目次

インプラント上部構造のすべて:材質の違いと費用、最新技術まで

1. インプラント上部構造とは?

上部構造の定義

インプラント上部構造とは、インプラント治療で使用される「人工の歯」の部分を指します。インプラント体(顎の骨に埋め込まれる金属製の土台)やアバットメント(インプラント体と上部構造をつなぐ中間部分)と一体となって機能する構造の一部であり、日常生活で見える部分でもあります。

インプラント体
インプラント体
アバットメント
アバットメント
上部構造
上部構造

上部構造がインプラント全体における役割

上部構造は、噛む、話す、美しい見た目を再現するといった、歯本来の役割を担います。また、以下のような重要な機能を果たします。

  • 審美性:自然な歯のような見た目を実現します。
  • 咀嚼機能:食べ物を効率よく噛み砕く機能を提供します。
  • 耐久性:日常的な咀嚼圧に耐える強度を持っています。

インプラント治療の最終段階で取り付けられる上部構造は、患者の希望や口腔内の状態に応じて、適切な材質や形状が選択されます。

アバットメントとの違い

インプラント治療では、上部構造と混同されがちな「アバットメント」という部品がありますが、これらは異なる役割を持っています。

  • アバットメント:インプラント体と上部構造を接続する中間部品。歯肉の中に隠れており、上部構造をしっかり固定するための基盤となります。
  • 上部構造:アバットメントの上に取り付けられる人工歯部分。見える部分にあたり、最終的な審美性や機能性を担います。

このように、上部構造はインプラントの最終形態を完成させる重要な部品であり、全体のバランスを整える役割を果たします。

2. インプラント上部構造の種類

インプラント上部構造には、使用される材質によってさまざまな種類があります。それぞれの材質は審美性や耐久性、コストなどの特徴が異なるため、患者の口腔内の状態や希望に応じて選択されます。

1. ハイブリッドセラミック

レジン(プラスチック)とセラミックを混ぜ合わせた素材で、適度な柔軟性が特徴です。

ハイブリッドセラミック
ハイブリッドセラミック
メリット
  • 自然な見た目で審美性が高い
    天然歯に近い色や質感を再現できるため、見た目を重視する方に適しています。
  • 柔軟性があり、歯や顎への負担が少ない
    咬合力を吸収する性質があり、歯や顎への負担を軽減できます。
  • 比較的安価で手に入る
    他の素材に比べて低価格で提供されるため、コストを抑えたい方に向いています。
デメリット
  • 他の材質に比べて耐久性が低く、欠けやすい
    衝撃や強い力が加わると破損のリスクが高まります。
  • 長期間の使用で変色や摩耗が起こりやすい
    時間の経過とともに色が変わりやすく、表面がすり減る可能性があります。

