歯を抜いた後の治療法にはさまざまな選択肢があります。金属のバネが付いている保険適用の入れ歯、金属のバネがないノンクラスプデンチャー(スマイルデンチャー)、両側の歯を大きく削るブリッジ、両側の歯をほとんど削らない接着ブリッジ、そしてインプラントなどです。

ブリッジには保険適用のものと自費治療のものがあり、それぞれに長所と短所があるため、選択に悩むことも多いでしょう。

ここでは、ブリッジにかかる費用について詳しく解説します。

歯のブリッジとは?基本情報と費用の概要

ブリッジ治療手順

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歯を失う理由

歯を失う原因には、歯周病や虫歯、外傷などがあります。これらの理由で抜歯をしたり、歯周病が重症化して自然に抜けてしまうこともあります。また、永久歯が先天的に欠損している場合もあります。

歯を失う
歯を失う

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両隣の歯を削

失った歯を補うために、両隣の歯を削る必要があります。タービンを使用して、土台となる歯をかなり削る作業が行われます。神経が残っている歯を削る場合、削る刺激によって歯髄炎を引き起こすリスクがあることに注意が必要です。

患者さんの間でよく誤解されるのですが、歯を失うということは歯根も失われているため、差し歯にすることはできません。

両隣の歯を削る
両隣の歯を削

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連続した人工歯を作り、ブリッジをセメントで装着

この治療法は、ちょうど橋を架けるような仕組みであるため、「ブリッジ」と呼ばれています。中央部分にあたる人工歯は「ポンティック」と呼ばれます。

ブリッジを装着
ブリッジを装着

保険診療で使用される素材と特徴

前歯は硬質レジン前装冠ブリッジ

硬質レジン前装冠は、裏側に金属を使用し、その金属の表面に硬質レジン(プラスチック製の素材)を貼り付けた構造です。

このタイプの冠は、犬歯から犬歯までの前歯のみが保険適用の対象となります。一方、第1小臼歯より奥の歯にまでブリッジが連続する場合、その部分は金属で製作されます。

以下の症例は、右上2番から左上4番までの6本連結のブリッジです。青い丸で示された右上1番と左上3番が欠損しています。

前歯保険適用ブリッジ正面観
前歯保険適用ブリッジ正面観

6連のブリッジで5本が硬質レジン前装冠で作られ、1本は金属で作られています。

硬質レジンは経年劣化が著しく変色や着色、破折が認められます。

前歯保険適用ブリッジ咬合面観
前歯保険適用ブリッジ咬合面観

咬合面からみりとブリッジの内側はすべて金属になっているのが分かります。左上4番だけは金属冠で作られています。

奥歯は金属ブリッジ

奥歯のブリッジはすべて金属冠(12%パラジウム合金)が使われます。下記症例は上顎5番6番7番の3連ブリッジです。青丸の6番が欠損しています。

奥歯保険適用ブリッジ側面観
奥歯保険適用ブリッジ側面観

右上5番から7番の3連続ブリッジです。

奥歯保険適用ブリッジレントゲン写真
奥歯保険適用ブリッジレントゲン写真

同症例の奥歯保険適用ブリッジレントゲン写真です。

保険診療のブリッジ費用

保険診療

保険診療でのブリッジ費用は、健康保険が適用されるため、自費診療に比べて大幅に費用を抑えることができます。

種類金額 ※単位:円
前歯ブリッジ (硬質レジン前装冠)1歯欠損(3本連結) 約9,300点、約27,900円
2歯欠損(4本連結) 約11,400点、約34,200円
2歯欠損(5本連結) 約14,500点、約43,500円
2歯欠損(6本連結) 約18,300点、約54,900円
奥歯ブリッジ (金属冠)1歯欠損(3本連結) 約6,800点、約20,400円
1歯欠損(4本連結) 約8,700点、約26,100円

保険診療でのブリッジ費用の計算方法

※上記は、自己負担額が3割の場合の費用例です。ブリッジ作製に必要な数回の通院にかかる一連の治療費を合算したものとなります。前歯のレジン前装冠とは、白い歯を意味します。これはあくまでブリッジの費用例であり、保険制度は複雑で点数に基づいて費用が決定されるため、患者様一人ひとりの歯の状態によって金額には大きな差があります。ここに記載した金額は、あくまで目安としてお考えください。

