目次

「歯がグラグラしている」「歯ぐきから膿が出る」「もう抜歯しかないのでは?」と不安に感じていませんか。

歯周病は、初期にはほとんど痛みがなく、自覚症状がないまま進行する病気です。そのため、歯のぐらつきや歯ぐきの腫れに気づいたときには、歯を支える骨(歯槽骨)が大きく失われていることもあります。

しかし、重度の歯周病でも、すべての歯が抜歯になるわけではありません。歯槽骨の残り方や歯の状態によっては、歯を残せる可能性があります。

この記事では、歯周病が手遅れに近づいたときの症状や見分け方、歯を残せるケース・抜歯が必要なケース、重度歯周病の治療法についてわかりやすく解説します。まずは、ご自身のお口の状態を正しく知ることから始めましょう。


歯周病が重度まで進行していても、すべての歯を抜かなければならないとは限りません。

歯を残せるかどうかは、次のような検査結果を総合して判断します。

  • 歯を支える歯槽骨がどの程度残っているか
  • 歯周ポケットの深さ
  • 歯のぐらつきの程度
  • 歯根の形や長さ
  • 歯根にひびや破折がないか
  • 歯ぐきから膿が出ているか
  • 噛み合わせの負担が強くないか
  • 歯石や感染組織を除去できる状態か
  • 患者さんが適切な歯磨きを継続できるか
  • 糖尿病や喫煙などのリスク因子があるか

歯周病では、失われた歯槽骨を完全に元の状態へ戻すことは簡単ではありません。しかし、原因となる歯周病菌や歯石を除去し、炎症を抑えることで、病気の進行を止められる可能性があります。

また、骨の失われ方や残っている歯周組織の状態によっては、歯周組織再生療法によって歯を支える組織の回復を目指せる場合もあります。

歯がグラグラしている、膿が出る、深い歯周ポケットがあるといった症状だけで、すぐに「手遅れ」とは判断できません。まずは精密検査を受け、保存できる歯と抜歯が必要な歯を見極めることが重要です。

次の項目に当てはまるものがないか確認してみましょう。

  • 歯磨きをすると歯ぐきから血が出る
  • 歯ぐきが赤く腫れている
  • 歯ぐきが下がり、歯が長く見える
  • 冷たい物が歯にしみる
  • 歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなった
  • 朝起きたとき、口の中がネバネバする
  • 家族や周囲の人から口臭を指摘された
  • 歯ぐきを押すと膿が出る
  • 歯が以前より動くようになった
  • 前歯が開いたり、歯並びが変わったりした
  • 硬い物が噛みにくい
  • 1年以上、歯科検診を受けていない

1つでも当てはまる場合は、歯周病が始まっている可能性があります。

特に、歯のぐらつき、膿、噛んだときの痛み、歯並びの変化がある場合は、歯周病が進行している可能性があるため、早めの受診をおすすめします。

歯周病の歯茎
歯周病の歯茎

歯周病は、歯を支える歯ぐきや歯槽骨などの歯周組織が、細菌感染によって徐々に破壊されていく病気です。

主な原因は、歯と歯ぐきの境目に付着するプラークです。プラークは単なる食べかすではなく、多数の細菌が集まったバイオフィルムです。

プラークが長期間残ると、歯ぐきに炎症が起こり、歯磨き時の出血や腫れが現れます。さらに進行すると、歯と歯ぐきの間に歯周ポケットが形成され、その内部に歯石や細菌が入り込みます。

