過剰歯とは

  • 永久歯の正常の歯の本数は28本(親知らずを含めれば32本)です。これより多い余分な歯のことを過剰歯と言い、永久歯に発生しやすく乳歯では殆どありません。
  • 過剰歯の中で最も頻度が高い正中過剰歯は、永久歯の正中離開(すきっ歯)の原因となり子供の時に抜歯するのが理想的です。
  • 大人になるまで放置した逆性正中過剰歯は、鼻腔近くまで移動しやすく抜歯が困難になることもあります。
  • 過剰歯の抜歯は日帰り手術が可能で、費用は保険適用です。

正中過剰歯が引き起こす正中離開(すきっ歯)のリスク

 高校生で、上顎前歯の裏に2本過剰歯が!

高校生です。上の前歯の裏に2本過剰歯が生えてきました。気持ち悪いだけで歯並びに影響はなさそうです。放置しても大丈夫でしょうか?

 7歳の子供の前歯に過剰歯が二本!

7歳の子供の前歯に過剰歯が二本見つかりました。1本の大人の歯は斜めに生えてきており、もう一本は埋まったままの状態です。 友人のお嬢さんは過剰歯の手術を総合病院に2泊3日入院して全身麻酔下で行ったとのこと。近くの歯医者で抜いても大丈夫なのか少し不安です。

過剰歯を放置すると大人の歯並びが悪くなる事は分かっていても、小さな子供が骨に埋まった過剰歯を抜歯する際、痛み無く出来るのかなど不安ですよね。

ここでは、過剰歯の特徴や正中離開(すきっ歯)を引き起こす正中過剰歯の抜歯手術、費用などについて解説します。

正中離開(すきっ歯)の原因となる正中過剰歯

正中離開
正中離開

子供の上顎前歯に起こった正中離開

写真は正中過剰歯が骨の中に埋まった状態で存在することが原因で起こった正中離開(すきっ歯)の症例です。

上顎中切歯の間に隙間が出来ています。大人になるまで放置しても正中離開は治りません。

正中過剰歯をそのままにしておくと歯列不正の原因となるばかりか、歯並びに影響を与えないまでも、両前歯の根が吸収(生理的に短くなっていく現象)を起こしたりもします。

過剰歯の抜歯適正年齢

子供の時に抜歯を行えば、正中離開は自然と閉鎖することが多いです。しかし、大人になって正中過剰歯の抜歯を行っても、矯正治療をしない限りすきっ歯は治りません。

両前歯の歯根が完成した時点(7歳くらい)で過剰歯の抜歯を考えるのが良いでしょう。

みにくいアヒルの子時代

上顎中切歯間に少し隙間を空けて萌出することは正常です。この時期を”みにくいアヒルの子の時代”と呼びます。側切歯が萌出する力で次第に正中離開は閉じてきます。

しかし、正中過剰歯があると正中離開はそのままで閉じることはありません。

子供の正中離開(すきっ歯)

子供の正中離開(すきっ歯


子供の上顎中切歯間が大きく開いています。この様な状態の時期をみにくいアヒルの子時代と呼びます。

※ 歯垢染め出し液を使った状態です。

同症例のレントゲン写真


レントゲン写真を取ると正中過剰歯は認められません。放置しても自然と閉じてくると思われます。

子供の正中過剰歯のレントゲン画像

6歳児の完全埋伏逆性過剰歯レントゲン画像

6歳児の完全埋伏逆性過剰歯レントゲン画像


6歳の子供の上顎前歯がなかなか萌出せず、歯の間に隙間が出来ていることを主訴として来院しました。

レントゲンを撮ると鼻腔に向いて埋伏している正中過剰歯が確認出来ます。過剰歯に接した中切歯の歯根は未完成の状態です。

歯根の完成を待って抜歯する予定となりました。

同症例8歳時のレントゲン画像


8歳の時点で、正中過剰歯に隣接する中切歯の歯根がほぼ完成したので抜歯をすることになりました。

このまま逆性埋伏過剰歯を放置すると鼻の近くまで移動してしまい、抜歯が極めて困難になることがあります。

8歳の時点でも正中離開は少し残っています。

7歳児の完全埋伏逆性過剰歯レントゲン画 像


7歳児の逆性埋伏過剰歯です。両中切歯間の位置にあるため正中離開が顕著に起きています。

8歳児のレントゲン画像

8歳児の完全埋伏逆性過剰歯レントゲン画 像


8歳児の逆性埋伏過剰歯です。中切歯の歯根より高い位置にあるため正中離開は起きていません。

奥歯に発生した過剰歯が引き起こすプラークコントロールの課題

下顎奥歯の過剰歯
正中離開

奥歯の過剰歯

下の奥歯(大臼歯と小臼歯)との間に萌出した過剰歯です。

永久歯列の歯並びには影響与えていないものの矢印で示した所に歯垢(プラーク)が残りやすく、虫歯や歯周病になりやすい場所が出来ています。

上下の噛み合わせに関与していないため、抜歯するのが適当と考えられます。

過剰歯を放置するリスク:歯並びと口腔衛生に与える影響

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過剰歯をそのまま放置した時の問題点

痛みが無いため放置されがちですが、すきっ歯に代表されるように歯並びに影響があったり、過剰歯が邪魔して歯磨きが上手く出来ないためプラークコントロール不良になり、虫歯や歯周病の原因になりやすいことが問題です。

