- 1. サイナスリフトで骨量を増やす!インプラント治療を支える技術
- 1.1. 1. サイナスリフトとは何か?
- 1.1.1. サイナスリフトの基本情報
- 1.1.2. 上顎臼歯部歯根と上顎洞底の位置関係
- 1.1.3. サイナスリフトが必要なケース
- 1.1.4. 適応症例
- 1.1.5. サイナスリフトとインプラント施術例
- 1.2. 2. サイナスリフトの手術方法
- 1.2.1. 手術の流れ
- 1.2.2. サイナスリフト術式
- 1.2.3. 上部構造装着までの流れ
- 1.2.4. 術後の腫れや痛み
- 1.3. 3. サイナスリフトの成功率とリスク
- 1.3.1. 手術成功率
- 1.3.2. 合併症のリスクと対策
- 1.4. 4. 費用と保険適用
- 1.4.1. サイナスリフトの費用
- 1.4.1.1. 自費治療
- 1.4.2. 保険適用の条件
- 1.5. 5. 他の骨造成手術との比較
- 1.5.1. GBRやオンレイグラフトとの比較
- 1.5.2. 手術方法の概要
- 1.5.3. 比較表
- 1.5.4. 詳細な比較ポイント
- 1.5.5. 結論
- 1.6. 6. サイナスリフトが向かないケース
- 1.6.1. 手術が不向きな患者
- 2. よくある質問(FAQ)
- 3. 江戸川区篠崎で骨量不足でも可能なサイナスリフトで笑顔を取り戻しましょう
- 4. 【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?
- 5. 筆者・院長
サイナスリフトで骨量を増やす!インプラント治療を支える技術
1. サイナスリフトとは何か?
サイナスリフトの基本情報
**サイナスリフト(Sinus Lift)**は、上顎洞挙上術とも呼ばれる骨造成手術の一種で、インプラント治療を目的として行われます。主に上顎の奥歯部分で骨の高さや量が不足している場合に、上顎洞(サイナス)の底部を持ち上げ、その空間に人工骨や自家骨を移植して骨を増やします。これにより、インプラントを安全かつ確実に埋入できるようになります。
目的
- 骨量が不足している患者でもインプラント治療を可能にする。
- インプラントの安定性と長期的な成功率を向上させる。
ソケットリフトとの違い
- サイナスリフト:外科的手術により広範囲の骨造成が可能。特に大きな骨量不足に対応。
- ソケットリフト:インプラント埋入と同時に少量の骨造成を行う術式。骨量が比較的少し不足しているケースに適応。
上顎臼歯部歯根と上顎洞底の位置関係
上顎の小臼歯と大臼歯歯根は上顎洞と極めて接近していることがあります。また、上顎臼歯を失うと上顎洞底までの距離がさらに短くなります。
歯がある
上顎臼歯部歯根と上顎洞底が接近
上顎骨には、上顎洞(サイナス)という大きな空洞が左右にあります。蓄膿症はこの部分に起きる病気です。
イラストでは小臼歯と大臼歯の歯根が上顎洞と接触していることを表しています。
歯を失う
上顎洞底との距離が近い
上顎第1大臼歯を失った状態の模式図です。上顎洞は拡大し、歯槽骨は吸収されて上顎洞との距離が短くなり、インプラントを埋入するには十分な骨がありません。
サイナスリフトが必要なケース
サイナスリフトは、以下のような理由で骨量が不足している場合に行われます。
1. 加齢
- 年齢を重ねると骨の吸収が進み、特に上顎の骨量が減少しやすくなります。
2. 抜歯後の時間経過
- 抜歯後、骨が使われないことで自然に骨吸収が進行します。
- 抜歯から数年経過した場合、インプラント治療には骨造成が必要になることが多いです。
3. 先天的または外傷による骨の欠損
- 生まれつき骨量が少ない場合や、事故や病気による骨の損傷が原因となることもあります。
4. インプラント治療の失敗後の再治療
- 過去のインプラント治療で骨が不足した状態になった場合に適応されることがあります。
サイナスリフトは、患者一人ひとりの骨の状態に合わせた精密な診断と計画が必要な高度な治療法です。骨量不足の根本的な原因を理解することで、適切な治療法を選択する助けになります。
適応症例
上顎洞底までの骨高5mm未満
サイナスリフト予定部位に5mmの鉄球を置き、パノラマレントゲン写真を撮影したものです。
直径5ミリの鉄球を参考にすると、インプラント埋入予定部位(上顎第2小臼歯、上顎第1大臼歯)の上顎洞底までの骨の高さは約5mm未満であることがわかります。