炎症が歯の周囲へ広がると、歯を支える歯槽骨が少しずつ吸収され、最終的には歯がグラグラして噛めなくなります。

歯周病が怖いのは、重症になるまで強い痛みが出にくい点です。

虫歯のように痛みで気づくことが少なく、歯ぐきからの出血や口臭を「疲れているから」「年齢のせい」と考え、放置してしまう方も少なくありません。

歯周病には、医学的に「ここから必ず手遅れ」という明確な境界線があるわけではありません。

一般的には、歯を支える骨が大きく失われ、治療をしても十分な安定が得られない状態になると、抜歯が検討されます。

歯周病の進行度を段階ごとに見ていきましょう。

初期|歯肉炎

歯肉炎は、炎症が歯ぐきにとどまっている状態です。

主な症状は次のとおりです。

  • 歯ぐきが赤い
  • 歯ぐきが少し腫れている
  • 歯磨きで出血する
  • 朝、口の中がネバつく
  • 軽い口臭がある

この段階では、歯を支える骨はほとんど失われていません。

正しい歯磨きと歯科医院での歯石除去によって、健康な歯ぐきに回復できる可能性があります。

軽度歯周炎

歯ぐきの炎症が歯の周囲へ広がり、歯槽骨が少しずつ吸収され始めます。

  • 歯周ポケットが深くなる
  • 歯磨きで頻繁に出血する
  • 歯ぐきが下がり始める
  • 歯と歯の間に隙間ができる
  • 口臭が強くなる

この段階で治療を始めれば、歯を残せる可能性は高いと考えられます。

中等度歯周炎

歯槽骨の吸収が進み、歯を支える力が低下してきます。

  • 歯が少しグラグラする
  • 歯ぐきから膿が出ることがある
  • 歯が長く見える
  • 食べ物が詰まりやすい
  • 噛むと違和感がある
  • 歯周ポケットが深くなる

この段階では、通常の歯石除去だけでは十分に改善しないことがあります。

歯ぐきの奥深くに付着した歯石や感染組織を除去するため、スケーリング・ルートプレーニングや歯周外科治療が必要になる場合があります。

重度歯周病

歯を支える歯槽骨が大きく失われた状態です。

  • 歯が大きくグラグラする
  • 歯が上下方向にも動く
  • 歯ぐきから繰り返し膿が出る
  • 強い口臭がある
  • 噛むと痛い
  • 歯並びが変化する
  • 前歯が開いてくる
  • 硬い物が噛めない
  • 歯が自然に抜けそうになる

この段階では、歯の保存が難しい場合があります。

ただし、重度歯周炎であっても、歯槽骨が一部残っている場合や、再生療法を行える骨の形態が残っている場合には、歯を保存できる可能性があります。

重度歯周病の症例

白い歯石の周辺:歯茎が丸く、大きく膨らんでいる
白い歯石の周辺:歯茎が丸く、大きく膨らんでいる
黒い歯石の周辺:不整形な腫れ+裂け目(裂開)
黒い歯石の周辺:不整形な腫れ+裂け目(裂開)
  • 黒い歯石の周辺:不整形な腫れ+裂け目(裂開)がある
  • 白い歯石の周辺:歯茎が丸く、大きく膨らんでいる
  • 下前歯・上奥歯:歯石の沈着と合わせて腫れやすい部位

