目次

「インプラント治療は、どのくらいの期間がかかるの?」
「できるだけ短期間で治療したい」
「治療中に歯がない期間はある?」

インプラント治療を検討する際、治療期間を気にされる方は少なくありません。

インプラントは、人工歯根を顎の骨に埋め込み、骨と安定するのを待ってから人工歯を装着するため、治療期間は数か月〜半年程度がひとつの目安です。

ただし、抜歯後の治癒を待つ場合や骨造成が必要な場合には、半年〜1年以上かかることもあります。

一方、骨や歯ぐきなどの条件が整っていれば、抜歯と同時にインプラントを埋入する「抜歯即時埋入」などにより、治療期間や手術回数を減らせる場合があります。

この記事では、インプラント治療期間の目安や治療の流れ、長引くケース、期間を短縮できる可能性のある方法について解説します。

インプラント治療では、インプラント体を埋入してすぐに最終的な人工歯を装着するとは限りません。

埋入したインプラントが顎の骨の中で安定するまで、一定の治癒期間が必要になるためです。

治療期間を左右する主な要因には、

  • 顎の骨の量や質
  • 抜歯の有無
  • 骨造成の有無
  • インプラントを埋入する部位
  • 歯周病や感染の有無
  • 全身状態
  • 喫煙習慣
  • 採用する治療方法

などがあります。

そのため、「インプラントなら○か月で終わる」と一律に考えるのではなく、精密検査を受けたうえで治療スケジュールを確認することが大切です。

上顎と下顎でも治癒期間は異なる

上顎4番欠損
上顎4番欠損
上顎4番欠損にインプラント埋入
上顎4番欠損にインプラント埋入

一般的に上顎は下顎と比較して骨質が軟らかいことが多く、インプラントが安定するまで比較的長い期間を必要とすることがあります。

ただし、現在はインプラントの種類や表面性状、埋入時の固定状態、骨質などによって治癒期間が異なるため、「上顎だから○か月、下顎だから○か月」と一律には決められません。

骨との結合状態を確認しながら、人工歯を装着できる時期を判断します。

一般的なインプラント治療は、次のような流れで進みます。

治療ステップ内容期間の目安
初診・精密検査診察、画像検査、治療計画数日〜数週間
抜歯・治癒必要な場合のみ数週間〜数か月
インプラント埋入人工歯根を顎骨へ埋入通常1日
治癒期間インプラントの安定を待つ数か月
人工歯の製作型取り・咬合調整など数週間程度
人工歯の装着最終的な人工歯を装着状態確認後