この骨量ではインプラント埋入は不可能なので、上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を持ち上げて出来た空間にCGFと人工骨(Bio-Oss)を混ぜたものを填入し、骨を再生誘導します。
サイナスリフトとインプラント施術例
上顎7番にインプラント
レントゲン上ではインプラントの先端が上顎洞の中に入ってるように写っています。
実際には、サイナスリフトで上顎洞底にあるシュナイダー膜を押し上げているので、 上顎洞の中にインプラント体が突き抜けているわけではありません。
2. サイナスリフトの手術方法
手術の流れ
サイナスリフトの手術は、高度な技術と綿密な術前計画を必要とする手法です。以下は一般的な手術の流れです。
1. 術前検査
- CTスキャンによる診断
上顎の骨量や上顎洞の形状を正確に把握するために、CTスキャンを行います。これにより、骨造成が必要な範囲や手術の難易度を評価します。
2. 皮膚切開
- 上顎の歯肉を切開し、骨にアクセスします。
- 骨に小さな窓(アクセスホール)を開けて、上顎洞の膜(シュナイダー膜)にアプローチします。
3. 骨移植
- シュナイダー膜を慎重に持ち上げ、できた空間に人工骨や自家骨を移植します。
- 骨移植材としては、患者自身の骨、動物由来の骨、または合成骨が使われることが一般的です。
4. 縫合
- 骨移植材を固定した後、歯肉を縫合して手術を終了します。
- 術後の安定期間(通常3~9ヶ月)を経て、骨が成熟するのを待ちます。
適切な術式は、患者の骨量や健康状態、治療目標を考慮して歯科医師が判断します。CTスキャンの結果に基づき、最善の治療計画を立てることが重要です。
サイナスリフト術式
step
浸潤麻酔
欠損歯の歯根相当部の歯肉頬移行部に浸潤麻酔を行います。
浸潤麻酔の薬液が注入される時の痛みを軽減するために事前に表面麻酔や針の無い麻酔器を使い針の刺入部位周辺に弱い麻酔を掛けておきます。
step
歯肉切開し骨を開窓
矢印部分の歯肉を浸潤麻酔下で切開し骨面を露出させ、骨を削る専用の器具を使い上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を傷つけないように骨に横幅約1~3cm程の窓を作ります。
step
上顎洞底粘膜(シュナイダー膜)を挙上
窓からアクセスして上顎洞粘膜を破らないように注意深く剥がして持ち上げます。上顎洞底との間に出来た空間にCGFと人工骨(白い顆粒状のもの)を混ぜたものを填入します。
その際、血液を遠心分離器にかけて作った。CGFを混ぜて填入すると骨の出来が促進されます。
step
インプラント埋入
歯槽骨頂部から穴を開けてインプラントフィクスチャーを埋入します。
この症例では、インプラントの初期固定が可能と判断したので、同日にサイナスリフトの手術に加えインプラント埋入手術も行っています。
上部構造装着までの流れ
1インプラント埋入手術
インプラントの初期固定が不可能なほど骨量が不足している症例では、サイナスリフト術後、上顎洞に骨が誘導再生されるまでの6ヶ月ほどの期間を待って、インプラント埋入手術を行います。
2アバットメント(支台部)の装着
インプラントが骨と結合(6ヶ月以上の期間が必要)したら2次オペを行い人工歯冠の支台部(アバットメント)を装着します。
3人工歯の装着
アバットメントに人工歯冠(ジルコニアクラウンなど)を装着(ネジを回して固定、またはセメント接着)して治療は終了です。
ネジが緩むことがあります。また、インプラントも歯周病になるため定期的(少なくとも、3ヶ月に一度)なメンテナンスが必要です。
術後の腫れや痛み
手術直後は麻酔が切れると徐々に痛みが出てきます。2日目以降にやや腫れも出ることがあります。
手術による痛みや腫れ、その対処法については別ページで詳しく解説しています。
その他インプラント手術のリスクについては別ページをご覧下さい。
3. サイナスリフトの成功率とリスク
手術成功率
サイナスリフトは、適切な診断と技術があれば高い成功率を誇る治療法です。当医院での成功率はほぼ100%です。現在のところ失敗例はありません。
統計データ
- 一般的なサイナスリフト手術の成功率は 90%以上 と報告されています。
- 骨移植材や患者の健康状態による違いはあるものの、経験豊富な歯科医が施術を行えば、非常に安全で信頼性の高い手術とされています。
