- 1. 口腔全体を診断するパントモレントゲンの見方とポイント
- 1.1. ① 白く映るものと黒く映るものの違い
- 1.2. ② 下顎神経や上顎洞の位置
- 1.3. ③ 根管治療の状態
- 1.4. ④ 親知らずの埋まり方
- 1.5. ⑤ 中程度歯周病による歯槽骨の吸収
- 1.6. ⑤ 重度歯周病による歯槽骨の吸収
- 1.7. ⑥ 虫歯の発見
- 1.8. ⑦ 根尖病巣(歯根嚢胞)の有無
- 1.9. ⑧ 埋伏歯を見つける
- 1.10. ⑨ 歯胚の確認
- 2. デンタルレントゲンの基礎知識:正常な画像の見方をマスターしよう
- 2.1. ① 正常なデンタルレントゲン画像
- 2.2. ② 歯根嚢胞(根尖病巣)の診断
- 2.3. ③ 歯根嚢胞が治療で治る過程
- 2.4. ④ 虫歯の診断
- 2.5. ⑤ 歯周病の診断
- 2.6. ⑥ 歯根破折の診断
- 2.7. ⑦ 乳歯
- 3. 江戸川区篠崎の歯科で保険診療をご検討の方へ
- 4. 【動画】虫歯や歯周病、歯根嚢胞はどこにあるでしょうか?
- 5. 筆者・院長
皆様は歯医者さんでレントゲンを見せられながら説明を受けたことがあると思います。でも何を言っているのかちんぷんかんぷんで分からないと感じたことがある方は多いのではないでしょうか。
今回は歯科のレントゲンの見方というテーマでお話をします。レントゲンは様々な情報を我々に提供してくれます。今日は、日頃多く遭遇する症例のレントゲンを解説します。
口腔全体を診断するパントモレントゲンの見方とポイント
歯科で使うレントゲンには、次のようにパントモレントゲン、デンタルレントゲン、セファロレントゲンの3種類があります。
パントモレントゲンはパノラマレントゲン写真とも言い、細かなところを見るには適していません。 口腔内全体を一括して診断するために使います。
① 白く映るものと黒く映るものの違い
レントゲン写真を見る上で最も基本的なものに白く映るものと黒く映るものの違いがあります。 X線が通過しない金属などは白く映ります。つまり、金属製の冠が被っていたりインプラントが埋入されていることが分かります。
また、上顎洞という部分は空洞になっています。そのためX線が通過しやすいのでX線透過像として黒く映ります。
② 下顎神経や上顎洞の位置
パントモレントゲンで診断する代表的なものに下顎神経(下歯槽神経)の走行を把握するために使います。
左右の下顎骨の中には太い管・下顎管があり、その中に下顎神経が走っています。インプラントを埋入する時には下顎神経との距離が重要で、万が一、下顎神経を損傷すると神経麻痺を起こしてしまいます。
もっとも実際の治療時にはCT 撮影を行いますが、その前段階としておおよその状態を把握しておきます。
また、上顎洞と歯の位置関係について把握しておく必要があります。 例えば奥歯を抜歯しなければいけない場合などです。奥歯の歯根と上顎洞が交通している場合があるからです。蓄膿症という言葉を聞いたことがあると思いますが、上顎洞が炎症を起こす病気が蓄膿症です。
また、奥歯にインプラントを埋入する際にも上顎洞との距離の把握が重要になります。
③ 根管治療の状態
このパントモレントゲンからは6本の歯が神経の治療を受けていることがわかります。神経の治療後には歯根の中が白いラインとして映るからです。また、歯根嚢胞が出来ていれば歯根の先端が黒く映ります。
④ 親知らずの埋まり方
親知らずの埋まり方の状態の把握にも大変役立ちます。特に抜歯が必要な場合には下顎管との位置関係が重要だからです。このパノラマレントゲンでは左右の親知らずが下顎管と接触している様に写っています。
⑤ 中程度歯周病による歯槽骨の吸収