また、矯正治療を行う際に過剰歯があると正しく並ばないため、事前に抜歯する必要があります。

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過剰歯の原因

歯は顎骨の中で歯胚と呼ばれるものから発生します。外傷などによって強い力が加わった場合、歯胚が分裂してしまうことが原因であるとか、遺伝的要因が関与しているなど諸説があります。しかし、明確な原因は特定に至っていません。

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好発部位

過剰歯の98%は上顎の前歯に発生します。特に中切歯の間の過剰歯を正中過剰歯と呼びます。次いで下顎の前歯部、小臼歯部、20歳を超えた大人では、上下顎の親知らずの後方などです。

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過剰歯の割合

過剰歯の発生頻度は1~3%で、男女比では約3対1です。7~8割が1本だけの過剰歯で、2本3本と増えるに従い発生比率は下がります。

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萌出・埋伏状態

骨の中に埋まった埋伏過剰歯が約7割です。萌出方向が正常な順正過剰歯は、歯茎から萌出する可能性が高く抜歯は容易です。一方、鼻の方を向いた逆性過剰歯では骨に埋まったままになります。また、水平に埋まる水平過剰歯も同様です。

過剰歯が鼻腔近くに存在すると鼻に生える事もあり得ます。また、鼻腔内に存在する過剰歯もあり、耳鼻咽喉科や口腔外科が共同で抜歯にあたることもあります。

埋伏過剰歯は、歯列不正などが原因で来院した時にパノラマエックス線写真等で発見されることが多いです。

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過剰歯の形態

正常な歯の形に近いものから萎縮した歯の形に見えないものまで様々です。

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多発性過剰歯

稀に数100本と生えてくる多発性過剰歯がありますが、原因ははっきりしていません。

完全埋伏した正中過剰歯の抜歯手術:手術の流れと注意点

子供の過剰歯の日帰り抜歯手術
子供の過剰歯の日帰り抜歯手術

完全埋伏した正中過剰歯の抜歯手術

写真は内側の歯茎を切開剥離した状態です。過剰歯の抜歯は日帰り手術が一般的です。

手術時間

骨に完全埋伏した正中過剰歯抜歯の手術時間は約1時間を想定しています。

 矮小歯の形をした過剰歯
 矮小歯の形をした過剰歯

正中埋伏過剰歯抜歯後の画像

歯冠部は犬歯の様な形をしています。まだ十分に歯根は形成されていません。過剰歯は正常の歯の形に近いものから委縮して小さくなったものまで様々な形があります。

抜歯手術の手順

STEP

局所麻酔

注射の痛みを和らげるため粘膜に表面麻酔を行います。次に針無し麻酔器のシリジェットで注射部位を事前に麻酔します。数分待って浸潤麻酔の注射を打ちます。


STEP

口蓋粘膜を切開剥離

抜歯部位が完全に麻酔されたことを確認後、口蓋粘膜(前歯内側の歯茎の粘膜)を歯列に沿って切開し骨から剥がします。


STEP

過剰歯周囲の骨を削除

過剰歯周囲の骨を削除して抜歯できるようにします。


STEP

抜歯

通法通り抜歯します。


STEP

縫合

抜歯が終わったら口蓋歯肉を元の位置に戻し、縫合して手術終了です。


抜歯後ほとんどの症例で腫れや痛みが出るので、抗生物質と痛み止めを投与します。

約1週間後に抜糸を行います。


全身麻酔で抜歯することも

治療中泣いてしまい治療に非協力的な恐怖心の強い子供は、大学病院などの口腔外科で全身麻酔下で手術することがあります。入院期間は2泊3日が多いようです。

過剰歯の日帰り抜歯手術の費用

保険診療

保険適用です。

項目
保険点数
骨性完全埋伏過剰歯
1,080点
正常に萌出した過剰歯前歯:160点
奥歯:270点
※ 正中過剰歯で完全に骨の中に埋伏している場合の抜歯点数は1,080点です。従って、3割負担の場合の抜歯費用は3,240円になります。※ 麻酔費用は含まれます。
さらに、初診料、再診料、処方箋料、レントゲン撮影料、各種管理料などがかかる場合があります。薬は投薬内容により費用が異なりますが、薬局に支払う必要があります。
入院して全身麻酔下での過剰歯の抜歯費用は、親知らずの抜歯の費用を参照して下さい。全身麻酔で親知らず4本を同日に一括抜歯する費用よりも少し安くなります。

民間保険で手術給付金は?

保険会社の契約内容により異なるかもしれませんが、手術給付金は出る会社が多いようです。一度問い合わせをしてみる価値はあります。

当院では歯科口腔外科分野の処置を、適切な検査・診断の元に実施しております。できる限り痛みやリスクを抑えた施術を心がけ、術後のケアまでしっかり実施致します。江戸川区篠崎にて、過剰歯の抜歯治療をご希望の方は、ふかさわ歯科クリニック篠崎までお気軽にご相談ください。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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