実際の期間は治療方法や口腔内の状態によって大きく異なります。

インプラント治療では、手術前の診断が非常に重要です。

まず、虫歯や歯周病の状態、残っている歯、噛み合わせ、顎の骨などを確認します。

必要に応じて、

  • レントゲン検査
  • CTによる画像診断
  • 口腔内写真
  • 歯周組織の検査
  • 噛み合わせの確認
  • 全身状態や服用薬の確認

などを行います。

全身疾患や服用している薬によっては、主治医との連携が必要になる場合もあります。

検査結果をもとに、インプラントの本数や位置、骨造成の必要性、治療期間などを検討します。

まだ歯が残っている場合には、抜歯する時期とインプラントを埋入する時期によって治療期間が変わります。

抜歯即時埋入

条件が整っている場合には、**抜歯と同じ日にインプラントを埋入する「抜歯即時埋入」**を行えることがあります。

抜歯後の治癒を待ってから改めて手術する方法と比較して、治療期間や手術回数を減らせる可能性があります。

ただし、すべての症例に適応できるわけではありません。

骨の状態、感染の程度、歯ぐきの状態、インプラントを十分に固定できるかなどを総合的に判断します。

抜歯後に治癒を待ってから埋入する方法

感染が強い場合や骨の状態などによっては、抜歯後に一定期間の治癒を待ってからインプラントを埋入します。

治療期間は長くなりますが、無理に期間を短縮することより、インプラントを安定した環境に埋入することが重要です。

インプラントを顎の骨に埋入した後は、インプラントが骨の中で安定するまで待ちます。

この期間は、

  • 骨質
  • 骨量
  • 埋入部位
  • インプラントの初期固定
  • 骨造成の有無
  • 全身状態

などによって異なります。

十分な安定が確認できたら、人工歯を製作するための型取りや口腔内スキャンを行います。

その後、歯の形、色、噛み合わせなどを確認しながら人工歯を製作し、インプラントへ装着します。

上部構造(人工歯)の装着と最終調整
上部構造(人工歯)の装着と最終調整

骨の量が不足している

インプラントを安定させるためには、一定量の顎の骨が必要です。

歯周病や長期間の欠損などによって骨が少なくなっている場合には、骨造成が必要になることがあります。

代表的な方法には、

  • GBR(骨誘導再生法)
  • サイナスリフト
  • ソケットリフト

などがあります。

骨造成とインプラント埋入を同時に行える場合もありますが、骨の不足が大きい場合には、先に骨造成を行い、骨の成熟を待ってからインプラントを埋入することがあります。

その場合は治療期間が数か月以上延びることがあります。

サイナスリフト

GBR

歯周病や感染がある

重度の歯周病や歯根周囲の感染がある場合には、感染をコントロールしてからインプラント治療を進めることがあります。

感染が残った状態で無理に治療を進めるのではなく、口腔内環境を整えることが重要です。

糖尿病などの全身疾患がある

糖尿病などの全身疾患があるからといって、必ずしもインプラント治療ができないわけではありません。

ただし、血糖コントロールが不十分な場合などには、感染や治癒に影響する可能性があります。

そのため、必要に応じて医科の主治医と連携し、全身状態を確認しながら治療時期を判断します。

血圧が高い

血圧が十分にコントロールされていない場合には、安全に外科処置を行うため、治療を延期したり、医科への受診をお願いしたりすることがあります。

普段服用している薬についても、自己判断で中止せず、必ず歯科医師へ伝えてください。

喫煙している

喫煙はインプラント治療における重要なリスク因子の一つです。

喫煙によって歯ぐきや骨への血流が低下し、創傷治癒やインプラント周囲組織の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

インプラントを長く安定させるためにも、禁煙・減煙について相談することをおすすめします。

骨粗鬆症の治療薬を使用している

骨粗鬆症の治療で、ビスフォスフォネート製剤やデノスマブなどを使用している場合には注意が必要です。

これらの薬剤を使用している方では、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)などを考慮して治療計画を立てます。

