歯ぎしりとは?原因から健康リスク、治療法まで徹底解説!

歯ぎしりとは何か?

歯ぎしりとは何か?

歯ぎしりとは

歯ぎしりとは、上下の歯を無意識にこすり合わせたり、強く噛みしめたりする習慣のことを指します。大きく分けると、以下の2種類に分類されます。

  • 覚醒時歯ぎしり:日中、意識しないうちに歯を食いしばったり、噛みしめることを指します。主にストレスや集中時に発生しやすい傾向があります。
  • 睡眠時歯ぎしり:歯ぎしりは睡眠中に上下の歯を擦り合わせ「キリキリ」と歯の擦れる音を出します。本人は気がつかないため、家族から指摘されて初めて気が付くことがほとんどです。そのため、同室者の睡眠を妨げるばかりか、同室者の睡眠に悪影響を与えないかと心理的負担になり、睡眠の質が下がってしまうことが問題です。睡眠障害やストレスとの関連が指摘されています。

歯ぎしり・食いしばりがもたらす口腔内の問題

Problem

歯の破折、亀裂

歯の亀裂、さらには破損に至るケースもあります。写真は、歯ぎしりが強い方の歯が真っ二つに割れてしまう場合があることを示しています。特に、上顎の第一小臼歯や第二小臼歯に起こりやすい傾向があります。

歯の破折は神経が残っている歯でも発生することがあり、このように割れてしまった歯は抜歯以外の選択肢がない場合がほとんどです。

歯の破折
歯の破折

Problem

歯根破折

写真は、神経を取った後に差し歯を入れている歯の様子です。神経を取ることで歯全体が弱くなり、歯根が割れやすくなる傾向があります。特に歯ぎしりが強い方では、そのリスクがさらに高まります。

歯根破折
歯根破折

Problem

くさび状欠損

くさび状欠損とは、歯の根元が削れたように見える現象のことです。以前は、研磨剤の入った歯磨き粉を使用して横磨きを行うことが原因と考えられていましたが、現在では、歯ぎしりや食いしばりによって歯の根元に応力が集中することが主な原因とされています。

このくさび状欠損では、歯の表面にあるエナメル質が剥がれ、知覚を感じやすい象牙質が露出することで、知覚過敏を引き起こすことがあります。

くさび状欠損
くさび状欠損

Problem

知覚過敏

冷たい物や熱いものが口の中に入るやいなや痛みを感じ30秒ほど続くのが知覚過敏です。
歯軋りは知覚過敏の間接的原因です。

知覚過敏
知覚過敏

Problem

歯のすり減り、摩耗

大臼歯の咬合面や前歯の切端が極端にすり減ることがあります。歯のすり減りが象牙質にまで達すると、歯がしみるような知覚過敏が起こることがあります。

さらに、写真のような場所に骨の隆起が生じる場合があります。歯がすり減っている患者さんでは、骨隆起を伴っているケースがしばしば見られます。このことからも、歯ぎしりや食いしばりが存在している可能性が推測されます。

歯のすり減り
歯のすり減り

Problem

骨隆起(外骨症)

上顎では口蓋部の中心に口蓋隆起、下顎では小臼歯舌側に下顎隆起という骨の添加が起こります。これは歯ぎしりによって、歯に強い力がかかる事で歯根周囲の骨を強化しようとする生体防御反応と考えられています。

骨隆起自体には特に問題はありませんが、余り骨隆起が大きくなりすぎると、入れ歯を作る際に邪魔になります。そんな時には骨隆起を外科的に削除することもあります。

骨隆起(外骨症)
骨隆起(外骨症)

Problem

歯周病の重症化

歯ぎしりによる持続的な力は、歯周ポケットの形成、歯槽骨の破壊、歯の動揺、歯肉退縮、さらには歯の移動といった一連のメカニズムを引き起こし、歯周病を重症化させる一因となります。