2. フルジルコニア

ジルコニア(酸化ジルコニウム)で作られた高強度の素材。審美性と耐久性を兼ね備えています。

フルジルコニア
フルジルコニア
メリット
  • 高い強度と耐久性
    ジルコニア(二酸化ジルコニウム)は、スペースシャトルの断熱保護材やポルシェのブレーキディスク、人工股関節のベアリングなどに使用されるほど高い強度と耐久性を持っています。過酷な状況下でも優れた耐腐食性と生体親和性が実証されています。
  • 幅広い用途への対応
    従来のオールセラミックとは比較にならない強度を持つため、ロングスパンのブリッジや臼歯部の強い力がかかる部位にも使用可能です。
  • 金属アレルギーのリスクがない
    金属イオンの溶出がないため、金属アレルギーが発生しません。この特性から人工関節としても使用されるなど、高い生体親和性を持っています。
  • 長期間にわたる安定性
    摩耗しにくいため、長期間にわたって安定した見た目を保つことができます。
  • 高い適合性
    CAD/CAM技術を用いてジルコニアのブロックを削り出すことで、鋳造歪が発生せず、非常に安定した適合性を実現できます。
  • 歯周病リスクの軽減
    表面が滑らかで汚れが付きにくく、細菌の付着も少ないため、歯周病のリスクを軽減できます。
  • 軽量で優れた装着感
    貴金属のおよそ3分の1の軽さを持つため、装着感に優れ、自然な噛み心地を体感できます。
  • 違和感のない使用感
    ジルコニア製のブリッジを装着しても違和感がなく、自然な噛む力を回復することができます。
  • 審美性と機能性の両立
    優れた強度と自然な見た目を備え、インプラント治療においても最適な修復法といえます。
デメリット
  • 他の材質に比べてやや高価
    高い性能を持つ一方で、コストが他の材料より高くなる傾向があります。
  • 硬すぎるため、対合歯を傷つける可能性がある
    ジルコニアの高い硬度が原因で、噛み合う相手の歯(対合歯)が摩耗したり損傷したりするリスクがあります。
  • 接着力が弱く、外れやすい可能性がある
    ジルコニアクラウンはアバットメントとの接着力が弱いという欠点があります。ただし、ネジ止めを行うことでこの問題を解決できます。
  • 技術の進歩により改良が進行中
    近年では、技術の向上によりジルコニアクラウンの接着性が改善され、外れにくくなる方向へ改良が進んでいます。

3. メタルボンド

メタルボンドは、金属の内張りを作成した上にセラミック(陶材)を焼き付ける方法です。まず金属色を隠すためにオペークポーセレンを焼き付け、その上に歯の色に合わせたセラミック(陶材)を2層にわたって焼き付けます。

メタルボンドは、色や形を自由に調整できるため、自然な自分の歯に非常に近い仕上がりにすることができます。また、インプラントの上部構造(人工歯冠)としても使用され、金属のフレームにセラミックを焼き付けた素材は、耐久性と審美性のバランスが非常に良い構造です。

メタルボンド
メタルボンド
メリット
  • 高い強度と耐久性
    磨耗しにくく、フレームが金属製で割れにくいため、強度に優れています。ブリッジとしての使用も可能で、特に奥歯など力がかかる部位に適しています。
  • 審美性と透明感
    半永久的な美しさと透明感を備えており、セラミックを使用しているため審美性も十分に優れています。自然な見た目を実現できます。
  • 高い耐腐食性
    内側の金属に貴金属を使用することで、金属イオンの溶出が少なく、腐食の心配がありません。耐久性と安全性の面で優れています。
デメリット
  • 金属の溶出による影響
    銀、コバルトクロム、銅、ニッケルクロムなどの卑金属を内側に使用した場合、金属イオンの溶出により歯ぐきが黒紫色に変色する可能性があります。また、金属アレルギーを引き起こすリスクもあります。
  • ジルコニアクラウンより強度が劣る
    ジルコニアクラウンほどの強度がないため、破折のリスクが比較的高くなる場合があります。

4. オールセラミック

100%セラミックで構成された素材で、特に審美性に優れています。

オールセラミック
オールセラミック
メリット
  • 天然歯に近い透明感と色調を再現可能
    自然な見た目を実現できるため、審美性が非常に高いです。
  • 金属を使用しないためアレルギーの心配がない
    金属アレルギーのリスクがなく、安心して使用できます。
  • 見た目を重視する箇所に最適
    前歯など審美性が求められる部位に特に適しています。
デメリット
  • 他の材質に比べて耐久性がやや低い
    強度が劣るため、強い力がかかる箇所では破損のリスクがあります。
  • 高価であることが多い
    他の材質と比較してコストが高くなる傾向があります。

5. メタルクラウン

強度は十分にありますが、審美的に良くないので前歯には使えません。奥歯で目立たないところに使います。金属の種類により値段が違います。12%パラジウム合金、金合金、チタンなどの種類があります。