薬剤の種類、投与方法、使用期間、基礎疾患などによってリスクが異なるため、自己判断で薬を中止せず、歯科医師と処方医の双方に相談することが重要です。

ビスフォスフォネート

インプラント治療では、単純に「早く終わらせる」ことが最優先ではありません。

骨や歯ぐきが治癒するために必要な時間を確保することが、長期的な安定につながります。

そのうえで、条件が整っている場合には、治療工程を減らしたり、歯がない期間を短くしたりできる方法があります。

抜歯即時埋入

抜歯した日にインプラントを埋入する方法です。

抜歯後の治癒期間とインプラント治療の一部を重ねられるため、適応できれば治療期間の短縮につながる可能性があります。

即時負荷

通常はインプラント埋入後、十分な安定を確認してから人工歯を装着します。

一方、一定の条件を満たす場合には、手術当日または早期に仮歯を装着する「即時負荷」が選択できることがあります。

特に前歯などでは、歯がない期間を短くできることが大きなメリットです。

ただし、「手術当日に歯が入る=治療がその日に完了する」という意味ではありません。

骨との結合を待つ期間や、その後の最終的な人工歯の製作は必要です。

また、骨質や初期固定、噛み合わせなど、一定の条件を満たす必要があります。

デジタル技術を利用した治療

口腔内スキャナーやCAD/CAMなどのデジタル技術を活用することで、型取りや人工歯の設計・製作を効率化できる場合があります。

従来法と比較して、

  • 型取りの負担を軽減できる
  • データの保存・共有がしやすい
  • 補綴物の設計をデジタル化できる

といったメリットがあります。

ただし、製作期間は使用するシステムや技工工程によって異なり、必ず即日・数日で完成するわけではありません。

PRP・CGFなどを使用する場合

PRPやCGFは、患者さん自身の血液を利用した血小板濃縮材料です。

外科処置の際に使用されることがありますが、「使用すればインプラントの骨結合期間が必ず短縮する」とは言い切れません。

使用する目的や有効性については症例によって異なるため、治療計画の中で適応を判断します。

CGF

「インプラントが骨と結合するまで、歯がないまま過ごすのですか?」

と心配される方もいます。

特に前歯では、見た目への影響が大きいため重要な問題です。

実際には、治療部位や残っている歯の状態などに応じて、仮歯や仮の入れ歯などを使用できる場合があります。

仮歯

前歯など審美性が重要な部位では、治療中に仮歯を使用できることがあります。

ただし、治癒途中のインプラントへ過度な力が加わると治療に影響する可能性があるため、仮歯の形や噛み合わせを調整します。

仮の部分入れ歯

複数の歯がない場合などには、一時的な部分入れ歯を使用することがあります。

手術部位へ強い圧力がかからないよう、必要に応じて調整しながら使用します。

仮ブリッジ

残っている歯の状態によっては、固定式の仮歯を利用できる場合もあります。

ただし、隣接する歯への処置が必要になることもあるため、治療全体への影響を考えて選択します。

歯を失った場合の代表的な治療方法には、インプラント以外にブリッジと入れ歯があります。

治療方法治療期間主な特徴
インプラント数か月以上周囲の歯を大きく削らず、顎骨で支える
ブリッジ比較的短期間固定式だが、支えとなる歯への処置が必要
入れ歯比較的短期間外科手術は不要だが、基本的に取り外しが必要

※治療期間は口腔内の状態、治療する本数、抜歯や骨造成の有無などによって異なります。

ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両隣などを支えとして人工歯を固定する治療方法です。

インプラントのように骨との結合を待つ期間が必要ないため、一般的にはインプラントより短期間で治療できます。

また、固定式のため、自分で取り外す必要がありません。

一方で、支えとなる歯を削る必要があるほか、欠損の状態や支台歯の状態によっては適応できない場合があります。

「早く歯を入れたい」という理由だけで決めるのではなく、残っている歯への影響も考えて選択することが大切です。

入れ歯

入れ歯は、比較的短期間で失った歯を補いやすい治療方法です。

外科手術を必要とせず、複数の歯を失っている場合にも対応できます。

一方、

  • 装着時の違和感
  • 噛みにくさ
  • 発音への影響
  • 食事中の動き
  • 金具が見える場合がある

などが気になることがあります。

また、完成後も歯ぐきや噛み合わせの状態に合わせて調整が必要です。

治療期間だけで選ばないことが大切

「できるだけ早く治したい」という希望は、治療方法を選ぶうえで重要な要素です。

しかし、治療期間だけでなく、

  • 周囲の歯への影響
  • 噛みやすさ
  • 見た目
  • 手術の有無
  • お手入れのしやすさ
  • 費用
  • 将来的なメンテナンス

なども含めて比較する必要があります。

短期間で終わる治療が、必ずしもその方にとって最適な治療とは限りません。

残っている歯や顎の骨の状態、ライフスタイルなどを考慮し、長期的な視点で治療方法を選びましょう。

インプラントは、人工歯を装着したら治療が完全に終わるわけではありません。

長く安定した状態で使用するためには、天然歯と同じように毎日のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスが必要です。

