目次

「冷たいものが強くしみる」「何もしていないのにズキズキ痛む」「噛むと痛い」――。

このような症状がある場合、虫歯が歯の神経(歯髄)付近まで深く進行している可能性があります。

虫歯C3は、一般に虫歯が歯髄まで達した、あるいは歯髄に影響を及ぼすほど深く進行した状態です。歯髄に炎症が起こると強い痛みが出ることがありますが、症状だけで進行度を正確に判断することはできません。

また、C3だからといって必ず神経を取るとは限らず、歯髄の状態によっては神経を保存できる場合もあります。

この記事では、虫歯C3の症状や見た目、治療方法、放置するリスクについて、歯科の専門的な視点からわかりやすく解説します。

虫歯C3とは、虫歯がエナメル質・象牙質の深部まで進み、歯髄に達している、または歯髄に強い影響を及ぼしている状態です。

歯髄には神経や血管が存在するため、炎症が起こると冷たいものや温かいものが強くしみたり、何もしていなくてもズキズキ痛んだりすることがあります。

ただし、痛みの程度と虫歯の深さは必ずしも一致しません。かなり深い虫歯でも症状が軽いことがある一方、歯髄炎が進行すると夜眠れないほど強く痛む場合もあります。

下顎7番のC3虫歯:赤い矢印の先に見える部分は、大きく欠けた歯の内部に歯肉(歯ぐき)が入り込んでいます。
下顎7番のC3虫歯:赤い矢印の先に見える部分は、大きく欠けた歯の内部に歯肉(歯ぐき)が入り込んでいます。
C3虫歯:歯髄に到達した重度う蝕(上顎6番遠心)のX線画像
C3虫歯:歯髄に到達した重度う蝕(上顎6番遠心)のX線画像

虫歯の進行段階「C0〜C4」の中でのC3

虫歯は一般に、進行度によって次のように分類されます。

  • C0:初期の脱灰がみられる状態
  • C1:エナメル質に限局した虫歯
  • C2:象牙質まで進行した虫歯
  • C3:歯髄まで達した、または歯髄に影響する深い虫歯
  • C4:歯冠が大きく崩壊し、歯根だけに近い状態

C3では、虫歯を取り除くだけでなく、歯髄を保存できるか、根管治療が必要かを慎重に判断することが重要になります。

C3虫歯では、歯髄の炎症の程度によって症状が異なります。

冷たいものが強くしみる

冷たい水やアイスなどが触れたときに、鋭い痛みを感じることがあります。

刺激を取り除いても痛みがしばらく続く場合は、歯髄の炎症が進んでいる可能性があります。

温かいものでも痛む

歯髄炎が進行すると、冷たいものだけでなく、温かい飲み物や食べ物で痛みを感じることがあります。

何もしていなくてもズキズキ痛む

炎症が強くなると、刺激がなくても痛む「自発痛」が現れることがあります。

特に夜間や横になったときに痛みが強くなり、睡眠に支障をきたす場合もあります。

噛むと痛むことがある

感染や炎症が歯根周囲まで波及すると、噛んだときや歯を軽く叩いたときに痛みを感じることがあります。

ただし、噛んだときの痛みは虫歯以外にも、歯周病や歯の亀裂、根尖性歯周炎などで起こります。

虫歯C3では、大きな穴が開いたり、歯が欠けたり、内部が褐色から黒色に見えたりすることがあります。

しかし、見た目だけでC3かどうかを判断することはできません。

小さな穴に見えても内部で虫歯が大きく広がっていることがあり、反対に黒く見える部分が必ずしも活動性の高い虫歯とは限りません。

歯科医院では、視診や触診に加え、必要に応じてX線検査や歯髄の反応を調べる検査などを行い、虫歯の深さと神経の状態を診断します。

虫歯C3と歯髄炎の模式図

深い虫歯では、細菌やその産生物が象牙細管などを介して歯髄に影響し、炎症を引き起こします。

第一大臼歯の深い虫歯

虫歯が象牙質の深部まで広がり、歯質が大きく失われています。

このような状態でも、症状や歯髄の状態には個人差があります。痛みの有無だけで神経を残せるかどうかを判断することはできません。

虫歯C3歯髄炎の見た目(第一大臼歯)
虫歯C3歯髄炎の見た目(第一大臼歯)

