目次

歯を失ったらどちらを選ぶ?インプラントとブリッジの比較ガイド

1. はじめに

1.1 歯を失った時の選択肢:ブリッジとインプラント

歯を失ってしまった場合、そのまま放置しておくと噛み合わせや見た目に影響が出るだけでなく、周囲の健康な歯や顎骨の状態にも悪影響を及ぼします。こうした問題を解決するために、現代歯科医療では「ブリッジ」と「インプラント」という2つの主な治療法が選択肢として挙げられます。

  • ブリッジは、失われた歯の隣にある健康な歯を支えにして人工歯を橋渡しのように取り付ける治療法です。
  • インプラントは、人工歯根を顎骨に埋め込み、その上に人工歯を装着する治療法で、より自然な見た目や機能性が特徴です。

1.2 選択肢の重要性

「ブリッジ」と「インプラント」のどちらを選ぶかは、患者さんのライフスタイルや健康状態、費用感、治療期間などの条件により異なります。適切な治療法を選ぶことは、長期的に快適で健康な生活を送るために非常に重要です。

1.3 この記事の目的

この記事では、ブリッジとインプラントの違いやそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説します。さらに、どのようなケースにどちらの治療法が適しているのかについてもご紹介します。この記事を通じて、患者さんが自分にとって最適な治療法を見つけ、納得して治療に臨めるようサポートすることを目指しています。

2. ブリッジとは?

2.1 ブリッジの仕組みと種類

ブリッジの基本的な構造
ブリッジは、歯を失った部分を人工歯で補い、その両側の健康な歯を支えにして固定する治療法です。名前の通り「橋(ブリッジ)」のような形状で、失った歯のスペースを埋めるために橋渡しの役割を果たします。この治療法は、取り外しが必要ない固定式の補綴治療の一つです。

ブリッジの治療手順

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歯を削る

浸潤麻酔下で歯を台形状に削ります。※ 神経の無い歯の場合、土台を歯根に装着して形態修正します。

歯を削る

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印象採得

印象採得を行い、同時に上下の噛み合わせ(咬合採得)を行います。石膏模型を作り、技工所に送りりブリッジを作成します。

印象採得

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ブリッジ装着

保険適用のブリッジの場合は金属製、硬質レジンですが、保険適用外の場合はセラミックやジルコニア製の白い歯になります。

完成したブリッジをセメントで装着し、高さの調整や研磨を行い治療完了です。

ブリッジ装着

使用される材料と種類
ブリッジは使用する材料や目的によっていくつかの種類があります。

  • メタルブリッジ:金属を使用したブリッジで、耐久性が高く、奥歯に適していますが、見た目が目立ちやすい。
  • メタルボンドブリッジ:白く自然な見た目を持つブリッジで、前歯や審美性を重視する部位に適しています。
  • ジルコニアブリッジ:セラミックよりも強度が高く、審美性と耐久性を兼ね備えた最新の材料。
  • ハイブリッドセラミックブリッジ:メタル、レジン(プラスチックのような素材)、セラミック素材を組み合わせたもので、費用を抑えながら審美性を向上させます。

2.2 ブリッジのメリットとデメリット

メリット

  1. 治療期間が短い
    ブリッジ治療は通常数週間で完了します。他の選択肢(例:インプラント)に比べて早く日常生活に戻れる点がメリットです。
  2. 比較的安価
    インプラント治療に比べて費用を抑えることができ、保険適用範囲の治療も選べます。

デメリット

  1. 隣接する歯を削る必要がある
    支えとなる歯を大きく削る必要があり、健康な歯への影響が避けられません。
  2. 耐久性の限界
    ブリッジの寿命は10~15年程度とされていますが、支えとなる歯の状態によって寿命が短くなることがあります。
  3. 周囲の歯や骨への負担
    支えとなる歯に過度な力がかかることで、将来的に歯が弱くなるリスクがあります。また、顎骨が吸収されやすい点も注意が必要です。

ブリッジの治療をするには健康な歯であっても麻酔をかけて沢山削らなければなりません。歯を削れば削るほど歯の寿命は短くなると考えても差し支えありません。これがブリッジが抱える最大の欠点と言えます。

そこで、歯を余り削らない接着性ブリッジヒューマンブリッジ)という方法もあります。

2.3 ブリッジが適しているケース

ブリッジは、以下のような患者さんに適している治療法です。

  1. 失った歯が1~2本程度の場合
    比較的少ない歯を補う場合にはブリッジが適しており、治療がシンプルで短期間に終わります。
  2. 隣接する歯が既に治療されている場合
    支えとなる歯が既に虫歯治療などで被せ物をしている場合、ブリッジを利用することで追加の治療が効率的に行えます。
  3. インプラントが適応しない場合
    患者さんの骨の厚みや高さが不足している場合や、全身疾患がある場合など、インプラント治療が困難なケースでは、有力な選択肢となります。

これらの特徴を踏まえ、患者さんごとにブリッジの利点とリスクを考慮した上で治療法を選ぶことが重要です。

3. インプラントとは?