ゴールドクラウン
ゴールドクラウン
メリット
  • 高い強度と耐久性
    咬合力が強い部位や臼歯部にも適しており、破損のリスクが低い。
  • 長寿命
    金属の耐摩耗性が高く、長期間使用できます。
  • コストパフォーマンスが良い
    セラミックやジルコニアに比べて、比較的低価格で提供されることが多いです。
  • 薄く作製可能
    強度が高いため、薄い構造でも十分な性能を発揮します。
  • 生体適合性
    特に貴金属を使用した場合、金属アレルギーのリスクが低く、安全に使用できます。
デメリット
  • 審美性が低い
    金属色が目立つため、前歯など審美性が求められる部位には不向きです。
  • 金属アレルギーのリスク
    卑金属を使用した場合、金属アレルギーを引き起こす可能性があります。
  • 歯ぐきの変色
    金属イオンの溶出によって、歯ぐきが黒ずむ可能性があります。
  • 重さを感じることがある
    一部の患者にとっては、装着時に重量感を感じる場合があります。
  • 腐食のリスク
    卑金属を使用した場合、長期間の使用で腐食が進む可能性があります。

材質の選択ポイント

  1. 耐久性を重視する場合:フルジルコニアやメタルボンドが適しています。
  2. 審美性を重視する場合:オールセラミックやハイブリッドセラミックが良い選択です。
  3. コストパフォーマンスを求める場合:ハイブリッドセラミックやメタルボンドが有力候補です。

患者のニーズに応じて、材質の特性を理解しながら選ぶことで、より満足度の高い治療が可能になります。

3. 上部構造の選び方

インプラントの上部構造は、患者の口腔内の状態やライフスタイル、治療の目的に応じて慎重に選ぶ必要があります。以下に、具体的な選び方のポイントを解説します。

1. 口腔内の状態による選択肢

  • 咬合力の強さ(噛む力)
    • 咬合力が強い患者の場合、強度の高いフルジルコニアメタルボンドが適しています。
    • 咬合力が弱い場合は、柔軟性があり歯や顎への負担が少ないハイブリッドセラミックが選ばれることが多いです。
  • インプラントの埋入位置
    • 前歯(審美性が重視される部分)
      自然な透明感と色調を再現できるオールセラミックハイブリッドセラミックが適しています。
    • 奥歯(耐久性が重視される部分)
      噛む力に耐えられるフルジルコニアメタルボンドが推奨されます。
  • 歯ぎしりや食いしばりの有無
    • 歯ぎしりがある場合、耐久性の高いフルジルコニアが推奨されます。
    • 柔軟性が求められる場合はハイブリッドセラミックが選択肢となります。

2. 審美性 vs 耐久性

患者の希望やライフスタイルによって、審美性と耐久性のどちらを優先するかを考慮します。

  • 審美性を重視する場合
    • 天然歯に近い見た目を求める場合は、オールセラミックがおすすめです。
    • 特に前歯など、他人から見える部分には自然な透明感が重要です。
  • 耐久性を重視する場合
    • 咀嚼圧が強い奥歯や長期的な使用を考慮する場合、フルジルコニアメタルボンドが適しています。
  • バランスを重視する場合
    • 前歯と奥歯で異なる材質を組み合わせることも可能です。例えば、前歯はオールセラミック、奥歯はフルジルコニアとする選択肢があります。

まとめ

上部構造の選択は、患者の希望や生活環境、口腔内の状態を総合的に考慮する必要があります。また、歯科医師との十分なカウンセリングを通じて、患者が納得し満足できる治療を実現することが最も重要です。

4. インプラント上部構造の製作プロセス

インプラント上部構造の製作は、患者にとって自然な見た目と快適な機能を実現するために重要な工程です。以下に、型取りから最終的な装着までのプロセスを詳しく解説します。

