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見た目に異常がなくても「舌痛症」の可能性があります

舌がヒリヒリする、ピリピリしびれる、焼けるように痛い――。
鏡で見ても傷やできものがないのに、舌の痛みが続く場合は「舌痛症」の可能性があります。

舌痛症は、口の中に明らかな異常が見られないにもかかわらず、舌や口腔内に慢性的な痛みや灼熱感が続く状態です。特に中高年以降の女性に多くみられ、食事中や会話中は痛みが軽くなることもあります。

「異常なし」と言われても、痛みが続くことは珍しくありません。
舌がんや口腔カンジダ症、ドライマウス、貧血、糖尿病など、ほかの病気が隠れていないかを確認し、原因に応じた対応を行うことが大切です。

次のような症状が続いている場合、舌痛症や口腔内のトラブルが関係している可能性があります。

  • 舌先がヒリヒリする
  • 舌がピリピリしびれる
  • 焼けるような痛みがある
  • 舌に異常がないのに痛みだけが続く
  • 午後から夕方にかけて痛みが強くなる
  • 食事中や会話中は痛みが気になりにくい
  • 歯科医院や病院で「異常なし」と言われた
  • 更年期以降に症状が出てきた
  • ストレスや不安が強い時期に悪化する
  • 口が乾きやすい

これらに複数当てはまる場合は、自己判断せず、一度歯科医院や口腔外科で診察を受けることをおすすめします。

舌痛症とは、舌に痛みや灼熱感があるにもかかわらず、目で見てわかる傷・潰瘍・腫れなどがはっきり認められない状態を指します。

代表的な症状は、以下のようなものです。

  • ヒリヒリする
  • ピリピリする
  • チクチクする
  • 焼けるように痛い
  • 舌がしびれる感じがする
  • 口の中が乾く感じがする
  • 味がわかりにくい、苦味を感じる

医学的には「Burning Mouth Syndrome」と呼ばれ、慢性的な口腔顔面痛の一つとされています。見た目に異常がないため、周囲に理解されにくく、患者さんご本人にとっては大きなストレスになりやすい症状です。

舌痛症は、大きく分けて「一次性舌痛症」と「二次性舌痛症」に分類されます。

一次性舌痛症

検査をしても、舌や口の中に明らかな原因が見つからないタイプです。

神経の過敏化、脳の痛みの感じ方の変化、ストレス、自律神経の乱れ、更年期以降のホルモンバランスの変化などが関係していると考えられています。

「気のせい」ではなく、痛みを感じる神経の働きが敏感になっている状態です。

二次性舌痛症

何らかの原因によって舌の痛みが起こっているタイプです。

例えば、次のような原因があります。

  • 合わない入れ歯
  • 尖った歯や被せ物による刺激
  • 口腔カンジダ症
  • ドライマウス
  • 口内炎
  • ビタミンB群・鉄・亜鉛の不足
  • 糖尿病
  • 貧血
  • 薬の副作用

二次性舌痛症では、原因を取り除くことで症状が改善することがあります。

舌の痛みがある場合、まず大切なのは「ほかの病気が隠れていないか」を確認することです。

特に次のような病気は、舌痛症と似た症状を起こすことがあります。

病気主な特徴
舌がん治りにくい潰瘍、しこり、出血、硬さがある
口内炎白っぽい潰瘍ができ、食事でしみる
口腔カンジダ症白い苔、赤み、ヒリヒリ感が出る
扁平苔癬白いレース状の模様やただれが見られる
地図状舌舌の表面に地図のような模様が出る
ドライマウス口の乾き、舌の痛み、話しにくさがある
貧血・栄養不足舌の粘膜が敏感になり、痛みが出やすい

舌痛症は、これらの疾患を除外したうえで診断されることが多い病気です。

カンジダ性舌痛症の場合、紅斑性(萎縮性)カンジダ症が原因となることがありますが、舌の痛みに見合うような明らかな器質的所見が認められないことが多くあります。
そのため、舌痛症の原因特定にはつながらないこともしばしばあります。