3.1 インプラントの仕組み

インプラントの仕組み
インプラントは、失った歯の代わりに人工の歯根を顎骨に埋め込み、その上に人工歯(クラウン)を装着する治療法です。人工歯根には、体に安全で高い生体親和性を持つチタンが使用されます。これにより、顎骨としっかり結合し、天然歯のような安定感と咀嚼力を再現できます。

原則として、一本の欠損に対して1本のインプラントを埋入します。また、総入れ歯の固定用として少数のインプラントで対応するオーバーデンチャー型インプラントもあります。

3.2 インプラントのメリットとデメリット

メリット

  1. 自然な見た目と咀嚼力
    天然歯に近い見た目と機能性を持ち、硬いものも無理なく噛むことができます。
  2. 周囲の歯を削らない
    ブリッジのように隣の歯を削る必要がなく、健康な歯への影響を最小限に抑えられます。
  3. 顎骨の健康維持
    インプラントは顎骨に直接力を伝えるため、歯を失った際に起こりがちな顎骨の吸収を防ぐことができます。

デメリット

  1. 費用が高い
    インプラント治療は保険適用外が多く、費用が高額になることが一般的です。
  2. 手術が必要
    顎骨に人工歯根を埋め込む外科手術が必要であり、術後の回復期間も考慮しなければなりません。
  3. メンテナンスが重要
    毎日の口腔ケアや定期的なメンテナンスが欠かせないため、患者自身の努力が求められます。

3.3 インプラントが適しているケース

インプラント治療は以下のようなケースに適しています。

  1. 顎骨の十分な骨量がある場合
    インプラントを支えるためには、一定以上の顎骨の量が必要です。骨量が不足している場合は骨移植や骨造成を行うことも可能です。
  2. 全身の健康状態が良好な場合
    糖尿病や高血圧などの持病がコントロールされていること、喫煙をしていないことが条件になります。
  3. 失った歯をしっかり補いたい場合
    天然歯に近い機能性や見た目を重視したい方、また長期的な使用を希望する方に適しています。
  4. 隣接する歯が健康な場合
    健康な歯を削りたくない場合にインプラントは最適です。

インプラント治療は、患者の骨量や健康状態を十分に検討した上で行われます。治療の計画や適応条件については歯科医師とよく相談することが重要です。

4. ブリッジとインプラントの違い

4.1 7つの比較観点

  1. 見た目
    • ブリッジ: 前歯にセラミックやジルコニアを使用すれば自然な見た目が得られるが、支えとなる歯に影響が出ることも。
    • インプラント: 天然歯に最も近い見た目と機能を再現可能。人工歯根が骨と結合するため安定感がある。
  2. 費用
    • ブリッジ: 一般的にインプラントよりも安価で、保険適用可能な場合もある。
    • インプラント: 高額で、保険適用外が多い。ただし、長期的には追加費用が少ない場合も。
  3. 治療期間
    • ブリッジ: 治療期間が短く、数週間で完了する。
    • インプラント: 骨とインプラントが結合する期間(数ヶ月)が必要なため、治療が長期にわたる。
  4. 耐久性
    • ブリッジ: 寿命は約10~15年程度で、支えとなる歯の状態に影響を受けやすい。
    • インプラント: 適切なメンテナンスを行えば20年以上持つことが期待できる。
  5. 健康面への影響
    • ブリッジ: 支えとなる健康な歯を削る必要があり、歯の健康に悪影響を与えることがある。
    • インプラント: 周囲の歯に影響を与えないが、手術が必要で体への負担がある。
  6. 快適性
    • ブリッジ: 固定式で取り外しの手間がなく、違和感が少ない。
    • インプラント: 自然な噛み心地と使用感で快適性が非常に高い。
  7. メンテナンス
    • ブリッジ: 支えとなる歯や歯茎のケアが必要。清掃が難しい箇所ができる場合も。
    • インプラント: 定期的な歯科受診と日常的な口腔ケアが重要。適切なケアを怠るとインプラント周囲炎のリスクがある。

4.2 ライフスタイルに応じた選択肢

年齢による選択

  • 若い患者の場合:将来的な耐久性を考慮し、インプラントが適している場合が多い。
  • 高齢の患者の場合:費用や治療期間を考慮し、ブリッジが選ばれることがある。