歯周病の重症化
歯周病の重症化

歯ぎしり・食いしばりが引き起こす健康リスク

Problem

肩こり

歯ぎしりは、肩こりの原因になることがあります。歯ぎしりをする際、顎の筋肉が過剰に緊張し、その負担が顎関節や周囲の筋肉に伝わります。この筋肉の緊張は首や肩の筋肉にまで広がり、血流を悪化させることで肩こりを引き起こします。

特に、睡眠中に無意識で歯ぎしりを続けている場合、長時間にわたって筋肉が緊張し、翌朝に肩や首の痛みとして現れることが多いです。さらに、顎関節症を伴う場合は、頭痛や首のこりも加わることがあります。

肩こり
肩こり

Problem

頭痛

歯ぎしりは頭痛の原因となることがあります。歯ぎしりによって顎の筋肉が過剰に緊張し、その負担が顎関節や周囲の筋肉に広がることで、緊張型頭痛が引き起こされます。

また、歯ぎしりに伴う筋肉の過度な使用は、血流の悪化や神経への圧迫を引き起こし、さらに痛みを悪化させることがあります。特に睡眠中の歯ぎしりは無意識で長時間続くため、朝起きた際に頭痛やこめかみの痛みを感じるケースが多いです。

頭痛
頭痛

Problem

顎関節症

顎関節症とは、顎の関節に痛みが生じたり、「カクン」という音がする状態を指します。歯ぎしりの影響により、咀嚼筋の緊張が起こり、それが咀嚼筋の肥大、咀嚼筋の疼痛、顎関節症、さらに関節円板の前方転移といった一連の流れで顎関節症へと発展する可能性が指摘されています。

近年では、顎関節症の主な原因の一つとして、TCH(歯牙接触癖)の影響が強いことが明らかになっています。

顎関節症
顎関節症

歯ぎしりと食いしばりの違い

食いしばり
食いしばり

食いしばりとは

夜間、日中問わず無意識の内に上下の歯を強く噛み締めている状態です。

スポーツ選手、例えばゴルファーがドライバーを打つ時、野球選手がボールを打つ時、ウエートリフティングの選手がバーベルを上げる時に上下の歯を強く噛み締めますが、「食いしばり」はそれらとは別の反応です。

歯ぎしりと食いしばりの顎の動きの違い

歯ぎしりの動き
歯ぎしりの動き

歯ぎしりは睡眠中に下顎を左右に動かし上下の歯を擦り合わせます。そのためグライディング型の歯ぎしりと呼ぶこともあります。

食いしばりの動き
食いしばりの動き

食いしばりは垂直方向に上下の歯を強く噛み締めます。そのため、クレンチジング型の歯ぎしりと呼ぶこともあります。

歯ぎしり・食いしばりの主な原因

ストレスと歯ぎしり

ストレスがかかると、脳が筋肉を過剰に刺激し、顎や咬筋が緊張することで歯ぎしりが発生しやすくなります。また、夜間に無意識の歯ぎしりが行われ、朝に顎の痛みや疲労感を感じることがあります。

ストレス管理は歯ぎしり予防に重要です。リラクゼーション法、十分な睡眠、適度な運動などが効果的とされています。

噛み合わせの問題

噛み合わせの問題は歯ぎしりの重要な原因の一つです。噛み合わせがずれていると、歯や顎に掛かる力が偏り、その負担が顎関節や口腔周囲筋に過剰なストレスを与えます。また、歯列不正や詰め物・被せものの高さが問題になることもあります。

睡眠障害との関係

経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)

歯ぎしりは、睡眠障害、特に睡眠時無呼吸症候群(SAS)との関連が指摘されています。SASでは、睡眠中に呼吸が一時的に止まることがあり、その際に身体がストレス反応を起こして歯ぎしりが誘発されることがあります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療法には、原因や症状に応じたアプローチが用いられます。軽度の場合、生活習慣の改善が有効です。体重管理、禁酒、禁煙、適切な睡眠姿勢(横向き睡眠)などが推奨されます。中等度から重度のSASには、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)というマスク型装置を使い、睡眠中に気道を確保する方法が一般的です。また、顎を前方に固定する下顎前方移動装置(マウスピース)も効果がある場合があります。