- 骨造成後のインプラント埋入成功率も 85~98% と高水準を維持しています。
合併症のリスクと対策
サイナスリフトは安全性の高い手術ですが、リスクを完全に排除することはできません。以下に代表的なリスクとその対策を挙げます。
1. 感染症
- リスク
手術部位が感染することで、腫れや痛みが強くなる可能性があります。 - 対策
- 術前・術後に抗生物質を処方。
- 術後の口腔ケアを徹底する。
2. 骨吸収
- リスク
骨移植材がうまく定着しない場合、骨吸収が起こり、骨造成が不十分となる可能性があります。 - 対策
- 骨移植材の選択を慎重に行い、患者の骨量や状態に適した材料を使用。
- 定期的なフォローアップで骨の状態を観察。
3. 上顎洞膜の破損
- リスク
シュナイダー膜が破れると骨移植が困難になり、手術の延期や再施術が必要になる場合があります。 - 対策
- 手術中に高精度な器具を使用し、慎重に膜を剥離。
- 万が一破損が起きた場合は修復膜を使用して再建。
術後のケア方法
- 禁忌事項
- 術後数日間は鼻を強くかまない。
- 重いものを持ち上げるなど、鼻に圧がかかる行動を避ける。
- 痛みの管理
- 処方された痛み止めを適切に使用。
- 口腔衛生の維持
- 軽いうがいを行い、感染を防ぐ。
- 指導された歯磨き方法を守る。
術後の注意事項をしっかり守ることで、合併症を最小限に抑え、治療の成功率を高めることが可能です。
4. 費用と保険適用
サイナスリフトの費用
自費治療
サイナスリフトは保険適用外の自由診療として行われます。
内容 | 金額(税抜き・税込み) ※単位:円 |
---|---|
サイナスリフト(上顎洞底挙上術) | インプラント1本 230,000円(税込み 253,000円) インプラント2本 290,000円 (税込み 319,000円) インプラント3本以上 310,000円 (税込み 341,000円) |
保険適用の条件
日本の保険制度では、サイナスリフトは基本的に自由診療(自費治療)として扱われ、保険の適用はありません。ただし、以下の特定条件を満たす場合に例外的に保険が適用されることがあります。
保険適用の主な条件
- 医科歯科連携が必要な場合
- がん治療や事故による骨欠損など、特定の医科的疾患が原因でサイナスリフトが必要となる場合。
- 医師の診断書が必要。
- 先天性疾患の場合
- 先天性の骨欠損や異常が原因で骨造成が必要な場合に保険が適用されるケースがあります。
- 特定の公的支援制度を利用する場合
- 地域自治体が提供する医療支援プログラムや、特定の医療助成制度を利用することで、一部費用が補助される可能性があります。
保険が適用されない理由
- サイナスリフトは、インプラント治療を補完する手術として位置付けられており、インプラント治療そのものが保険適用外であるため。
費用負担を軽減する方法
- 医療費控除を活用することで、経済的な負担を軽減できます。
費用や保険適用に関する詳細は、歯科医院に直接相談することをおすすめします。患者ごとの状況に応じて最適な選択肢を見つけることが可能です。
5. 他の骨造成手術との比較
GBRやオンレイグラフトとの比較
サイナスリフトは上顎洞周辺の骨量を増やす手術として特化していますが、他にも骨造成手術にはさまざまな方法があります。その中でも代表的な「GBR(骨誘導再生術)」や「オンレイグラフト」と比較してみましょう。
手術方法の概要
- サイナスリフト
- 上顎洞の膜を持ち上げて人工骨や自家骨を移植する手術。
- 主に上顎奥歯部で骨量不足がある場合に適応。
- GBR(骨誘導再生術)
- 骨欠損部分に人工骨や自家骨を移植し、メンブレン(膜)で覆うことで骨の再生を促す手術。
- 上顎・下顎を問わず、広範囲で適用可能。
- オンレイグラフト
- 自家骨を骨欠損部の上に貼り付ける手術。
- 大幅な骨量増加が必要な場合や形態を整える際に適応。
比較表
手術方法 | 適応症例 | 手術の難易度 | 回復期間 | 費用の目安 |
---|---|---|---|---|
サイナスリフト | 上顎奥歯の骨量不足 | 中~高 | 3~9ヶ月 | 20~40万円(1箇所) |
GBR | 骨幅や骨高さの不足、局所的な骨欠損 | 中~高 | 3~6ヶ月 | 5~20万円(部位による) |
オンレイグラフト | 骨量が極端に不足している広範囲の症例 | 高 | 6~12ヶ月 | 30~60万円(1箇所) |
詳細な比較ポイント
