目次

ジルコニアセラミックの定義と特徴

ジルコニアセラミックとは、ジルコニア(酸化ジルコニウム)を主成分としたセラミック素材のことを指します。ジルコニアは、非常に硬く耐久性が高いため、主に奥歯の被せ物(クラウン)やブリッジ、インプラントの上部構造などに使用されます。

ジルコニアセラミック
ジルコニアセラミック


ジルコニアセラミックの特徴として、以下の点が挙げられます。

  • 優れた耐久性:従来のセラミックよりも強度が高く、奥歯のクラウンにも適用可能
  • 審美性の向上:金属を使用しないため、透明感があり天然歯に近い色調を再現できる
  • 生体親和性の高さ:金属を含まないため金属アレルギーのリスクがゼロ
  • 汚れが付きにくい:プラークや着色が付着しにくく、口腔内を清潔に保ちやすい

ジルコニアは単体で使われることもありますが、表面にガラス系セラミックを焼き付けた**「ジルコニアボンドセラミック」**として使用されることもあり、審美性と強度を両立させた治療法として人気があります。

ジルコニアとセラミックの違い

酸化物の焼結体のことをセラミックと言います。ジルコニアは金属酸化物の焼結体であることから、金属であるということも出来ます。一方で、セラミックでもあると言えます。

そのためジルコニアのことをジルコニアセラミックと呼ぶ場合もあります。

※ 用語で混乱
人工歯の内側をジルコニアで作り、外側に陶材(セラミック)を焼き付けて作る歯もジルコニアセラミックと呼ぶ場合があります。

なぜジルコニアは「人工ダイヤモンド」と呼ばれるのか?

ジルコニアは、**人工ダイヤモンド(キュービックジルコニア)**としてジュエリーにも使用されるほどの硬さと透明感を持っています。歯科用ジルコニアも同様に、以下の理由から「人工ダイヤモンド」と呼ばれています。

人工ダイヤモンド・キュービックジルコニア

宝飾品のキュービックジルコニア

ジルコニアにY2O3(酸化イットリウ ム),CaO(酸化カルシウム),MgO(酸化マグネシウム)などの酸化物を添加して固溶させると結晶構造が立方晶に変化して室温でも安定して存在で出来るようになります。これを安定化ジルコニアと言います。

これをキュービックジルコニア(cubic zirconia, CZ)とも呼び,透明で高い屈折率を有しています。ダイヤモンドの様な見た目から人工ダイヤモンドとして用いられることがあります。

  1. 非常に硬い
    • モース硬度(物質の硬さを示す指標)で8~8.5(ダイヤモンドは10)
    • 天然歯や他のセラミックよりも硬いため、摩耗しにくい
  2. 耐久性が高い
    • 破折しにくく、咬合力が強い奥歯にも適用可能
    • 長期間使用しても変形や劣化がほとんどない
  3. 見た目が美しい
    • 天然歯に近い白さと輝きを持ち、審美歯科治療にも適用される
    • 透明感のあるタイプも登場し、審美性が向上

ただし、硬すぎるために対合歯(噛み合う歯)を摩耗させるリスクがあるため、歯科医と相談しながら適切な設計を行う必要があります。

ジルコニアセラミックには、用途や目的に応じていくつかの種類があります。強度を重視するか、審美性を優先するかによって最適な種類が異なります。ここでは、代表的なジルコニアセラミックの種類について詳しく解説します。

ジルコニアセラミック
ジルコニアセラミック

フルジルコニア

フルジルコニアとは、**ジルコニア単体で作られた被せ物(クラウン)や詰め物**のことを指します。金属を一切使用しないため、審美性と生体親和性が高いのが特徴です。

特徴

  • 圧倒的な強度(約1000~1200MPa)で破折しにくい
  • 金属アレルギーの心配がない
  • 長期間の使用に耐えられる
  • 変色しにくく、汚れがつきにくい

デメリット

  • 透明感がやや低く、前歯には不向きな場合がある
  • 硬すぎるため、対合歯を摩耗させるリスクがある
  • 歯科技工士の調整が難しく、適合精度に影響を受ける

適用部位

  • 奥歯(臼歯部)
  • ブリッジ
  • インプラントの上部構造

最近では、**「高透過性ジルコニア(HTジルコニア)」**が登場し、従来のフルジルコニアよりも審美性が向上しています。

ジルコニアセラミック

ジルコニアセラミックとは、内側にジルコニア、外側に透明感があり歯の色調の再現性が高いセラミックを焼き付けた補綴物です。強度と審美性のバランスが取れており、特に前歯部に適しています。