6歳臼歯の虫歯C3

生えたばかりの永久歯は歯質が成熟途中であり、虫歯が進行しやすい傾向があります。

特に6歳臼歯は溝が深く、奥にあるため磨き残しが生じやすい歯です。深い虫歯になった場合も、年齢や歯根の完成度、歯髄の状態を確認しながら治療方法を検討します。

6歳臼歯の虫歯C3
6歳臼歯の虫歯C3

犬歯の深い虫歯

虫歯が長期間進行すると、大きな欠損が生じることがあります。

見た目以上に内部へ広がっていることもあるため、症状が軽くても早めの診断が重要です。

犬歯の虫歯C3
犬歯の虫歯C3

虫歯C3は自然に元の状態へ戻ることはありません。

痛みが一時的に軽くなった場合も、「治った」と判断して放置しないことが大切です。

歯髄が壊死することがある

歯髄の炎症が進行すると、血流が障害され、歯髄が壊死することがあります。

それまで強かった痛みが急に弱くなることがありますが、これは虫歯が治ったわけではありません。

神経が反応しなくなったために痛みを感じにくくなっている可能性があります。

歯根の先に感染が広がる

歯根嚢胞
歯根嚢胞

歯髄が壊死し、根管内で細菌感染が進むと、歯根の先に炎症が広がり、根尖性歯周炎を起こすことがあります。

さらに慢性的な炎症が続くと、病変の一部が歯根嚢胞となることもあります。

症状が悪化すると、

  • 歯ぐきが腫れる
  • 膿が出る
  • 噛むと痛い
  • 顔が腫れる
  • 発熱する

といった症状が現れる場合があります。

まれではありますが、歯性感染症が顎や顔面、頸部などへ広がると重症化することもあるため、強い腫れや発熱、飲み込みにくさ、呼吸しづらさなどがある場合は速やかな受診が必要です。

歯根嚢胞

歯を保存できなくなることもある

C3だからといって、すぐに抜歯が必要になるわけではありません。

根管治療などによって歯を残せるケースは少なくありません。

一方、虫歯による歯質の崩壊が著しい場合や、歯根まで深く虫歯が進んでいる場合、歯根破折を伴う場合などは、治療後の長期的な維持が難しく、抜歯を検討することがあります。

大切なのは、「C3だから抜歯」と判断するのではなく、残っている歯質や歯根、歯周組織などを総合的に診断することです。

虫歯C3の治療は、歯髄の炎症や感染の程度によって異なります。

必ず神経を取るわけではなく、歯髄を保存できる可能性がある場合と、根管治療が必要な場合があります。

神経を保存する治療

深い虫歯でも、歯髄の炎症が限局しており、回復が期待できると判断された場合には、生活歯髄療法によって神経を保存できることがあります。

MTAセメントやバイオセラミック系材料などを使用し、露出した歯髄を保護する方法が選択される場合もあります。

ただし、神経を残せるかどうかは、

  • 痛みの種類や持続時間
  • 歯髄からの出血状態
  • 虫歯の深さ
  • 感染の程度
  • X線所見
  • 歯髄の反応

などを総合して判断します。

根管治療が必要な場合

歯髄の炎症が回復困難と判断される場合や、すでに歯髄が壊死している場合には、根管治療を行います。

1.虫歯と感染した歯髄の除去

麻酔を行い、虫歯を除去したうえで、炎症や感染を起こしている歯髄を取り除きます。

2.根管内の清掃・洗浄

細い器具や洗浄液を使用して、根管内部の感染物質を除去します。

根管は非常に複雑な形をしているため、可能な限り細菌を減らし、再感染を防ぐことが重要です。

3.根管充填

根管内の清掃・消毒後、状態が安定したことを確認して、根管充填材で封鎖します。

根尖まで緻密に到達した理想的な根管充填。再感染リスクの低い状態です。
根尖まで緻密に到達した理想的な根管充填。再感染リスクの低い状態です。

根管治療後のX線画像。根管充填材によって根管内部が封鎖されています。

4.歯の修復

根管治療後は、失われた歯質の量や歯の位置、噛み合わせなどに応じて、詰め物や被せ物で修復します。

特に奥歯では、虫歯によって歯質を大きく失っていると破折しやすくなるため、歯を覆う形の修復が選択されることがあります。

すべての根管治療歯に必ずクラウンが必要というわけではなく、残っている歯質を評価して修復方法を決定します。

根管治療の回数や期間は、歯の種類や根管の形態、感染の程度などによって異なります。

比較的短期間で終了することもありますが、感染が強い場合や根管が複雑な場合には複数回の治療が必要になることがあります。

その後、土台や被せ物などの修復治療を行うため、治療完了まで一定の期間が必要です。

治療回数や期間には個人差があるため、診察後に担当歯科医師へ確認しましょう。

虫歯C3の治療には、健康保険が適用される治療と自由診療があります。

保険診療では、根管治療や一定の詰め物・被せ物などを保険の範囲内で行います。実際の自己負担額は、治療する歯や処置内容、使用する材料、自己負担割合などによって異なります。