また、欠損部分が2本、3本、4本…と増える場合(3連、4連、5連、6連…のブリッジ)は、その欠損形態によって保険適用になる場合とならない場合があります。

さらに、保険診療にはこれ以外にも、レントゲン撮影費用、歯周病の検査や治療、根管治療、初診料や再診料、各種指導料などが加算されることがあります。

※近年、金属の価格が高騰しており、それに伴って保険点数も順次引き上げられています。

保険適用条件の注意点

欠損している歯数や欠損の場所、ブリッジの支台歯となる歯の本数と部位などが加味されて保険適用の可否が決定されます。※複雑な計算式を用いて症例ごとにコンピューターで判定しています。保険適用の条件を満たさない場合、全額自己負担になります。

保険診療でのブリッジの審美性・耐久性の課題

硬質レジン前装冠の課題

保険診療で使用される硬質レジン前装冠は、天然歯に比べて透明感や自然な色合いに欠けるため、前歯など目立つ部位では審美性が低いと感じることがあります。また、硬質レジン前装冠は色素を含んだ食物を食べると経年劣化により着色し、変色しやすいこと。強度が低いため簡単に破折することなどの問題があります。

硬質レジン前装冠破損
硬質レジン前装冠破損

左上1番2番の硬質レジン前装冠が破損して金属が露出しています。

硬質レジン前装部破損
硬質レジン前装部破損

右上3番4番5番の3連ブリッジです。3番の硬質レジン前装部が完全に剝がれています。

金属冠の課題

金属の露出:奥歯のブリッジには金属冠が使用されますがく、銀色が目立ちやすいため、口元の美しさを重視する方には適さないことがあります。

金属アレルギーのリスク:保険診療で使用される金属は銀合金が多く、アレルギー反応を引き起こす場合があります。

保険適用ブリッジの寿命

一般的な寿命:保険適用ブリッジの平均寿命は5~10年程度とされています。ただし、適切なメンテナンスを行うことで、それ以上の期間使用できる場合もあります。

ただし、このデータは、必ずしも実態を表しているものではなく、臨床的には20年を超えるとブリッジを装着している患者さんも沢山いらっしゃいます。

従って、ブリッジの寿命は ブリッジの物理的強度だけではなくて、者さん自身のお手入れの仕方も非常に影響すると考えられます。

特にブリッジのダミー(ポンティック)の下には食べカスが溜まりやすいので歯間ブラシを使ってしっかりと磨くことが重要です。

自費診療ー審美性と耐久性を求める場合の選択肢

審美性や耐久性を重視する場合、自費診療で使用される以下の素材が選ばれることがあります。

メタルボンドブリッジの特徴とメリット

メタルボンドブリッジ

メタルボンドブリッジは、金属フレームにセラミックを焼き付けた歯科補綴物で、機能性と審美性を控えています。以下にその主な特徴とメリットをまとめます。

  1. 高い耐久性
    金属フレームを使用することで、強度が高く、安定した長期使用が可能です。噛み合わせ力の強い奥歯にも適しています。
  2. 優れた審美性
    表面がセラミックで出来ているため、自然な歯に近い見た目を実現できます。色調や透明感を調整することで、周囲の歯に調和した審美性を得ることが可能です。
  3. 適応範囲の広さ
    単独の歯の欠損だけでなく、複数の歯のブリッジ欠損症例にも対応できます。
  4. 清掃性の向上
    表面のセラミック部分は歯垢が付きにくく、日常のブラッシングでしっかり清掃できる特性があります。これにより、歯肉の健康が維持しやすく歯周病になりにくい利点があります。
  5. 比較的コストパフォーマンスが高い
    ジルコニアブリッジに比べてコストが抑えられることが多く、審美性と機能性を求める患者さんにとって魅力的な選択肢です。