特徴

  • 内側にジルコニアを使用することで高強度
  • 表面にセラミックを焼き付けることで透明感が向上
  • 色の調整がしやすく、天然歯に近い仕上がり
  • 金属を使用しないため、アレルギーの心配がない

デメリット

  • フルジルコニアに比べると強度がやや低い(表面のセラミック部分が割れるリスクがある)
  • 製作工程が複雑で、費用が高くなる
  • 技工士の技術により仕上がりが大きく異なる

適用部位

  • 前歯
  • 審美性を重視した奥歯
  • ブリッジ(短い範囲)

ジルコニアの強度とセラミックの審美性を組み合わせた治療法で、特に前歯部において自然な仕上がりを求める方におすすめです。

奥歯用ジルコニア vs 前歯用ジルコニアの違い

ジルコニアは、使用する部位によって求められる特性が異なります。一般的に、奥歯では強度、前歯では審美性が重視されます。

奥歯用ジルコニア

項目特徴
種類フルジルコニア
強度約1000~1200MPa(非常に強い)
審美性★★★☆☆(透明感はやや低い)
適用部位臼歯、ブリッジ、インプラント

前歯用ジルコニア

項目特徴
種類ジルコニアボンドセラミック、マルチレイヤージルコニア
強度約500~800MPa(e.maxより強いが、フルジルコニアよりやや低い)
審美性★★★★★(透明感が高い)
適用部位前歯、審美補綴

選び方のポイント

  • 奥歯にはフルジルコニアを選び、耐久性を優先
  • 前歯には透明感のあるマルチレイヤージルコニアやジルコニアボンドセラミックを選択
  • ジルコニアの種類によって仕上がりが大きく変わるため、歯科医と相談が重要

最近では、「マルチレイヤージルコニア」と呼ばれるグラデーション構造を持つジルコニアが登場し、奥歯にも審美性を求める方に適した選択肢となっています。

まとめ

ジルコニアセラミックには、用途や部位に応じてさまざまな種類があります。

  1. フルジルコニアクラウン強度が最も高く、奥歯に最適
  2. ジルコニアボンドセラミック審美性を重視する前歯向け
  3. 奥歯用 vs 前歯用強度重視か透明感重視かで選択

目的や希望に合わせて最適なジルコニアの種類を選ぶことで、長期的に美しく健康な口元を維持することが可能になります。

他のセラミック(e.max、メタルボンドなど)との違い

ジルコニアセラミックと他の代表的なセラミック素材を比較すると、それぞれに特性があります。

セラミックの種類特徴強度 (MPa)審美性透明感適用部位
ジルコニアセラミック高強度・耐久性◎800~1200★★★☆☆★★☆☆☆奥歯・ブリッジ・インプラント
e.max(ガラスセラミック)審美性◎・透明感◎400~500★★★★★★★★★★前歯・小臼歯
メタルボンドセラミック金属フレーム+セラミック1000~1200★★★☆☆★★★☆☆奥歯・ブリッジ
CAD/CAM冠(保険適用)保険適用・強度△200~300★★★☆☆★★★☆☆前歯・小臼歯

ジルコニア vs e.max

  • 強度の違い:ジルコニアの方が約2倍の強度があり、ブリッジや奥歯のクラウンに適している。
  • 透明感の違い:e.maxの方が透明感があり、審美性に優れているため前歯向き

ジルコニア vs メタルボンド

  • 金属を含むかどうか:メタルボンドは金属を使用しているため、金属アレルギーのリスクがある。
  • 審美性の違い:メタルボンドは経年劣化で歯茎が黒ずむ可能性があるが、ジルコニアはその心配がない。

このように、ジルコニアセラミックは強度・審美性・耐久性のバランスに優れた素材ですが、他のセラミックとの違いを理解し、自分に合った治療を選ぶことが重要です。

強度が高く、奥歯にも適用可能

ジルコニアセラミックの最大の特徴の一つは、非常に高い強度です。一般的なセラミック(e.maxなど)と比べて2~3倍の強度を持ち、咬合力の強い奥歯の治療にも適しています

