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「歯にヒビが入っているかも…」「前歯にうっすら線が見える」――そんな不安を感じたことはありませんか?
歯のヒビは、マイクロクラックのように表面的なものから、歯根破折のように深刻なものまでさまざまです。放置すると、見た目の問題だけでなく、虫歯や神経の炎症、最悪の場合は抜歯につながることもあります。

この記事では、歯のヒビの種類や原因、進行度に応じた治療法、そして予防のポイントまで、歯科医の視点から詳しく解説します。
「この痛み、もしかして…」と思った方は、ぜひ最後までお読みください。

【🎞️ 30秒】歯の表面のヒビと歯根のヒビの違いとは?症状と対処法を解説

🔍 歯のヒビとは何か?

「歯にヒビが入っているかも…?」そんな不安を感じたことはありませんか?
歯のヒビ(クラック)は、歯の表面にできる微細な亀裂から、内部や根にまで達する深刻なものまでさまざまです。表層にとどまる浅いヒビは「マイクロクラック」と呼ばれ、症状が出ないことも多いため見過ごされがちです。

しかし、一見問題なさそうでも、ヒビを放置すると細菌が侵入し、虫歯や歯の神経への感染を引き起こす可能性があります。さらに進行すると、歯が割れて抜歯が必要になるケースもあります。特に差し歯や根管治療済みの歯は、ヒビに気づきにくく進行が早いため注意が必要です。

歯に違和感がある、冷たいものがしみる、噛んだときに痛むといった症状がある場合は、早めの歯科受診が大切です。

📊 年代別に増える「歯のヒビ」

歯にヒビが入るリスクは年齢とともに高まる傾向があります。

30代の前歯にヒビ
30代の前歯にヒビ

30代の患者で左右上顎1番の2本にそれぞれ薄いヒビが入っています。

50代の前歯にヒビ
50代の前歯にヒビ

50代の患者で左右上顎1番の2本にそれぞれやや濃いヒビが入っています。

✅ 30代|前歯に見られるマイクロクラック

この年代では、見た目にはほとんどわからないごく浅いヒビ(マイクロクラック)が前歯に入っていることがあります。これは、咬合力(噛む力)や軽度な歯ぎしりによるものが多く、症状がなければ経過観察で済むことがほとんどです。

✅ 50代以降|歯質の劣化による深いヒビ

50代になると、歯の水分量が減少し、象牙質が硬く脆くなるため、より深く目立つヒビが入るケースが増加します。また、過去に治療した歯や詰め物のある歯に負荷が集中しやすく、歯根までヒビが進行することもあります。

加齢に伴って歯の弾力性は低下するため、「噛んだときにピキッと痛む」「歯に違和感がある」といった症状が現れたら注意が必要です。

歯のヒビは、単なる「老化現象」ではなく、日常生活の中で知らず知らずのうちに生じていることが多いです。以下に、代表的な4つの原因を詳しく解説します。

🦷 咬合性ストレス(歯ぎしり・食いしばり)

歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばり

最も多い原因のひとつが、無意識のうちに歯に過剰な力をかけてしまう「歯ぎしり」や「食いしばり」です。特に就寝中は、自分でも気づかないうちに強い力で上下の歯をこすり合わせたり、かみしめたりしていることがあります。

この習慣はストレスとの関連も深く、緊張や不安、疲労がたまっていると頻度や強さが増す傾向にあります。結果として、歯の表面や内部に目に見えないヒビが生じ、徐々に広がっていくリスクが高まります。

⚖ 噛み合わせの不調整

噛み合わせがずれていたり、歯並びに問題がある場合、一部の歯に力が集中することがあります。例えば、被せ物や詰め物の高さが合っていないと、その歯だけが強く当たるようになり、知らぬ間にヒビが入ってしまうことも。

また、親知らずによる噛み合わせの乱れなども、特定の歯に過剰な負荷を与える要因となります。歯列矯正や咬合調整によって、こうした負担を軽減することが予防につながります。

🏀 外傷や事故・硬い食べ物

転倒やスポーツ中の衝突、顔面への外傷などによって、歯に直接的な衝撃が加わるとヒビが生じやすくなります。特に前歯はダメージを受けやすい部位です。

また、氷や硬いアメ、ナッツなどを強く噛んだ際にも、歯に急激な力が加わり、ヒビの原因となることがあります。特に神経を抜いた歯や、治療済みの歯は強度が下がっているため注意が必要です。

🧬 虫歯・歯周病・治療歴・加齢

虫歯や歯周病が進行すると、歯質が弱くなり、わずかな力でもヒビが入りやすくなります。また、過去に大きな虫歯治療や根管治療を受けた歯は、構造的に脆くなっており、わずかな刺激でも破折しやすい傾向があります。

加齢により歯の水分量が減少すると、エナメル質や象牙質の柔軟性が失われ、亀裂が生じやすくなります。年齢を重ねるにつれ、ヒビのリスクは自然と高まるため、日頃のメンテナンスが一層重要です。

一口に「歯のヒビ」といっても、その場所や深さによって状態やリスクは大きく異なります。以下では、特に多い3つのタイプについて、それぞれの特徴と見分け方を解説します。

