神経を抜いてしまった歯は枯れ木の様に脆くなってしまうことはご存知の通りです。差し歯が少しでも痛いと感じたら放置せずに早めに歯医者を受診することをお薦めします。歯根破折の診断が早めにつけば保存出来る可能性があるからです。
ここでは、歯根破折を起こすとどのような初期症状が起こるのか、歯根破折を起こしやすいのはどんな人などかを解説します。
神経の無い差し歯が歯根破折か?
数年前に神経を抜いて被せ物をしてある歯が歯根破折と思われるのですが、「痛くなるまで様子見しよう。」と歯医者に言われました。これはおかしいでしょうか?
歯根破折の確認法は?
虫歯を治療してクラウンを被せてある歯が歯根破折かもしれません。クラウンを取れば歯の割れやヒビは分かるものなのですか?
メタルコアの歯根破折の危険性は?
前歯4本の神経を取って差し歯にしています。すべてメタルコアが入っているので歯根破折が起こらないか心配です。
差し歯の歯根に潜む危険:応力集中が引き起こす歯根破折
差し歯の歯根に応力集中
神経のない差し歯に強い力がかかり続けると歯根破折は起こります。例えば左側の奥歯がなく右側だけで噛んでいるような場合、負担過重となります。差し歯であれば歯根破折が起こり易いと言えます。
特に単根である前歯や小臼歯の差し歯に頻発します。
上顎第2小臼歯が歯根破折
歯根破折した第2小臼歯(神経は無い)は、5番6番7番の延長ブリッジの土台になっています。
第2小臼歯が歯根破折を起こした原因は、延長ブリッジの土台になっていたということだけではなく、 反対側の第一大臼歯、第二大臼歯がともに無いため、ほとんど破折した側で噛んでいたことが負担荷重となり、応力集中が起きたと考えられます。
上顎5番が歯根破折
第一小臼歯が欠損し、3番・4番・5番の3本連結のブリッジの支台となったことで5番に応力が集中し歯根破折を起こしたものと考えられます。
5番は神経が取られメタルコアが装着されています。 メタルコアも歯根破折の一因と考えられます。また、この症例でも反対側の奥歯2本が欠損しているため、ほとんど破折した歯の側で噛んでいました。
外傷
外傷、つまり外から強い力が加わった時に歯根が折れてしまう場合です。外傷による歯根破折は折れた場所によって治療法が異なります。
例えば、歯槽骨の深い部分で折れた場合には抜歯することになりますが、歯茎すれすれのところで折れた場合には根管治療を行い差し歯にすることも可能です。
外傷で上顎2番が歯根破折
上顎2番が歯根破折したレントゲン画像です。外傷によって 歯槽骨の深い位置で割れているため抜歯以外の選択肢はありません。
外傷で上顎1番が歯根破折
上顎1番に強い外力が加わることによって歯根が破折したレントゲン写真です。この症例も保存は不可能で抜歯をすることになりました。
差し歯が歯根破折し易い理由
Reason
差し歯の歯根は脆い
神経を取った歯はセラミック冠などを被せるために歯根の中にメタルコアまたはファイバーコアといった土台を差し込みます。
神経の無い歯は栄養が行き渡らずにもろくなっています。枯れ木の様にもろくなった歯の根っこの中に歯根破折のリスクの高い土台(メタルコア)を入れると歯根の一点に応力が集中し、歯根が折れ易くなります。
歯根破折は1根管の前歯に起きやすく、次いで上顎小臼歯の順です。
縦方向にナタで割ったように真っ二つになることがほとんどです。
従って、大臼歯の様に複数の歯根がある歯では、歯根破折の頻度は下がります。
Reason
保険適用の銀合金のメタルコア
差し歯が根元から折れる場合があります。殆どの場合、メタルコアの金属が銀合金(保険適用)で作られている場合です。銀合金は強度が弱く歯根の根元から折れます。治療は折れたメタルコアを外して再製作します。
歯根破折を起こしやすい人
咬合力が強い人
横顔の矢印の部分に注目してください。この角度が90度に近くなればなるほど、咬合力の強い人という事が出来ます。俗に言うエラが張った顔です。
専門用語でいうと、こういった顔のパターンをブレーキーフェイシャル(短顔型)と言います。
ブレーキーフェイシャル
歯根破折はブレーキーフェイシャルの人に天然歯であっても見られます。
神経のある歯が歯根破折