ロングスパンのブリッジにも適用可能
ロングスパンのブリッジにも適用可能

ロングスパンのブリッジにも適用可能

ジルコニアは強くて硬い特性があり、フルジルコニアクラウンによりロングスパン(長く連続)のジルコニアブリッジにも適用可能となり、審美歯科治療の範囲が拡大しました。

ジルコニアは硬くて強いため、めったに欠けたり割れたりすることがありません。そのため補綴物の寿命が伸びました。

従来は、ロングスパンのブリッジには全て金属を使うか、内側に金属で補強するメタルボンドクランが主流でした。

曲げ強度(MPa)
曲げ強度(MPa)
硬度(MPa)
硬度(MPa)

ジルコニアの強度

  • 曲げ強度(MPa): 約800~1200MPa(e.maxは約400~500MPa)
  • 硬度(MPa): 約1,300Mpa
  • 破折しにくい: 強い噛み合わせや食いしばりのある方にも対応

特に、**フルジルコニアクラウン(ジルコニア単体)**は強度が高く、金属を使用しない治療法として人気があります。

審美性が高く、変色しにくい

従来のメタルボンドセラミック(内部に金属フレームを使用)と異なり、ジルコニアセラミックは金属を一切含まず、自然な白さを保つことができます。

ジルコニアの審美性の特徴

  • 自然な白さ: 金属を使用しないため、光を適度に透過し、天然歯に近い色調を再現
  • 長期間変色しにくい: 表面のセラミックがガラス質のため、着色や黄ばみの影響を受けにくい
  • メタルフリーで歯茎が黒ずまない: メタルボンドと違い、歯茎の変色がない

特に、前歯の審美治療には透明度の高いジルコニアセラミックが適しています。

金属アレルギーのリスクがない

ジルコニアセラミックは100%セラミック素材であり、金属を一切使用しません。そのため、金属アレルギーのリスクを完全に排除できます。

金属アレルギーと歯科治療

  • 金属アレルギーの原因: メタルボンドや銀歯(パラジウム合金)は溶け出した金属イオンが体内に蓄積し、アレルギー反応を引き起こすことがある
  • ジルコニアの安全性: 非金属のため、アレルギーの心配がなく、体に優しい
  • 症状改善の可能性: 銀歯をジルコニアセラミックに交換することで、金属アレルギー症状(皮膚炎・口内炎など)が軽減するケースもある

金属アレルギーのある方や、アレルギー予防を重視する方には、ジルコニアセラミックは最適な選択肢です。

体に優しい生体親和性の高さ

ジルコニアは生体親和性が高い(人体との適合性が良い)ため、歯や歯茎に優しい素材です。

ヘミデスモゾーム結合

ヘミデスモゾーム結合
ヘミデスモゾーム結合
歯肉とジルコニアクラウンの高い親和性

イラストは、インプラントの上部構造にジルコニアクラウンを使った場合のヘミデスモゾーム結合(緑色の部分)の様子を模式化したものです。

部分安定化ジルコニア

ジルコニアは結晶構造が緊密でチタンと比較しても、細菌やバクテリアなどが繁殖しにくいため、歯肉と接触する部分に使うのは極めて有効です。

天然歯のエナメル質と歯肉との間に存在するへミデスモゾーム結合(上皮付着)がジルコニアと歯肉との間でも起こると考えられています。

ヘミデスモゾーム結合が獲得出来れば歯周ポケットの深部への細菌の侵入を防げる可能性が高まります。そのため、インプラントの上部構造には最適と考えられます。

ジルコニアクラウンが歯肉と接触する部分のみにサンドブラスター処理を行うことで効率よくヘミデスモゾーム結合を誘導出来ると考えられています。

生体親和性のメリット

  • 歯茎との馴染みが良い: 金属を使用しないため、歯茎に炎症を起こしにくい
  • 細菌が付着しにくい: ジルコニアの表面は非常に滑らかで、プラークや歯石が付きにくく、虫歯や歯周病のリスクを抑えられる
  • 耐酸性が高い: 口腔内の酸にも強く、腐食しないため長期間使用しても劣化しにくい

金属を使用した治療法では、長期間の使用で金属イオンが溶け出し、歯茎の黒ずみやアレルギーを引き起こすリスクがありますが、ジルコニアにはその心配がありません。

長期間の使用に適した耐久性

ジルコニアは耐摩耗性・耐久性に優れているため、長期間使用することができます。

ジルコニアの耐久性

  • 摩耗しにくい: 強い噛み合わせでも破損しにくい
  • 割れにくい: 瞬間的な衝撃に対する耐性が高い
  • 長期間変形しない: 経年劣化が少なく、数十年単位で使用可能

