ワイヤー矯正とは

  • ワイヤー矯正はブラケットを各歯に接着し、ワイヤーの弾力性やパワーチェーンを使って歯を動かす仕組みです。
  • 矯正用ブラケットやワイヤーの種類は豊富で、症例ごとに使い分けます。
  • 永久歯が生えそろう10歳~12歳以上に適応され治療期間は約2年です。
  • 動的治療期間が終了したら歯の後戻りを防ぐリテーナーを装着します。
目次

ワイヤー矯正(ブラケット矯正)とは?

ワイヤー矯正の基本的な仕組み

ワイヤー矯正(ブラケット矯正)とは、歯の表面にブラケットと呼ばれる小さな装置を装着し、そのスロット(溝)にワイヤーを通して歯を移動させる矯正方法です。この方法は、力学的な圧力を利用して歯槽骨を再形成し、歯を理想の位置に少しずつ移動させる仕組みで、ワイヤーの締め具合や種類によって調整されます。

ワイヤー矯正は、抜歯を伴う症例など歯の移動距離が長いケースにも対応可能で、ほぼすべての症例に適用できるという大きな長所があります。また、調整などの処置は月に1回程度行われ、歯に弱い力を継続的に与えることで徐々に動かしていきます。一方で、強い力を一気にかけると歯が動かないだけでなく、歯根吸収や歯茎の後退といった問題が発生する可能性があるため、慎重な治療が求められます。

ワイヤー矯正の基本的な仕組み
歴史と普及の背景

ワイヤー矯正は19世紀にアメリカで始まりました。当時は金属製のブラケットが主流でしたが、技術の進化により、現在では目立ちにくいセラミックブラケットや透明なワイヤーも利用されています。また、矯正治療がより一般的になった理由として、審美的なニーズの高まりや治療装置の多様化が挙げられます。ワイヤー矯正はその精度の高さから、現在も広く選ばれている矯正方法です。

ワイヤー矯正の種類

表側矯正(外側ワイヤー矯正)

表側矯正は、歯の外側にブラケットを装着し、ワイヤーを通して歯を移動させる方法です。もっとも一般的で、矯正効果が高いとされています。金属製のブラケットが主流ですが、審美性を重視したセラミックブラケットやホワイトワイヤーを使用することで目立ちにくくすることも可能です。
メリット: 効果が安定しており、幅広い症例に対応できる
デメリット: 見た目が気になる場合がある

表側矯正(外側ワイヤー矯正)
裏側矯正(リンガル矯正)

裏側矯正は、歯の裏側にブラケットを装着する方法です。この矯正方法は外から装置が見えないため、見た目を気にする人に適しています。ただし、表側矯正に比べて費用が高額になりやすく、装置に舌が当たることで違和感を覚えることもあります。
メリット: 見た目を気にせず矯正が可能
デメリット: 費用が高い、発音に影響する場合がある、歯磨きが難しくなり、プラークや食べかすが溜まりやすいことで虫歯や歯周病のリスクが高まります。また、装置の圧力が歯に不均等にかかる場合、歯の根が吸収されるリスク(歯根吸収)が生じることもあります。

裏側矯正(リンガル矯正)
部分矯正

部分矯正は、歯列全体ではなく特定の部分だけを矯正する方法です。主に前歯の軽度な歪みやズレを整える際に使用され、短期間で済むことが特徴です。ただし、適応症例が限定されており、全体の噛み合わせに問題がある場合は利用できないことがあります。
メリット: 短期間かつ比較的低コストで治療可能
デメリット: 適応症例が限られる