口腔カンジダ症による舌・頬粘膜の白苔と舌痛症の関連
口腔カンジダ症による舌・頬粘膜の白苔と舌痛症の関連

舌や頬粘膜に白色の付着物(白苔)がみられる口腔カンジダ症の症例です。カンジダ菌の増殖により粘膜に炎症が生じ、見た目の変化だけでなく、ヒリヒリ・ピリピリとした舌の痛み(カンジダ性舌痛症)を伴うことがあります。
義歯の使用、免疫力の低下、口腔乾燥などが発症の一因となるため、原因に応じた抗真菌治療と口腔環境の改善が重要です。

カンジダ関連舌痛(神経性)

口腔カンジダ症の治療によってカンジダ菌が消失しても、舌痛症を訴える患者は少なくありません。
これは多くの場合、「カンジダ関連舌痛(Phantom pain)」と呼ばれる現象であり、脳に記憶された過去の痛みが簡単には消えないことが原因と考えられます。

たとえば、事故で右腕を失い強い痛みを経験した人が、腕がないにもかかわらず「右手の指先が痛む」と感じる現象とよく似ています。

つまり、これは神経性の舌痛症であると言えるでしょう。

口腔カンジダ症が舌痛症を起こすメカニズム

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ドライマウス発症

ドライマウスで唾液の分泌が減少すると自浄作用が低下すると共に抗菌物質の減少します。

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カンジダ菌が増殖

カンジダ菌は、口腔正常細菌叢の一種で産道感染をするので殆どの人の口の中にいます。唾液の分泌が減少すると、口腔内に存在するカンジダ菌が増殖することで起こる日和見感染症が発症します。

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紅斑性(萎縮性)カンジダ症

カンジタ症には肥厚性と紅斑性(萎縮性)の2種類がありますが、ドライマウスで多いのは後者です。紅斑性(萎縮性)カンジダ症は口の粘膜にポツンポツンと小さな赤い斑点(口内炎)が出来ますが、器質的変化が乏しいのが特徴です。

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舌痛症

紅斑性(萎縮性)カンジダ症の臨床症状として口の中の不快感や舌痛症、口角炎、口唇炎、義歯装着部の痛み、白苔、粘膜の発赤として現れます。

舌側面にみられる口腔扁平苔癬
舌側面にみられる口腔扁平苔癬
頬粘膜にレース状・網目状の白色病変(ウィッカム線条)を認める口腔扁平苔癬の一例。
頬粘膜にレース状・網目状の白色病変(ウィッカム線条)を認める口腔扁平苔癬の一例。
  • 舌や頬の粘膜に**白いレース状の模様やびらん(ただれ)**ができる
  • ピリピリとした痛みや違和感が出る場合もある
  • 自己免疫疾患の一種と考えられており、慢性的に経過することが多い
  • 一部は癌化のリスクもあるため定期的な経過観察が必要

【ポイント】白い模様があるかどうか、舌以外の粘膜にも症状が出ているかが判断材料。

次のような症状がある場合は、舌痛症以外の病気が関係している可能性もあるため、早めの受診をおすすめします。

  • 2週間以上治らない舌の痛みがある
  • 舌にしこりがある
  • 舌に治らない潰瘍がある
  • 出血しやすい部分がある
  • 舌の一部が硬くなっている
  • 痛みがだんだん強くなっている
  • 食事や会話に支障が出ている
  • 体重減少や強い倦怠感がある