他のセラミックと耐久性の比較

素材平均寿命破折リスク
ジルコニアセラミック10~20年非常に低い
e.max(ガラスセラミック)7~10年やや高い
メタルボンド10~15年中程度

ジルコニアは奥歯のブリッジにも対応できるほど強度があるため、長期間安定して使用できる補綴治療として注目されています。

歯科用ジルコニアの進化と最新技術

近年、ジルコニアの技術は急速に進化し、従来の欠点を補う新しい素材が登場しています。

最新のジルコニア技術

  • 多層構造ジルコニア(マルチレイヤージルコニア)
    • 透明感と強度を両立した新素材
    • 前歯と奥歯どちらにも適用可能
  • CAD/CAM技術の進化
    • 高精度のデジタル加工により、フィット感が向上
    • 短期間で高品質な補綴物を作成できる
  • ナノジルコニア
    • 透明度を向上させた新しいタイプのジルコニア
    • 審美性を重視した前歯治療に適用

今後も新しい技術が登場し、より審美性・機能性を兼ね備えたジルコニアセラミックが開発されると考えられます。

まとめ

ジルコニアセラミックは、強度・審美性・耐久性・安全性の全てを兼ね備えた優れた歯科材料です。特に、奥歯の強度が求められる治療や、金属アレルギー対策として注目されています。
また、最新技術の進化により、透明感の向上やCAD/CAMによる高精度な補綴物の製作が可能になっており、今後さらに普及が進むと考えられます。

ジルコニアセラミックは多くのメリットを持つ一方で、いくつかのデメリットもあります。治療を検討する際には、これらのポイントを理解し、適切な選択をすることが重要です。

天然歯に比べて硬すぎるため、対合歯への影響がある

ジルコニアは非常に硬いため、対合歯(噛み合う歯)にダメージを与える可能性があります。

ジルコニアの硬さとその影響

  • モース硬度(硬さの指標)は約8.5(ダイヤモンドは10)、天然歯より硬い
  • 強すぎる咬合力で対合歯がすり減るリスクがある
  • 食いしばり・歯ぎしりの強い人は注意が必要

対策

  • 表面を滑らかに仕上げることで摩耗を軽減
  • ナイトガード(マウスピース)を使用する
  • 奥歯で使用する場合は、部分的に他のセラミックと組み合わせる

最近では、多層構造(マルチレイヤー)のジルコニアが登場し、より天然歯に近い硬さとしなやかさを持つものも開発されています。

e.maxと比較したときの透明感の違い

ジルコニアセラミックは、透明感がやや劣るという点がデメリットとされることがあります。

e.max(ガラスセラミック)との違い

材料透明感色の自然さ強度
ジルコニアセラミック★★★☆☆★★★★☆800~1200MPa(高強度)
e.max(ガラスセラミック)★★★★★★★★★★400~500MPa(中強度)

前歯などの審美性を重視する部位では、e.maxの方が適している場合があります。
ただし、最近の**高透過性ジルコニア(HTジルコニア)**は、e.maxに近い透明感を持ち、より自然な仕上がりが可能になっています。

対策

  • 前歯には透明度の高い「マルチレイヤージルコニア」を選択
  • e.maxとジルコニアを併用し、審美性と強度を両立

透明感のあるジルコニアが登場しているとはいえ、e.maxほどの自然な透明感を再現するのは難しいため、治療の目的に応じて適切な材料を選ぶことが重要です。

まとめ

ジルコニアセラミックは高強度・耐久性・審美性の高さが魅力ですが、以下のようなデメリットもあります。

  • 硬すぎるため、対合歯を摩耗させる可能性がある
  • 保険適用外で費用が高額になりやすい
  • 製作や調整が難しく、技工士の技術に依存する

しかし、適切な対策を取ることで、デメリットを軽減し、長く快適に使用することが可能です。
費用や審美性を考慮しながら、自分に合った治療法を選択しましょう。

ジルコニアセラミックは保険適用外(自由診療)のため、治療費は歯科医院によって異なります。価格には材料費・技工料・診療費が含まれるため、費用の違いを理解した上で適切なクリニックを選ぶことが重要です。