メンテナンスでは主に、

  • インプラント周囲の歯ぐき
  • プラークや歯石の付着
  • 噛み合わせ
  • 人工歯やネジの状態
  • 周囲の天然歯
  • 顎の骨の状態

などを確認します。

必要に応じて画像検査を行い、インプラント周囲の骨の状態を確認することもあります。

メンテナンスの頻度

メンテナンスの間隔は、患者さんの口腔内の状態や歯周病リスク、セルフケアの状態などによって異なります。

治療直後は比較的短い間隔で確認し、状態が安定してから定期的なメンテナンスへ移行することがあります。

「半年に1回でよい」などと一律に決めるのではなく、一人ひとりのリスクに合わせた間隔で管理することが大切です。

インプラントを長く使用するうえで注意したいのが、インプラント周囲炎です。

インプラント周囲にプラークが蓄積して炎症が起こり、進行するとインプラントを支えている骨が失われることがあります。

天然歯の歯周病と同様に、初期には自覚症状が乏しいことがあります。

インプラント周囲炎のリスクを高める主な要因

  • プラークコントロール不良
  • 歯周病の既往
  • 喫煙
  • メンテナンス不足
  • 糖尿病などの全身的なリスク因子

などがあります。

インプラントを長持ちさせるために

大切なのは、問題が起きてから受診するのではなく、定期的に状態を確認することです。

毎日の歯磨きに加えて、必要に応じて歯間ブラシやフロスなどを使用し、インプラント周囲を清潔に保ちましょう。

歯科医院ではセルフケアだけでは落としにくい汚れを除去するとともに、歯ぐきや噛み合わせ、人工歯の状態などを確認します。

Q. インプラント治療は最短でどのくらいかかりますか?

治療期間は、顎の骨や歯ぐきの状態、抜歯の有無、治療部位などによって異なります。

条件が整っていれば、抜歯と同時にインプラントを埋入したり、早期に仮歯を装着したりできる場合があります。

ただし、早く人工歯が入ることと、インプラント治療そのものが完了することは同じではありません。

インプラントが骨の中で安定するためには、一定の治癒期間が必要です。

Q. 手術当日に歯を入れることはできますか?

一定の条件を満たせば、インプラント埋入当日に仮歯を装着する「即時負荷」が可能な場合があります。

ただし、

  • 十分な初期固定が得られる
  • 骨の状態が良好
  • 感染がコントロールされている
  • 噛み合わせに大きな問題がない

などの条件が必要です。

すべての方に適応できる治療ではないため、事前の精密検査が重要です。

Q. インプラント治療中に歯がない期間はありますか?

治療方法によってはありますが、特に前歯など見た目への影響が大きい場所では、仮歯や一時的な入れ歯などを使用できる場合があります。

ただし、治癒中のインプラントへ強い力をかけないようにする必要があるため、使用できる仮歯の種類や噛み合わせには制限があります。

治療前に「歯がない期間があるのか」「その間はどのように過ごすのか」を確認しておくと安心です。

Q. インプラント手術後、仕事は何日休めばよいですか?

インプラント手術は日帰りで行われることが一般的ですが、術後には腫れや痛み、違和感が生じることがあります。

症状の程度は、インプラントの本数や手術範囲、骨造成の有無などによって異なります。

デスクワークなどであれば比較的早く復帰できる場合もありますが、手術直後に重要な仕事や激しい運動、旅行などを予定することは避け、余裕を持ったスケジュールを組むことをおすすめします。

Q. 骨造成をすると、どのくらい治療期間が延びますか?

骨造成の範囲や方法によって大きく異なります。

小規模な骨造成であればインプラント埋入と同時に行えることがありますが、大きく骨が不足している場合には、先に骨造成を行って治癒を待ってからインプラントを埋入することがあります。

その場合、治療期間が数か月以上長くなる可能性があります。

インプラント治療にかかる期間は一律ではありません。

一般的には数か月以上を必要としますが、

  • 抜歯の有無
  • 顎の骨の量や質
  • 骨造成の有無
  • インプラントの本数や部位
  • 歯周病や感染の状態
  • 全身状態
  • 採用する治療方法

などによって大きく変わります。

条件が整っていれば、抜歯即時埋入や即時負荷などによって、手術回数や歯がない期間を減らせる可能性があります。

ただし、インプラント治療で重要なのは、単純に治療期間を短くすることではありません。

骨や歯ぐきが治癒するために必要な時間を確保し、インプラントが長期的に安定する環境を整えることが大切です。

また、人工歯が入った後も、インプラント周囲炎などを予防するために定期的なメンテナンスが欠かせません。

「できるだけ早く歯を入れたい」
「仕事に影響しないスケジュールで治療したい」
「骨造成が必要なのか知りたい」
「治療中に歯がない期間を作りたくない」

といった希望がある場合は、精密検査の段階で歯科医師に伝えておきましょう。

お口の状態を正確に診断したうえで、治療期間だけでなく安全性や長期的な安定性まで考えた治療計画を立てることが重要です。

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筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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