歯周病の進行に伴い歯槽骨が吸収する程度を把握するのに撮影します。このパノラマレントゲンでは上顎の6番と7番との間の歯槽骨の吸収が顕著に認められます。
この部分に限って言えば、垂直性の骨吸収が4から5mm認められるので中等度の歯周病と言えます。
⑤ 重度歯周病による歯槽骨の吸収
重度歯周病のパノラマレントゲンです。矢印の部分まで歯槽骨の吸収が起こっています。歯根を支えている骨は1/3ほどになってしまっていることが分かります。
重度歯周病の別の症例のパノラマレントゲンです。全体的に歯槽骨の吸収が進んでいますが、特に矢印部分では歯槽骨の垂直性の吸収が顕著に認められます。
⑥ 虫歯の発見
虫歯の発見に役立ちます。上顎6番に神経まで到達するような大きな虫歯があることがよくわかります。虫歯の部分は黒くX線透過像として写ります。
この症例では下顎の親知らずが斜めに生えています。そのため下顎第2大臼歯との間に歯垢が溜まりやすく下顎第2大臼歯の奥側に虫歯が出来ているのが分かります。
この様に口の中から見ても発見しづらい場所に出来ている虫歯でも、パノラマレントゲンを撮ることで容易に見つけることができます。
⑦ 根尖病巣(歯根嚢胞)の有無
根尖病巣つまり歯根嚢胞の有無の確認に役立ちます。上顎2番に大きな X 線透過像が認められます。これは歯根嚢胞と呼ばれるもので、根管治療後に細菌が根管内に残ることで歯根先端部に膿の袋を作ります。
さらに下顎6番に小さな歯根嚢胞が出来ているのが分かります。
歯根嚢胞のある別の症例です。下顎6番と 下顎3番に歯根嚢胞があるのが分かります。
⑧ 埋伏歯を見つける
骨の中に埋まった埋伏歯を見つけることが出来ます。このパノラマレントゲンでは上顎の犬歯が骨の中に埋まったままの状態になっているのがわかります。
別のパノラマレントゲン写真です。2本の過剰歯があるのが確認できます。過剰歯というのは本来あるべき歯の数よりも多い場合にこう呼びますが、多くの場合埋伏しやすい特徴を持っています。
⑨ 歯胚の確認
6歳の子供のパノラマレントゲンです。まだ多くの永久歯が歯胚と呼ばれる歯の卵の状態で骨の中に埋まっています。
パノラマレントゲンを撮ることで骨の中に埋まった歯胚が正しく存在しているかを事前に確認することが出来ます。
デンタルレントゲンの基礎知識:正常な画像の見方をマスターしよう
① 正常なデンタルレントゲン画像
歯根膜の状態
デンタルレントゲンはそれぞれの歯の詳細を見るのに役に立ちます。この写真は上顎の前歯を写した正常な画像です。
矢印が指し示している所に、細くて黒い筋状のものが歯根を取り囲むように見えますが、これは歯根膜という組織です。
歯根膜には、歯根と歯槽骨とを結びつけている繊維が走っていて、 歯に強い力が加わった時に歯を守るクッションの役割を担っています。
歯ぎしりの様な強い力がかかり続けると歯根膜腔拡大が起こり、歯根膜は黒く太く写るようになります。
歯槽骨の高さ
歯槽骨の高さもデンタルレントゲンで正確に見ることができます。赤い矢印は歯槽骨の上端を示していますが、これは正常な状態です。
歯槽骨の高さは歯周病の進行程度を診断するのに役立ちます。
歯髄の状態
歯の中心部が少し黒っぽく写っています。これは正常な歯髄です。歯の神経が生きていることを示しています。
② 歯根嚢胞(根尖病巣)の診断
歯根嚢胞の有無を確認
このデンタルレントゲンは歯根嚢胞の写真です。 神経を取り根管治療を行った後で、ばい菌が歯根にわずかに残ることで歯槽骨の中に膿が溜まる病気です。
歯根嚢胞は歯根先端部に膿の袋が出来ます。その部分の骨がなくなるのでレントゲンではX 線透過像として黒く映ります。
③ 歯根嚢胞が治療で治る過程
step1 歯根嚢胞の大きさ確認
このデンタルレントゲン写真は上顎1番が原因で歯根嚢胞が出来た症例です。歯根嚢胞は歯冠大まで大きくなっています。