仕事の環境による選択

  • 忙しい職場環境の人:短期間で完了するブリッジが好まれる場合も。
  • 見た目を重視する職業の人:自然な仕上がりが得られるインプラントが適する。

生活習慣による選択

  • 喫煙者:インプラントは歯周病や骨の健康状態に影響を受けやすいため、禁煙が推奨される。
  • 食事の嗜好:硬い食べ物を好む人にはインプラントの方が適している。

まとめ
患者の年齢、ライフスタイル、健康状態に応じて、適切な治療法を選ぶことが重要です。歯科医師と十分に相談し、自分に最適な治療を見つけることが快適な生活への第一歩となります。

5. ブリッジからインプラントへの変更

5.1 変更が可能なケースと注意点

変更が可能なケース

  1. ブリッジが劣化した場合
    支えとなる歯の破損や、人工歯の摩耗によりブリッジが使えなくなった場合、インプラントに変更できる可能性があります。
  2. 隣接する歯への負担が大きい場合
    ブリッジの使用により隣接する歯がダメージを受けた場合、削る必要のないインプラントに変更することで健康な歯を守ることができます。
  3. 審美性を重視する場合
    ブリッジの見た目に満足できない場合や、より自然な仕上がりを求める場合、インプラントへの変更が適しています。

注意点

  1. ブリッジ撤去後の状態確認
    ブリッジを外した後、歯や歯茎の状態、顎骨の厚みや密度を確認する必要があります。
  2. 手術への準備
    インプラント治療には外科手術が必要です。患者の健康状態や感染症のリスクを事前に評価する必要があります。
  3. 治療期間の考慮
    インプラントへの変更は骨と人工歯根の結合期間が必要なため、ブリッジよりも治療期間が長くなります。

5.2 難しいケースとその理由

糖尿病や骨粗しょう症、免疫系疾患
糖尿病や骨粗しょう症、免疫系疾患
喫煙習慣
喫煙習慣
  1. 顎骨の状態が不十分な場合
    長期間ブリッジを使用していると、顎骨が吸収されて骨密度が不足することがあります。この場合、骨造成(骨移植やGBR)やサイナスリフトが必要になることがあります。
  2. 全身疾患や健康状態に問題がある場合
    糖尿病や骨粗しょう症、免疫系疾患、喫煙習慣などがある場合、インプラント手術が難しい場合があります。
  3. 周囲の歯の状態が悪い場合
    ブリッジの支えとなる歯が著しく損傷している場合、その部分の処置を先に行う必要があります。
  4. 歯周病が進行している場合
    歯周病が進んでいると、インプラント埋入部位の骨が弱くなり、手術後の成功率が下がります。

まとめ

ブリッジからインプラントへの変更は、審美性や機能性を向上させる有効な選択肢ですが、患者の口腔内や全身の健康状態を慎重に評価する必要があります。歯科医師との十分な相談の上で治療計画を立て、必要に応じて骨造成や歯周病治療などの前処置を行うことで、成功率を高めることができます。

6. 費用と保険適用範囲

6.1 ブリッジの費用と保険適用の条件

ブリッジの費用

  • 保険適用の場合
    • ブリッジの治療は、日本の公的健康保険が適用されることが多く、比較的低コストで治療を受けることができます。
    • 保険適用時の費用例:
      • 3歯のブリッジ(保険診療):約20,000~30,000円程度
      • 使用する素材(例:レジンや金属)によって変動
  • 自費診療の場合
    • 保険適用外の素材(セラミックやジルコニア)を使用する場合は自費診療になります。
    • 自費診療時の費用例

素材
治療内容値段
メタルボンドメタルボンドブリッジの費用は×本数 前歯、奥歯共通(内側は金属で外側がセラミックで作るクラウン)¥115,500
(税抜き ¥105,000)
ジルコニアセラミックジルコニアセラミックブリッジの費用は×本数 ジルコニアフレームにセラミックを焼き付けるクラウン¥110,000
(税抜き ¥100,000)
フルジルコニアフルコニアブリッジの費用は×本数 すべてジルコニアで作るクラウン¥92,400
(税抜き ¥84,000)
※ すべてをジルコニアで作るフルジルコニアクラウンは、
ややテカリが強く、審美性に劣ります。

保険適用の条件

  1. 治療目的が機能回復であること
    • 噛む機能や発音機能を回復させることが目的の場合、保険適用の対象となります。
  2. 適用可能な素材を使用
    • レジンや金属など、保険適用範囲内の材料を使用することが条件です。
  3. 歯科医師の診断に基づく必要性
    • 審美性だけを目的とする治療には保険が適用されません。