- 適応症例
- サイナスリフトは上顎洞周辺の骨量不足に特化しており、特にインプラント治療を行う際に最適。
- GBRは汎用性が高く、骨幅や高さが不足しているあらゆる部位に適応可能。
- オンレイグラフトは、自家骨を使用するため、大規模な骨欠損や形態を整える場合に有効。
- 手術の難易度
- サイナスリフトやGBRは手術の技術が重要ですが、オンレイグラフトは自家骨採取が必要なため難易度が高くなります。
- 回復期間
- サイナスリフトとオンレイグラフトは骨移植材の成熟に時間がかかるため、回復期間が長め。
- GBRは比較的早く回復する場合が多い。
- 費用
- GBRは手軽に行えるため費用が抑えられることが多い。
- オンレイグラフトは自家骨採取の工程があるため、費用が高くなる傾向があります。
結論
治療法の選択は、骨の状態やインプラント治療の計画、患者の健康状態などを考慮して決定されます。各手術にはメリット・デメリットがあるため、歯科医師と十分に相談し、最適な治療法を選ぶことが重要です。比較表を参考に、それぞれの特徴を理解することで、より納得のいく選択ができるでしょう。
6. サイナスリフトが向かないケース
手術が不向きな患者
サイナスリフトは骨造成が必要な患者に広く適用される手術ですが、以下のような場合には不向きとされることがあります。
1. 健康状態に問題がある場合
- 慢性疾患
糖尿病や高血圧などの慢性疾患がコントロールされていない場合は、手術による感染リスクや治癒遅延が懸念されます。 - 骨密度が低い場合
骨粗鬆症などの影響で骨が脆弱な場合、骨移植材が定着しにくい可能性があります。 - 喫煙者
喫煙は血流を悪化させ、骨の治癒を妨げるため、手術後の成功率が低下します。
2. 骨量が著しく不足している場合
- 骨量が2mm未満の場合、サイナスリフトを行っても十分な骨造成が難しいケースがあります。この場合、他の治療法を検討する必要があります。
3. 上顎洞に疾患がある場合
- 慢性的な副鼻腔炎や上顎洞の構造的な異常がある場合、サイナスリフトを行うことが困難な場合があります。
よくある質問(FAQ)
サイナスリフトの手術は痛いですか?
手術中は麻酔が効いているため痛みを感じることはほとんどありません。術後は腫れや軽い痛みを感じることがありますが、痛み止めの服用で対応可能です。
術後の腫れはどのくらい続きますか?
個人差がありますが、通常3~7日程度で腫れが収まります。冷やすことで腫れを軽減できる場合があります。
手術時間はどのくらいかかりますか?
約1~2時間程度が目安です。
日常生活に戻るまでにどのくらい時間がかかりますか?
軽い腫れや違和感はありますが、多くの場合、手術翌日から日常生活に戻ることが可能です。ただし、激しい運動や鼻を強くかむ行為は避けてください。
サイナスリフト後にインプラントはすぐ埋入できますか?
骨量が十分ある場合は同時埋入も可能ですが、通常は骨が成熟するまで3~9ヶ月待機します。
サイナスリフトの成功率を上げるために注意すべき点は?
術後のケアを徹底することが重要です。指示された通りに薬を服用し、適切な口腔衛生を保つことで感染リスクを減らせます。
江戸川区篠崎で骨量不足でも可能なサイナスリフトで笑顔を取り戻しましょう
上顎奥歯の骨量不足でインプラント治療を諦めていませんか?サイナスリフト(上顎洞挙上術)は、骨の量を増やすことでインプラント治療を可能にする先進的な手術法です。当院では、経験豊富な日本口腔インプラント学会指導医が最新の技術と設備を駆使して、安全かつ精密な治療を提供します。
患者様一人ひとりの骨の状態やお悩みに合わせた最適な治療プランをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。あなたの「噛む喜び」と「笑顔」を取り戻すお手伝いをいたします!
【動画】奥歯を抜歯したまま放置すると?
筆者・院長
深沢 一
Hajime FULASAWA
- 登山
- ヨガ
メッセージ
日々進化する歯科医療に対応するため、毎月必ず各種セミナーへの受講を心がけております。
私達は、日々刻々と進歩する医学を、より良い形で患者様に御提供したいと考え、「各種 歯科学会」に所属すると共に、定期的に「院内勉強会」を行う等、常に現状に甘んずる事のないよう精進致しております。 又、医療で一番大切な事は、”心のある診療”と考え、スタッフと共に「患者様の立場に立った診療」を、心がけております。