる場合があります。
今回の症例では、前歯部に装着されたメタルボンド周囲に歯肉退縮が認められ、歯頚部の黒い部分や歯と歯の間の隙間が目立つようになったケースをご紹介します。
症例概要

メタルボンド周囲に認められる歯肉退縮
上顎前歯部にメタルボンドが装着されています。
赤矢印で示した部分では歯肉退縮が認められ、クラウンと歯ぐきの境目や歯根面が露出しています。
このようなケースでは、口腔内の状態によって次のような変化がみられることがあります。
- 歯肉退縮による歯根面の露出
- クラウン辺縁や金属部分が見えることによる歯頚部の黒いライン
- 支台歯や歯根面の色が目立つ
- 歯と歯の間に生じる三角形の隙間(ブラックトライアングル)
黒く見える原因は一つとは限りません。補綴物の状態や支台歯の色、歯肉の厚み、金属による着色などを確認し、原因を見極めることが大切です。
なぜ歯周病治療後に歯ぐきが下がって見えるのか?

炎症や腫れが改善して歯肉が引き締まる
歯周病によって歯肉に炎症が起こると、赤みや腫れがみられることがあります。
歯周病治療によってプラークや歯石などの原因を取り除き、炎症が改善すると、腫れていた歯肉が引き締まります。その結果、治療前と比べて歯ぐきが下がったように見えることがあります。
これは、必ずしも治療によって歯周組織が悪化したことを意味するものではありません。
一方で、もともと歯周病による歯槽骨の吸収が進んでいる場合には、炎症が改善した後に歯肉退縮や歯と歯の間の隙間が目立つことがあります。
歯周病による歯槽骨の吸収も関係する
歯周病が進行すると、歯を支えている歯槽骨や歯周組織が破壊されることがあります。
歯肉の位置や形態は、歯槽骨の高さだけで決まるわけではなく、歯槽骨の状態、歯肉の厚みや形態、歯の位置、歯と歯の接触関係など、さまざまな要因の影響を受けます。
そのため、歯周病によって歯槽骨の吸収が進んでいる場合、治療によって炎症が改善しても、失われた組織の状態によっては歯肉退縮やブラックトライアングルが残ることがあります。
特に進行した歯周病では、治療後に歯ぐきのラインや前歯の見た目が変化する可能性があります。
メタルボンドの根元が黒く見える原因
メタルボンド周囲が黒く見える場合、必ずしも「中の金属が透けている」とは限りません。

いくつかの原因が考えられます。
1.クラウン辺縁や金属部分が露出している
メタルボンドは、一般的に金属製のフレームの表面に陶材を焼き付けて作製します。
歯肉退縮が起こると、それまで歯ぐきに隠れていたクラウンの辺縁や金属部分が露出し、歯と歯ぐきの境目が黒っぽく見えることがあります。
このような歯頚部の黒いラインは、一般に「ブラックマージン」と呼ばれることがあります。
2.歯肉を通して暗く見える
歯肉が薄い場合には、金属を使用した補綴物や暗い色調の支台歯の影響によって、歯肉周囲が暗く見えることがあります。
そのため、黒っぽく見えているからといって、必ず金属そのものが露出しているとは限りません。
3.金属粒子による歯肉の着色
金属を使用した歯科治療の後、金属由来の微細な粒子が歯肉などの軟組織に入り込み、青灰色から黒っぽい色調に見えることがあります。
このような金属由来の色素沈着は、一般に「メタルタトゥー」と呼ばれることがあります。
ただし、メタルボンドを長期間使用すれば必ず起こるものではありません。また、歯肉の黒ずみにはメラニン色素など別の原因もあるため、見た目だけで判断することはできません。
4.支台歯が暗く見えている
神経を取る治療(抜髄や根管治療)を受けた歯では、歯質の色調が変化して暗く見えることがあります。
また、金属製の土台(メタルコア)が使用されている場合には、その影響で歯頚部付近が暗く見えることもあります。
したがって、メタルボンド周囲の黒ずみを治療する場合には、クラウンだけでなく支台歯や土台、歯肉の状態まで確認することが重要です。
歯肉退縮によって起こる審美的な問題
ブラックマージン
クラウンと歯肉の境目に黒っぽいラインが見える状態は、ブラックマージンと呼ばれることがあります。
歯肉退縮によってメタルボンドの金属部分やクラウン辺縁が露出した場合などに目立つことがあります。
特に上顎の前歯は笑ったときに見えやすいため、わずかな色調の違いでも気になる場合があります。
ブラックトライアングル
歯と歯の間を埋めている歯肉(歯間乳頭)が十分に存在しないと、歯と歯の間に三角形の隙間が生じることがあります。
これを「ブラックトライアングル」と呼びます。
歯周病による歯槽骨の吸収や歯肉退縮のほか、歯の形態や歯並び、歯と歯の接触点の位置など、さまざまな要因が関係します。
ブラックトライアングルが生じると、見た目が気になるだけでなく、部位によっては食べ物が入りやすくなることもあります。
メタルボンド周囲の黒ずみ・歯肉退縮に対する治療方法