1. 型取り方法と精度の重要性

型取り(印象採得)は、上部構造を製作するうえで最も重要なステップの一つです。この工程で得られるデータの精度が、最終的な仕上がりの品質を大きく左右します。

  • 型取り方法
    • シリコン印象材やアルジネート材を使用し、物理的な型を採る方法です。
    • 長年使用されてきた信頼性の高い方法です。

2. 製作工程の流れ

  1. 初回カウンセリングと診断
    • 患者の口腔内の状態を確認し、上部構造の材質や形状を選定します。
  2. 型取り(印象採得)
    • 従来の型取り方法または口腔内スキャナーを使用して、インプラント部位の詳細な形状を記録します。
  3. データ処理と設計
    • 型取りデータをもとに、CADソフトウェアで上部構造の設計を行います。
    • 咬み合わせや審美性をシミュレーションし、最適な形状を決定します。
  4. 上部構造の製作
    • 設計データをCAMシステムに送り、高精度な機械加工で上部構造を製作します。
    • 使用する材質(セラミック、ジルコニア、ハイブリッドセラミックなど)に応じた加工方法が選ばれます。
  5. 仮合わせ
    • 製作した上部構造を患者に装着し、フィット感や咬み合わせを確認します。
    • 必要に応じて調整を行います。
  6. 最終装着
    • 調整が完了した上部構造をアバットメントに固定します。
    • 固定方法は、スクリュー固定方式やセメント固定方式など、患者の状況に応じて選択されます。
  7. アフターケアの指導
    • 上部構造を長持ちさせるためのケア方法を患者に説明します。

5. インプラント上部構造の装着方法

インプラント上部構造の装着方法は、主にスクリュー固定方式セメント固定方式の2つがあります。それぞれの特徴や利点・欠点、装着時の注意点について詳しく解説します。

1. スクリュー固定方式

上部構造をアバットメントにネジで固定する方法です。

  • 特徴
    • 上部構造にネジ穴を設け、インプラント体に直接固定します。
    • ネジ穴は上部構造の噛み合わせ部分に位置し、レジンなどでカバーされます。
  • メリット
    • メンテナンスが容易で、トラブル時に上部構造を簡単に取り外せる。
    • セメントの残留リスクがないため、歯肉の炎症や感染のリスクが低い。
    • 長期的な調整が必要な場合に便利。
  • デメリット
    • ネジ穴の位置によっては審美性が損なわれることがある。
    • ネジの緩みが発生する場合があり、定期的なチェックが必要。

2. セメント固定方式

上部構造を専用の接着剤(セメント)でアバットメントに固定する方法です。

  • 特徴
    • ネジ穴が不要なため、上部構造の見た目が自然で審美性が高い。
  • メリット
    • 審美性に優れ、前歯などの見える部位に適している。
    • 咬み合わせに影響しにくく、自然な仕上がりが得られる。
  • デメリット
    • 一度接着すると取り外しが難しく、トラブル時の対応が困難。
    • セメントが歯肉に残ると炎症や感染の原因となる可能性がある。

3. スクリュー固定方式とセメント固定方式の比較

項目スクリュー固定方式セメント固定方式
審美性ネジ穴が目立つ場合がある自然な見た目で審美性が高い
メンテナンス性簡単に取り外し可能取り外しが難しい
トラブル時の対応修理や調整が容易修理時に再製作が必要な場合が多い
炎症リスクセメント残留のリスクがないセメント残留による炎症リスクあり
適用部位奥歯や咬み合わせが強い部位に適している前歯など審美性を重視する部位に最適

4. 装着時の注意点

  1. 適切な固定方法の選択
    • 患者の口腔内の状態や希望に応じて、歯科医師と相談の上、最適な固定方法を選択します。
  2. 咬み合わせの調整
    • 上部構造装着後、噛み合わせのバランスを確認し、必要に応じて微調整を行います。
    • 噛み合わせの不均衡は、インプラント全体の負担を増加させるため注意が必要です。
  3. 清掃の徹底
    • 特にセメント固定方式では、セメントの残留が歯肉炎やインプラント周囲炎の原因となるため、清掃を徹底します。
  4. 定期的なメンテナンス
    • スクリュー固定方式では、ネジの緩みや破損がないかを定期的にチェックします。
    • セメント固定方式では、歯肉や接着部分の健康状態を確認します。

まとめ

スクリュー固定方式とセメント固定方式のどちらにも一長一短があります。審美性を優先する場合はセメント固定方式が適しており、メンテナンス性やトラブル対応の容易さを重視する場合はスクリュー固定方式が選ばれる傾向があります。歯科医師との十分な相談を通じて、患者の口腔内状態や希望に最も合った方法を選ぶことが重要です。