ブラケットの構造

スロットとウイング
スロットとウイング
スロット

ワイヤーが入る部分をスロットと呼んでいます。スロットには幅と深さが異なる二つの規格があります。

ウイング

ウイングはスロットに入ったワイヤーを固定するための突起です。 ウイングに金属製のリガチャーワイヤーを引っ掛けて結紮します。ゴム製のモジュールもあります。

ゴム製のモジュール
ゴム製のモジュール
スロットにワイヤーを通す

ブラケットを歯に接着させたら、スロットにワイヤーを通します。 ワイヤーに沿ってスロットがスムーズに動くことで歯を目的の位置に移動させることが可能になります。

ゴム製のモジュール

ブラケットがワイヤーから外れないようにするために固定する必要があります。

写真のゴム製のモジュールは治療の初期段階に使用します。

メリット

簡単に行うことができるので治療時間の短縮ができます。

デメリット

ワイヤーとの摩擦が強く起こるため、ワイヤーの断面が丸いラウンドワイヤーを使う治療の初期段階のみの使用が原則となります。

治療が進みラウンドワイヤーから角ワイヤーに変更する段階から金属製のリガチャーワイヤーで結紮します。

ブラケットの種類

セルフライゲーションブラケット
セルフライゲーションブラケット
セルフライゲーションブラケット

一般的にワイヤー矯正はブラケット矯正と呼ばれることが多いです。

ブラケットの特殊な形状に矯正ワイヤーとブラケットの摩擦を限りなく小さくしたセルフライゲーションブラケットがあります。

弱い矯正力を歯に持続的にかけることが出来るブラケットです。

スロット部分に特殊なカバーがかけられ、特殊な器具を使って開閉します。

製品としてはデーモンブラケット、エンパワーブラケットなどがあります。

メリット

従来のブラケットよりも痛みや違和感が少なく、歯の移動スピードが速いため治療期間が短縮されます。

歯にかかる負担が小さいことで歯根吸収や歯茎が下がってブラックトライアングルが出来るといったリスクが軽減されます。

デメリット

製品価格が高価です。従来のブラケットに比べ大きいので異物感や歯茎に当たって口内炎が出来やすい欠点があります。

クリアブラケットとメタルブラケット
クリアブラケットとメタルブラケット
クリアブラケット

ブラケットの材質で分類すると、ジルコニア製や酸化アルミナ製セラミックブラケットなど審美的で目立たない白色のブラケットを総称してクリアブラケットと呼んでいます。

近年では、クリヤブラケットはワイヤーとの摩擦が強く歯が動きづらいという欠点を、ワイヤーが通るスロット部分のみを金属にする改良が加えられ、性能が上がっています。

金額が高いのがデメリットです。

メタルブラケット

従来からある金属製のメタルブラケットは、審美的には問題がありますが、矯正ワイヤーの滑りが良く歯を小さな力で動かすことができ、歯を動かすスピードが速く治療期間の短縮が出来るという利点があります。

金額が安いのがメリットです。

ワイヤー矯正で歯が動く仕組み

歯列不正にブラケットとワイヤーを装着
歯列不正にブラケットとワイヤーを装着 ⇒⇒

歯列が乱れた状態の各歯にブラケットを理想的な場所に接着します。 次にワイヤーを通して結紮します。

ワイヤーの復元力で歯列が整う
ワイヤーの復元力で歯列が整う

ワイヤーの金属は復元力が強い形状記憶合金を使います。ワイヤーをブラケットのスロットに強引に入れ込むイメージです。

するとワイヤーが元の形に戻ろうとする力が働き、歯は理想的な位置に近づいていきます。

ブラケットポジション

ブラケットポジション
ブラケットポジション
ブラケットの位置付け

ブラケットの位置付けのことをブラケットポジションと呼んでいます。 ブラケットを歯のどの部分に付けるかは非常に重要です。

ブラケットを少し不適切な角度や位置に接着しただけで、治療結果に大きなマイナスとして現れてきます。

ブラケットポジションが悪いと両隣の歯との間に段差ができたり、不適切な歯の角度になってしまったりします。

ブラケットポジションが悪い場合には、ブラケットの再装着で対応します。

ワイヤーの種類

ブラケットポジション
断面

矯正ワイヤーの断面は円形(ラウンドワイヤー)、正方形(スクエアワイヤー)、長方形(レクトアンギュラーワイヤー)の三種類があります。イラストに示した数値はラウンドワイヤーの場合、直径をインチで表しています。四角形の場合は縦と横の長さです。