ジルコニアブリッジの特徴とメリット

ジルコニアブリッジの特徴とメリット

ジルコニアブリッジは、高強度で美しい見た目を実現する歯科補綴物です。以下にその特徴とメリットをまとめます。

  1. 高い強度と耐久性
    ジルコニアは金属よりも強く、割れにくい素材で、咀嚼力の高い奥歯にも適しています。
  2. 自然な美しさ
    天然歯に近い透明感と色合いがあり、特に前歯部の審美性を重視する治療に最適です。
  3. 生体親和性
    ジルコニアは金属を使用しないため、金属アレルギーの心配はありません。
  4. 精密な加工
    CAD/CAM技術で製作されるため、適合性が高く、歯茎とのフィット感が良いです。

自費診療でのブリッジ費用詳細

自費診療

長期的に見た場合の費用対効果は高いかも。


素材
治療内容値段
メタルボンドメタルボンドブリッジの費用は×本数 前歯、奥歯共通(内側は金属で外側がセラミックで作るクラウン)¥115,500
(税抜き ¥105,000)
ジルコニアセラミックジルコニアセラミックブリッジの費用は×本数 ジルコニアフレームにセラミックを焼き付けるクラウン¥110,000
(税抜き ¥100,000)
フルジルコニアフルコニアブリッジの費用は×本数 すべてジルコニアで作るクラウン¥92,400
(税抜き ¥84,000)
※ すべてをジルコニアで作るフルジルコニアクラウンは、
ややテカリが強く、審美性に劣ります。

※これらの素材は保険適用外となりますが、長期的に見れば修理や再作成の頻度が少ないため、コストパフォーマンスに優れていると言えます。

寿命を延ばすためのポイント

歯間ブラシ
歯間ブラシ

歯間ブラシの使用

ブリッジのポンティック部分(橋の部分)には歯がありません。従ってポンティックの裏面に大量の歯垢(プラーク)が付着してしまいます。普通の歯ブラシでは取れないので、歯間ブラシは必須です。

歯垢を残したまま放置すると土台となっている歯の根元が虫歯になるばかりか歯周病も進行します。また、臭いの原因ともなるので通常のブラッシングを行った後、しっかりと歯間ブラシをかけてプラークコントロールをして下さい。

また、ブリッジは連結されているため、デンタルフロスは入りません。

虫歯予防のために使用するフッ素入り歯磨き粉、キシリトール、歯周病予防に効果的なポイックウォーターなどの使用をお薦めします。

以下に、ブリッジ、インプラント、入れ歯の違いを表形式でまとめました。それぞれの特徴を理解することで、自分に合った治療法を選択する参考になります。

項目ブリッジインプラント入れ歯
治療の目的欠損した歯を補い、見た目と機能を回復する欠損した歯の代わりに人工歯根を埋め込む取り外し可能な装置で歯を補う
固定方法両隣の歯を削り、支台として固定する顎骨に埋め込むチタン製の人工歯根に固定歯ぐきや残存歯に装着する(取り外し可能)
審美性前歯の場合、比較的自然に見えるが制限あり天然歯に近い見た目で非常に高い程度により異なるが、見た目が悪い場合あり
耐久性支台歯の健康状態次第で5〜10年程度顎骨が健康であれば10〜20年以上の耐久性使用状況により数年ごとに交換や調整が必要
費用保険診療:約1~3万円、自費診療:20万円~1本あたり30~50万円以上保険診療:数千円~1万円、自費診療:15万円~
治療期間数週間(型取り~装着まで)数カ月~1年(骨の治癒が必要)数週間(型取り~装着まで)
適応部位支台歯が必要なため、適応に制限があるほぼすべての部位に適応可能部位に関係なく適応可能
健康な歯への影響両隣の歯を削る必要がある隣接する歯を削らない隣接する歯への影響は少ないが不安定な場合あり
メンテナンス定期的な清掃と支台歯の管理が必要定期的な専門クリーニングが必要毎日の取り外し清掃が必要
痛みや不快感初期の治療時に削合の不快感がある場合あり手術が必要で、術後に痛みを伴う場合がある装着感に慣れるまで違和感がある
江戸川区篠崎で歯のブリッジ治療をご検討の方へ

歯を失うと、噛み合わせや見た目に影響が出るだけでなく、健康にも悪影響を及ぼすことがあります。そんな悩みを解消するために「ブリッジ治療」をご提案します。

当院では、患者様のご希望やライフスタイルに合わせて最適な治療計画をご提案します。まずはお気軽にご相談ください!

【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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