ジルコニアセラミックの費用
ジルコニアセラミックの費用

当院のジルコニアセラミックの費用

自費治療

保険適用外です。


治療内容
内訳値段
オールセラミック前歯、奥歯共通(すべてをセラミック作るクラウン)¥132,000
(税抜き ¥120,000)
メタルボンド前歯、奥歯共通(内側は金属で外側がセラミックで作るクラウン)¥115,500
(税抜き ¥105,000)
ジルコニアボンドセラミックジルコニアフレームにセラミックを焼き付けるクラウン¥110,000
(税抜き ¥100,000)
フルジルコニアクラウンすべてジルコニアで作るクラウン¥92,400
(税抜き ¥84,000)
ファイバーコア前歯・奥歯共通 グラスファイバーの土台¥20,900
(税抜き ¥19,000)
※ すべてをジルコニアで作るフルジルコニアクラウンは、
ややテカリが強く、審美性に劣ります。

一般的な価格帯と歯科医院ごとの違い

ジルコニアセラミックの費用は、治療内容や歯科医院の設備・技工士の技術によって変わります。以下は、一般的な価格帯の目安です。

ジルコニアセラミックの価格相場(1本あたり)

治療内容価格帯(目安)
フルジルコニアクラウン(臼歯)5万~15万円
ジルコニアボンドセラミック(前歯)8万~18万円
ジルコニアブリッジ(3本)20万~50万円
ジルコニアインレー(詰め物)4万~8万円

歯科医院による価格の違い

  • 大学病院や専門クリニック高額(技工士の技術・設備が充実)
  • 一般歯科医院平均的な価格(設備や技工士の技術により変動)
  • 格安クリニック低価格(海外技工所の利用・大量生産)

なぜ歯科医院ごとに価格差があるのか?

  1. 使用するジルコニアの品質(国産・輸入品の違い)
  2. 技工士の技術力(国内の熟練技工士か、海外技工所か)
  3. デジタル技術の活用(CAD/CAMの精度、3Dスキャニングの有無)
  4. クリニックの設備や人件費

安すぎるジルコニア治療には注意が必要であり、事前に技工士の製作レベルや保証の有無を確認することが重要です。


長期的なコストパフォーマンスを考え、ライフスタイルや予算に応じた最適な治療方法を選ぶことが重要です。

ジルコニアセラミックの治療は、診察から完成まで数週間を要することが一般的です。治療の成功には、精密な設計と技工士の技術力が不可欠となります。ここでは、ジルコニアセラミックの一般的な治療の流れを詳しく解説します。

診察・カウンセリング

まず、歯科医師が患者の口腔内を診察し、ジルコニアセラミックが適しているかを判断します。

診察のポイント

  • 虫歯や歯周病がないかをチェック
  • 噛み合わせ(咬合)の確認
  • ジルコニアの適応可否を判断(強度の必要性、審美性の要求)

カウンセリング内容

  • ジルコニアセラミックのメリット・デメリットの説明
  • 費用や治療期間の確認
  • 他のセラミック治療との比較(メタルボンドなど)
  • 色や形の希望を患者と相談

ジルコニアにはフルジルコニア・ジルコニアボンドセラミック・マルチレイヤージルコニアなどの種類があるため、患者の希望に合わせた選択を行います。

歯の形成と型取り

ジルコニアセラミックを装着するために、歯を適切な形に削る必要があります。

歯の形成(削る作業)

  • ジルコニアの厚み(約1.0~1.5mm)を確保
  • 神経がある歯の場合は、削りすぎを防ぎつつ形を整える
  • 咬み合わせを考慮したデザイン

型取り(印象採得)

  • シリコン印象材:柔らかい印象材を口の中で固める
  • デジタルスキャン(CAD/CAM):3Dスキャナーで歯の形状をコンピューターへ送る

デジタル技術を活用することで、精度が向上し、型取りの負担も軽減されます。

技工士によるジルコニア製作

型取りのデータをもとに、歯科技工士がジルコニアセラミックを設計・製作します。

ジルコニアディスクをミリングマシンで削り出す

ジルコニアディスクをミリングマシンで削り出す

削った歯の状態を口腔内スキャナーを用いてデジタルデータとしてパソコンに保存するか、アナログではシリコン印象材などを用い印象採得を行い石膏模型を作ります。

これらを技工所に送り、口腔スキャナーのデータはそのまま、石膏模型の場合には、それをデジタル化した後パソコン上でデザインし、ミリングマシン(加工機)でジルコニアディスクから人工歯を削り出します。