見た目に異常がある場合は、単なる舌痛症と決めつけないことが大切です。

舌痛症の原因は一つではありません。複数の要因が重なって症状が出ることもあります。

1. 神経の過敏

舌痛症では、舌の神経や脳の痛みを感じる仕組みが過敏になっていることがあります。

通常であれば痛みとして感じない刺激でも、神経が敏感になることで「ヒリヒリ」「ピリピリ」と感じやすくなります。

2. ストレス・不安・自律神経の乱れ

強いストレスや不安が続くと、痛みに対する感受性が高まり、舌の違和感が強くなることがあります。

これは「気にしすぎ」という意味ではありません。心身の緊張が続くことで、脳や神経が痛みを拾いやすくなっている状態です。

3. 更年期・ホルモンバランスの変化

舌痛症は中高年以降の女性に多くみられます。更年期以降のホルモンバランスの変化が、口腔内の乾燥や神経の過敏に関係している可能性があります。

4. ドライマウス

唾液が少なくなると、舌の粘膜が乾燥し、刺激に敏感になります。

口が乾く、話しにくい、飲み込みにくい、夜間に口が渇くといった症状がある場合は、ドライマウスが関係していることがあります。

5. 口腔カンジダ症

カンジダ菌は、もともと口の中に存在する真菌です。免疫力の低下、口腔乾燥、義歯の使用、抗菌薬の服用などをきっかけに増殖すると、舌や口の中にヒリヒリした痛みを起こすことがあります。

白い苔が目立つタイプだけでなく、赤みが中心で見た目の変化がわかりにくいタイプもあります。

6. 入れ歯・被せ物・歯の刺激

合わない入れ歯、尖った歯、被せ物の段差などが舌に当たり続けると、慢性的な刺激によって痛みが出ることがあります。

この場合、歯科的な調整で改善することがあります。

7. 糖尿病・貧血・栄養不足

糖尿病による神経障害、鉄欠乏性貧血、ビタミンB12や亜鉛の不足などが、舌の痛みや違和感につながることがあります。

必要に応じて、内科での血液検査や全身管理が必要になります。

舌痛症の診断では、まず口の中に明らかな異常がないかを確認します。

主な診査内容は以下の通りです。

  • 舌や口腔粘膜の視診
  • 舌の触診
  • 入れ歯や被せ物の確認
  • 尖った歯や噛み合わせの確認
  • 口腔乾燥の確認
  • カンジダ症の確認
  • 必要に応じたレントゲン検査
  • 必要に応じた血液検査
  • 服薬内容や全身疾患の確認

舌痛症は、舌がん・口内炎・カンジダ症・扁平苔癬・地図状舌・栄養不足・糖尿病などを確認したうえで、総合的に判断します。

舌痛症の治療は、原因がある場合と、はっきりした原因が見つからない場合で異なります。

原因がある場合の治療

二次性舌痛症では、原因に応じた治療を行います。

原因主な治療
入れ歯が合わない義歯の調整・再製作
被せ物や歯の刺激形態修正・研磨
口腔カンジダ症抗真菌薬による治療
ドライマウス保湿剤、唾液分泌の促進
口内炎・外傷軟膏、刺激の除去
貧血・栄養不足内科的検査、栄養補助
糖尿病内科との連携

原因が明確な場合は、その原因を取り除くことで痛みが軽減することがあります。

原因がはっきりしない場合の治療

一次性舌痛症では、神経の過敏や痛みの感じ方を整える治療が中心になります。

治療には、次のような方法があります。

  • 痛みを和らげる薬
  • 神経の過敏を抑える薬
  • 抗不安薬や抗うつ薬の使用
  • 認知行動療法
  • ストレスケア
  • 睡眠の改善
  • 生活習慣の見直し
  • 必要に応じた心療内科との連携

海外の医療情報でも、原因が特定できない場合には、唾液補助製品、局所麻酔薬、神経痛に用いる薬、抗うつ薬などが治療選択肢として挙げられています。

神経性舌痛症の処方薬

保険適用

薬剤名用法・用量禁忌と注意事項
メイラックス錠1mg 1錠 分1 就寝前服用 30日分
(15日分ずつ2回に分ける)
禁忌:ベンゾジアゼピン系薬剤に対して過敏症の既往歴、
急性閉塞隅角緑内障、重症筋無力症。
主な副作用として眠気 、 ふらつき 、 倦怠感 、 口渇。

舌痛症は、原因や状態によって経過が異なります。

入れ歯の不具合、カンジダ症、ドライマウス、栄養不足など原因が明確な場合は、原因を取り除くことで改善が期待できます。

一方で、一次性舌痛症は治療に時間がかかることがあります。症状がすぐにゼロにならなくても、適切な治療と生活習慣の見直しによって、痛みをコントロールしながら日常生活を楽にしていくことは可能です。