これらはよく使われるワイヤーサイズですが、これ以外にも様々サイズが症例ごとで使い分けされます。

サイズ

治療の初期には歯並びがガタガタのため出来るだけ歯に強い力がかからないように、ランドワイヤーの細いものから使用します。治療が進みガタガタの歯並びがある程度きれいに並んで来たら四角形のワイヤーに変更され、最終的な微調整には長方形の太いワイヤーが使用されます。

レクトアンギュラーワイヤーは、 ブラケットのスロットにしっかりと入り、それぞれの歯に三次元方向の適切な力を伝えることができるためです。

ワイヤーの性状
ワイヤーの性状
性状

矯正ワイヤーの性状は含有される金属の種類によって異なります。矯正治療の初期段階では形状記憶合金の細い柔らかいワイヤーを使用します。(形状記憶合金は術者の意思で曲げることはできません。)

治療が進むに従って、硬くて曲げることが出来るワイヤーに変更します。

ホワイトワイヤー
ホワイトワイヤー
白いホワイトワイヤー

ホワイトワイヤーは金属のワイヤーの表面に白色の塗装をしたものです。

目立ちにくいという利点があるものの、ワイヤーとブラケットの滑りが悪いため、術者の意図した歯の動きが制限されり、塗装が剥がれてくるなどの欠点があります。

そのため、ディーテイルにあまりこだわる必要のない矯正治療の初期段階に使われます。

写真のケースでは目立ちにくいクリアブラケットが使用されています。

ホワイトワイヤーとブラケットとの摩擦が強いという欠点を解決するためにロジウムコーティングされたNiTiワイヤーが開発されています。

いずれにしても、ワイヤーの色は完全に歯の色と一致していわけではないので、患者さんによっては「目立つ」と不満を感じることもあるようです。

治療ステップごとに交換するワイヤー

STEP

含有成分:ニッケル、チタン

超弾性のある形状記憶合金のニッケルチタンワイヤーは治療の初期段階で、ガタガタの歯並びを大まかに並べるために使用します。


STEP

含有成分:ニッケル、チタン、銅

ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、カッパー(Cu)の素材でできたヒートアクティベーテッド・ワイヤーは、口腔内温度で活性化し、元の形に戻ろうとします。弱い力が持続的に働き痛みの発生を抑えます。


STEP

含有成分:コバルトクローム

コバルトクローム合金のワイヤーは、曲げることも可能な柔軟性があるワイヤーです。


STEP

含有成分:ステンレス

最も硬く弾性が少なのがステンレスワイヤーです。最終的な仕上げ段階で使用します。

ワイヤー矯正のメリットとデメリット

メリット:精密な矯正が可能

ワイヤー矯正の最大のメリットは、非常に精密な矯正が可能な点です。ワイヤーとブラケットを使用することで、歯を1本ずつ細かく調整でき、重度の歯並びの乱れや噛み合わせの問題にも対応できます。また、矯正の幅が広く、様々な症例に適応できるため、多くの患者にとって有効な選択肢となります。特に大きな歯の移動や複雑な歯列矯正が必要な場合に優れた結果をもたらします。

デメリット:見た目や痛みについて

一方で、ワイヤー矯正にはいくつかのデメリットもあります。以下に主な課題を挙げます。

見た目の問題:
表側矯正の場合、金属製のブラケットやワイヤーが目立ちやすく、審美性が気になる方にとって心理的負担になることがあります。ただし、セラミックや透明なワイヤーを選ぶことで、この問題はある程度軽減可能です。

痛みや違和感:
矯正開始直後や調整後には、ワイヤーによる歯の移動で痛みや締め付け感が発生する場合があります。また、ブラケットが口腔内に擦れて口内炎ができることもあるため、ワックスなどの補助アイテムを活用すると良いでしょう。

その他の負担:
矯正中は食事制限が必要になることがあります。硬い食品や粘着性のある食品は装置を破損する恐れがあるため、避ける必要があります。また、矯正装置の清掃には特別なケアが必要で、ブラケットやワイヤー周辺に食べ物が詰まらないよう注意を払う必要があります。