削り出されたジルコニアの歯は焼成、仕上げ研磨などの工程を経て歯科医院に届きます。

つまり、技工所においては、完全にデジタルで行う作業となります。

※ ジルコニアリスクから20本ほどの歯を削り出すことが出来ます。

CAD/CAM技術を用いた精密加工

  • スキャンデータを元に3D設計
  • ジルコニアブロックをミリングマシンで削り出す
  • 焼成(シンタリング)して強度を増す
  • 色付けや透明感の調整

ジルコニアは非常に硬い素材のため、調整が難しく、熟練した技工士の技術力が求められます
最近では、マルチレイヤージルコニア(グラデーション構造)を採用することで、より自然な色合いを再現できるようになっています。

仮歯と試適

ジルコニアセラミックが完成するまでの間、**仮歯(プロビジョナルレストレーション)**を装着します。

仮歯の役割

  • 削った歯を保護し、しみるのを防ぐ
  • 見た目の調整
  • 噛み合わせの確認
  • 患者の違和感がないかのチェック

試適(仮合わせ)

完成したジルコニアセラミックを実際に口腔内で試し、適合具合を確認します。

  • フィット感
  • 色の仕上がり
  • 咬合のバランス
  • 歯茎との境目の自然さ

違和感がある場合は、微調整を行ってから最終仕上げに進みます

セメント固定とメンテナンス

試適で問題がなければ、最終的にジルコニアセラミックを装着します。

セメント固定(接着)

  • 歯に専用のセメント(接着剤)を塗布
  • ジルコニアクラウンをしっかりと密着させる
  • 余分なセメントを除去し、仕上げ磨きを行う

接着後、咬み合わせを最終調整し、治療は完了となります。

ジルコニアセラミックのメンテナンス

ジルコニアは耐久性が高いですが、適切なケアをしなければトラブルの原因になります。

日常的なケア

  • 研磨剤の入っていない歯磨き粉を使用
  • ナイトガード(マウスピース)の装着(歯ぎしり対策)
  • フロスや歯間ブラシを使用し、歯と歯の間を清潔に保つ

定期的なメンテナンス

  • 半年ごとの歯科検診で咬み合わせや歯茎の状態をチェック
  • 噛み合わせに問題が生じた場合、微調整を行う
  • セメントの劣化や不具合がないか確認

ジルコニア自体は劣化しにくいですが、歯茎の健康を保つためには定期的なメンテナンスが重要です。

まとめ

ジルコニアセラミック治療の流れは、精密な設計・製作・調整のステップを踏んで完成します。

  1. 診察・カウンセリング → 適応可否の判断、費用や治療計画の相談
  2. 歯の形成と型取り → ジルコニアに適した歯の削り方と精密な型取り
  3. 技工士によるジルコニア製作 → CAD/CAM技術を用いた高精度な加工
  4. 仮歯と試適 → 最終調整を行い、適合性をチェック
  5. セメント固定とメンテナンス → 最終装着し、定期的なケアで長期間維持

ジルコニアセラミックは長期的な耐久性に優れ、審美性も高い治療法ですが、適切な設計とメンテナンスが必要です。治療前にしっかりとカウンセリングを受け、自分に合った治療方法を選ぶことが重要です。

ジルコニアセラミックは、他のセラミックと比較して強度・審美性・耐久性においてさまざまな特性があります。ここでは、代表的なセラミックと比較し、それぞれの違いや適したケースを解説します。

メタルボンド vs ジルコニアセラミック(強度と審美性の違い)

メタルボンドとは?

メタルボンドとは、金属フレームの上にセラミックを焼き付けた補綴物で、強度が高いが金属アレルギーのリスクがある。

比較表:メタルボンド vs ジルコニア

項目メタルボンドジルコニアセラミック
強度(MPa)1000~1200(ジルコニアと同等)800~1200
審美性★★★☆☆(金属フレームが透ける)★★★★☆(メタルフリーで自然)
耐久性金属が劣化する可能性あり劣化しにくく長持ち
金属アレルギーのリスクあり(パラジウムなど)なし
適用のポイント強度が必要な部分に適しているが、審美性はやや劣る金属アレルギーの心配がない、見た目が良い

どちらを選ぶべき?

