薬害テトラサイクリン変色歯とは

  • 薬害による歯の変色・テトラサイクリン歯は1950年代から起きました。
  • テトラサイクリンによる変色歯の原因は、永久歯の歯胚形成期頃に服用したテトラサイクリンが血液に運ばれ、象牙質に沈着し変色を起こします。
  • 訴訟で勝てる可能性は低いでしょう。
  • 治療には、ホワイトニングやラミネートベニアなどがありますが、保険適用外です。
  • ホームホワイトニングを長期間使用すると、ある程度の効果が期待出来ます。また、テトラサイクリン変色歯を白くする歯磨き粉はありません。

テトラサイクリン変色歯の原因とそのメカニズムを解説

永久歯の歯胚

6歳児のパノラマレントゲン写真
6歳児のパノラマレントゲン写真

0歳〜8歳は永久歯の歯胚形成

矢印で示したものが永久歯の歯胚です。この様に永久歯の歯胚が顎骨内にある時期にテトラサイクリンを服用すると、永久歯が変色歯となるリスクがあります。

歯胚とは歯の卵の様なものです。顎骨の中で次第に成長し、歯として口腔内に萌出します。

写真は、6歳児のものですが、上顎・下顎に中切歯がほぼ萌出しています。側切歯より奥の歯はまだ顎骨の中で歯胚の状態です。

この時期にテトラサイクリンを服用すると、中切歯への着色は歯頚部に僅かに入るくらいですが、他の永久歯は歯全体的に着色する可能性が考えられます。

変色のメカニズム

step

 テトラサイクリンが歯胚のカルシュウムと結合

子供の年齢(0歳〜8歳)頃は、永久歯の歯胚形成期です。子供がこの時期に何らかの感染症で抗生物質のテトラサイクリンを服用すると、血液に運ばれて歯の象牙質に含まれるカルシュウムと結合します。


step

 歯が萌出し太陽光に当たって変色

テトラサイクリン自体は、もともと少し黄色みを帯びています。歯が萌出し、太陽光(紫外線)に当たると酸化して黄色から褐色へ、そして黒褐色へと年数が経つにつれ、着色の度合いを強めながら変化していきます。


服用時期で着色部位に違いが

テトラサイクリン変色歯
テトラサイクリン変色歯

縞模様が右対称的に

一般的に服用した時期によって着色部位が異なり、縞模様状に2色に分かれて、横線も入り右対称的に現れます。また、服用した期間、量により歯の変色の程度が異なります。

写真の症例は中切歯の中央に縞模様状に茶褐色の変色が見られます。従って子供の年齢が3歳~4歳頃にテトラサイクリンを服用したものと考えられます。

色はそれほど強くないので少量の服用であったものと想像できます。

妊婦がテトラサイクリンを服用したら

妊娠中の服用では子供の永久歯に変色が起こることはなく、乳歯が変色します。この場合には乳歯が脱落し、永久歯に生え代わるので心配いりません。

子供がテトラサイクリン軟膏を塗布したら

「とびひ」などの皮膚や唇の感染症でアクロマイシン軟膏3%(テトラサイクリン系)などの軟膏を塗布した場合には、大量に飲み込まない限り、テトラサイクリン変色歯の問題は起こらないと考えても良いでしょう。