1.歯が大きくグラグラする

歯周病が進行すると、歯を支える歯槽骨が吸収され、歯の動揺が強くなります。

軽度では横方向にわずかに動く程度ですが、重度になると前後左右だけでなく、上下方向にも動くことがあります。

上下方向に沈み込むように動く歯は、歯を支える組織が大きく失われている可能性があります。

ただし、歯のぐらつきは歯周病だけでなく、歯ぎしりや食いしばり、歯根破折、噛み合わせの異常によっても起こります。自己判断せず、検査を受けることが必要です。

2.歯ぐきから膿が出る 歯茎の裂開

症例1:歯茎の赤み・裂開
歯茎の赤み・裂開

歯ぐきを押したときや、歯と歯ぐきの間から膿が出る場合は、歯周ポケットの内部で細菌感染が続いている可能性があります。

膿が出る状態を放置すると、炎症がさらに広がり、歯槽骨の吸収が進むおそれがあります。

一時的に腫れが引いても、原因となる歯石や細菌がなくなったわけではありません。

3.歯ぐきが大きく腫れる

症例2:自然出血・膿の排出・歯茎の腫れ
自然出血・膿の排出・歯茎の腫れ
症例3:自然出血・膿の排出・歯茎の腫れ
自然出血・膿の排出・歯茎の腫れ

重度の歯周病では、歯ぐきが暗い赤色や紫色になり、大きく腫れることがあります。

歯ぐきがブヨブヨしている、触ると血が出る、腫れを繰り返すといった症状は、炎症が慢性化しているサインです。

4.何もしていなくても血が出る

 30代・40代の見落としがちな重症化例:下顎前歯の4本が重度歯周病に
30代・40代の見落としがちな重症化例:下顎前歯の4本が重度歯周病に

初期の歯周病では、歯磨きをしたときに出血することがあります。

さらに進行すると、食事中や会話中、あるいは何もしていないときにも血がにじむことがあります。

自然出血がある場合は、歯ぐきの炎症が強くなっている可能性があります。

5.強い口臭が続く

歯周ポケットの中に細菌や膿がたまると、強い口臭が発生します。

歯を磨いても口臭が改善しない、家族から口臭を指摘される、口の中に苦い味や膿のような味がするといった場合は、歯周病が関係していることがあります。

6.噛むと痛い、噛めない

歯周病で歯を支える組織が弱くなると、噛んだときに歯へ加わる力を受け止められなくなります。

その結果、噛むと歯が浮く、痛い、硬い物が噛めないといった症状が現れます。

突然強い痛みが出た場合は、歯周膿瘍と呼ばれる急性炎症を起こしている可能性もあります。

7.歯並びが変わる

歯周病が進行すると、歯を支える力が弱くなり、噛み合わせや舌の力によって歯が移動することがあります。

  • 前歯が開いてきた
  • 歯と歯の間に隙間ができた
  • 歯が外側へ傾いた
  • 以前と噛み合わせが変わった

このような変化は、歯周病がかなり進行しているサインの一つです。

歯周病の進行度は、見た目だけで正確に判断することはできません。

しかし、次のような変化がある場合は、歯周病が進行している可能性があります。

歯ぐきが赤紫色に腫れている

重度歯周病:右側面
重度歯周病:右側面
重度歯周病:正面
重度歯周病:正面
重度歯周病:左側面

健康な歯ぐきは薄いピンク色で、引き締まっています。

歯周病が進行すると、歯ぐきが赤色や暗赤色になり、丸く腫れたり、ブヨブヨした状態になったりします。

歯ぐきが下がって歯が長く見える

歯周病によって歯槽骨が失われると、それに伴って歯ぐきも下がります。

以前より歯が長く見える、歯の根元が露出している場合は、歯周病が進行している可能性があります。

黒い・白い歯石が付いている

歯周病が長期間放置されると、歯と歯茎の境目に黒色や白色の硬い歯石が大量に付着します。特に下前歯や上奥歯に多く見られ、視診で明らかに確認できます。

黒い歯石が大量に沈着している
黒い歯石が大量に沈着している
白い歯石が大量に沈着している
白い歯石が大量に沈着している
  • 黒い歯石(縁下歯石):歯周ポケットの奥にでき、重度の炎症の原因に
  • 白い歯石(縁上歯石):歯の表面に付着し、目立つことが多い

