「受け口(反対咬合)」は、見た目の問題だけでなく、発音・咀嚼・顎関節・全身の健康にまで影響を及ぼすことのある歯並びのトラブルです。とくに、子どものうちに気づかず放置してしまうと、大人になってから外科手術が必要になるケースも少なくありません。

この記事では、受け口の原因や種類、子どもと大人別の治療法、保険適用の条件、治療後の注意点まで、専門的な知識をわかりやすく解説します。

受け口(反対咬合)とは
受け口(反対咬合)とは

受け口とは、本来は上の前歯が下の前歯を少し覆うように噛み合うところ、下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせのことです。専門的には「反対咬合」と呼ばれます。

見た目の問題だけでなく、前歯で食べ物を噛み切りにくい、発音が不明瞭になる、顎関節に負担がかかるなど、口腔機能にも影響することがあります。特に成長期の子どもでは、顎の成長バランスに関わるため、早期の診断が重要です。

正常な噛み合わせとの違い

正常な噛み合わせでは、上の前歯が下の前歯を約2mm程度覆い、上下の奥歯も安定して噛み合います。

一方、受け口では前歯の噛み合わせが逆になっているため、次のような症状が起こりやすくなります。

  • 前歯で食べ物をうまく噛み切れない
  • サ行・タ行などの発音が不明瞭になる
  • 奥歯や顎関節に負担がかかる
  • 横顔で下顎が目立ちやすい
  • 口元が閉じにくい

受け口は見た目だけで判断するのではなく、噛み合わせ・顎の成長・発音・咀嚼機能を総合的に診断する必要があります。

「受け口」と「しゃくれ」の違い

「受け口」と「しゃくれ」は混同されやすい言葉ですが、厳密には意味が異なります。

受け口は、下の歯が上の歯より前に出ている噛み合わせの状態を指します。一方、しゃくれは下顎そのものが前方に突出して見える顔貌の特徴を指すことが多い言葉です。

つまり、受け口は噛み合わせの問題、しゃくれは骨格や顔貌の印象を表す言葉です。受け口の中には、歯の傾きだけが原因のものもあれば、上顎や下顎の骨格バランスが原因のものもあります。そのため、治療法を決めるには、歯性なのか骨格性なのかを正確に診断することが大切です。

受け口の原因は一つではありません。遺伝的な骨格の特徴に、舌の癖や口呼吸、食生活などの環境要因が重なって起こることがあります。

遺伝による骨格的要因

骨格性の受け口では、遺伝の影響が関係することがあります。

たとえば、下顎が大きく成長しやすい、上顎の成長が不足しやすい、家族に受け口や下顎前突の方がいるといった場合です。

このような骨格的特徴は成長期に目立ちやすくなるため、子どもの頃から経過を確認することが重要です。

舌癖・口呼吸などの習癖

舌を前に出す癖、低い舌の位置、口呼吸なども受け口に関係します。舌や唇、頬の筋肉バランスが崩れると、歯並びや顎の成長に影響を与えることがあります。

また、頬杖、うつぶせ寝、指しゃぶりなどの習慣も、顎や歯列に偏った力を加える原因になります。

食生活や噛む習慣の影響

柔らかい食事が多く、噛む回数が少ない生活では、顎や口まわりの筋肉が十分に使われにくくなります。特に成長期の子どもでは、しっかり噛む習慣が顎の発育に関係します。

ただし、食事だけで受け口が決まるわけではありません。遺伝、骨格、舌の使い方、歯の生え方などを総合的に見る必要があります。

受け口は大きく分けると、歯性の受け口と骨格性の受け口に分類されます。

歯性の受け口

歯性の受け口とは、顎の骨格には大きな問題がなく、歯の傾きや位置のズレによって反対咬合が起きている状態です。

歯性の受け口

主な特徴は次の通りです。

  • 上の前歯が内側に倒れている
  • 下の前歯が外側に傾いている
  • 顎の骨格的なズレは比較的少ない
  • 部分的な前歯の反対咬合として見られることがある

このタイプは、早期に治療を始めることで比較的改善しやすい場合があります。子どもではムーシールド、プレオルソ、部分矯正などを検討することがあります。成人では、ワイヤー矯正やマウスピース矯正が選択肢になります。