テトラサイクリン歯の症例

歯頸部が変色したテトラサイクリン歯

歯頸部が変色したテトラサイクリン歯


軽度の変色ですが歯頸部にあるためホワイトニングがやや難しいケースです。

歯の中央部に褐色ラインがあるテトラサイクリン歯

歯の中央部に褐色ラインがあるテトラサイクリン歯


ホームホワイトニングでかなり綺麗になる可能性のある症例です。

重度のテトラサイクリン歯

重度のテトラサイクリン歯


全歯牙に渡って黒褐色の変色が起こっています。 ホワイトニングだけでは難しくラミネートベニヤの適応症例です。

前歯にテトラサイクリン歯は認められず

前歯にテトラサイクリン歯は認められ


前歯の変色が見られないところを見ると8歳から9歳頃テトラサイクリンの服用をしたものと思われます。

ホワイトニングで改善できるテトラサイクリン変色歯の可能性

ホワイトニング

テトラサイクリン変色歯に対するホワイトニングやラミネートベニアなどの治療はすべて自費診療となり保険適用にはなりません。

歯頚部に強い着色が無い
歯頚部に強い着色が無い

ホームホワイトニング

エナメル質の薄い歯頚部に強い着色があると、その部分のホワイトニング効果はほとんど期待出来ません。

写真の症例では歯頚部に強い着色が無いのでホームホワイトニングで、ある程度の改善が望めます。

変色の状態にもよりますが、ホームホワイトニングで歯を白くするのに半年以上かかる事を覚悟してください。

しかし、強い変色歯の場合にはホームホワイトニングを長期間行ってもあまり良い変化が見られないこともあります。

オフィスホワイトニング

一般的に歯科医院内で行うオフィスホワイトニングではほとんどのケースで良い結果が出ません。よく歯科医師とご相談ください。

ラミネートベニア

テトラサイクリンによる強い変色の場合、ホワイトニングだけではなくラミネートベニアの併用も考えられます。

テトラサイクリン変色歯には歯磨き粉だけでは白くならない理由

テトラサイクリン変色歯は歯磨き粉では白くならない

ホワイトニング歯磨き粉
ホワイトニング歯磨き粉

残念ながらホワイトニング歯磨き粉を使っても殆ど効果は期待出来ません。ホワイトニング歯磨き粉は、歯の表面のステインインを取るだけの効果しかありません。

テトラサイクリン歯は、歯の内部から変色しているので、歯医者で行うホワイトニングでも十分な効果は期待できません。

テトラサイクリン変色歯だった芸能人

芸能人

テトラサイクリン変色歯が以前から気になっていた芸能人でキャイーンの天野さんがいらっしゃいました。

ある時、天野さんの歯の色が全く違っている事に気づきました。すぐに治療したのだと気付ました。

歯科の専門家ならではの目線でつい口元に目がいってしまうのは習性でしょうか。あくまでも想像ですが、治療法は、ホワイトニング、ラミネートベニア、セラミック冠などが考えられますが、あれだけ黒褐色に変色しているのだからホワイトニングだけでは無理であろうなどと考えてしまいます。

おそらく最も可能性の高いのはラミネートベニアで修復したのではないかなどと想像してみたりもします。

キャイーンの天野さん

テトラサイクリンによる歯の変色問題:1950年代からの歴史

年代

 1950年代

抗生物質のテトラサイクリンは有用な薬物ですが、アメリカでは1950年代からテトラサイクリン系抗生物質の服用により、歯の変色が問題となりました。


年代

 1963年

1963年にアメリカのFDAが妊婦や乳幼児に対してテトラサイクリン系抗生物質の投与を警告したにもかかわらず、1970年代から80年代にかけて、患者が急増してしまいました。

薬害訴訟に勝てる?

裁判で勝つのは難しい

テトラサイクリン変色歯はテトラサイクリンの副作用による薬害です。だとすると、「裁判で勝訴する可能性があるのでは」と思われがちですが、現実にはかなり困難なようです。

当時の感染症がテトラサイクリングを使用しなくても良いほどの状態であったことを、他の医師が診断した客観的、合理的なデータを示す必要があるからです。

裁判
裁判

ふかさわ歯科クリニック篠崎では、加齢や飲食等で歯の色素付着にお悩みの方に、オフィスホワイトニングとして短期間でホワイトニング効果を実感できる歯や歯茎に負担の少ないビヨンドホワイトニングをご提供しております。まや、歯の色が濃い方はホームホワイトニングをお薦めしています。江戸川区篠崎で薬害テトラサイクリン変色歯でお悩みの方で、ホワイトニング治療をご検討中の方はぜひ、当院へお気軽にご相談ください。

【動画】ホームホワイトニングの効果的なやり方

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

Follow me!