原因や歯周組織の状態に応じて治療方法を検討します
治療方法は、黒く見える原因や歯肉退縮の程度、歯槽骨の状態、現在のクラウンの適合状態などによって異なります。
クラウンを再製作する
現在のクラウンの適合や形態に問題がある場合や、歯肉退縮によってクラウン辺縁が目立っている場合には、補綴物の再製作を検討することがあります。
前歯の審美性を重視する場合には、症例に応じて金属を使用しないセラミッククラウンやジルコニアを使用したクラウンなどが選択肢になります。
金属を使用しない補綴物には、金属色の露出によるブラックマージンを避けやすいという利点があります。
ただし、クラウンを交換すれば歯肉退縮そのものが治るわけではありません。
また、支台歯の状態、噛み合わせ、歯周組織の状態などによって適した材料は異なるため、審美性だけでなく機能面も含めて選択することが重要です。
歯周形成外科を検討する
歯肉退縮の状態によっては、結合組織移植術などの歯周形成外科を検討する場合があります。
自分の組織を移植することで歯肉の厚みを増したり、露出した歯根面の被覆を図ったりする治療です。
ただし、すべての歯肉退縮を元の位置まで回復できるわけではありません。
歯槽骨や歯間部の組織が大きく失われている場合などは、完全な根面被覆が難しいことがあります。特にブラックトライアングルについては、歯間部の骨や歯肉の状態によって改善に限界があります。
そのため、歯周形成外科が適しているかどうかを十分に診査したうえで治療を検討します。
ダイレクトボンディングなどで隙間を目立ちにくくする
ブラックトライアングルの状態によっては、コンポジットレジンを歯に接着して歯の形態を調整し、隙間を目立ちにくくできる場合があります。
ただし、すべてのブラックトライアングルに適応できるわけではありません。
隙間の大きさや歯の形態、噛み合わせ、清掃性などを考慮して治療方法を判断します。
また、場合によっては矯正治療や補綴治療などを組み合わせて改善を図ることもあります。
歯周病の再発を防ぐことが大切
歯周病によって失われた歯槽骨や歯周組織は、治療を行っても元の状態まで完全に回復させることが難しい場合があります。
そのため、審美的な治療だけでなく、歯周病の進行や再発を防ぐことが重要です。
日頃から次のようなケアを続けましょう。
- 歯と歯ぐきの境目を意識した丁寧な歯磨き
- 歯間ブラシやデンタルフロスによる歯間部の清掃
- 定期的な歯周組織のチェック
- 必要に応じた歯科医院でのメインテナンス
- 歯周病の早期発見と適切な治療
特にクラウンやブリッジが入っている部分は、形態によってプラークが残りやすい場所が生じることがあります。
補綴物を長く使用するためにも、歯だけではなく周囲の歯肉や歯槽骨を良好な状態に保つことが大切です。
まとめ
前歯のメタルボンド周囲では、歯周病による歯槽骨の吸収や歯肉退縮、歯周病治療による炎症・腫脹の改善などによって、クラウンと歯ぐきの境目が以前より目立つことがあります。
また、根元が黒く見える原因には、クラウン辺縁や金属部分の露出、歯肉を通して見える金属や支台歯の色、金属由来の色素沈着など、複数の可能性があります。
そのため、「黒い部分が気になるからクラウンを交換する」と単純に判断するのではなく、まず歯周病の状態や歯肉退縮の程度、歯槽骨、支台歯、補綴物の状態などを詳しく確認することが大切です。
審美的な改善を希望する場合には、原因や口腔内の状態に応じて、セラミックやジルコニアを使用したクラウンへの再治療、歯周形成外科、ダイレクトボンディングなどを検討することがあります。
前歯の差し歯の根元が黒く見える、以前より歯ぐきが下がってきた、歯と歯の間の隙間が気になるという方は、まず歯科医院で原因を確認し、ご自身の状態に適した治療方法について相談しましょう。
関連記事
前歯の根元の黒ずみ・歯ぐき下がりが気になる方へ

黒く見える原因は、金属の露出だけとは限りません。
歯ぐき・支台歯・クラウン・歯周組織の状態を確認し、一人ひとりに適した改善方法をご提案します。
見た目の改善と歯の長期保存を両立した治療をご希望の方は、お気軽にご相談ください。
【動画】ホワイトスポットをアイコンで治す
【動画】初期虫歯COを削らずに自分で治す方法
筆者・院長

深沢 一
Hajime FUKASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。