ワイヤー矯正の治療プロセス

初診から装着までの流れ

ワイヤー矯正の治療は、以下のステップで進みます。

  1. 初診・カウンセリング
    初診では、歯並びや噛み合わせの状態を診察し、患者の希望や不安をヒアリングします。その後、矯正治療が必要か、どのような方法が適しているかを説明します。
  2. 精密検査と診断
    X線撮影、写真撮影、歯型の採取などを行い、詳細な診断を行います。このデータを基に治療計画を立て、患者に治療の流れや期間、費用について具体的に説明します。
  3. 装置の準備と装着
    矯正装置の準備が整ったら、ブラケットを歯に接着し、ワイヤーを通して調整を行います。この作業は通常1〜2時間ほどかかります。
  4. 調整と経過観察
    装着後は、歯の移動状況に応じてワイヤーを調整します。この段階で微調整を繰り返しながら、理想の歯並びを目指します。
矯正中の通院頻度とケア

ワイヤー矯正では、装置の調整や清掃が必要なため、定期的な通院が重要です。

通院頻度:
通常、4〜6週間に1回のペースで通院が必要です。この間にワイヤーの交換や締め直しを行い、歯の移動を適切に管理します。

矯正中のケア:

  • 口腔清掃: 矯正装置の周辺は汚れが溜まりやすいため、歯磨きに時間をかけ、専用の歯ブラシやフロスを使用します。ブラケット周囲やワイヤーの下を丁寧に磨くことが大切です。
  • 食事の注意: 硬いものや粘着性のある食品は避け、装置にダメージを与えないよう心がけます。
  • 痛みの対処: 調整後に感じる痛みは数日で軽減することが一般的ですが、必要に応じて鎮痛剤を使用することも可能です。

ワイヤー矯正の適応年齢

10歳~12歳以上

ワイヤー矯正による治療が可能になるのは、永久歯が完全に萌出する10歳から12歳頃です。年齢の上限はなく、理論上は高齢者でも治療が可能です。

治療期間

動的治療期間 約2~3年間

乱杭歯の症例では、上下4本の第1小臼歯を抜歯して治療を行うことが一般的で、その動的治療期間は約2~3年です。ただし、成人の場合は治療期間が延びる傾向があります。

※動的治療とは、ワイヤーをブラケットの溝に挿入し、歯を動かしている期間を指します。

保定期間
動的治療期間の約1/2

動的治療が終了してワイヤー矯正装置を外した後も、保定期間が必要です。保定とは、動かした歯が元の位置に戻らないように固定することを指します。

保定装置(リテーナー)には、取り外し可能な装置と固定式の装置の両方があります。

保定期間は、動的治療期間のおおよそ2分の1の期間が必要とされています。

ワイヤー矯正の費用と保険適用

費用の内訳と相場

ワイヤー矯正の費用は、治療内容や装置の種類、地域によって異なりますが、以下が一般的な内訳です。

1. 初診料と検査費用:

  • 初診時のカウンセリングや診断にかかる費用。
    相場: 5,000〜30,000円

2. 精密検査・診断料:

  • X線撮影、歯型の採取、写真撮影などの費用。
    相場: 30,000〜70,000円

3. 装置料:

  • ブラケットやワイヤーなどの装置そのものの費用。
    相場: 500,000〜1,000,000円

4. 調整料:

  • 定期通院時のワイヤー調整や装置の交換費用。
    相場: 5,000〜10,000円(1回あたり)

5. 保定装置料(リテーナー費用):

  • 矯正後に使用する歯の安定化装置の費用。
    相場: 20,000〜50,000円

6. トータル費用:

  • 矯正期間や調整回数に応じて異なりますが、合計で 700,000〜1,500,000円 程度が一般的です。
医療費控除や保険適用の条件

1. 医療費控除:
ワイヤー矯正は、多くの場合、美容目的ではなく医療目的と判断され、医療費控除の対象になります。以下の条件を満たす場合に適用可能です。

  • 歯列不正が原因で噛み合わせや発音に影響がある場合。
  • 治療費用が年間10万円を超える場合は確定申告で控除を申請可能。

必要書類:

  • 領収書
  • 矯正歯科からの診断書(場合による)

2. 保険適用:
ワイヤー矯正は原則として自由診療ですが、特定のケースでは保険適用されることがあります。

  • 唇顎口蓋裂などの先天性疾患
  • 顎変形症(顎手術を伴う矯正)
    保険適用時の自己負担額は 約20〜30万円 が目安ですが、詳細は加入している保険制度や治療内容によって異なります。

ワイヤー矯正と他の矯正法の比較

マウスピース矯正との違い
マウスピース矯正

1. 装置の構造と見た目の違い:

  • ワイヤー矯正: 歯の表面にブラケットを装着し、ワイヤーで歯を動かします。目立ちやすいのが欠点ですが、治療効果は高いです。
  • マウスピース矯正: 透明なプラスチック製のマウスピースを使用するため、ほとんど目立ちません。取り外し可能で衛生管理が容易です。

2. 適応症例:

  • ワイヤー矯正は重度の歯並びの乱れや複雑な症例にも対応可能です。
  • マウスピース矯正は軽度から中程度の歯並びの改善に適していますが、症例によっては限界があります。

3. 治療期間と通院頻度:

  • ワイヤー矯正は調整が必要なため、4〜6週間ごとの通院が求められます。
  • マウスピース矯正は定期的なチェックは必要ですが、患者自身が交換可能なため通院回数は少ない場合があります。

4. 費用:

  • ワイヤー矯正の相場は治療内容や装置の種類によって異なりますが、以下が一般的な目安です。
  • 全体矯正(メタルブラケット):約70万~100万円
  • 目立ちにくいブラケット(セラミックや透明タイプ):約80万~120万円
  • 裏側矯正(リンガル矯正):約120万~150万円以上
  • マウスピース矯正(インビザラインなど)の相場は、治療の範囲や難易度によって異なりますが、以下が一般的な目安です。
  • 部分矯正(軽度の症例):約30万~50万円
  • 全体矯正(全顎の治療):約70万~100万円
  • 複雑な症例:100万円以上になる場合もあります
インプラント矯正との組み合わせ

インプラント矯正とは、歯を効率的に動かすために、矯正用インプラント(ミニスクリュー)を一時的に使用する方法です。この方法は、特定のケースでワイヤー矯正と組み合わせて用いられます。

1. 特徴:

  • ミニスクリューを歯茎に埋め込み、動かしたい方向へ強い固定源を確保することで、効率よく歯を動かせます。
  • 通常のワイヤー矯正では難しい移動(特定の歯を後退させる、全体の歯列を引き下げるなど)が可能です。

2. 組み合わせのメリット:

  • 治療期間の短縮: 歯を動かす効率が上がるため、治療期間が短縮される場合があります。
  • 精密な矯正が可能: ミニスクリューの固定力により、理想的な力をかけられます。

3. 注意点:

  • インプラントの埋め込みには外科的処置が必要なため、不安を感じる患者もいます。
  • 費用が追加される場合があり、1本あたり2〜5万円程度が目安です。

特殊なケースでのワイヤー矯正

成人矯正と子ども矯正の違い

1. 成長期による違い:

  • 子ども矯正(小児矯正): 成長期を活用して歯と顎の正しい成長を促す矯正。装置で顎の広がりを調整しながら、将来的な矯正をスムーズに進められます。
  • 成人矯正: 成長が終了しているため、歯の移動のみを対象とします。顎骨の形状に応じて外科手術が必要になる場合もあります。

2. 装置の選択肢:

  • 子ども矯正では、取り外し可能な装置や軽度な力を利用する装置が使われることが多いです。
  • 成人矯正では、固定式の装置(ワイヤー矯正やインプラント矯正)が一般的です。

3. 治療の目的:

  • 子ども矯正は、将来の歯並びや噛み合わせを改善する予防的な側面が強いです。
  • 成人矯正は、美容や機能的な改善が主な目的です。
短期間で終わるケース

特定の条件を満たせば、ワイヤー矯正の治療期間を短縮できるケースがあります。

1. 部分矯正:
前歯の軽度な歯並びの乱れを矯正する場合、6か月〜1年程度で終了することがあります。

2. 矯正用インプラントの活用:
矯正用インプラント(ミニスクリュー)を使用することで、歯を効率的に動かし、治療期間を短縮できることがあります。

3. 高速矯正:
外科手術を併用し、歯槽骨を再形成することで短期間で歯を動かす方法もあります。ただし、リスクが伴うため、慎重な判断が必要です。

リスクと副作用

ワイヤー矯正には以下のようなリスクや副作用が考えられます。

1. 口腔内のトラブル:

  • 口内炎: ブラケットやワイヤーが頬や唇に当たり、口内炎ができることがあります。ワックスで保護することで軽減可能です。
  • 虫歯や歯周病のリスク: 矯正装置の周囲に汚れがたまりやすいため、念入りなケアが必要です。

2. 痛みや不快感:

  • ワイヤー調整後に痛みや圧迫感を感じることがあります。これは数日で治まることが多いですが、必要に応じて鎮痛剤を使用できます。

3. 歯根吸収:

  • 長期間の矯正で、歯根が短くなるリスクがあります。適切な管理のもとで進めることが重要です。

4. 装置のトラブル:

  • ワイヤーが外れる、ブラケットが外れるなどのトラブルが発生する場合があります。早めに歯科医院での修理が必要です。

ワイヤー矯正中の生活の工夫

食事や歯磨きの注意点

1. 食事の工夫:
ワイヤー矯正中は、装置の破損や歯への負担を避けるため、食事内容に注意が必要です。

  • 避けるべき食品:
    • 硬い食品(ナッツ、硬いパン、氷など)
    • 粘着性のある食品(キャラメル、グミ、餅など)
    • 糖分の多い食品(キャンディ、チョコレート)
  • 推奨される食品:
    • 柔らかい食品(スープ、豆腐、煮物など)
    • 一口サイズに切り分けた食品

2. 歯磨きのポイント:
矯正装置の周囲には食べ物が詰まりやすいため、通常よりも丁寧なケアが求められます。

  • 専用ブラシ: 矯正用の小さなヘッドの歯ブラシを使用する。
  • 補助アイテム: 歯間ブラシやフロスを活用してブラケット周辺やワイヤー下を清掃する。
  • フッ素入り歯磨き粉: 虫歯予防のために使用を推奨。
痛みの緩和方法

矯正装置の調整後に痛みや違和感を感じることがありますが、以下の方法で緩和できます。

  • 痛みの軽減:
    • 鎮痛剤(市販の痛み止め)を服用する。
    • 矯正直後は冷たい飲み物や柔らかい食品を摂取する。
  • 装置が当たる痛み:
    • ワイヤーやブラケットが口の中に当たる場合は、矯正用のワックスを使用して装置を保護する。
    • 痛みが続く場合は歯科医に相談。
矯正期間中のマウスケア商品

矯正中の特別なケアを助けるために、以下の商品が推奨されます。

  • 矯正用歯ブラシ: 小型のブラシヘッドで装置の周囲を清掃しやすい設計。
  • 歯間ブラシやフロス: ワイヤー下や歯の間を効果的に清掃可能。
  • マウスウォッシュ: 抗菌作用のある洗口液を使用することで虫歯や歯周病を予防。
  • フッ素ジェル: 虫歯予防を強化するために、歯磨き後に追加で使用すると効果的。
  • 矯正用ワックス: 装置が口内に当たる部分をカバーし、口内炎を防ぐための必需品。