6. インプラント上部構造のメンテナンス

インプラント上部構造を長持ちさせるためには、患者自身のケアと歯科医院でのプロフェッショナルケアが欠かせません。また、トラブルが発生した場合の迅速な対応も重要です。

1. 長持ちさせるための日々のケア方法

インプラントは天然歯と違い虫歯にはなりませんが、インプラント周囲炎や歯周病のような問題が発生するリスクがあります。そのため、以下のような日々のケアが不可欠です。

  • 正しいブラッシング
    • 柔らかい歯ブラシを使い、インプラント周囲の歯肉や上部構造の付け根部分を丁寧に磨きます。
    • 電動歯ブラシを使用する場合は、インプラント対応のものを選ぶと効果的です。
  • デンタルフロスや歯間ブラシの使用
    • 上部構造と隣接する歯の間や、インプラント周囲の隙間を清掃します。
    • インプラント専用の歯間ブラシを使用すると、汚れを効果的に除去できます。
  • 抗菌性のマウスウォッシュ
    • インプラント周囲の細菌を抑えるため、抗菌成分入りのマウスウォッシュを使用します。
  • 食生活の注意
    • 硬いものを噛むと上部構造にダメージを与える可能性があるため、適度な注意が必要です。

2. 定期的なプロフェッショナルケアの重要性

インプラントを健康な状態で保つには、歯科医院での定期的なメンテナンスが重要です。

  • 定期検診
    • 少なくとも6ヶ月に1回は歯科医院でインプラントの状態をチェックしてもらいます。
    • 上部構造の状態や咬み合わせの変化、歯肉の健康状態を確認します。
  • プロフェッショナルクリーニング
    • 歯科衛生士による専門的な清掃で、家庭では取り切れない歯垢や歯石を除去します。
    • 特にインプラント周囲の清掃を徹底することで、インプラント周囲炎の予防につながります。
  • 咬み合わせの調整
    • 長期間の使用で咬み合わせが変化し、上部構造やインプラント体に負担がかかる場合があります。必要に応じて調整を行います。

3. トラブル時の対応方法

インプラント上部構造に問題が生じた場合、早急に対応することが重要です。

  • 上部構造の破損や欠け
    • 使用中に上部構造が破損した場合、修理または再製作が必要です。
    • 早めに歯科医院を受診し、適切な対応を受けましょう。
  • ネジの緩み
    • スクリュー固定方式の場合、ネジの緩みが発生することがあります。この場合、歯科医院でネジを再固定してもらいます。
  • インプラント周囲炎
    • 歯肉が赤く腫れたり、出血や痛みがある場合は、インプラント周囲炎が疑われます。
    • 早期に治療を受けることで、インプラントを維持できる可能性が高まります。
  • 咬み合わせの不具合
    • 咬み合わせが合わない場合、インプラント体や上部構造に過度な負担がかかり、破損や緩みの原因となります。
    • 定期的な検診で早めに調整を行うことが重要です。

まとめ

インプラント上部構造を長期間にわたって維持するためには、患者自身の正しいケアと定期的な歯科医院でのメンテナンスが不可欠です。さらに、トラブルが発生した場合は速やかに対応することで、インプラントの寿命を延ばし、快適な使用を続けることが可能になります。

7. トラブル事例と対策

インプラント上部構造には、使用中にさまざまなトラブルが発生する可能性があります。ここでは、主なトラブル事例とその修理の流れ、費用感、予防策について解説します。

1. 上部構造の破損や緩み

  • 破損の主な原因
    • 硬い食品(氷、ナッツ、骨付き肉など)を噛んだ際の衝撃
    • 長期間の使用による劣化
    • 歯ぎしりや食いしばりによる過度の圧力
  • 緩みの主な原因
    • スクリュー固定方式の場合、ネジが緩むことがあります。
    • セメント固定方式では接着剤の劣化が原因になることがあります。
  • 症状
    • 咬み合わせの違和感
    • 噛むときの不安定感
    • 上部構造が外れる、または破片が取れる