歯ぎしりのセルフチェック方法

朝の顎の痛みや疲労感の確認

朝起きたときに顎の痛みや疲労感を感じる場合、それは歯ぎしりのサインかもしれません。 特に、顎関節周囲や咬筋に違和感がある場合、睡眠中に歯ぎしりをしている可能性が高いです。これを定期的にチェックし、継続的に痛みがある場合は歯科医に相談しましょう。

鏡で歯の摩耗やヒビをチェック

鏡で歯の摩耗やヒビをチェック

鏡を使って自分の歯を観察することも有効です。歯の先端が平らになっていたり、歯の表面にヒビが見られる場合、歯ぎしりの可能性が考えられます。

スマートフォンのアプリによる歯ぎしりの確認

スマートフォンのアプリや専用のセンサーを活用し、睡眠中の歯ぎしりの音や動きを記録する方法もあります。これにより、どのくらい頻繁に歯ぎしりをしているかを客観的に把握できます。

歯科での治療

ナイトガードの使用

ナイトガードの使用

ナイトガードは、歯ぎしりによる歯や顎へのダメージを軽減するための装置です。歯の摩耗や顎関節への負担を抑え、歯や顎の健康を守ります。

歯医者で歯の型を採取して作成し、夜寝ている間に上の歯列に装着します。

ナイトガードには、ハードタイプと写真のようなソフトタイプの2種類があります。(通常、保険が適用されます。)

治療目的

ナイトガードは下顎を安静にするために歯ぎしりを抑制する効果があると考えられています。また、歯ぎしりの音を防止する目的で用いられたりもします。

ナイトガードは上下の歯のクッションの役割を果たすため顎関節や歯を保護する目的でも使用されます。

ナイトガードの欠点

  • ナイトガードを長期化使用すると顎位に変化が起こってしまう危険性があります。ナイトガードをやめると多くは再発します。
  • 強い歯ぎしりを有する患者さんは、1ヶ月ほどでハードタイプマウスピースであっても穴が開いてしまることもしばしばです。(保険では作り替えは不可です。)

自分で治す方法

自分で歯ぎしりを治す方法

Method

 自己暗示療法

睡眠前に「唇は閉じ、上下の歯はわずかに離れている」と心の中で30回唱えてください。  自己暗示療法が有効なケースが数多く報告されていますので試してみてください。

Method

 意識改革

日中から「唇を閉じて上下の歯が接触しない状態を保つこと」を常に意識する。

Method

 ストレス管理法

ストレスは歯ぎしりの主な原因の一つです。マインドフルネスやヨガ、深呼吸などのリラクゼーション法を取り入れることで心身の緊張をほぐします。さらに、カウンセリングを受けてストレスの原因を明確にし、適切な対応策を講じるのも効果的です。

Method

 睡眠環境の改善

快適な睡眠環境を整えることも歯ぎしりの予防に役立ちます。適切な高さと硬さの枕を選び、体に合った寝具を使用しましょう。寝室の温度や湿度を調整し、リラックスした状態で眠れる環境を作ることが大切です。

Method

 運動や食生活の見直し

筋肉の緊張を和らげるために、適度な運動やストレッチを日常生活に取り入れましょう。また、食生活の改善も重要です。カフェインやアルコールの摂取を控え、栄養バランスの取れた食事を心がけることで、歯ぎしりのリスクを減らすことができます。

歯ぎしりに関する最新情報と研究

近年、歯ぎしりの治療法として注目されているのが ボツリヌストキシン療法 です。この方法では、顎の咬筋にボツリヌストキシンを注射して筋肉の過剰な収縮を抑制し、歯ぎしりを軽減します。この治療法は、特に筋肉の過剰な緊張が原因で起こる歯ぎしりに効果的で、顎の痛みや疲労感の軽減にも寄与します。