子どもの歯槽性の反対咬合
子どもの歯槽性の反対咬合
成人の左上2番が歯槽性の反対咬合
成人の左上2番が歯槽性の反対咬合

骨格性の受け口

骨格性の受け口とは、上顎と下顎の骨格バランスに原因がある反対咬合です。

骨格性の受け口
骨格性の受け口

主なタイプには、上顎の成長が不足しているケース、下顎が過剰に成長しているケース、その両方が関係しているケースがあります。

骨格性の受け口では、次のような特徴が見られます。

  • 横顔で下顎が前に出て見える
  • 前歯だけでなく奥歯の噛み合わせもずれている
  • 咀嚼や発音に影響しやすい
  • 家族にも同じような噛み合わせの方がいることがある
  • 成長とともに悪化することがある

子どもの場合は、成長期を利用して上顎の成長を促す装置や、下顎の成長をコントロールする装置を使用することがあります。成人で骨格的なズレが大きい場合は、外科矯正が必要になることもあります。

子どもの受け口は、成長期に治療を始めることで顎の成長をコントロールできる可能性があります。

特に乳歯列期から混合歯列期にかけて受け口が見られる場合は、早めに歯科医院で診断を受けることが大切です。

治療開始の目安

受け口の治療開始時期は、一般的に5〜6歳ごろが一つの目安になります。この時期は乳歯と永久歯が混在し始め、顎の成長に働きかけやすい時期です。

ただし、受け口の程度や原因によって適切な時期は異なります。3〜4歳で明らかな反対咬合がある場合でも、一度相談しておくと安心です。

子どもの主な治療装置

子どもの受け口では、次のような装置を使用することがあります。

ムーシールドは、主に乳歯列期の軽度な受け口に使用される装置です。舌の位置や口まわりの筋肉バランスを整え、噛み合わせの改善を目指します。

プレオルソは、柔らかいマウスピース型の装置で、歯並びだけでなく口呼吸や舌の位置の改善を目的に使用されることがあります。

フェイシャルマスクは、上顎の成長が不足しているタイプの受け口に対して、上顎を前方へ成長誘導するために使用されます。

チンキャップは、下顎の成長が強いタイプに対して、下顎の成長方向をコントロールする目的で使用されることがあります。

どの装置が適しているかは、年齢、骨格の状態、歯の生え方、成長予測によって異なります。

大人になってからでも、受け口の治療は可能です。ただし、顎の成長が止まっているため、子どものように骨格の成長を利用することはできません。

軽度から中等度の歯性の受け口であれば、ワイヤー矯正やマウスピース矯正で改善できる場合があります。

一方、骨格的なズレが大きい場合は、歯だけを動かしても噛み合わせや顔貌の改善に限界があります。その場合は、外科手術を併用する外科矯正が検討されます。

成人の骨格性の受け口のセファロ
成人の骨格性の受け口のセファロ

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーを使って歯を動かす矯正方法です。細かな歯の移動をコントロールしやすく、受け口のような複雑な噛み合わせにも対応しやすい方法です。

軽度から重度まで幅広く対応できますが、装置が目立ちやすいこと、歯磨きが難しくなること、装置に慣れるまで違和感が出やすいことがあります。

マウスピース矯正

マウスピース矯正は、透明な装置を一定時間装着して歯を少しずつ動かす方法です。目立ちにくく、取り外しができるため、食事や歯磨きがしやすいという利点があります。

ただし、受け口のすべての症例に適応できるわけではありません。骨格性の受け口や重度の咬合異常では、ワイヤー矯正や外科矯正が必要になることがあります。

外科矯正

外科矯正は、顎の骨格的なズレが大きい場合に、矯正治療と顎の手術を組み合わせて行う治療です。

治療の流れは、術前矯正で歯列を整え、顎の手術を行い、その後に術後矯正で噛み合わせを仕上げるのが一般的です。

顎変形症と診断され、指定医療機関で治療を受ける場合には、健康保険が適用されることがあります。

受け口を放置すると、見た目だけでなく、噛む機能や発音、顎関節、歯の寿命にも影響することがあります。

咀嚼機能の低下

前歯で食べ物を噛み切りにくくなり、奥歯に負担が集中しやすくなります。その結果、歯のすり減り、破折、詰め物や被せ物のトラブルにつながることがあります。

発音への影響

前歯の噛み合わせや舌の位置がずれていると、サ行、タ行、ラ行などの発音が不明瞭になることがあります。話しにくさが心理的な負担につながる場合もあります。

顎関節への負担

噛み合わせのバランスが悪い状態が続くと、顎関節や咀嚼筋に負担がかかることがあります。口を開けると音がする、顎が痛い、口が開きにくいといった顎関節症の症状につながることもあります。