その他の補助装置

第1大臼歯にバンドを装着

第1大臼歯はワイヤー矯正の要になる歯です。そのため、最も強い力がかかるのでブラケットをバンドに溶接して使用します。バンドは歯にセメントで固定します。

step

バンドセパレーター

バンドは薄い金属で出来ているので、そのままでは第1大臼歯にバンドを装着することができません。

そこで、歯の間を広げるバンドセパレーターを第1大臼歯の前後に入れます。

バンドセパレーター

step

バンドセパレーターの装着

バンドセパレーターはゴムで出来ているので、容易に歯の間に装着することが出来ます。

一日経過すると歯と歯の間に僅かな隙間が出来ます。この隙間を使ってバンドを装着します。

バンドセパレーターの装着

step

バンドを第1大臼歯に装着

金属製のブラケットが溶接されたバンドを第1大臼歯にセメントで固定します。

バンドを第1大臼歯に装着

パワーチェーン

パワーチェーン
パワーチェーン
連続するチェーン状のゴム

歯を動かす方法にはワイヤーの弾性力、復元力を使うだけではなくて、ゴムの力を使う方法があります。

パワーチェーンは輪が連続するチェーン状のものです。ゴム製なので伸縮性があり、その力で歯の隙間を閉じことを目的に使用します。

パワーチェーンの各輪をブラケットに順次付けていき、左右の第1大臼歯~第1大臼歯間すべての歯をパワーチェーンで連結し、矯正力を働かせます。

各歯にはそれぞれが接触しようとする力が働くため、歯と歯の間に少しの隙間がある時や前歯全体を後方に引く時に使用します。

マルチブラケット装置で行うワイヤー矯正ならではの道具と言えます。

顎間ゴム

顎間ゴム
顎間ゴム
歯列全体の移動

顎間ゴムは文字通り上顎と下顎との間にゴムをかける方法です。

斜めに掛けたり垂直に掛けたりします。顎間ゴムの力は、一本一本の歯を動かすというのではなく、歯列全体を一体として動かすことを目的に使用します。

写真の症例はオープンバイトを治すために、上下のワイヤーに曲げられたLループに垂直方向に掛けています。

平均して1.5〜3年ほどかかります。歯並びの状態や治療の目的によって異なるため、詳しい期間は初診時に歯科医から説明を受けてください。

セラミックブラケットや透明なワイヤーを使用することで、装置を目立ちにくくできます。また、裏側矯正(リンガル矯正)を選ぶことで、装置が外から見えないようにすることも可能です。

矯正後には保定装置(リテーナー)の使用が必要です。これにより、歯並びが元に戻るリスクを軽減できます。保定期間は患者によって異なりますが、数年から終生使用を推奨されることもあります。

1. ワイヤーが外れた場合:

  • 対処: 外れたワイヤーが口内に当たる場合は、矯正用ワックスを使用して一時的に保護します。その後、できるだけ早く歯科医院を受診してください。

2. ブラケットが外れた場合:

  • 対処: 外れたブラケットを紛失しないよう保管し、歯科医に連絡します。再装着には予約が必要な場合が多いため、早めに対応しましょう。

3. 痛みや口内炎ができた場合:

  • 対処: 矯正用ワックスを使用して痛みの原因となる装置をカバーします。また、抗菌性のあるマウスウォッシュで口内を清潔に保ち、口内炎用の塗り薬を使用してください。

4. ワイヤーが口内に刺さる場合:

  • 対処: 小さな爪切りやワイヤーカッターで刺さっている部分を短くすることも可能ですが、無理せず歯科医院を受診するのが最適です。

5. 装置が破損した場合:

対処: 装置の破片を飲み込まないよう注意し、破損部分を保護します。その後、速やかに歯科医院に連絡し、修理や交換を行いましょう。

江戸川区篠崎でワイヤー矯正をご検討の方へ

当院では、患者様一人ひとりのニーズに合わせたオーダーメイドの矯正治療を提供しています。ワイヤー矯正は、さまざまな歯並びや噛み合わせの問題に対応可能で、見た目の改善だけでなく口腔全体の健康維持にも役立ちます。丁寧なカウンセリングと最新の技術で、安心して治療を受けていただけます。理想の笑顔と健康を手に入れる第一歩を、当院で始めてみませんか?お気軽にご相談ください!

【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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