  • 金属アレルギーのリスクがある人はジルコニア
  • 強度はほぼ同じだが、見た目を重視するならジルコニア
  • 費用を抑えつつ強度を求めるならメタルボンド

保険適用のCAD/CAM冠 vs ジルコニア(価格と耐久性の差)

CAD/CAM冠とは?

CAD/CAM冠は、**保険適用のハイブリッドセラミック(樹脂を含む)**で作られた被せ物。保険適用のため費用は安いが、耐久性がジルコニアに比べて低い。

比較表:CAD/CAM冠 vs ジルコニア

項目CAD/CAM冠(保険適用)ジルコニアセラミック
費用(1本あたり)約1万円(保険適用)7~15万円(自由診療)
強度(MPa)200~300800~1200
耐久性5~7年(摩耗しやすい)10~20年以上(長持ち)
適用部位小臼歯(前から4・5番目のみ)すべての歯に適用可能
審美性★★★☆☆(経年劣化あり)★★★★☆(変色しにくい)

どちらを選ぶべき?

  • 費用を抑えたいならCAD/CAM冠(保険適用)
  • 耐久性・審美性を重視するならジルコニア
  • CAD/CAM冠は保険適用部位が限られているため、奥歯には不向き

まとめ

ジルコニアセラミックは、強度・耐久性・金属アレルギー対策に優れた素材ですが、審美性の面ではe.maxやメタルボンドと比較してやや劣る部分もあります。用途に応じて最適なセラミックを選択することが重要です。

  • メタルボンド vs ジルコニア金属アレルギーがなければメタルボンドも選択肢
  • CAD/CAM冠 vs ジルコニア費用を抑えるならCAD/CAM冠、耐久性を求めるならジルコニア
  • ジルコニアが適しているケース奥歯・ブリッジ・金属アレルギーの人向け

治療を選択する際には、審美性・耐久性・費用のバランスを考慮し、歯科医と相談しながら最適なセラミックを選びましょう。

ジルコニアセラミックは耐久性が高く、変色しにくい特徴がありますが、適切なケアをしないと歯茎の炎症や破損のリスクが高まります。ここでは、ジルコニアセラミックを長持ちさせるためのメンテナンス方法について詳しく解説します。

長持ちさせるためのケア方法

ジルコニアセラミックは天然歯よりも硬いため、虫歯にはなりませんが、歯の周囲や歯茎の健康を維持することが重要です。

ジルコニアセラミックを長持ちさせるためのポイント

歯磨きを徹底する

  • 歯の境目(マージン部分)に汚れがたまらないようにしっかりブラッシング
  • 研磨剤が強すぎる歯磨き粉は避ける(詳しくは次の項目で解説)

フロスや歯間ブラシを使用する

  • 歯と歯の間の汚れを取り除き、歯周病を予防する
  • 歯間ブラシはサイズの合ったものを選び、強く押し付けすぎない

ナイトガード(マウスピース)の使用

  • 歯ぎしりや食いしばりが強い場合、ナイトガードを使用するとジルコニアが欠けるリスクを軽減

硬すぎる食べ物を避ける

  • 氷や硬いナッツ、骨付き肉などを強く噛むと、ジルコニアに過剰な負担がかかるため注意

ジルコニアは基本的に変色や摩耗に強いですが、適切なケアを行うことでより長く快適に使用することが可能になります。

歯磨きのコツ(研磨剤の選び方)

ジルコニアセラミックは表面が滑らかで汚れがつきにくいため、通常の歯磨きで十分清潔に保つことができます。ただし、研磨剤の強い歯磨き粉を使用すると、表面を傷つけてしまう可能性があるため、慎重に選びましょう。

歯磨き粉の選び方

低研磨または無研磨の歯磨き粉を選ぶ

  • 研磨剤の粒子が粗いもの(ホワイトニング用など)は避ける
  • 「低研磨性」「ナノ粒子配合」「ジルコニア対応」と記載された歯磨き粉が推奨される

フッ素配合の歯磨き粉を使う

  • 天然歯部分の虫歯予防に効果的(ジルコニア自体は虫歯にならない)

アルコールや漂白成分の強いものは避ける

  • 強力な漂白成分がジルコニアの表面に影響を与えることがある

おすすめの歯磨き方法

  1. やわらかめの歯ブラシを使用(硬いブラシはセラミックの表面を傷つける可能性がある)
  2. 力を入れすぎず、優しく磨く
  3. 歯と歯茎の境目を意識して磨く
  4. フロスや歯間ブラシを併用する