歯ぐきより上に付着する歯石は、白色や黄白色をしています。

一方、歯周ポケットの内部に付着する歯石は、血液成分などの影響で黒褐色になることがあります。

黒い歯石は歯周ポケットの奥深くに付着していることが多く、歯ブラシでは除去できません。

歯と歯の間が開いている

歯周病が進行すると、歯ぐきや歯槽骨が失われ、歯と歯の間に三角形の隙間が現れることがあります。

歯が移動して隙間が広がっている場合は、噛み合わせも含めた詳しい検査が必要です。

歯周病の重症度は、見た目や症状だけでは判断できません。

歯科医院では、主に次の検査を行います。

歯周ポケット検査

歯周プローブと呼ばれる細い器具を、歯と歯ぐきの間に挿入して深さを測ります。

歯周ポケットの深さだけでなく、出血、膿、歯ぐきの状態も確認します。

一般的に、歯周ポケットが深いほど歯周病が進んでいる可能性がありますが、深さだけで抜歯の可否を判断することはできません。

歯の動揺度検査

歯がどの方向に、どの程度動くかを確認します。

歯のぐらつきが強い場合でも、炎症や噛み合わせを改善することで動揺が軽減することがあります。

一方、歯根破折がある場合や、歯槽骨がほとんど残っていない場合は、保存が難しくなります。

レントゲン検査

歯周ポケットが10mmを超えている歯槽骨吸収
歯周ポケットが10mmを超えている歯槽骨吸収

レントゲンでは、歯槽骨がどの程度失われているか、歯根の周囲に炎症がないかを確認します。

歯槽骨が水平に失われているのか、垂直方向に失われているのかによって、治療方法や再生療法の適応が異なります。

CT検査

通常のレントゲンでは分かりにくい骨の状態を、三次元的に確認する検査です。

歯根の周囲に残っている骨の量、骨欠損の形、上顎洞や神経との位置関係などを詳しく調べられます。

噛み合わせの検査

歯ぎしりや食いしばり、特定の歯に偏った噛み合わせの力が加わっていると、歯周病の進行を早めることがあります。

歯周病治療では、細菌の除去だけでなく、噛み合わせの負担を調整することも重要です。

上顎第一大臼歯(上顎6番)周囲の歯槽骨がほぼ完全に吸収している
上顎第一大臼歯(上顎6番)周囲の歯槽骨がほぼ完全に吸収している
上顎第一大臼歯(上顎6番):末期症状
上顎第一大臼歯(上顎6番):末期症状

次のような状態では、歯を残すことが難しく、抜歯が検討されることがあります。

  • 歯を支える歯槽骨がほとんど残っていない
  • 歯が上下方向にも大きく動く
  • 歯根の先端付近まで骨吸収が進んでいる
  • 歯根が縦方向に割れている
  • 歯根の周囲に広範囲な感染がある
  • 膿や腫れを何度も繰り返している
  • 歯石や感染組織を十分に除去できない
  • 歯の周囲を清掃できない
  • 治療後も噛む機能を回復できない
  • 保存することで隣の歯や全身状態に悪影響を与える

無理に状態の悪い歯を残すと、周囲の骨をさらに失ったり、隣の歯まで悪化させたりすることがあります。

歯を残すことだけを目的にするのではなく、お口全体を長く安定させられるかという視点が重要です。

重度歯周病であっても、次のような条件が整っている場合は、歯を保存できる可能性があります。

  • 歯を支える骨が一部残っている
  • 歯根に破折がない
  • 歯石や感染組織を除去できる
  • 垂直性の骨欠損があり、再生療法を検討できる
  • 噛み合わせの負担を調整できる
  • 歯磨きや歯間清掃を継続できる
  • 禁煙や糖尿病の管理ができる
  • 定期的なメンテナンスを受けられる