6.2 インプラントの費用と保険適用の条件

インプラントの費用

  • 基本費用
    • インプラント治療は自費診療が一般的で、費用が高額になる傾向があります。
    • 費用例:
      • インプラント1本あたり:約300,000~500,000円(人工歯根+上部構造)
      • 骨造成が必要な場合:追加で約100,000~300,000円
      • CT撮影や手術費用などの付随費用:50,000~150,000円

保険適用の条件 インプラントは基本的に自費診療ですが、以下の条件を満たす場合、保険適用の対象となることがあります。

  1. 病気や事故で広範囲の顎骨欠損がある場合
    例:腫瘍や外傷により大きく骨が失われたケース
  2. 特定疾患を有する場合
    例:顎骨再建が必要な患者で、厚生労働省が定める条件を満たす場合
  3. 高度先進医療機関での治療
    保険適用範囲内でインプラントを含む治療が認められる医療機関が限定されています。

具体的な費用比較表

治療法費用(保険適用時)費用(自費診療)特記事項
ブリッジ約15,000~30,000円1本あたり約50,000~200,000円素材や歯数により変動
インプラント保険適用外が一般的1本あたり約300,000~800,000円骨造成や追加手術で費用が上がる可能性

6.3費用を抑える方法

ブリッジとインプラントを併用

例えば、前歯で1本だけ欠損の場合、両隣の歯が健康であればインプラントがお薦めですが、同じ人で奥歯に欠損があった場合で、両隣の歯の神経が取られていれば、保険のブリッジを選択することも考えられます。

従って、ケースバイケースでインプラントとブリッジの併用を考慮されれば良いと思います。

まとめ

ブリッジは費用を抑えられる点がメリットですが、健康な歯への影響や耐久性が懸念される場合があります。一方、インプラントは費用が高額で手術が必要ですが、長期的な使用や審美性を求める方には適した選択肢です。治療法選択時には費用だけでなく、ライフスタイルや健康状態も考慮することが重要です。

ブリッジの場合

  • 治療中:支えとなり歯を削る際、麻酔を使用するため痛みはほとんどありません。治療後、歯や歯茎が一時的に敏感になることがありますが、数日で治まるケースが一般的です。
  • 治療後:ブリッジが適切に装着されていれば、日常生活での痛みはほとんどありません。

インプラントの場合

治療後:骨とインプラントが結合する期間中に違和感や軽い痛みを感じることがありますが、通常1~2週間程度で治まります。

手術中:麻酔を使用するため、手術中の痛みはほとんどありません。手術後に痛みや腫れを感じる場合がありますが、鎮痛剤を使用すると軽減できます。

ブリッジの場合

  • 平均治療期間:約2~3週間
    ブリッジ治療は比較的途中で完了します。 サポートとなる歯の準備(削合)と型取りを行い、2~3回の通院で装着が完了します。

インプラントの場合

平均治療期間:約3~9か月
インプラントは手術後、顎骨と人工歯根が結合するまで約3~6か月の期間が必要です。追加の処置(骨造成など)が必要な場合、治療期間がさらに延長することもあります。

ブリッジの耐久性

  • 平均寿命:約10~15年
    正しいメンテナンスを行っていただければ、支えとなる歯の状態に影響を受けやすく、支えの歯が弱いと寿命が短くなる可能性があります。

インプラントの耐久性

平均寿命:20年以上
適切な口腔ケアと定期的なメンテナンスを行うことで、非常に長期使用可能です。顎骨が健康であればさらにゆっくりする場合もあります。

江戸川区篠崎でブリッジとインプラントでお悩みの方へ

歯を失った際の治療方法として「ブリッジ」や「インプラント」が挙げられますが、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらを選ぶべきか迷われる方も少なくありません。

当院では、患者さま一人ひとりのライフスタイルやご要望を丁寧にお伺いし、最適な治療法をご提案しています。

  • ブリッジは、周囲の歯を支えにするため、短期間で治療を終えられることが特長です。費用を抑えたい方にもおすすめです。
  • インプラントは、顎の骨に人工歯根を埋め込む治療で、天然歯に近い感覚でしっかり噛むことができます。長期的な安定性を求める方に適しています。

当院では、治療後の生活を見据えた丁寧なカウンセリングを通じて、治療後の生活を見据えたベストな選択をサポートします。お悩みや不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?

筆者・院長

篠崎ふかさわ歯科クリニック院長

深沢 一


Hajime FULASAWA

  • 登山
  • ヨガ

メッセージ

日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。

私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。

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