2. 修理の流れと費用感

トラブルが発生した場合、早急な対応が重要です。修理や再製作の流れは以下の通りです。

  1. 診察と原因特定
    • まず、歯科医師が問題の原因を診断します。
    • 必要に応じてレントゲン撮影を行い、インプラント体やアバットメントの状態を確認します。
  2. 修理または再製作
    • 破損の場合
      上部構造が修復可能な場合は、素材の補修やコーティングが施されます。破損が激しい場合は、再製作が必要です。
    • 緩みの場合
      スクリュー固定方式ではネジを締め直します。必要に応じてネジ自体を交換します。セメント固定方式では再接着が行われます。
  3. 最終調整
    • 修理後、咬み合わせやフィット感を確認し、調整を行います。
  4. 費用感
    • スクリューの緩み:再固定の場合、約5,000〜10,000円程度(クリニックにより異なる)。
    • 上部構造の補修:軽度の場合、10,000〜30,000円程度。
    • 上部構造の再製作:材質によりますが、50,000〜150,000円以上が一般的。
    • インプラント体の損傷がある場合:大がかりな治療が必要となり、数十万円以上かかることがあります。

当院にはインプラントの保証制度があります。詳しくはリンクをクリックしてください。

3. トラブル予防策

トラブルを未然に防ぐためには、日々のケアと定期的なメンテナンスが欠かせません。

  • 日々のケア
    • 硬い食品を避け、インプラントに過度の負担をかけない。
    • 歯ぎしりや食いしばりがある場合は、就寝時にマウスガードを使用する。
  • 定期的なメンテナンス
    • 定期検診(6ヶ月に1回以上)で、上部構造やインプラント体の状態を確認してもらう。
    • プロフェッショナルクリーニングで歯垢や歯石を除去する。
  • 適切な使用
    • 不適切な使い方(例:ペンを噛む、爪を噛むなど)を避ける。
    • 咬み合わせの調整が必要な場合、速やかに対応する。

まとめ

インプラント上部構造のトラブルは、早期発見と適切な対応が鍵となります。日々のケアを徹底し、定期的に歯科医院で状態をチェックすることで、トラブルの発生を最小限に抑えられます。また、万が一問題が発生した場合は、迅速に歯科医師に相談し、適切な修理や再製作を行いましょう。

8. 各材質のコストと保険適用について

インプラント上部構造の材質によって治療費は大きく異なります。また、日本の保険制度において、インプラント治療は基本的に自費診療とされるため、材質選びや治療計画によってコストを抑えることが可能です。

1. 自費治療と保険治療の違い

  • 自費治療
    • インプラント治療は、日本では原則として自費診療です。保険適用外のため、費用は高額になります。
    • 上部構造の材質選択や治療の自由度が高く、患者の希望やライフスタイルに合わせた治療が可能です。
    • 使用する素材や技術により、費用が大きく異なります。
  • 保険治療
    • 特定の条件(例:先天性疾患や外傷による咀嚼障害など)がある場合に限り、保険が適用されることがあります。
    • 保険適用時は限られた材質(主に金属系やプラスチック)しか選べず、選択肢が少ない。
    • 一般的なケースでは適用されないため、ほとんどの患者は自費治療を選ぶ必要があります。

2. 各材質の費用

以下は、主要な上部構造材質の費用です。


治療内容
内訳費用(1本あたり)
オールセラミック前歯、奥歯共通(すべてをセラミック作るクラウン)自然な見た目と高い審美性を持ち、前歯に適している。¥132,000
(税抜き ¥120,000)
メタルボンド前歯、奥歯共通(内側は金属で外側がセラミックで作るクラウン)金属の強度とセラミックの審美性を兼ね備える。¥115,500
(税抜き ¥105,000)
ジルコニアセラミックジルコニアフレームにセラミックを焼き付けるクラウン。強度とセラミックの審美性を兼ね備える。¥110,000
(税抜き ¥100,000)
フルジルコニアすべてジルコニアで作るクラウン.。高強度で耐久性があり、咬合力の強い部位に適している。¥92,400
(税抜き ¥84,000)
※ すべてをジルコニアで作るフルジルコニアクラウンは、
ややテカリが強く、審美性に劣ります。