歯周病治療では、歯科医院での処置だけでなく、患者さんご自身のセルフケアが治療結果に大きく影響します。

歯石を除去しても、プラークが多い状態が続けば、炎症は再発します。

歯を残すためには、歯科医師・歯科衛生士と患者さんが一緒に治療へ取り組むことが欠かせません。

歯磨き指導

歯周病治療の基本は、毎日のプラークコントロールです。

患者さんごとに歯並び、歯ぐきの状態、磨き残しやすい部位が異なるため、歯ブラシの当て方や歯間ブラシのサイズを確認します。

歯科医院で治療を受けても、毎日のプラークが十分に除去できなければ、歯周病は改善しません。

スケーリング

歯の表面や歯ぐきの境目に付着した歯石を、専用の器具で除去します。

歯石の表面には細菌が付着しやすいため、歯石を残したままでは歯ぐきの炎症が改善しにくくなります。

スケーリング・ルートプレーニング

歯周ポケットの内部や歯根の表面に付着した歯石、細菌、汚染物質を除去する治療です。

歯根面を滑らかに整えることで、歯ぐきが歯根面に付着しやすい環境を作ります。

治療後は一時的に歯がしみたり、歯ぐきが引き締まって歯が長く見えたりすることがあります。

歯周外科治療

歯周ポケットが深く、通常の器具では歯石を十分に除去できない場合に行います。

歯ぐきを切開して歯根面を直接確認しながら、歯石や感染組織を除去します。

炎症の原因を取り除き、患者さんご自身が清掃しやすい歯ぐきの形へ整えることもあります。

歯周組織再生療法

歯周病によって失われた歯槽骨や歯根膜などの再生を目指す治療です。

当院では、適応を慎重に判断したうえで、リグロスを用いた歯周組織再生療法を検討します。

リグロスは、歯周組織の再生を促す薬剤で、一定の条件を満たす場合には保険診療で使用できます。

ただし、すべての骨吸収に適応できるわけではありません。

再生療法の成功には、骨欠損の形、歯根の状態、プラークコントロール、喫煙の有無、糖尿病の管理状態などが影響します。

GTR法

歯周組織再生療法の一つで、特殊な膜を用いて、歯槽骨や歯根膜が再生するための空間を確保します。

症例によっては、リグロスなどの再生材料と組み合わせることがあります。

噛み合わせの調整

歯周病で弱くなった歯に強い噛み合わせの力が集中すると、歯のぐらつきが悪化することがあります。

必要に応じて噛み合わせを調整したり、複数の歯を固定したりして、歯への負担を分散します。

ただし、固定だけでは歯周病の原因は改善しません。歯石除去やプラークコントロールと併せて行うことが重要です。

歯根分割やヘミセクション

複数の歯根を持つ奥歯で、一部の歯根だけが重度の歯周病や破折を起こしている場合、問題のある歯根だけを除去し、残りの部分を保存できることがあります。

適応できる症例は限られますが、抜歯を回避する選択肢の一つです。

歯周病は、治療によって炎症を抑え、進行を止めることを目指す病気です。

一度失われた歯槽骨や歯ぐきは、治療をしても完全には元に戻らないことがあります。

また、治療後に歯磨きが不十分になったり、メンテナンスを中断したりすると、再び歯周病が進行する可能性があります。

そのため、治療後は歯周病安定期治療や定期的なメンテナンスを継続することが重要です。

メンテナンスでは、次のような確認を行います。

  • 歯周ポケットの深さ
  • 歯ぐきからの出血
  • 歯のぐらつき
  • プラークの付着状況
  • 歯石の再付着
  • 噛み合わせ
  • セルフケアの状態

重度歯周病の方では、一般的な定期検診よりも短い間隔での管理が必要になることがあります。

歯を残すことが難しい場合は、感染を周囲へ広げないために抜歯が必要になることがあります。

抜歯後は、噛む機能や歯並びを維持するため、失った歯を補う治療を検討します。

入れ歯

取り外し式の装置で、1本から複数本の欠損に対応できます。

保険診療の入れ歯と、自費診療の入れ歯があり、使用する材料や設計、装着感などが異なります。

外科手術を行わずに治療できる点が特徴です。

ブリッジ

抜歯した部分の両隣にある歯を支えとして、連結した被せ物を装着する方法です。

固定式のため、取り外す必要はありません。

一方で、支えとなる歯を削る必要があり、欠損部に加わる力を両隣の歯が負担します。

インプラント

顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する方法です。

隣の健康な歯を削らず、欠損部のみを補える点が大きな特徴です。

ただし、重度歯周病によって骨が大きく失われている場合は、骨を増やす治療が必要になることがあります。

また、歯周病のコントロールが不十分な状態でインプラント治療を行うと、インプラント周囲炎を起こすリスクが高まります。

まずは残っている歯の歯周病を安定させることが重要です。

抜歯後の対応として行うインプラント治療の流れ ― 下顎6番欠損症例 ―

下顎6番欠損に対するインプラント治療
下顎6番欠損に対するインプラント治療
下顎6番欠損相当部へのインプラント埋入
下顎6番欠損相当部へのインプラント埋入
下顎6番欠損相当部にインプラント上部構造を装着したX線所見
下顎6番欠損相当部にインプラント上部構造を装着したX線所見

下顎6番を抜歯後、欠損部を放置せずインプラント治療を行った症例です。抜歯後の口腔内所見から、欠損相当部位へのインプラント埋入、さらに上部構造装着後のX線所見までを示しています。インプラントは隣在歯を削ることなく欠損部のみを補えるため、噛み合わせの維持や周囲歯への負担軽減につながります。機能性と長期的な安定性を重視した、抜歯後の有効な補綴治療の一例です。

