【動画 29秒】ヘミセクションとは?歯を温存する部分抜歯治療の特徴と流れ

抜歯を避ける選択肢:ヘミセクション手術

ヘミセクションとは?歯を残すための最後の手段

歯根破折や虫歯、歯根嚢胞(歯根の病気)などによって抜歯が適当と診断された場合でも、問題となっている歯根のみを抜歯する方法をヘミセクション(歯根分割抜去法)といいます。

ヘミセクションとは、歯根の一部を分割して除去し、残った健康な部分を維持することで歯全体を保存する治療法です。この治療は主に、歯周病や根尖病変によって一部の歯根が損傷している場合に適用されます。歯全体を抜歯する代わりに、一部を残すことで歯の機能を最大限に維持することが可能です。

近年、この治療法が注目されている理由は、患者の自然歯をできるだけ残したいというニーズが高まっていることにあります。ヘミセクションは、インプラントやブリッジなどの補綴治療よりも自分の歯を活かすため、咀嚼感覚が維持される点でも利点が多いです。

ヘミセクションが適応されるケース

適応される歯の特徴と条件

対象となる歯は、奥歯の大臼歯のみです。大臼歯の歯根は上顎で3本、下顎で2~4本あります。その一部の歯根が損傷しているが、他の部分は健康である場合にヘミセクションが適応されます。

また、残す歯根が咬合力に耐えられること、十分な長さがあることなどが条件として挙げられます。この治療法は、患者の全身状態や口腔内の環境を総合的に判断した上で決定されます。

他の治療法との比較(抜歯、根管治療、インプラント)

ヘミセクションは、抜歯やインプラントと比較して、患者自身の歯を残すことができるため、咀嚼感覚や自然な見た目が保たれる点で優れています。ヘミセクション前提の根管治療は、問題のない歯根のみが治療の対象になります。また、インプラントに比べて治療コストが低く、手術の侵襲性も比較的小さいため、患者にとって身体的負担が軽減されます。

寿命

ヘミセクションを行った歯は土台としての機能は不十分です。従って、数年しか持たないこともあります。抜歯時期を先延ばしするための治療と思った方が良いでしょう。

ヘミセクションの治療の流れ

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01

初期診断と必要な検査

ヘミセクションを行う前には、まず歯科医による詳細な診断が必要です。具体的には、レントゲン検査やCTスキャンを使用して、歯根や周囲の骨の状態を評価します。

歯周組織の評価も重要で、歯根の健康な部分が十分に機能するかどうかを判断します。また、感染の有無や歯周ポケットの深さなども確認し、治療の適応性を見極めます。これにより、最も効果的な治療計画が立てられます。

下顎6番が歯根破折した症例

下顎6番の近心根(手前の歯根)が歯根破折しました。遠心根(奥側の歯根)は使えそううです。

下顎6番が歯根破折

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02

手術の具体的なプロセス

ヘミセクションの手術は、まず問題のある歯根を特定し、その部分を切除することから始まります。歯肉を切開し、歯根の分割を行い、損傷した部分を除去します。

この際、周囲の歯肉や骨にできるだけダメージを与えないように慎重に進めます。その後、残った健康な部分を補強し、必要に応じてブリッジやクラウンなどで修復を行います。この手術は高度な技術を要するため、経験豊富な歯科医によって行われることが推奨されます。

近心根を抜歯

下顎6番を縦に半分に切断して近心根のみを抜歯します。

近心根を抜歯

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手術後の回復と経過観察

手術後は、数日から数週間の間で腫れや痛みが生じることがありますが、これらは通常、処方された鎮痛剤や抗生物質で管理できます。患者には、治癒を促進するための適切な口腔ケアを指導いたします。

また、経過観察のために定期的な歯科検診が必要です。手術部位の回復状況や残存歯の安定性を確認し、必要に応じて追加の処置を行います。

ブリッジ修復

5番と6番の遠心根を土台とする3連ブリッジを装着しました。この治療は保険適用されます。

ヘミセクションのメリットとデメリット

メリット

ヘミセクションの最大のメリットは、自然歯をできるだけ残すことで、咀嚼機能や審美性を維持できる点です。自然な歯はインプラントや義歯と比較して、患者にとってより自然な感覚を提供します。また、他の治療法と比べてコスト面でも優れており、保険適用が可能な場合もあります。さらに、手術の侵襲性が比較的小さいため、患者の身体的負担も軽減されます。

デメリット

一方で、ヘミセクションにはいくつかのデメリットも存在します。この治療法は高度な技術を要し、全ての歯科医院で提供されているわけではありません。また、長期的な安定性についても課題があり、残存する歯根の健康状態を維持するためには、継続的なケアが必要です。さらに、手術後に残った部分が再び病変を起こすリスクもあるため、適切なアフターケアが欠かせません。

ヘミセクション後のケアと維持方法

手術後のケア

ヘミセクション後の適切なケアは、治療の成功を左右します。患者には、手術部位を清潔に保つためのブラッシング方法が指導されます。特に、柔らかい歯ブラシを使用し、歯肉を傷つけないように注意深く磨くことが重要です。また、フッ素洗口剤を使用することで、残った歯の強化を図り、再発を防ぐことが期待されます。抗生物質の服用も、感染予防の観点から指示されることが一般的です。

定期的な歯科検診の重要性

定期的な歯科検診

ヘミセクション後の定期的な歯科検診は、治療後の歯の安定性を確認し、早期に問題を発見するために非常に重要です。少なくとも半年に一度は歯科医を訪れ、レントゲン検査や口腔内のチェックを受けることが推奨されます。これにより、歯周病の進行や再発を防ぎ、長期的に健康な歯を維持することができます。

ヘミセクションを受ける際の注意点

治療を受ける前に確認すべきこと

ヘミセクションを受ける前には、治療に関する十分な理解を深めることが大切です。事前に歯科医としっかり相談し、治療のリスクや予想される結果について確認しましょう。また、治療後のケアが必要であることも理解し、その準備を整えておくことが求められます。特に、治療後の生活習慣や口腔ケアの改善が重要です。

治療に適した歯科医院の選び方

ヘミセクションは高度な技術を必要とするため、経験豊富な歯科医がいる医院を選ぶことが重要です。また、治療設備やアフターケア体制が整っているかどうかも重要なポイントです。信頼できる歯科医院を選ぶことで、治療の成功率を高めることができます。

手術中は局所麻酔を使用するため、痛みを感じることはほとんどありません。しかし、手術後に一時的な痛みや腫れが生じることがあります。これらは通常、鎮痛剤でコントロール可能です。痛みの程度は個人差がありますが、ほとんどの患者が耐えられるレベルです。

ヘミセクションは、一般的に保険適用される治療法ですが、適用範囲は医院や患者の状態によって異なる場合があります。事前に歯科医院に確認し、治療費についての説明を受けることが推奨されます。特に、自由診療との違いや追加費用についても十分に理解しておくと良いでしょう。

ヘミセクション後の歯の寿命は、患者の口腔ケアの質や全体的な歯周組織の健康状態によって大きく左右されます。適切なケアと定期的な歯科検診を受けることで、何年にもわたって歯を維持することが可能です。平均的には、10年以上健康に保つことができるケースも多く報告されています。

当院では歯科口腔外科分野の処置を、適切な検査・診断の元に実施しており、抜歯が必要と診断されたケースでも、ヘミセクションを行うことで歯を残せた成功例があります。できる限り痛みやリスクを抑えた施術を心がけ、術後のケアまでしっかり実施致します。江戸川区篠崎にて、ヘミセクションなどの出来るだけ抜歯しない治療をご希望の方は、お気軽にご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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