3. コストを抑えるためのポイント

  1. 材質の選択
    • 前歯や奥歯で異なる材質を選択することでコストを抑えることが可能です。
      • 例:前歯は審美性の高いオールセラミック、奥歯はコストパフォーマンスの良いハイブリッドセラミック。
  2. 医療費控除を活用
    • インプラント治療は医療費控除の対象となります。年間の医療費が一定額を超えた場合、確定申告により一部が還付されます。
  3. メンテナンスを徹底
    • 長期的にトラブルを避けることで、修理や再製作による追加費用を抑えることができます。

まとめ

インプラント上部構造の費用は材質や治療計画によって異なります。多くの場合、自費診療となるため、コストを抑えたい場合は材質の選び方を相談し、医療費控除の活用が重要です。また、適切なメンテナンスを行うことで、長期的に費用を抑えながら快適な使用を続けることができます。

インプラント上部構造について、患者からよく寄せられる質問とその回答を紹介します。

上部構造の耐用年数は、使用される材質や日々のケア、口腔内の状態によって異なります。

ハイブリッドセラミック:5〜10年程度。耐久性がやや低く、摩耗や変色が起こる可能性があります。

フルジルコニア:10年以上。非常に高い耐久性を持ち、長期間使用可能です。

メタルボンド:10〜15年程度。金属フレームの強度とセラミックの審美性を兼ね備えています。

オールセラミック:10年以上。審美性に優れる一方で、使用状況によっては耐久性に限界があります。

耐用年数を延ばすためには、日々の正しいケアや定期的なメンテナンスが重要です。

はい、矯正治療後に上部構造を変更することは可能です。

  • 矯正治療で歯並びが変化すると、咬み合わせや審美性に影響が出る場合があります。そのため、新しい口腔環境に適応するために上部構造を再製作することが推奨されることがあります。
  • 上部構造変更の際には、インプラント体やアバットメントには通常手を加えず、上部構造のみを再製作することで対応します。

注意点

特にインプラントの位置や咬み合わせが矯正治療後に問題となる場合は、適切な計画が必要です。

矯正治療を始める前に、インプラントが矯正計画にどう影響するかを歯科医と十分に相談してください。

通常の食事においては特別な制限は必要ありません。ただし、以下のポイントに注意することで上部構造をより長持ちさせることができます。

  • 避けるべき食品
    • 硬いもの:氷、骨付き肉、ナッツなどは上部構造にダメージを与える可能性があります。
    • 粘着性のあるもの:キャラメルやガムは、上部構造を外れやすくする可能性があります。
    • 酸性の高い食品:過剰摂取すると、上部構造の表面に影響を与える可能性があります(特にセラミック素材)。
  • 推奨される習慣
    • 食事中に無理な力をかけないようにする。
    • 飲み込む前に十分に噛むことで、インプラント全体への負担を軽減します。

まとめ
普段通りの食事を楽しむことは可能ですが、硬いものや粘着性のある食品はできるだけ避けることで、上部構造を長持ちさせることができます。

江戸川区篠崎で自然な笑顔と快適な食生活を実現するインプラント上部構造

インプラント治療は、失った歯を補うだけでなく、健康で美しい生活を取り戻す治療法です。 その中でも「上部構造」と呼ばれる部分は、インプラントの見た目や機能性を決める非常に重要な役割を担っています。治療後も、上部構造を長く維持させるために、日々のケアと定期的なメンテナンスが重要です。

美しさと機能を兼ね備えた「あなたの新しい歯」として、健康な毎日をサポートします。まずはお気軽にご相談ください。あなたにとって最適な治療法をご提案させていただきます。

【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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