歯を抜いたまま放置すると、すぐに困らなくても、時間の経過とともに次のような問題が起こることがあります。

  • 隣の歯が欠損部へ傾く
  • 噛み合う反対側の歯が伸びてくる
  • 噛み合わせが崩れる
  • 残っている歯への負担が増える
  • 食べ物が詰まりやすくなる
  • 顎の骨が痩せる
  • 将来の治療が難しくなる

抜歯が必要になった場合は、その歯だけでなく、お口全体の噛み合わせを考えた治療計画を立てることが大切です。

歯周病は中高年に多い病気ですが、若い方でも重症化することがあります。

特に注意が必要なのが、現在の分類で「若年者にみられる急速進行性の歯周炎」と考えられるケースです。

以前は「侵襲性歯周炎」や「若年性歯周炎」と呼ばれていた病態が含まれます。

侵襲性歯周炎
侵襲性歯周炎

若い方にみられる歯周病の特徴

  • 年齢の割に骨吸収が大きい
  • 短期間で歯周病が進行する
  • 前歯や第一大臼歯を中心に進行することがある
  • 歯石が少なく見えても骨吸収が進んでいる
  • 家族にも若くして歯を失った人がいる
  • 特定の歯周病菌や免疫反応が関係することがある

10代、20代、30代で歯がグラグラする、歯並びが急に変化した、強い口臭がある場合は、年齢にかかわらず歯周病検査を受けることが重要です。

喫煙

喫煙は、歯周病を重症化させる大きなリスク因子です。

タバコに含まれる有害物質は、歯ぐきの血流や免疫反応を低下させ、歯周病治療の効果を弱めます。

喫煙者では、歯ぐきからの出血が目立ちにくいこともあります。そのため、見た目では炎症が少ないように感じても、内部で歯周病が進行している場合があります。

糖尿病

糖尿病と歯周病は相互に影響する関係にあります。

血糖値が高い状態が続くと、感染への抵抗力や傷を治す力が低下し、歯周病が進行しやすくなります。

一方、歯周病による慢性的な炎症が、血糖コントロールへ影響する可能性もあります。

歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりだけで歯周病が起こるわけではありません。

しかし、歯周病によって骨が弱くなった歯に強い力が加わると、歯のぐらつきや骨吸収が悪化することがあります。

不十分な歯磨き

毎日歯を磨いていても、歯と歯ぐきの境目や歯間部にプラークが残っていれば、歯周病は進行します。

歯ブラシだけでは歯と歯の間を十分に清掃できないため、歯間ブラシやデンタルフロスを併用することが大切です。

定期検診を受けていない

歯周病は、自覚症状だけでは早期発見が難しい病気です。

痛みがなくても、歯周ポケットやレントゲン上では進行していることがあります。

歯周病のリスクが高い方は、歯科医院で定期的な検査を受ける必要があります。

ストレスや睡眠不足

強いストレスや慢性的な睡眠不足は、免疫機能や生活習慣に影響し、歯周病を悪化させる要因になることがあります。

疲れていると歯磨きが不十分になったり、食いしばりが強くなったりすることもあります。

歯周病は、口の中だけの病気ではありません。

歯周病による慢性的な炎症は、糖尿病、心血管疾患、脳血管疾患、誤嚥性肺炎など、さまざまな全身疾患との関連が研究されています。

また、妊娠中の重度歯周病と、早産や低出生体重児との関連も報告されています。

歯周病を治療することは、歯を守るだけでなく、全身の健康管理という意味でも重要です。

ただし、歯周病がこれらの病気を直接引き起こすと単純に断定できるわけではありません。

持病がある方や妊娠中の方は、医科と歯科で情報を共有しながら治療を進めることが大切です。

歯と歯ぐきの境目を丁寧に磨く

歯周病の原因となるプラークは、歯と歯ぐきの境目にたまりやすくなります。

歯ブラシの毛先を境目に当て、強くこすらず、小刻みに動かして磨きましょう。

力を入れすぎると、歯ぐきを傷つけたり、歯ぐきが下がったりする原因になります。

歯間ブラシやデンタルフロスを使う

歯ブラシだけでは、歯と歯の間のプラークを十分に除去できません。