乳幼児期の歯ぎしり

生まれて5~10カ月すると、上下の乳中切歯が生えてきます。この頃、歯ぎしりが起こることがあります。

赤ちゃんの歯ぎしりは、生えたての乳歯が気になったり、どこで噛んだらいいのか試行錯誤をする生理的現象だと考えられています。赤ちゃんの歯ぎしりは成長するに従い自然と消失するものですから心配せずのんびりと構えても差し支えありません。

子供(児童・学童期)の歯ぎしり

子供の歯ぎしり
子供の歯ぎしり

 対策の必要なし

写真は子供の歯ぎしりの口腔内写真です。歯ぎしりによって前歯が磨り減って短くなっていますが、心配する必要はありません。

2歳を過ぎた頃に乳歯列は完成します。この頃から顎の成長が活発になり、口腔周囲筋や顎関節も様々な影響を受けながら発達します。こういった成長の過程で歯ぎしりが癖になってしまうことがあります。

しかし、子どもの身体組織は柔軟性があり、症状が出る事は少ないと思われます。また、乳歯は永久歯に比べやわらかいため、すり減りが顕著に現れることがありますが、心配する必要ありません。

しかし、極度の歯ぎしりがある場合には、骨格的な歯列不正が原因のこともあります。その場合には、早期に専門医を受診されることをお薦めします。

中学生(思春期)の歯ぎしり

中学生(思春期)の歯ぎしり
中学生(思春期)の歯ぎしり

 ストレスが原因

中学生の12歳を過ぎる頃、乳歯はすべて抜け落ち永久歯へと交換します。中学生や高校生になると友人関係や受験勉強などで強いストレスが加わると歯ぎしりが起こることがあります。

歯ぎしりは上下の歯をする強く擦り合わせることで歯に負担がかかります。そのため、知覚過敏の症状が出たり、虫歯でもないのに硬い物を噛んだ時に痛いといった症状が出る事があります。

ストレスが原因であれば、ストレスが除去されれば、自然治癒することがほとんどです。ただし、歯ぎしりが習慣化してしまった場合には上記の処置が必要になります。

歯ぎしりの改善や治療は可能ですが、完全に「治る」かどうかは原因によります。ストレスや噛み合わせが原因の場合、適切な治療や管理によって症状が軽減することが期待できます。しかし、無意識の行動であるため、完全に治るには時間がかかることもあります。継続的な対策と歯科医のサポートが重要です。

ナイトガードの使用期間は個人差があります。歯ぎしりの頻度や強度が減少すれば、使用を中止できる場合もあります。ただし、原因が解消されない場合や再発のリスクがある場合は、長期的に使用を続けることが推奨されることもあります。定期的に歯科医に相談し、必要性を判断してもらうことが大切です。

子供の歯ぎしりは成長過程で一時的に見られることが多く、通常は深刻な問題にはなりません。しかし、強い歯ぎしりが続く場合、歯の摩耗や顎の負担が増加する可能性があります。また、永久歯に影響を及ぼすこともあるため、心配がある場合は歯科医に相談することをおすすめします。適切な対応で予防や改善が期待できます。

歯ぎしりは、多くの方が無意識のうちに抱える習慣です。歯ぎしりを放置すると、歯の摩耗や亀裂、顎の痛み、さらには歯周病や頭痛、肩こりといった健康への影響が広がる可能性があります。

当院では、歯ぎしりの早期発見と適切な治療に力を入れています。ナイトガードの作製や噛み合わせの調整、ストレス管理のアドバイスなど、患者さま一人ひとりに合った対応をご提案します。睡眠時や日中の顎の違和感、歯のすり減りが気になる場合は、お気軽にご相談ください。

大切な歯を守り、快適な生活を送るために、当院と一緒に対策を始めましょう。

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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