顔貌への影響

骨格性の受け口では、成長とともに下顎の突出感が強くなることがあります。横顔のバランスや口元の印象に影響し、見た目のコンプレックスにつながることもあります。

受け口の治療後は、歯並びや噛み合わせを安定させるための保定が重要です。

矯正治療後の歯は、元の位置に戻ろうとする性質があります。そのため、リテーナーと呼ばれる保定装置を一定期間使用します。

また、舌癖や口呼吸が残っていると、後戻りの原因になることがあります。必要に応じて、MFTと呼ばれる口腔筋機能療法を行い、舌の位置、唇の閉じ方、飲み込み方、呼吸の仕方を整えることも大切です。

治療後も3〜6ヶ月ごとの定期チェックを受け、リテーナーの適合や噛み合わせの変化を確認することで、再発を予防しやすくなります。

子どもの受け口は何歳までに相談すべきですか?

明らかな受け口がある場合は、5〜6歳ごろまでに一度相談することをおすすめします。3〜4歳で気づいた場合でも、早すぎるということはありません。すぐに治療を始めるかどうかは別として、成長を見ながら適切な時期を判断できます。

大人でも受け口は治せますか?

大人でも治療は可能です。歯の傾きが主な原因であれば、矯正治療で改善できる場合があります。骨格的なズレが大きい場合は、外科矯正が必要になることもあります。

受け口の治療は保険適用になりますか?

通常の矯正治療は自費診療です。ただし、顎変形症と診断され、外科手術を伴う矯正治療が必要な場合や、特定の先天性疾患に伴う咬合異常では、指定医療機関で保険適用となる場合があります。

受け口は自然に治りますか?

軽度の乳歯列期の受け口では、成長とともに変化することもあります。しかし、骨格性の受け口や明らかな反対咬合は、成長とともに悪化することもあります。自己判断せず、歯科医院で診断を受けることが大切です。

受け口の治療では、見た目だけでなく、噛み合わせ、顎の成長、発音、将来的な安定性まで考えた診断が必要です。

歯科医院を選ぶ際は、セファロ分析などの精密検査を行っているか、子どもの成長期矯正と成人矯正の両方に対応しているか、必要に応じて専門医療機関と連携できるかを確認するとよいでしょう。

また、矯正治療は長期間にわたるため、通いやすさや予約の取りやすさも重要です。

受け口は、単に下の歯が前に出ているだけの問題ではありません。歯並び、顎の成長、発音、咀嚼、顔貌、顎関節などに関わる重要な噛み合わせの異常です。

特に子どもの受け口は、成長期に適切な治療を行うことで、将来的な本格矯正や外科手術のリスクを軽減できる可能性があります。

大人の場合でも、症状に応じてワイヤー矯正、マウスピース矯正、外科矯正などの選択肢があります。

受け口が気になる場合は、早めに歯科医院で精密検査を受け、歯性なのか骨格性なのかを確認することが大切です。

江戸川区篠崎で受け口(反対咬合)にお悩みの方へ|成長期の早期治療から大人の矯正まで対応します

受け口(反対咬合)は、見た目の問題だけでなく、噛みにくさや発音のしづらさ、顎関節への負担につながることがあります。特にお子さまの場合は、成長期に適切な治療を行うことで、将来的な骨格のズレや外科手術のリスクを軽減できる可能性があります。

当院では、セファロ分析や精密検査を行い、歯並びが原因の「歯性の受け口」なのか、顎の骨格が原因の「骨格性の受け口」なのかを正確に診断したうえで、一人ひとりに適した治療方法をご提案しています。

江戸川区篠崎で受け口やしゃくれ、前歯の噛み合わせが気になる方、お子さまの受け口を早めに相談したい方は、お気軽にご相談ください。

【動画】アデノイド顔貌

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!