歯間部の広さに合わせて、歯間ブラシやデンタルフロスを使用します。

歯間ブラシのサイズが大きすぎると歯ぐきを傷つけ、小さすぎると十分な清掃効果が得られません。

歯科医院で適切なサイズを確認してもらうと安心です。

歯石を定期的に除去する

一度硬くなった歯石は、歯ブラシでは落とせません。

歯石の表面にはプラークが付着しやすく、歯ぐきの炎症を繰り返す原因になります。

定期的に歯科医院で歯石を除去することが大切です。

プロフェッショナルケアを受ける

エアフローによるクリーニング
エアフローによるクリーニング

歯科医院では、歯石除去だけでなく、患者さんごとの磨き残しやリスク部位を確認します。

必要に応じてPMTCやエアフローなどを用い、歯ブラシでは届きにくい部位のバイオフィルムを除去します。

ただし、PMTCやエアフローだけで、深い歯周ポケット内部の歯石を除去できるわけではありません。

進行した歯周病では、スケーリング・ルートプレーニングなどの歯周治療が必要です。

禁煙する

禁煙によって歯ぐきの血流や治癒反応が改善し、歯周病治療の効果が高まる可能性があります。

自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来などの利用も検討しましょう。

糖尿病を適切に管理する

糖尿病がある方は、医療機関で血糖値を適切に管理することが歯周病治療においても重要です。

歯科医院へ糖尿病の治療状況や服用中の薬を伝え、必要に応じて内科と連携して治療を進めます。

栄養とサプリメントの活用

歯茎の健康を保つには、ビタミンやミネラルの摂取が不可欠です。とくに以下の栄養素は、歯周病予防・回復に重要な役割を果たします。

  • ビタミンC:コラーゲンの生成を助け、歯茎の修復を促進
  • ビタミンD:歯槽骨の健康を維持
  • カルシウム:歯と骨の強化に不可欠
  • ポリフェノール:抗炎症作用で歯茎の炎症を抑える
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忙しい方や食生活に偏りがある方は、サプリメントの活用も有効な補助手段となります。ただし、過剰摂取には注意し、歯科医師や栄養士の指導のもとでの利用が安心です。

歯周病が手遅れだと、すべての歯を抜くことになりますか?

すべての歯が抜歯になるとは限りません。

歯周病は歯ごとに進行度が異なるため、保存できる歯と抜歯が必要な歯を分けて診断します。

状態の良い歯をできるだけ残し、お口全体を長期的に安定させる治療計画を立てます。

歯がグラグラしていたら抜歯ですか?

歯がグラグラしていても、必ず抜歯になるわけではありません。

炎症、噛み合わせ、歯ぎしりなどが原因で、一時的に動揺が強くなっている場合があります。

歯石除去や噛み合わせの調整によって、ぐらつきが軽減することもあります。

歯周ポケットが10mmあったら手遅れですか?

歯周ポケットが10mmある場合は、重度の歯周病が疑われます。

ただし、ポケットの深さだけで抜歯の可否を判断することはできません。

骨の残り方、歯根の状態、歯の動揺、清掃状態などを総合的に評価します。

歯周病は自然に治りますか?

歯肉炎の段階であれば、正しい歯磨きと歯石除去によって健康な状態へ戻る可能性があります。

しかし、歯槽骨が失われた歯周炎は自然には治りません。

歯科医院で原因となる歯石や細菌を除去し、進行を止める必要があります。

歯石を取るだけで歯周病は治りますか?

軽度であれば歯石除去と歯磨きの改善によって炎症が治まることがあります。

中等度以上では、歯ぐきの奥深くにある歯石の除去、歯周外科、再生療法などが必要になる場合があります。

歯周病治療で歯ぐきが下がることはありますか?

治療によって腫れていた歯ぐきが引き締まると、歯が長く見えたり、歯と歯の間に隙間ができたりすることがあります。

これは歯ぐきの炎症が改善した結果でもあります。

見た目だけでなく、歯周病の進行を止めることを優先して治療します。

歯周病の治療は痛いですか?