定期検診の重要性

ジルコニアセラミックは劣化しにくい素材ですが、定期的な歯科検診を受けることで、歯や歯茎の健康を維持することができます。

定期検診でチェックする項目

ジルコニアの適合状態の確認

  • 歯とジルコニアの間に隙間ができていないか
  • セメント(接着剤)が劣化していないか

噛み合わせのチェック

  • 咬合の変化により、ジルコニアに過剰な負担がかかっていないか

歯茎の健康状態

  • 歯茎の腫れや炎症がないか(歯周病予防)
  • 歯茎が下がっていないか(リセッションのチェック)

クリーニング(プロフェッショナルケア)

  • 歯石やプラークを除去し、虫歯・歯周病を予防

定期検診の推奨頻度

  • 3~6ヶ月ごとに受診するのが理想的
  • ジルコニアの保証が適用される条件として、定期検診の継続が求められることもある

割れたり欠けたりした場合の修理方法

ジルコニアセラミックは非常に強度が高いですが、過度な衝撃や強い咬合力が加わると、稀に割れたり欠けたりすることがあります。

ジルコニアが破損する原因

強い衝撃(事故・転倒など)
食いしばり・歯ぎしり(長期間の負担)
適合不良によるストレス集中

破損した場合の対応

✅ 欠けが小さい場合(部分的な補修が可能)

  • レジン(歯科用プラスチック)を用いた補修ができる場合がある
  • 表面の滑らかさを保つために研磨処理を行う

✅ 割れが大きい場合(再製作が必要)

  • 修理では対応できず、再作製が必要になるケースが多い
  • ジルコニアクラウンを新しく作り直す(費用:5万~15万円)

ジルコニアを再作製する場合の流れ

  1. 破損したジルコニアを除去
  2. 新たに型取り(デジタルスキャンまたは従来の印象採得)
  3. 技工士による新しいジルコニア製作
  4. 装着・セメント固定

破損を防ぐために、ナイトガード(マウスピース)の使用や、過度な負荷をかけないよう注意が必要です。

まとめ

ジルコニアセラミックは耐久性が高いものの、適切なケアをしなければ寿命が短くなる可能性があります。

  1. 長持ちさせるためのケア
    • 低研磨性の歯磨き粉を使用し、歯間ケアを徹底
    • 硬すぎる食べ物を避ける
    • 歯ぎしり対策としてナイトガードを使用
  2. 歯磨きのコツ
    • 研磨剤の少ない歯磨き粉を選び、やさしくブラッシング
    • フロスや歯間ブラシを併用
  3. 定期検診の重要性
    • 3~6ヶ月ごとの歯科検診でジルコニアの状態をチェック
    • 噛み合わせの調整やクリーニングを受ける
  4. 破損時の修理方法
    • 軽度の欠けならレジンで補修
    • 大きな割れは再作製が必要

適切なメンテナンスを行うことで、ジルコニアセラミックを長期間美しく、快適に使用することが可能になります。

ジルコニアセラミックは、見た目の美しさ・耐久性・強度・金属アレルギー対策に優れた補綴治療で、次のような人におすすめです。

ジルコニアが適している人

美しい白い歯を求める人(審美性が高く、変色しにくい)
金属アレルギーのある人(メタルフリーでアレルギーリスクなし)
奥歯の被せ物に強度を求める人(咬合力の強い人やブリッジにも適用)
長持ちする被せ物を希望する人(耐久性が高く、10~20年以上使用可能)

治療の目的やライフスタイルに合わせて、最適な補綴物を選び、長く快適な口腔環境を維持しましょう。

江戸川区篠崎でジルコニアセラミック治療をお考えの方へ

当院では、強度と美しさを兼ね備えた「ジルコニアセラミック」を使用した審美歯科治療を提供しています。金属を一切使用しないため、金属アレルギーの心配がなく、自然な白さを長期間維持できるのが特徴です。特に奥歯の強度が必要な方や、銀歯を白くしたい方におすすめです。

「江戸川区篠崎」の地域密着型の歯科医院として、患者様のライフスタイルに合わせた治療を心がけています。あなたに最適な治療方法をご提案いたします。まずはお気軽にご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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