自由診療では、歯科医院によってマイクロスコープやラバーダムなどを活用した精密根管治療や、セラミックなどを使用した修復治療が行われています。

自由診療の内容や費用は歯科医院によって異なるため、事前に治療内容・費用・保証・治療後のメンテナンスについて説明を受けることが大切です。

なお、「保険診療だから再発しやすい」「自由診療だから必ず長持ちする」と単純に判断することはできません。

治療成績には、虫歯や感染の程度、根管の形態、治療手技、修復物の適合状態、その後のセルフケアやメンテナンスなど、さまざまな要因が関係します。

深い虫歯でも、歯髄が生きていて炎症が限局している場合には、神経を残せる可能性があります。

近年は、MTAセメントなどの生体親和性に配慮した材料を使用した生活歯髄療法が行われることがあります。

治療方法としては、

  • 間接覆髄
  • 直接覆髄
  • 部分断髄
  • 全部断髄

などがあり、歯髄の状態に応じて選択されます。

ただし、すべてのC3で神経を保存できるわけではありません。

強い自発痛が続いている場合や、歯髄が壊死している場合、感染が根管内部まで広がっている場合などでは、根管治療が必要になります。

そのため、「神経を残せるうちに受診する」ことが大切です。

虫歯C3まで進行させないためには、毎日のセルフケアと定期的な歯科受診が重要です。

歯ブラシだけでなく歯間清掃も行う

歯と歯の間は、歯ブラシだけでは十分に清掃できないことがあります。

フロスや歯間ブラシを併用し、プラークを残さないようにしましょう。

フッ化物を活用する

フッ化物配合歯磨剤には、歯の再石灰化を促し、虫歯の発生や進行を抑える働きがあります。

年齢やお口の状態に応じて適切に使用しましょう。

飲食回数を見直す

糖分の量だけではなく、甘いものや飲み物を口にする回数も虫歯リスクに関係します。

だらだら食べ・だらだら飲みを避け、飲食する時間を決めることが大切です。

定期検診を受ける

初期の虫歯は痛みがほとんどないため、自分では気づきにくいことがあります。

定期的に検診を受けることで、小さい段階で虫歯を発見し、歯を削る量や神経への影響を抑えられる可能性があります。

虫歯C3では、強い痛みが続いたあとに突然痛みがなくなることがあります。

これは自然に治ったのではなく、歯髄が壊死して痛みを感じなくなった可能性があります。

そのまま放置すると、歯根の先に炎症が広がり、腫れや膿、噛んだときの痛みなどが現れることがあります。

痛みが消えた場合も、一度強い歯痛を経験した歯は歯科医院で確認することをおすすめします。

C3になると必ず神経を取りますか?

必ずしも神経を取るわけではありません。

歯髄の炎症が限局しており、回復できる可能性がある場合には、生活歯髄療法によって神経を保存できることがあります。

一方、炎症が回復困難な状態や歯髄壊死が認められる場合には、根管治療が必要です。

C3でも痛くないことはありますか?

あります。

虫歯の進行度と痛みの強さは必ずしも一致しません。

また、歯髄が壊死すると、それまであった痛みが一時的になくなることがあります。そのため、「痛くない=軽い虫歯」とは判断できません。

大きな穴があればC3ですか?

大きな穴があっても、見た目だけでC3と確定することはできません。

反対に、表面の穴が小さくても、内部で虫歯が大きく広がっている場合があります。

X線検査などを行い、虫歯の深さや歯髄の状態を確認する必要があります。

神経を取った歯は弱くなりますか?

根管治療をした歯は、健康な歯と比べて破折リスクが高くなる場合があります。

ただし、これは単に「神経を取ったから歯に栄養が届かなくなる」という理由だけではありません。

虫歯や治療によって歯質を大きく失っていることが、歯の強度低下に大きく関係します。

そのため、残っている歯質の量や歯の位置に応じて、適切な修復を行うことが重要です。

神経を抜いた上顎中切歯の変色

根管治療を受けた歯では、内部の組織や材料の影響などによって経年的に色調が変化することがあります。

神経を失った歯は、内部の水分量や構造変化により徐々に暗く変色します。写真のように、左右の前歯で色の差が生じることは珍しくありません。
神経を失った歯は、内部の水分量や構造変化により徐々に暗く変色します。写真のように、左右の前歯で色の差が生じることは珍しくありません。
レントゲンでは、神経が除去され根管充填材が入った状態が確認できます。治療自体は適切でも、神経を抜いた歯は経年的に色調変化が起こりやすくなります。
レントゲンでは、神経が除去され根管充填材が入った状態が確認できます。治療自体は適切でも、神経を抜いた歯は経年的に色調変化が起こりやすくなります。

X線画像では、根管治療後に根管充填材が入っている状態を確認できます。

虫歯C3は、虫歯が歯髄まで達した、あるいは歯髄に大きな影響を与えている重度の状態です。

冷たいものや温かいものが強くしみる、ズキズキ痛むなどの症状が現れることがありますが、痛みがほとんどないケースもあります。

そして、C3だからといって必ず神経を取るわけでも、抜歯になるわけでもありません。

歯髄の状態によっては神経を保存できることがあり、根管治療が必要になった場合でも、適切な治療によって歯を残せる可能性があります。

一方で、放置して歯髄が壊死し、感染が歯根の先へ広がると、治療が複雑になり、歯を残せる可能性が低くなることがあります。

「冷たいものがしみる」「ズキズキ痛む」「以前痛かった歯が急に痛くなくなった」などの症状がある場合は、できるだけ早めに歯科医院で診断を受けましょう。

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「神経を取るしかない」「抜歯になるかもしれない」とあきらめる前に、まず歯の状態を詳しく確認しましょう。深い虫歯でも、歯髄の状態によっては神経を保存できる場合があり、根管治療が必要になっても歯を残せる可能性があります。痛みが強くなる前の早めの診断が、歯を守ることにつながります。

【動画】歯茎のニキビのような出来物・フィステル

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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