大切なのは、「異常なし」と言われたまま一人で抱え込まないことです。

舌痛症の症状を悪化させないためには、日常生活でのケアも大切です。

刺激物を控える

以下のものは、舌の痛みを強く感じさせることがあります。

  • 香辛料
  • 熱すぎる飲食物
  • アルコール
  • 酸味の強い食品
  • 炭酸飲料
  • 喫煙

症状が強い時期は、できるだけ刺激の少ない食事を心がけましょう。

Mayo Clinicでも、タバコ、酸味や辛味の強い食品、炭酸飲料を避けることや、ストレス管理が不快感の軽減につながる可能性があるとされています。

口の乾燥を防ぐ

口が乾くと舌の粘膜が刺激に弱くなります。

  • こまめに水分をとる
  • よく噛んで唾液を出す
  • 保湿ジェルや保湿スプレーを使う
  • 口呼吸を減らす
  • 室内の乾燥に注意する

ドライマウスが強い場合は、歯科医院で相談しましょう。

舌を磨きすぎない

舌の汚れが気になるからといって、強くこすりすぎると症状が悪化することがあります。

舌ブラシを使う場合は、やさしく数回なでる程度にしましょう。痛みが強い時期は無理に舌清掃をしないことも大切です。

睡眠とストレスを整える

舌痛症は、睡眠不足やストレスで悪化することがあります。

  • 睡眠時間を確保する
  • 寝る前のスマートフォンを控える
  • 深呼吸や軽いストレッチを取り入れる
  • 痛みを一人で抱え込まない
  • 必要に応じて心療内科に相談する

心と体の緊張をやわらげることが、症状の安定につながります。

舌の痛みがある場合、まずは歯科医院または口腔外科で相談することをおすすめします。

歯科では、舌がんや口内炎、カンジダ症、義歯・被せ物の刺激、ドライマウス、噛み合わせなどを確認できます。

必要に応じて、内科、耳鼻咽喉科、心療内科、大学病院などと連携することもあります。

「何科に行けばよいかわからない」という場合も、まずはお口の中を確認することが大切です。

Q. 舌痛症はがんですか?

舌痛症そのものは、がんではありません。
ただし、舌の痛みの原因が舌がんである可能性もゼロではありません。しこり、治らない潰瘍、出血、硬さがある場合は早めに受診しましょう。

Q. 見た目に異常がないのに痛いのはなぜですか?

神経が過敏になっていたり、脳が痛みを強く感じやすくなっていたりすることがあります。見た目に異常がないからといって、痛みが「気のせい」というわけではありません。

Q. 舌痛症はストレスが原因ですか?

ストレスは関係することがありますが、ストレスだけが原因とは限りません。ドライマウス、カンジダ症、義歯の刺激、糖尿病、貧血、栄養不足など、さまざまな原因を確認する必要があります。

Q. 更年期と関係ありますか?

舌痛症は中高年以降の女性に多くみられ、更年期以降のホルモンバランスの変化が関係している可能性があります。ただし、すべての方が更年期によって起こるわけではありません。

Q. 舌痛症は自然に治りますか?

原因が一時的な刺激や炎症であれば自然に軽快することもあります。しかし、2週間以上痛みが続く場合や不安が強い場合は、早めに診察を受けることをおすすめします。

Q. 舌痛症は保険診療で診てもらえますか?

歯科での診察、口腔内の確認、義歯の調整、必要な検査や治療の多くは保険診療で対応できる場合があります。ただし、検査内容や治療内容によって異なるため、受診時に確認すると安心です。

舌の痛みは、見た目に異常がなくてもつらい症状です。
「異常なし」と言われたからといって、我慢し続ける必要はありません。

舌痛症の診断では、舌がん、口腔カンジダ症、ドライマウス、入れ歯や被せ物の刺激、糖尿病、貧血、栄養不足などを一つひとつ確認することが大切です。

当院では、舌や口腔粘膜の状態、噛み合わせ、義歯・被せ物、口腔乾燥、カンジダ症の可能性などを総合的に確認し、必要に応じて医科とも連携しながら対応いたします。

舌のヒリヒリ・ピリピリが続いている方、舌がんではないか不安な方、原因がわからずお困りの方は、お気軽にご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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