🧵 マイクロクラック(表面の浅いヒビ)

マイクロクラックとは、エナメル質の表層にできるごく浅い亀裂のことを指します。多くは痛みやしみる症状がなく、日常生活の中では気づかないことも珍しくありません。

見た目には、歯の表面に細い縦線のような線が現れることがありますが、光の反射や角度によってしか確認できないため、自己判断は難しいでしょう。主に加齢、歯ぎしり、噛み合わせの乱れなどが原因で起こります。

症状がなければ経過観察でも問題ありませんが、ヒビの隙間から細菌が侵入して虫歯や着色の原因となることがあるため、定期的な歯科検診が推奨されます。

🔸 歯冠部のヒビ(咀嚼時の痛み)

歯の噛む面(歯冠部)にできるヒビは、咀嚼時の鋭い痛みや違和感として現れることがあります。特に「噛んだ瞬間にズキッとする」「特定の方向でのみ痛む」という場合、このタイプのヒビが疑われます。

初期段階では軽い痛みだけでも、放置すると亀裂が象牙質や神経まで進行する可能性があり、症状が急激に悪化することも。早期に発見し、クラウンでの補強や必要に応じた根管治療を行うことで、抜歯を回避できるケースが多いです。

このような症状がある場合は、すぐに歯科医院で診断を受けましょう。

🧱 歯根破折(抜歯のリスク大)

最も深刻なタイプが「歯根破折」です。これは歯の根元、歯ぐきの中にある部分にヒビが入ってしまう状態で、自覚症状が出にくく発見が遅れがちです。

特に神経を抜いて被せ物をした歯は、内部の構造が弱くなっているため、咬合力や歯ぎしりによってヒビが入ることがあります。症状としては、噛んだときの痛み、歯ぐきの腫れ、膿が出るなどの炎症反応が見られることがあります。

肉眼で確認するのは難しく、レントゲンやCTなどの画像診断が不可欠です。ヒビが深い場合は、保存が困難で抜歯に至ることも多いため、早期発見がカギとなります。

🚨歯根破折の症例

歯根にヒビ正面観
歯根にヒビ正面観

右上顎2番に差し歯が入っていました。差し歯が動揺しているため除去すると歯根にヒビが入っていました。

歯根にヒビ咬合面観
歯根にヒビ咬合面観

同症例の咬合面観です。矢印部の歯根が破折しているため抜歯して、即日インプラントを埋入した症例です。

歯のヒビは、その深さ・位置・症状に応じて治療法が大きく異なります。ここでは、4つの進行度別に最適な治療方法をご紹介します。

歯のヒビの治療法
歯のヒビの治療法

🟢 初期段階(マイクロクラック)

歯の表面にできる浅いヒビ「マイクロクラック」は、多くの場合、痛みやしみる症状がありません。この段階では以下のような治療方針が取られます。

  • 経過観察:痛みや進行の兆候がなければ、治療は不要な場合が多く、定期検診でのモニタリングが基本です。
  • レジン修復:見た目が気になる場合や、ヒビの部分にしみる感覚がある場合は、歯科用樹脂(コンポジットレジン)でヒビを埋めて保護します。
  • ラミネートベニア:前歯など審美性が求められる部分には、薄いセラミックシェルを貼ることでヒビを隠し、自然な見た目に仕上げます。

🟡 中等度(痛みあり)

ヒビが歯の内部(象牙質)に及び、咀嚼時の痛みや違和感を感じる場合は、構造的な補強が必要です。

  • クラウン補強:歯全体を削り、被せ物(クラウン)で覆うことで、咀嚼力を分散し、ヒビの拡大を防ぎます。
  • 根管治療(必要に応じて):ヒビが神経に達している、もしくは感染の兆候がある場合は、神経を除去して根管を清掃・封鎖する治療が必要です。

この段階での適切な対応により、歯を抜かずに済む可能性が高くなります。

🔴 重度(歯根破折)

ヒビが歯根にまで及ぶと、保存が困難なケースが多くなります。特に神経のない歯や、過去に差し歯を入れていた歯で起こりやすいです。

  • 抜歯:感染や炎症が広がっている場合、抜歯が最も現実的な選択となることがあります。
  • インプラントやブリッジで補綴:抜歯後は、周囲の歯や噛み合わせに配慮し、インプラント・ブリッジ・部分入れ歯などで機能回復を図ります。

重度の破折は早期発見が難しいため、痛みや腫れに気づいた時点で速やかな受診が重要です。

🧪 先端治療(接着再植・セラミック)

近年では、条件が整えば歯を抜かずに済ませる先進的な治療法も登場しています。

  • 接着再植法:歯根破折の歯を一度抜歯し、破折部を接着してから元の場所に戻す方法です。成功すれば自分の歯を残すことが可能ですが、適応できる症例は限られます。
  • セラミックによる補綴:耐久性・審美性に優れたセラミック素材の使用により、割れやすい歯でも長期的な安定性が期待できます。保険適用外になることが多いため、費用面とのバランスも検討が必要です。