step2 根管治療
この症例では、上顎1番と2番の根管治療を行いました。赤い矢印の部分はガッタパーチャーポイントという薬剤により根充が完了したことを示しています。 ガッタパーチャは X 線透過性が低いのでX 線不透過像として白く映ります。
step3 歯根嚢胞摘出術
次に歯根嚢胞摘出術により、歯根嚢胞を一塊として摘出しました。
step4 歯根端切除術+逆根充
次いで赤い矢印部分で原因歯である上顎1番の歯根端切除術と逆根充を行いました。
step5 治癒
このデンタルレントゲン写真は治療後約半年経過したものです。赤い矢印の部分の X 線透過像が白っぽく変化してきています。これは骨が出来てきている証拠です。
また矢印部分に歯根膜がしっかりと出来ているのも確認できます。
④ 虫歯の診断
金属製のインレー
赤矢印部分が白く写っているのは金属の詰め物 であるインレーです。
金属は X 線を通過させないため白く写ります。
C3の虫歯
下顎7番のインレーの下が黒く写っています。これは歯髄まで進行したC3の虫歯です。
二次カリエス
下顎6番のインレーの下が少し黒っぽく写っています。これは虫歯の取り残しが原因の二次カリエスの可能性が高いです。
C2の虫歯
下顎5番の歯の間に出来た虫歯です。 あまり黒くはなっていませんが、歯髄近くまで進行したかなり大きなC2の虫歯と診断します。
⑤ 歯周病の診断
重度歯周病の垂直性骨吸収
このデンタルレントゲンでは下顎7番の歯槽骨が垂直的に真っ黒になっているのが認められます。
これはブリッジ直下の清掃が不十分なために起きた重度歯周病による歯槽骨の垂直性骨吸収です。
このように骨が無くなるとX線透過像として黒く写ります。
根分岐部病変
下顎6番の歯根の間が真っ黒になっています。これは歯周病が進行したため歯槽骨が水平に吸収したためです。このような状態を根分岐部病変と呼んでいます。
歯周病の手遅れ症状
下顎7番の歯根の周りが薄く黒っぽい状態になっています。これは歯周病が歯根全体を取り囲むように進行したものです。デンタルレントゲンから末期的な症状と診断します。
⑥ 歯根破折の診断
差し歯の歯根破折
メタルコアが入った上顎5番の差し歯が歯根破折した時のデンタルレントゲン写真です。
歯根が鉈で割ったように真っ二つに割れているのが分かります。この様になると細菌感染を受けるため、割れた歯根部分の周囲の骨が溶けて黒く写ります。
⑦ 乳歯
乳歯の根管治療
第二乳臼歯の根管治療が完了した時のデンタル X 線です。
歯根の中が白い筋状に写っていますが、白く映るのはビタペックスという根管治療で使う薬がX 線を通しづらいからです。
また第二乳臼歯の下に永久歯の第2小臼歯(5番)が写っています。 時間の経過とともにいずれ生え変わるでしょう。
後続永久歯の先天欠損
後続永久歯が先天欠損している症例です。 成人になっても第二乳臼歯がいつまでも残っています。
つまり本来ならあるべき5番(第二小臼歯) が先天的に欠損しているため乳歯がなかなか抜けないのです。
江戸川区篠崎の歯科で保険診療をご検討の方へ
ふかさわ歯科クリニック篠崎では、歯科治療は保険診療を主体に診療を行っております。江戸川区篠崎の歯科にて、保険診療をご検討の方は当院までお気軽にご相談下さい。
保険証の期限切れにご注意ください。保険証の確認が取れない場合は保険診療として取り扱うことができません。
また、マイナンバーカードによるマイナ保険証での受診にも対応しています。
【動画】虫歯や歯周病、歯根嚢胞はどこにあるでしょうか?
筆者・院長
深沢 一
Hajime FULASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。