歯ぐきの奥深くにある歯石を除去する場合は、必要に応じて局所麻酔を使用します。

治療中の痛みに配慮しながら進めることができますので、不安がある方は事前にご相談ください。

リグロスを使えば、失った骨はすべて元に戻りますか?

リグロスを使用しても、失った骨が必ずすべて元に戻るわけではありません。

骨欠損の形、歯根の状態、歯磨きの状態、喫煙、糖尿病などによって治療結果が異なります。

適応を正確に判断することが重要です。

歯周病は完治しますか?

歯肉炎は健康な状態へ回復できる可能性があります。

歯槽骨を失った歯周炎では、完全に元の状態へ戻すことが難しい場合があります。

そのため、治療によって炎症を抑え、進行を止め、安定した状態を維持することを目指します。

歯周病は再発しますか?

再発する可能性があります。

治療後に歯磨きが不十分になったり、定期管理を中断したりすると、再び歯周病が進行することがあります。

毎日のセルフケアと定期的なメンテナンスが必要です。

歯周病は人にうつりますか?

歯周病菌は、唾液を介して家族間などで移る可能性があります。

ただし、歯周病菌が口の中に入っただけで、必ず歯周病になるわけではありません。

歯磨きの状態、喫煙、糖尿病、免疫状態など、さまざまな要因が関係します。

痛みがなくても歯周病治療は必要ですか?

必要です。

歯周病は痛みがないまま進行することが多く、痛みが出た時点では重度になっている場合があります。

歯ぐきの出血、口臭、歯ぐきの下がりなどがあれば、痛みがなくても検査を受けましょう。

抜歯した後は、すぐに治療が必要ですか?

欠損部の場所や噛み合わせによって異なります。

抜歯直後に最終的な治療を行えない場合もありますが、長期間放置すると歯並びや噛み合わせが崩れる可能性があります。

抜歯前から、その後の治療方法を検討しておくことが大切です。

重度歯周病でもインプラントはできますか?

歯周病を十分に治療し、口腔内を安定させた後であれば、インプラントを検討できる場合があります。

ただし、歯周病の既往がある方は、インプラント周囲炎のリスクが高くなるため、治療後も厳密なメンテナンスが必要です。

メンテナンスは何か月ごとに受けますか?

歯周病の進行度、磨き残し、全身状態などによって異なります。

一般的には1〜3か月程度の間隔で管理することがあります。

状態が安定している方は、間隔を調整する場合があります。

歯周病は、痛みがないまま進行し、気づいたときには歯を支える骨が大きく失われていることがあります。

歯がグラグラする、歯ぐきから膿が出る、噛むと痛い、歯並びが変わったといった症状は、重度歯周病のサインです。

しかし、症状が進んでいても、必ず抜歯になるとは限りません。

歯槽骨の残り方や歯根の状態によっては、歯周外科治療や歯周組織再生療法などによって、歯を残せる可能性があります。

一方、保存することがかえって周囲の歯や骨に悪影響を及ぼす場合は、抜歯を選択した方がよいこともあります。

大切なのは、ご自身で「手遅れ」と判断せず、歯周ポケット検査やレントゲン検査を受け、歯を残せるかどうかを正確に調べることです。

歯がグラグラしているからといって、すぐに抜歯が決まるわけではありません。

当院では、歯周ポケット検査、歯の動揺度検査、レントゲン検査などを行い、歯周病の進行度を詳しく確認します。

そのうえで、スケーリング・ルートプレーニング、歯周外科治療、リグロスを用いた歯周組織再生療法など、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療方法をご提案します。

「抜歯と言われたけれど、本当に残せないのか相談したい」

「歯がグラグラしている」

「歯ぐきから膿が出る」

「口臭が強くなった」

このような症状がある方は、放置せず早めにご相談ください。

江戸川区篠崎の当歯科クリニックは、都営新宿線篠崎駅南口徒歩1分です。

【動画】歯周病の手遅れの症状

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FUKASAWA

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メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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