歯のヒビは一度入ってしまうと、自然に元に戻ることはありません。だからこそ、日常生活の中でリスクを減らす工夫が大切です。ここでは、歯にヒビが入らないための具体的な予防法を3つの視点からご紹介します。

😬 日常の工夫と予防習慣

まず重要なのが、「無意識にかかっている力」から歯を守ることです。

🦷 マウスピースの活用

就寝中の歯ぎしり・食いしばりは、歯に大きな負荷を与えます。特にストレスの多い方や、朝起きたときに顎の疲れを感じる方は要注意。歯科医院で作成するカスタムマウスピースを使用することで、歯へのダメージを大幅に軽減できます。

⚖ 噛み合わせの調整

噛み合わせが悪いと、特定の歯に力が集中し、ヒビの原因になります。違和感がある場合は、歯科での調整や、必要に応じた矯正治療も視野に入れると良いでしょう。

🍽 食生活の見直し

食べ物の選び方や栄養バランスも、歯の健康に大きく関わります。

🧊 硬い食品のリスクに注意

氷、ナッツ、硬いアメ、フランスパンの耳などを無理に噛むと、健康な歯でもヒビが入ることがあります。特に過去に治療歴のある歯は脆くなっていることがあるため、硬いものは避け、なるべく小さく割ってから食べるなどの工夫が必要です。

🥛 栄養で内側から歯を強く

歯の構造を強化するために、カルシウムとビタミンDの摂取を心がけましょう。

  • カルシウム:乳製品、小魚、大豆製品
  • ビタミンD:鮭、サンマ、卵黄、日光浴

骨や歯の密度を高めるために、バランスの良い食事が欠かせません。

👨‍⚕️ 歯科検診の重要性

ヒビは目に見えにくく、痛みが出るまで気づかないことも多いため、定期的な検診が最大の予防策になります。

🩻 レントゲンでの早期発見

マイクロクラックや歯根破折など、目視ではわからないヒビも、歯科でのレントゲンやCTによって発見が可能です。早期発見できれば、軽度な治療で済み、歯を保存できる可能性が高まります。

🛠 補綴物(被せ物・詰め物)のチェック

過去に入れた補綴物が合っていない場合、咬合のバランスが崩れ、ヒビのリスクが上がります。定期的な見直しで、長期的な歯の健康を守ることができます。


歯のヒビは「突然できる」ものではなく、日常の積み重ねで生じることがほとんどです。今できることをコツコツと続けることが、将来の大きなトラブルを防ぐ最善策です。

Q. ヒビがあっても歯は残せますか?

A. 状況次第で、十分に残せる可能性があります。
ヒビがエナメル質や象牙質の範囲にとどまっていれば、クラウンで補強したり、レジンで保護することで歯を残せるケースが多いです。ただし、ヒビが歯根にまで及んでいる場合は、治療の難易度が高くなり、抜歯の判断が必要になることもあります。できるだけ早い段階で発見・対応することが歯を守るカギです。

Q. 放置するとどうなりますか?

A. ヒビは自然には治らず、徐々に悪化します。
放置すると、ヒビの隙間から細菌が侵入し、虫歯や歯髄炎(神経の炎症)、歯根の感染へと進行するリスクがあります。また、咬む力の影響で亀裂が広がり、歯が完全に割れてしまうことも。最終的に抜歯が必要になることもあるため、違和感があれば早めに受診しましょう。

Q. 保険と自費治療の違いは?

A. 主に使用できる素材と精密さに差があります。
保険診療では、基本的な補修やクラウン装着は可能ですが、使用できる素材に制限があります。一方、自費治療ではセラミックやジルコニアなど、審美性・耐久性に優れた素材が使用でき、精度の高い治療が可能です。特に前歯など目立つ部分や、強度が求められる部位では自費治療が選ばれることが多くなります。

Q. ヒビが入った歯でもホワイトニングはできますか?

A. 状況によっては可能ですが、注意が必要です。
浅いヒビ(マイクロクラック)であれば、ホワイトニングは可能です。ただし、ヒビが深く象牙質や神経に近い場合は、ホワイトニングの薬剤が刺激となり、しみたり痛みが出たりするリスクがあります。ホワイトニングを希望する場合は、事前に歯科医師による状態の確認と、適切な判断を受けることが大切です。

📍 江戸川区篠崎で「歯のヒビ」にお悩みなら

「歯にヒビが入っているかも…」と感じたら、放置せずに早めの受診が大切です。
江戸川区篠崎にある当院では、拡大鏡を用いた精密診断により、目視では確認しづらいヒビも見逃しません。

さらに、ヒビの深さや位置に応じて、

  • レジン修復やクラウンによる歯の保存的治療
  • 歯根破折に対するインプラントやブリッジなどの高度補綴
    まで、患者様一人ひとりに合った最適な治療プランをご提案しています。

「冷たいものがしみる」「噛むと痛む」「前歯に細い線がある」など、少しでも違和感があれば、早期診断・早期治療で歯を守ることが可能です。

江戸川区篠崎で、歯のヒビに関する不安や疑問がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

【動画】差し歯やブリッジが取れた時の応急処置

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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