通常の生活で歯根破折した症例です。神経のある上顎第二小臼歯に歯根破折が起こっています。ブレーキーフェイシャルの方は筋肉が垂直方向に走っているため、噛み込む力が強い傾向にあります。
歯ぎしり・食いしばり・噛みしめをする人
歯ぎしりは、夜寝ている時に起こるもので、自覚症状はありません。家族から指摘されて初めて分るものです。歯ぎしりにより強い力が上下の歯に長時間にわたってかかっていることで歯根の耐久性が次第に失われてきます。
朝起きてみると歯茎が腫れ奥歯がグラグラしています。とても痛くて食事が出来る状態ではありません。
これは歯ぎしりによって歯根が縦に割れたところへ細菌が感染したのが原因です。
強い歯ぎしりがある人は就寝時にマウスピース(ナイトガード)を使用することも考慮に入れる必要があります。
歯根破折を疑うべき初期症状とは?放置の危険性
STEP
01
当日
歯根破折が起こった瞬間はパッキと音がして「あっ痛い!」程度の症状です。
STEP
02
1日目
1日経つと徐々に歯のグラグラが現れ、ズキズキとした痛みはあまり起こりませんが、噛んだ時の痛みが次第に強くなってきて食事がしにくくなります。
STEP
03
2日目
2日目には歯茎が腫れ動揺も大きくなり食事が出来ないほどの激痛が起こることがあります。
※ 歯根の割れ方によりますが、ここまでの症状の変化は、もう少し長い経過(1週間程度)を辿る場合もあります。
STEP
04
7日目
歯根破折から1週間放置すると、歯茎はさらに腫れて膿が出てドブの様な臭いを自覚する様になります。歯のグラグラが強まり、咬合痛だけではなく自発痛も起こります。
レントゲンで歯根破折の診断は?
歯根にヒビが入った初期ではレントゲンには写りません。そのため、歯根破折の診断は自覚症状など問診が頼りです。
また、詰め物や被せ物を取ればヒビが確認出来ることもあります。
※ 症状が進行すれば歯根膜腔の拡大などレントゲン透過像として現れます。
歯根破折を1週間以上放置で抜歯?
歯根破折を放置した歯周組織
破折した周囲の歯周組織は細菌感染を起こし、歯槽骨の吸収や歯茎の腫れ、歯周ポケットから膿が出る、臭いが強くなるなどの症状になります。
治療は抜歯一択
歯根破折を起こして放置期間が1週間以上になると歯根を支えてる骨が溶けてきます。こうなると保存治療は不可能で、抜歯の一択になります。
抜歯後は、膿や歯茎の腫れを抑える抗生物質と痛み止めの投与を行います。
抜歯後の補綴治療
抜歯後は、ブリッジ、取り外しの部分入れ歯、インプラントなどの治療法が選択肢になります。
歯根破折は放置しても自然治癒しない
歯根破折の初めは歯根に小さなひびが入った程度ですが、噛んでいるうちにヒビが大きく広がってきます。そのため、歯根破折した歯は自然治癒しません。
歯根破損を放置すると炎症が歯槽骨から顎骨まで及び、場合によっては入院しなければいけなくなります。歯根破折の疑いがあれば速やかに歯医者で治療を受けてください。
歯根が割れた初期であれば割れ方にもよりますが、保存可能な場合もあります。
歯根破折で膿や臭いが出る理由
Reason
細菌感染
歯周ポケット内の口腔内細菌が歯根のヒビの間に入り増殖します。細菌が作り出す毒素により歯槽骨の炎症が起こり歯茎に膿が溜まり腫れます。炎症反応が起こると当然ですが強い痛みを伴います。
歯周ポケットから膿が徐々に口腔内に漏れ出し、臭いの原因になります。
Reason
フィステル
割れた歯根先端相当部の歯茎にフィステルという小さな腫れ(でき物)は、膿の出口です。フィステルからの排膿も臭いの原因となります。歯根嚢胞が出来ている時にも作られます。
江戸川区篠崎で歯根破折の治療をご検討の方へ
ふかさわ歯科クリニック篠崎では、歯科治療は保険診療を主体に診療を行っております。江戸川区篠崎にて、歯根破折の治療をご検討の方は当院までお気軽にご相談下さい。
保険証の期限切れにご注意ください。保険証の確認が取れない場合は保険診療として取り扱うことができません。
また、マイナンバーカードによるマイナ保険証での受診にも対応しています。
【動画】差し歯やブリッジが取れた時の応急処置
筆者・院長
深沢 一
Hajime FULASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。